【一覧でわかる】老人ホームの種類と特徴について〜入居対象や費用も解説〜
一口に老人ホームや介護施設と言っても、実はたくさんの種類や施設があります。入居者ご本人に合った老人ホームを選ぶためには、まずは老人ホームの種類と特徴を理解することが大切です。この記事では、老人ホーム・介護施設の種類ごとに、特徴や費用相場・入居対象などを解説します。
老人ホーム探しを始めるその前に
老人ホームには様々な種類があり、受入れ条件も異なるため、老人ホームを探しはじめる前に、条件や希望の確認をしておくと施設探しがスムーズになります。数ある施設の中から希望の老人ホームを選ぶためにも、次の4つのことを確認しましょう。
年金収入・預貯金
入居対象の方、あるいは老人ホームの利用料を負担する方の、年金収入や預貯金、その他資産の把握をします。選んだ施設で長く安心して生活するためにも、試算を把握して無理のない資金計画を立てるためです。
また、自宅の売却費用を老人ホームの入居費用にあてる方は、複数社見積をとっておくと予算の目安になります。
施設探しは、元気な時はご本人、場合によって子どもや配偶者、親族が中心になって行うことが多いです。そのため、日頃から自分自身の試算を明確にし、家族同士でも確認しやすい関係づくりをしておくことが重要となります。
エリア
ご本人の住み慣れた場所、以前住んでいたり行ったことのある場所、ご家族の勤務先など、エリアの選び方は様々あります。住み慣れた場所や馴染みのある場所で老人ホームを探す場合、入所に抵抗がある方にも説明がしやすく、ご家族の心理的抵抗は少なくなります。
ご家族の勤務先近くで探す場合、仕事帰りに面会をしやすいことがメリットです。
入居対象者の心身状況
施設により入居条件が異なるため、ご本人の身体状況や現病歴(現在治療・通院中の病気)、既往歴(過去の病気)、その他以下の内容を把握しておきましょう。
・年齢
・介護度
・身体状況(移動、食事、排泄、入浴など生活全般における介助の有無)
・現病歴
・既往歴
・認知症の診断、症状の有無
継続した治療や通院、医療行為がある場合、老人ホームの受入れ条件を具体的に確認し、入居後の対応が可能か確認する必要があります。
ご本人がうまく説明できない場合は、かかりつけ医に紹介状を書いてもらったり、介護サービスを利用している場合は担当ケアマネジャーに日頃の様子を確認しても良いでしょう。
生活の希望
生活に対する希望も施設選びの大切なポイントです。ここでは、ご希望として多い、食事、趣味・余暇活動、リハビリ、医療との連携について解説します。
食事
多くの施設で食事に力を入れています。朝食を和食と洋食から選んだり、昼食夕食も複数メニューから選べる、あるいは単品メニューが豊富、有名レストランの料理人が監修しているなど、多種多彩です。
また、嚥下能力(飲み込む力)や咀嚼力(噛む力)に応じた食形態がどこまで可能か、病気による塩分やカロリー制限の対応方法も確認しましょう。(施設により、食形態の変更は別料金の場合があります。)
趣味・余暇活動
施設では、午前中のラジオ体操をはじめ、午後は書道やカラオケ、絵手紙、園芸、囲碁・将棋など、様々な取り組みを行っています。ボランティアによる演奏会や落語、外出や外食レクリエーションも月1回ほどの頻度で実施されることが多く、施設によってシアタールームや娯楽スペース、茶室を完備しています。
最近は、ご本人の”夢を叶える””やりたいことを実現する”ことに着目する施設が増えています。実際に、車椅子でホテルへ外食に行ったり、何年も行けていなかったお墓参りに行ったり、お孫さんの結婚式に出席したりと、お一人おひとりの希望を形にする取り組みです。
リハビリ
施設でも、リハビリを行うことができます。機能訓練室や、平行棒、バイク、階段昇降などをそろえている施設もあり、退院後の方もリハビリを継続できます。リハビリ専門職は種類に応じて実施可能なリハビリ内容が異なり、施設により配置職種も違います。希望するリハビリの内容がある方は、施設で実施可能なリハビリ内容を確認しましょう。
また、医師の指示書があると医療保険でリハビリを受けることもできます。自己負担は発生しますが、施設にいながら訪問でリハビリやマッサージを受けられるため、検討すると良いでしょう。
医療との連携
施設には、提携する医療機関があります。2週間に1回、施設にいながら訪問診療を受けることができるほか、薬が処方された場合は薬局の方が施設まで届けてくれます。
入居前に病院やクリニックに通っていた方も、医師の「診療情報提供書」があると新しい医療機関に診療記録や薬を引き継ぐことができるため、安心です。
もし指定の医療機関に通いたい場合、施設から通うこともできます。送迎や付き添いは、基本的に家族の対応となりますが、別途料金で相談可能な施設もあるため確認しましょう。
老人ホームの種類について
老人ホームには、様々な種類があります。施設によって、提供するサービスや費用相場・入居対象が異なるため、入居者に合った施設を選ぶためには、それぞれの施設の種類・特徴を理解することが大切です。
