特別養護老人ホームにかかる費用は?相場や内訳・費用を抑える方法を解説

特別養護老人ホームを選ぶ際に、重要なポイントの1つが「費用」です。入居にあたっていくらかかるのか、費用を抑える方法はないかなど、わからないことも多いと思います。今回は、特別養護老人ホームにかかる費用について、費用の相場や内訳、費用負担を抑える制度などを紹介します。また、特別養護老人ホームの入居要件や提供サービス・施設に入れない場合の対処法についても解説します。特別養護老人ホームへの入居を検討している方は、ぜひご覧ください。


#特養#費用#お金#施設入居
この記事の監修

すぎもと ゆりこ

杉本 悠里子

有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。

特別養護老人ホームとは

「特別養護老人ホーム」は、「特養」とも呼ばれ、自治体や社会福祉法人が運営する公的施設です介護保険制度における「介護老人福祉施設」に該当し、介護保険が適用されます。

公的施設なので入居にあたって初期費用がかからず、月額費用も民間の有料老人ホームに比べると安いのが特徴です。費用が安い分、人気が高く入居待ちの方も多いため、入居までに半年〜数年かかる場合もあります。

特別養護老人ホームの3つのタイプ

特別養護老人ホームには、以下の3つのタイプがあります。

  • 広域型

  • 地域密着型

  • 地域サポート型

広域型は、どの地域からでも申し込める特別養護老人ホームのことです。お住まいの市区町村の特別養護老人ホームが満床の場合は、他の地域で空きがある広域型の特別養護老人ホームを申し込むことができます。

一方、地域密着型は、原則施設と同じ市区町村に住民票がある方を対象にした施設です。定員29名以下で小規模という特徴があります。また、地域サポート型は、自宅で介護を受けている高齢者を対象にした施設です。24時間の見守りサービスを提供し、地域の高齢者の生活を支えます。

特別養護老人ホームの入居条件

特別養護老人ホームの入居対象者は、原則として要介護3以上の認定を受けている65歳以上の方です。ただし、40〜64歳の方でも、特定疾病を患っており要介護3以上の認定を受けている場合は、入居対象となります。また、要介護1〜2の方でも、条件や事情を勘案して特例で入居できる場合もあります。

特別養護老人ホームで提供されるサービス

特別養護老人ホームでは、以下のようなサービスが提供されます。

  • 食事介助

  • 入浴介助

  • 排せつ介助

  • リハビリ

  • 生活支援

  • レクリエーション・イベント

  • 健康管理・緊急対応

  • 看取り

特別養護老人ホームでは、24時間介護サービスを受けることができます。また、看取りに対応しているため、終身にわたって利用できる点も安心です。

一方、看護師の24時間配置は義務づけられていないため、看護師が不在の時間帯は医療ケアを受けられない点に注意が必要です。また、中には医療サービス自体を提供できない施設もあります。そのため、施設選びの際に必ず確認しましょう。

特別養護老人ホームと養護老人ホームの違い

「養護老人ホーム」は、特別養護老人ホームと同じく公的施設です。介護サービスをメインで提供する特別養護老人ホームと違い、養護老人ホームは、自宅で生活することが難しい高齢者の生活・自立支援を中心に行っています。そのため、介護を主たる目的としておらず、自立した生活を送れる高齢者が入居対象となります。

特別養護老人ホームの費用相場

特別養護老人ホームにかかる費用相場は、以下の通りです。

初期費用
月額利用料

0円

5〜15万円

特別養護老人ホームは、公的機関が運営する公的施設のため、国からの助成があります。そのため、民間施設である介護付き有料老人ホームに比べると、費用負担を抑えて利用できます。

特に、敷金や入居一時金といった初期費用がかからないため、入居時にまとまったお金が必要ないのが特徴です。そのため、人気度が高く入居待ちの方が多い施設でもあります。

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特別養護老人ホームにかかる月額利用料の内訳

月額利用料とは、施設サービス費や居住費・食費などを合算して月々支払うものです。納得して費用を支払うためには、月額利用料の内訳を理解する必要があります。特別養護老人ホームにかかる月額利用料は、大きく以下の5つに分けられます。

  • 介護サービス費

  • 居住費

  • 食費

  • 日常生活費

  • 介護保険対象外のサービス費

介護サービス費

介護サービス費は、介護サービスを提供する施設で発生するものです。介護サービスに対して発生する基本料である「施設介護サービス費」と、サービス内容や人員配置に応じて追加で発生する「サービス加算」があり、どちらも介護保険が適用されます。介護保険における自己負担額は基本的には1割ですが、所得に応じて2割、3割と変わってきます。必ずご自身の自己負担割合を確認しましょう。

