住宅型有料老人ホームの費用は?相場や内訳・負担を抑える制度など

住宅型有料老人ホームを選ぶ際は、費用について理解することが大切です。入居にかかる費用はいくらか、どのような費用が発生するのかなど、わからないことも多いと思います。今回は、住宅型有料老人ホームにかかる費用について、費用の相場や内訳、支払い方式や費用負担を抑える方法などを紹介します。住宅型有料老人ホームへの入居を検討している方は、ぜひご覧ください。

#住宅型#費用#条件#選び方
この記事の監修

すぎもと ゆりこ

杉本 悠里子

有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。

住宅型有料老人ホームとは

住宅型有料老人ホームとは、民間事業者によって運営されている、食事や洗濯などのサービスを提供する高齢者施設のことです。自立している方や要介護度が低い方を対象にしており、基本的に介護付き有料老人ホームのようにスタッフが介護サービスを提供することはありません。

外部のサービス提供事業所と契約をし、訪問で食事や洗濯・掃除といった身の回りのサポートや、見守りなどの生活支援を受けることができます。施設の種類が多いため、ご自身に合った施設を選びやすいという特徴があります。

住宅型有料老人ホームを利用するメリット

民間の有料老人ホームには、ほかにも「介護付き有料老人ホーム」と「健康型有料老人ホーム」があります。住宅型有料老人ホームを利用するメリットは以下のとおりです。

  • 要介護の方も入居できる

  • 必要な介護サービスを選択して利用できる

  • 身の回りに関するサービスやレクリエーション・イベントが充実している

特に、健康型有料老人ホームと違い要介護の方も入居できる点や、介護付き有料老人ホームを利用する場合と比べて必要な介護サービスだけを選択して利用できる点がメリットです。

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費用の内訳

住宅型有料老人ホームに必要な費用には、大きく分けて「入居時費用」と「月額利用料」の2種類があります。ここでは、それぞれの費用の説明と内訳を解説します。

入居時費用

入居時費用とは契約時にまとめて支払うもので、「入居一時金」(数年分の月額家賃の前払い額)、「敷金」などにあたります。入居一時金が必要ない施設もあり、その場合は月額利用料が高く設定されています。

月額利用料

月額利用料とは、居住費や食費などの生活費を合算して月々支払うものです。月額利用料には、以下のような費用が含まれます。

  1. 居住費

  2. 食費

  3. 管理費

  4. 日常生活費

  5. サービス費

  6. その他の費用

居住費

居住費は、通常の賃貸契約における家賃に該当します。施設の立地や居室の広さ、キッチン・浴室・クローゼットといった居室の設備によって異なり、10〜50万円以上と幅があるのが特徴です。

食費

食事提供を行う施設と、行わない施設があります。食事提供を行う場合、食材費や厨房維持管理費などをもとに食費を設定します。食事提供を外部の事業者に委託している場合は、委託にかかる費用も含まれます。月ごとに定額で請求する施設や、日ごとに食費を算出して請求する施設など様々です。また、外泊や入院などで欠食した際は、その分を差し引いた額が請求されることが多いです。

月額利用料の内訳を確認することで、食事提供の有無が分かります。

管理費

管理費には、水道光熱費や施設の維持・メンテナンス費用、事務にかかる費用などが含まれます。

日常生活費

入居者が個人で使用する、洗面グッズやティッシュペーパーなどの日用品にかかる費用です。

サービス費

サービス費には、施設が独自に行い入居者が任意で参加するレクリエーションやイベント・サークル活動にかかる費用などが該当します。

その他の費用

訪問診療や医療機関を受診した際などにかかる医療費や理美容代、外部の介護事業所と契約して介護サービスを受ける際に費用など、その他入居者個人の都合によってかかる費用もあります。