国や地方自治体などが運営する「公的施設」
公的施設は、国や地方自治体などが運営する高齢者向け施設のことです。以下の施設が該当します。
- 特別養護老人ホーム
- 養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- 軽費老人ホーム(ケアハウス)
公的施設は、民間施設に比べて費用が安く、介護度が高い方や、所得が低い方を優先的に受け入れる傾向があります。費用が安いというメリットはありますが、人気が高く入居待ちが長いというデメリットがあります。
また、民間施設に比べるとイベントやレクリエーションの機会が少なく、施設の独自性から入居先を選ぶことが難しいです。
民間企業が運営する「民間施設」
民間施設は、民間企業が運営する高齢者向け施設のことです。以下の施設が該当します。
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- 健康型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- グループホーム
- シニア向け分譲マンション
民間施設は、公的施設に比べてサービスが充実しているところが多く、費用も特色も施設ごとに様々です。
そのため、入居者ご本人やご家族のニーズに合わせて入居先を選びやすいというメリットがあります。サービスが充実している分、費用が高くなる傾向があるというデメリットもあります。
また、施設を選ぶ際は、運営会社に介護事業における実績があり、十分に信頼できるかどうかを確認する事が大切です。
種類別老人ホームの特徴/要支援・要介護度
ここからは、6種類の老人ホームの特徴と、入居対象者の要支援・要介護度についてそれぞれ解説していきます。
特別養護老人ホーム
「特別養護老人ホーム」は、自治体や社会福祉法人が運営する公的施設です。介護サービスをメインに提供し、要介護度3以上の方が入居の対象になります。
公的施設なので入居にあたって入居一時金はかからず、月額費用も民間の有料老人ホームに比べると安いのが特徴です。
費用が安い分、入居待ちの方も多く人気となっています。そのため、入居までに半年〜数年かかる場合があるため注意が必要です。
レクリエーションに力を入れ、設備の充実や接遇マナー、手厚い医療・介護体制などを提供するなど、施設によって独自の特色を持っている場合が多いです。施設数が多く、選択肢が豊富です。
養護老人ホーム
「養護老人ホーム」は、特別養護老人ホームと同じく公的施設です。介護者が不在、あるいは経済的な理由で自宅で生活することが難しい高齢者の生活・自立支援をメインに行っており、介護を主たる目的としていない点が特徴です。
そのため、自立した生活を送れる高齢者が入居対象となります。
軽費老人ホーム(ケアハウス)
「軽費老人ホーム」は、地方公共団体が運営し、名前の通り他の施設に比べて安く利用することができる老人ホームのことです。
軽費老人ホームにはA型、B型、C型があり、C型はケアハウスと呼ばれます。自立しているが自宅での生活に不安を感じる高齢者を対象としていますが、ケアハウスの中にも介護サービスを受けられる介護型が存在します。
介護付き有料老人ホーム
「介護付き有料老人ホーム」とは、要介護の方を対象とした民間運営の老人ホームのことです。食事や掃除などの身の回りのことから身体介護、レクリエーションまで、生活を幅広くサポートするサービスを提供しています。
都道府県から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けており、介護サービスの提供基準を満たしている場合のみ「介護付き有料老人ホーム」となります。
レクリエーションに力を入れ、設備の充実や接遇マナー、手厚い医療・介護体制などを提供するなど、施設によって独自の特色を持っている場合が多いです。施設数が多く、選択肢が豊富です。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、食事や洗濯などのサービスを提供する老人ホームのことです。「介護付き有料老人ホームから介護サービスがなくなったもの」と考えると分かりやすいです。
基本的に、介護付き有料老人ホームのようにスタッフが介護サービスを提供することはありません。そのため、介護が必要になった場合は外部の介護事業所(居宅介護支援事業所)と契約をし、訪問介護による介護サービスを受けることとなります。
健康型有料老人ホーム
「健康型有料老人ホーム」とは、生活に関する基本的なことは自分でできる高齢者に対し、食事や家事などをサポートする老人ホームのことです。
あくまでも「サポート」であり、身の回りのことは自立してできることが前提なので、要介護になった場合は退去となります。
その他高齢者向け施設の種類別特徴
老人ホームには分類されない、その他の高齢者向けの施設について、特徴や入居対象などを説明します。