施設介護サービス費は、要介護度や居室のタイプによって異なります。また、基準を超えた人員配置や手厚いサービスを提供している場合、「サービス加算」が発生します。特別養護老人ホームにおけるサービス加算には、以下のような種類があります。

  • 個別機能訓練加算:理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を1名以上配置し、個別機能訓練計画に基づいて、入居者それぞれに適したリハビリを行う場合に算定

  • 夜勤職員配置加算:夜間・深夜に、痰の吸引といった認定特定行為が行える介護職員を配置した場合に算定

  • 看取り介護加算:看取り体制の整備や看取りに向けた手厚い介護サービスを実施している場合に算定

居住費

居住費は、通常の賃貸契約における家賃に該当する費用です。施設の立地や居室の広さ・タイプ、キッチン・浴室といった設備の有無などによって異なります。

特別養護老人ホームの居室には、以下の4つのタイプがあります。

  • ユニット型個室:10人程度のユニットを形成し、ユニットごとに共用スペース(リビング)が設置されているタイプ。共用スペースを囲うように個室が設置されている。

  • ユニット型準個室:ユニット型個室と異なり、部屋同士が壁ではなくパーテーションで仕切られており、完全な個室になっていないタイプ。

  • 従来型個室:一般的な個室

  • 多床室:一般的な相部屋

食費

介護保険の対象となる介護保険施設における食費は、1日3食分がかかります。例えば、外泊で夕食を欠食した場合でも、3食分が請求されます。ただし、入院や長期の外泊などで数日間施設を離れる場合は、食事をストップさせることで請求されないことがほとんどです。

日常生活費

入居者ご本人が個人で使用する洗面用具やティッシュペーパーなどの日用品にかかる費用です。

介護保険対象外のサービス費

介護保険対象外のサービス費には、施設が独自に行い入居者が任意で参加するレクリエーションやイベント・サークル活動にかかる費用、理美容代などが該当します。

特別養護老人ホームの費用負担を抑える制度

特別養護老人ホームの費用負担を抑える制度には、以下のようなものがあります。

  • 高額介護サービス費

  • 高額医療・高額介護合算療養費制度

  • 負担限度額認定

  • 利用者負担軽減制度

制度を利用する際は、市区町村の窓口に申請が必要です。ここでは、上記の4つの制度について解説します。なお、多くの制度で利用要件となっている住民税の課税状況については、毎年6月頃に届く介護保険料決定通知書で確認できます。

高額介護サービス費

高額介護サービス費制度とは、介護保険の自己負担額が上限限度額を超えた際、市区町村に申請することで超過分が「高額介護サービス費」として返還される制度のことです。

対象区分と上限限度額は以下のとおりです。

区分
負担の上限額(月額)

課税所得690万円(年収約1,160万円)以上

140,100円(世帯)

課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円)未満

93,000(世帯)

市町村民税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満

44,400円(世帯)

世帯の全員が市町村民税非課税

24,600円(世帯)

世帯の全員が市町村民税非課税の世帯のうち、前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下の方等

24,600円(世帯)

15,000円(個人)

生活保護を受給している方等

15,000円(世帯)

出典:厚生労働省「令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」

高額医療・高額介護合算療養費制度

高額医療・高額介護合算療養費制度とは、1年間で支払った医療保険と介護保険の合計額が自己負担限度額を上回った場合に、超過分が払い戻される制度のことです。限度額は年額56万円を基本とし、課税所得や年齢などに応じて以下のように設定されています。

所得区分
課税所得
負担限度額
(70歳以上)
負担限度額
(70歳未満)

現役並み所得者Ⅲ

690万円以上

212万円

現役並み所得者Ⅱ

380万円以上

141万円

現役並み所得者Ⅰ

145万円以上

67万円

一般

145万円未満

56万円

60万円

低所得Ⅱ

市町村民税世帯非課税

31万円

34万円

低所得Ⅰ

市町村民税世帯非課税

(所得が一定以下)

19万円

出典:厚生労働省 高額介護介護合算療養費

負担限度額認定

負担限度額認定とは、特別養護老人ホームのような介護保険施設に入居している方や、ショートステイを利用している方のうち、一定の要件を満たした所得の低い方を対象にした制度です。所得水準によって、居住費と食費に自己負担上限額が定められており、上限額を超えた分が介護保険から支給されます。特別養護老人ホームにおける負担限度額(1日につき)は、以下のとおりです。