住宅型有料老人ホームの費用相場

住宅型有料老人ホームにかかる費用相場は以下の通りです。

入居時費用

月額利用料

0〜数百万円

15〜35万円

費用は、施設の立地や設備や、サービスなどによって異なります。また、費用の支払い方式には複数の種類があり、家賃を一括して入居時費用として支払うことで入居後の月額利用料を抑えるプランや、月額利用料が高く設定されている代わりに入居時費用がかからないところなどがあります。

費用の支払い方式について

住宅型有料老人ホームの費用は、入居一時金の支払いの有無に応じて3つの支払い方式があります。それぞれにメリット・デメリットがあるので理解しておきましょう。

  • 前払金プラン(全額前払い方式)

  • 前払金プラン(一部前払い方式)

  • 0円プラン(月額払い方式)

前払金プラン(全額前払い方式)

想定入居期間分にかかる家賃の全額を、一括して前払いする方式です。初期負担は掛かりますが、その後の金銭的負担が少なく、資金計画が立てやすいというメリットがあります。また、想定期間分より長く生活した場合、追加で家賃が発生することはありません。そのため、長く生活するほど、一部前払い方式や月払い方式と比べて総支払額を抑えることができます。

しかし、入居期間中に何らかの理由で月額利用料が値下がりした場合、その差額は返還されないというデメリットもあります。また、クーリングオフ期間を過ぎると、早く退去しても初期償却分は返還されないので注意が必要です。

前払金プラン(一部前払い方式)

入居一時金として、一部家賃を前払いし、残額を月額利用料として支払う形式です。全額前払い方式に比べると、初期負担は低くなります。また、毎月の支払額が高くなる月払い方式と比べると、入居金を一部支払っているため、月々の負担は少なくなります。

0円プラン(月額払い方式)

入居一時金がなく、月額利用料として毎月支払う形式です。初期費用がないため、入居時の金銭的負担が低いのがメリットです。しかし、月額利用料は前払金プランより高いため、想定入居期間より長く入居する場合、総支払額が多くなる方式と言えます。

入居一時金の返還制度とは

入居一時金は「想定入居期間分の家賃の前払い」という位置付けです。そのため、想定入居期間より前に退去した場合、残りの金額が返還される仕組みになっています。以下では、返還制度を理解するために押さえておきたい用語を説明します。

初期償却

初期償却は、入居一時金から差し引かれる、退去時に返還されない費用のことです。入居と同時に償却されるため、「初期償却」と言われます。そのため、返還される額を計算する際は、まずは入居一時金から初期償却分を引く必要があります。

初期償却は、入居金の10〜30%と定めているところが多いです。なお、90日以内に解約した場合は、クーリングオフ制度により初期償却分も返還対象となります。一方で、91日以降は初期償却分は返還されないので注意しましょう。

償却期間

償却期間とは、入居一時金が月額利用料として割り当てられる期間のことで、想定入居期間をもとに定められていることが多いです。償却期間の前に退去する場合は、残りの金額が返還されますが、償却期間を過ぎても入居を継続する場合、返還金はありません。償却期間も施設によって様々なので、入居契約書や重要事項説明などを確認しましょう。

住宅型有料老人ホームの費用を安く抑える方法

住宅型有料老人ホームの費用負担をなるべく安く抑えたい場合は、以下の方法を検討してみてはいかがでしょうか。

施設の条件や特徴にこだわりすぎない

通常の賃貸と同様に、交通の便が悪いところや居室が狭いところ、築年数が経っている場合などは賃料が安くなります。立地や居室の広さなどの条件にこだわると、その分費用も高くなります。

もちろん、費用が安いからといって必ずしもよいとは限りません。老人ホームは「終のすみか」とも呼ばれ、入居者ご本人が快適に過ごせる施設を選ぶことが大切です。希望する条件や特徴と費用を勘案しながら、最適な老人ホームを探しましょう。