介護医療院
「介護医療院」は、医師・看護師が常駐していることから、医療ケアが充実しています。医療機能と生活施設としての機能を併せ持っており、看取りやターミナルケアにも対応しているのが特徴です。
重篤な疾患を抱えた方を対象としたI型と、比較的容態が安定している方を対象としたII型に分かれます。ご本人に持病があったり、医療ケアが充実したところを希望する方に適した介護施設です。
介護老人保健施設
「介護老人保健施設」は、老健とも呼ばれ、病院を退院した後すぐに在宅で生活できない方を対象とした施設です。
リハビリや介護、必要な医療ケアなどのサービスを受けながら3〜6ヶ月ほど滞在し、在宅復帰を目指します。理学療法士や作業療法士など、リハビリの専門職が常駐していることが多いため、リハビリサービスを重視する方に適した施設です。
初期費用がかからないため、費用が安いというメリットがあります。ただし、在宅生活への復帰を目指すという位置付けのため、原則3〜6ヶ月と入所期間が定められている点に注意が必要です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」は、主に要介護度が低い高齢者を対象とした、高齢者の方が暮らしやすいバリアフリー構造の住宅です。
「一般型」と「介護型」があり、介護型の場合は担当の介護士が介護サービスを提供します。なお、一般型で介護サービスを受ける場合は、外部の介護事業者と契約する必要があります。
介護施設ではなく住宅として扱われ、多くの老人ホームのように1日のスケジュールが決められていません。そのため、自由に外出・外泊ができるなど、自由度の高い生活を送ることができます。
グループホーム
「グループホーム」は、認知症を患っている方が専門の職員からサポートを受けながら共同で生活する施設のことです。要支援2以上、原則65歳以上で認知症と診断を受けている方が入居対象です。
5〜9人ほどのユニットを組んで、役割分担をしながら生活します。掃除や洗濯、料理など、できることは自分で行う生活スタイルのため、認知症の進行を緩やかにしながら安心して生活する事ができます。
シニア向け分譲マンション
「シニア向け分譲マンション」とは、高齢者の方が暮らしやすい設計・設備・サービスを兼ね備えた分譲マンションです。バリアフリー構造だけでなく、設備・サービスが非常に充実しているという特徴があります。
家事援助などの生活支援サービスや、温泉やプール・シアタールームなど、趣味や娯楽を満喫できる設備が完備されている施設が多く、主に富裕層の方を対象にしています。
シニア向け分譲マンションは、購入することで一般のマンションと同じく所有権を持つことができます。そのため、資産として保有でき、売却や相続などを行うことができるというメリットがあります。
主な高齢者向け介護施設の費用相場
高齢者向け介護施設の費用相場について、初期費用と月額費用ごとにご紹介します。施設により費用は様々なので、見学の際などに必ず料金体系を確認してください。
なお、初期費用とは、契約時にまとめて支払うもので「入居一時金」(数年分の月額家賃の前払い分)、「敷金」などにあたります。
月額費用は、居住費や食費などを合算して月々支払うものです。施設によって異なりますが、介護サービス費と生活費の2種類に分かれます。
施設の種類 | 初期費用 | 月額費用 |
特別養護老人ホーム | 0円 | 5〜15万円 |
養護老人ホーム | 0円 | 0〜14万円 |
介護老人保健施設 | 0円 | 8〜14万円 |
介護医療院 | 0円 | 7〜14万円 |
軽費老人ホーム(ケアハウス) | 数十万円〜数百万円 | 10〜30万円 |
介護付き有料老人ホーム | 0〜数億円 | 15〜35万円 |
住宅型有料老人ホーム | 0〜数億円 | 15〜35万円 |
健康型有料老人ホーム | 0〜数百万円 | 10〜40万円 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 0〜数十万円 | 10〜30万円 |
グループホーム | 0〜数十万円 | 10〜20万円 |
シニア向け分譲マンション | 数千万円〜数億円 | 10〜30万円 |
まとめ
今回は老人ホームの種類や特徴、費用相場などについて、施設の種類ごとにご紹介しました。入居者ご本人に合った施設を選ぶためには、施設の種類と特徴を理解することが大切です。
また、老人ホーム選びには様々なポイントがあるため、入居者ご本人・ご家族が納得のいく施設を見つけるためには、早めに老人ホーム探しをスタートさせ、じっくり検討することが重要です。
理想に合った施設を選ぶためには、経験豊富なコンシェルジュに相談することもおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。
老人ホームを探す
有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。