サービス付き高齢者向け住宅の費用は?相場や内訳・サービス内容とは
サービス付き高齢者向け住宅を選ぶ際は、費用について理解することが大切です。入居にかかる費用はいくらか、どのような費用が発生するのかなど、わからないことも多いと思います。
今回は、サービス付き高齢者向け住宅にかかる費用と、入居後に受けられるサービスや費用相場・内訳、契約方式や入居するメリットなどを紹介します。サービス付き高齢者向け住宅の入居を検討している方は、ぜひご覧ください。
サービス付き高齢者向け住宅とは
「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」は、主に要介護度が低い高齢者を対象とした、高齢者の方が暮らしやすいバリアフリー構造の住宅です。「一般型」と「介護型」があり、介護型の場合は、担当の介護士が介護サービスを提供します。なお、一般型で介護サービスを受ける場合は、外部の介護事業者と契約してサービスを受ける必要があります。
サービス付き高齢者向け住宅で提供されるサービス
サービス付き高齢者向け住宅は、一般型と介護型で提供されるサービスが異なります。
それぞれ以下のようなサービスが受けられます。
<一般型>
安否確認:スタッフが定期的に巡回し、安否確認を行う
生活相談:生活上の困りごとの相談に対応する
その他のオプションサービス:外出の付き添いや食事提供、家事のサポートといった生活支援など
<介護型>
安否確認
生活相談
生活支援:外出の付き添いや食事提供、家事のサポートなど
身体介護:食事・入浴・排泄などの介助
レクリエーション
リハビリ(一部)
看取り(一部):看護師が24時間常駐している場合は、医療機関との連携体制が整っている場合に対応可能
施設によって提供しているサービスは様々ですが、基本的に安否確認と生活相談がサービスの中心となります。一般型の場合、オプションとして生活支援サービスを提供しているところもあります。介護スタッフが在籍していないため、介護サービスを受ける際は外部の事業所との契約が必要です。
一方、介護型の場合は介護スタッフが在籍しており、生活支援や身体介護、レクリエーションなど手厚いサービスを受けることができます。そのため、要介護の方も安心して生活できるのが特徴です。
サービス付き高齢者向け住宅の設備・人員基準
サービス付き高齢者向け住宅には、設備や人員に基準が設けられています。
設備基準には以下のようなものがあります。
居室の広さが原則25㎡以上(入居者共同で使用するリビングやキッチンなどがある場合は18㎡以上)
建物がバリアフリー構造になっている
また、人員基準としては、以下のいずれかの人員が日中に常駐していることが定められています。
社会福祉法人・医療法人・指定居宅サービス事業所などの職員
介護福祉士
介護支援専門員
ヘルパー2級以上の資格を有する者
医師
看護師
サービス付き高齢者向け住宅の費用内訳
サービス付き高齢者向け住宅に必要な費用には、大きく分けて「入居時費用」と「月額利用料」の2種類があります。ここでは、それぞれの費用の説明と内訳を解説します。
入居時費用
入居時費用とは契約時にまとめて支払うもので、「入居一時金」(数年分の月額家賃の前払い額)、「敷金」などにあたります。入居一時金は全ての施設で必要なわけではなく、月額利用料が高い代わりに入居一時金がかからない施設もあります。
月額利用料
月額利用料とは、居住費や食費などの生活費を合算して月々支払うものです。月額利用料には、以下のような費用が含まれます。施設に払う費用とは別に、消耗品代や医療費・薬代、また外部の介護事業所を利用して介護サービスを受ける場合は、介護サービス費用などがかかります。
居住費
食費
管理費
日常生活費
サービス費
居住費
居住費は、通常の賃貸契約における家賃に該当する費用です。施設の立地や居室の広さ、キッチン・浴室といった居室備え付けの設備の有無などによって異なります。
食費
介護型や、オプションで食事提供サービスを行っている一般型では、月額利用料に食費も含まれます。食費は、食材費や厨房維持管理費などをもとに設定します。食事提供を外部の事業者に委託している場合は、委託にかかる費用も含まれます。月ごとに定額で請求する施設や、日ごとに食費を算出して請求する施設など様々です。
管理費
管理費には、水道光熱費や施設の維持・メンテナンス費用、事務にかかる費用などが含まれます。
サービス費
サービス費には、生活支援サービスやレクリエーションやイベント・サークル活動の費用などが該当します。一般型の場合オプションとして提供されていることが多く、サービスを利用しなければ費用はかかりません。
サービス付き高齢者向け住宅の費用相場
サービス付き高齢者向け住宅にかかる費用相場は、以下の通りです。
入居時費用 | 月額利用料 | |
---|---|---|
一般型 | 0〜数十万円 | 5〜25万円 |
介護型 | 数十万円~数千万円 | 15〜40万円 |
費用相場は、一般型と介護型で異なります。一般型の場合、入居時費用が敷金として数十万円ほどかかる場合が多いです。中には敷金0円で入居時費用がかからないところもあります。月額利用料は、周辺の通常の賃貸物件の費用相場に準じて設定されていることが多いです。
介護型は、スタッフが介護サービスを提供することもあり、一般型より多くの費用がかかることが多いです。施設により、入居一時金として数年分の家賃を前払いすることで、月額利用料の負担を軽減できるところもあります。
サービス付き高齢者向け住宅の契約方式
高齢者向け施設の契約方式には、以下の2つがあります。
建物賃貸借方式・終身建物賃貸借方式
利用権方式
一般型のサービス付き高齢者向け住宅の契約方式には建物賃貸借方式が多く、介護型には利用権方式が多いです。以下では、それぞれの契約方式について解説します。
一般型に多い建物賃貸借方式