個室ではなく相部屋にする

老人ホームの居室タイプには個室と相部屋があり、相部屋の方が費用は安い傾向にあります。ただし、同室に入居者がいることに抵抗があったり、他の生活音が気になる方にはストレスになる場合もあります。長期の生活となることを考慮して選ぶことが大切です。

地価の安い地方で探す

老人ホームの月額利用料は都道府県により変動があります。地価の高い首都圏に比べ、地方の老人ホームであれば費用を抑えることができる場合もあります。自然が豊かな場所でゆったりと暮らしたい、あるいは入居したら外出する機会は少なくて良いと考えている方は、地方での入居を検討してもいいかもしれません。

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住宅型有料老人ホームの費用は医療費控除の対象になるのか?

医療費控除とは、一年間に支払った医療費が10万円(もしくは所得が200万円以下の方は所得の5%)を超えた時、確定申告をすることで税金の一部が戻ってくる制度です。

住宅型有料老人ホームの場合、居住費や管理費などは医療費控除の対象になりません。一方で、医療機関の診療代や診療のための交通費、薬代などは医療費控除の対象となります。

詳しくは、お住まいの各自治体に問い合わせてみてください。

入居中に費用が払えない場合は?

住宅型有料老人ホーム入居中に、何らかの都合で費用が払えなくなった場合、まずは配偶者やお子さんなどの身元引受人に請求されます。身元引受人も支払えない場合は、定められた猶予期間の後に退去となります。そのため、費用が払えないからといってすぐに退去になるわけではなく、猶予期間も3〜6ヶ月と比較的余裕がある場合が多いです。猶予期間は施設によって異なり、契約書や重要事項説明書に記載されているため、入居時に必ず確認してください。

また、このようなことを防ぐためには、事前に入念な資金計画を立てることが大切です。資金計画については以下の記事をご覧ください。

要介護の方も住宅型有料老人ホームに入居できる

住宅型有料老人ホームは、要介護認定を受けている方も入居できます。ただし、施設が直接介護サービスを提供するわけではないため、外部の介護事業所(居宅介護支援事業所)と契約する必要があります。外部の事業所と契約することで、訪問介護サービスや訪問リハビリテーション、通所介護サービス(デイサービス)や通所リハビリテーション(デイケア)などのサービスを受けることができます。介護サービスを利用する際は、ケアマネージャーにケアプランを作成してもらいましょう。

また、住宅型有料老人ホームの中には、居宅介護支援事業所を併設しており介護サービスが受けやすい施設もあります。介護が必要になった場合を見越して施設を選ぶ際は、こうした施設を選ぶのも1つの方法です。

ただし、要介護度が上がったり、体調が悪化して医療ケアが必要になったりした場合は、退去となる可能性もあります。事前に契約書や重要事項説明書を確認することが重要です。

生活保護を受けている場合も住宅型有料老人ホームに入居できる

生活保護を受けている方は、担当ケースワーカーに相談のうえ、住宅型有料老人ホームに入居することができます。居住費は住宅扶助として定められた上限限度額内、生活費は生活扶助として必要な金額が支給されます。月額利用料が生活保護受給額とご本人の収入(年金など)でまかなえる老人ホームであっても、生活保護の方を入居対象としていない施設もあるため、担当ケースワーカーを通して確認しましょう。

まとめ

今回は、住宅型有料老人ホームの費用相場と内訳、支払い方式や費用負担を抑える制度などを紹介しました。住宅型有料老人ホームは、自立している方から介護度が軽度の方まで幅広く利用でき、施設の選択肢が多いという特徴があります。費用も施設によって様々です。

資金計画に合った施設を選び、無理なく納得して費用を支払うためには、まずは入居にかかる費用の相場と内訳を知ることが大切です。また、入居者ご本人が快適に生活し続けるためには、無理なく支払える範囲で設備やサービスが充実しているところを選ぶことも大切です。介護付き有料老人ホームを選ぶ際に、ぜひこの記事を参考にしていただけたら幸いです。

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