建物賃貸借方式は、借地借家法という法律で整備されており、居住部分とサービスが別々になった契約形態のことです。月額費用を払うことで、入居者が亡くなっても居住権が継続します。終身建物賃貸借方式は、建物賃貸借方式のうち入居者が亡くなった時点で契約が終了する契約方式のことです。
建物賃貸借方式や終身建物賃貸借方式は、月額費用を払うことで居住権が継続するため、想定入居期間に基づく入居一時金の前払いが不要という特徴があります。
介護型に多い利用権方式
利用権方式とは、居室や共用スペースなどの居住部分を利用するための料金と、サービスを利用するための料金が一体となった契約形態のことで、入居者が亡くなるまで居住部分とサービスを利用できる権利を保持できる契約方式です。入居者が亡くなった時点で契約が終了します。
入居一時金の返還制度とは
入居一時金は「想定入居期間分の家賃の前払い」という位置付けです。そのため、想定入居期間より前に退去した場合、残りの金額が返還される仕組みになっています。
一般型のサービス付き高齢者向け住宅では、初期費用として敷金のみが必要とされ、入居一時金が不要な場合が多いです。一方、介護型では入居一時金の支払いが必要になることがあります。
以下では、返還制度を理解するために押さえておきたい用語を説明します。
初期償却
初期償却は、入居一時金から差し引かれる、退去時に返還されない費用のことです。入居と同時に償却されるため、「初期償却」と言われます。そのため、返還される額を計算する際は、まずは入居一時金から初期償却分を引く必要があります。
初期償却は、入居金の10〜30%と定めているところが多いです。なお、90日以内に解約した場合は、クーリングオフ制度により初期償却分も返還対象となります。一方で、91日以降は初期償却分は返還されないので注意しましょう。
償却期間
償却期間とは、入居一時金が月額利用料として割り当てられる期間のことで、想定入居期間をもとに定められていることが多いです。償却期間の前に退去する場合は、残りの金額が返還されますが、償却期間を過ぎても入居を継続する場合、返還金はありません。償却期間も施設によって様々なので、入居契約書や重要事項説明などを確認しましょう。
サービス付き高齢者向け住宅に入居するメリット
サービス付き高齢者向け住宅に入居するメリットは以下のとおりです。
老人ホームに比べて初期費用が安いことが多い
サービス付き高齢者向け住宅は、老人ホームに比べて初期費用負担が少ない場合が多いです。以下は、民間施設の老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅(一般型)の初期費用を比較した表です。
介護付き有料老人ホーム | 0〜数億円 |
住宅型有料老人ホーム | 0〜数億円 |
健康型有料老人ホーム | 0〜数百万円 |
サービス付き高齢者向け住宅(一般型) | 0〜数十万円 |
一般型のサービス付き高齢者向け住宅は、通常の賃貸と同じような契約形態・費用相場となっています。そのため、初期費用が安い場合が多いという特徴があります。
自由度が高い
サービス付き高齢者向け住宅は、介護施設ではなく住宅として扱われるため、一般的な老人ホームのように1日のスケジュールが決められていない施設が多いです。そのため、自由に外出・外泊ができるなど、自由度の高い生活を送ることができます。定期的な見守りを受けながら、自分のペースで自立した生活を送りたい方に向いています。
入居難易度が低い
サービス付き高齢者向け住宅は、ニーズの高まりから急速に物件数が増えています。入居待ちが多い「特別養護老人ホーム」などと異なり、供給量が多いため比較的簡単に入居できます。また、多くのサービス付き高齢者向け住宅は、入居要件を60歳以上の自立した高齢者、または軽度の要介護・要支援者としているため対象が幅広く、入居のハードルが低いと言えます。
シニア向け分譲マンションとの違い
「シニア向け分譲マンション」とは、高齢者の方が暮らしやすい設計・設備・サービスを兼ね備えた分譲マンションのことです。バリアフリー構造だけでなく、設備・サービスが非常に充実しているという特徴があります。家事援助などの生活支援サービスや、温泉やプール・シアタールームなど、趣味や娯楽を満喫できる設備が完備されている物件が多く、主に富裕層の方を対象にしています。
シニア向け分譲マンションは、購入すると一般のマンションと同じように所有権を持つことができます。「所有権方式」で契約できるのが特徴で、資産として保有することができ、売却や相続などを行うことができるメリットがあります。
一方、サービス付き高齢者向け住宅は「建物賃貸借方式」で契約することが一般的です。そのため、サービス付き高齢者向け住宅とシニア向け分譲マンションは、契約形態に違いがあります。
さらに、サービス付き高齢者向け住宅には設備基準があり、届出が義務付けられています。一方、シニア向け分譲マンションには設備基準がなく、届出の義務もないため、シニア向け分譲マンションは物件によって設備の特徴が様々です。
まとめ
今回は、サービス付き高齢者向け住宅の費用相場と内訳、契約方式や入居するメリットなどを紹介しました。サービス付き高齢者向け住宅は、安否確認や生活相談サービスを受けながら、自立した自由な生活を送ることができる住宅です。また、介護サービスを提供する介護型もあり、要介護の方でも安心して入居できます。
施設を選ぶ際は、有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅のどちらが良いか、サービスや費用を比較検討することが大切です。また、入居者ご本人が快適に生活し続けるためには、無理なく支払える範囲で設備やサービスが充実しているところを選ぶことも大切です。サービス付き高齢者向け住宅の入居を検討する際に、ぜひこの記事を参考にしていただけたら幸いです。
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有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。