利用者負担段階
居住費
食費

従来型個室

多床室

ユニット型個室

ユニット型準個室


第1段階

490円

0円

820円

490円

300円

第2段階

490円

370円

820円

490円

390円

第3段階①

1,310円

370円

1,310円

1,310円

650円

第3段階②

1,310円

370円

1,310円

1,310円

1,360円

第4段階

限度額なし(対象外)

出典:江東区「負担限度額認定(施設を利用した場合の居住費・食費の減額)」

また、各段階に該当する対象者は以下のとおりです。

利用者負担段階
対象者

第1段階

生活保護受給者の方・老齢福祉年金受給者で世帯全員が住民税非課税の方で、かつ本人の預貯金等が1,000万円以下

(配偶者がいる場合は夫婦あわせて2,000万円以下)の方

第2段階

世帯員全員及び配偶者が住民税非課税で、本人の合計所得金額と課税年金収入額と非課税年金収入額の合計が80万円以下の方で、かつ本人の預貯金等が650万円以下(配偶者がいる場合は夫婦あわせて1,650万円以下)の方

第3段階①

世帯員全員及び配偶者が住民税非課税で、本人の合計所得金額と課税年金収入額と非課税年金収入額の合計が80万円超120万円以下の方で、かつ本人の預貯金等が550万円以下

(配偶者がいる場合は夫婦あわせて1,550万円以下)の方

第3段階②

世帯員全員及び配偶者が住民税非課税で、本人の合計所得金額と課税年金収入額と非課税年金収入額の合計が120万円を超える方で、かつ本人の預貯金等が500万円以下(配偶者がいる場合は夫婦あわせて1,500万円以下)の方

第4段階(対象外)

本人が住民税課税となっている方

または配偶者が住民税課税となっている方

または本人が属する世帯の中に住民税課税者がいる方

または本人の預貯金等が一定額を超える方

出典:江東区「負担限度額認定(施設を利用した場合の居住費・食費の減額)」

段階ごとに細かな対象要件が定められており、さらに居室のタイプによって居住費の限度額も異なります。利用の際は、条件に該当しているか、市区町村の窓口で確認してください。

利用者負担軽減制度

利用者負担軽減制度とは、一定の収入要件を満たした所得が低い方に対し、訪問介護や特別養護老人ホームなどの利用にかかる負担額が軽減される制度です。特別養護老人ホームの場合は、介護保険サービス費自己負担額・食費・居住費が対象となり、4分の1または2分の1が軽減されます。

収入要件は以下のとおりで、全ての要件を満たしており、かつ市区町村に認められる必要があります。

  • 住民税が非課税であること

  • 年間収入が150万円以下であること(単身世帯の場合。世帯員が1人増えるごとに50万円を加算)

  • 預貯金の額が350万円以下であること(単身世帯の場合。世帯員が1人増えるごとに100万円を加算)

  • 日常生活に供する資産以外に活用できる資産がないこと

  • 負担能力のある親族等から扶養・援助を受けていないこと

  • 介護保険料を滞納していないこと

出典:東京都「生計困難者等に対する負担軽減事業」

特別養護老人ホームに入れない場合はどうすれば良い?

前述のとおり、特別養護老人ホームは費用が安いため人気が高く、入居待ちになることも多いです。待機者数は全国に30万人ほどいると言われており、入居まで数年かかる場合もあります。

お住まいの市区町村の特別養護老人ホームが満員の場合は、別の市区町村にある広域型の特別養護老人ホームを探す、という方法もあります。どの施設も満員で、特別養護老人ホームへの入居が難しいという場合は、代替策として以下の3つの方法が考えられます。

  • 民間の介護付き有料老人ホームに入居する

  • 在宅で介護サービスを受ける

  • 短期⽣活⼊所介護(ショートステイ)を利用する

介護付き有料老人ホームは、特別養護老人ホームと同じように介護サービスを受けることができる施設です。施設の選択肢も多く、特別養護老人ホームに比べると入居しやすいというメリットがあります。しかし、民間運営なので費用が比較的高く、相場は以下のとおりです。

入居時費用
月額利用料

0〜数億円

15〜35万円

施設により差がありますが、入居時にまとまった金額が必要になる場合や、アクセスが良い、または設備が充実していることから月額利用料が高くなる場合もあります。

そのほかには、自宅で暮らしながら在宅介護サービスを受ける、という選択肢も考えられます。また、短期⽣活⼊所介護(ショートステイ)を利用することで、施設に短期入居しながら、介護やリハビリなどのサービスを受けることができます。特にショートステイは、施設での生活に慣れるための練習にもなります。

まとめ

今回は、特別養護老人ホームの費用について、費用相場や内訳・費用負担を抑える減額制度について解説しました。また、入居要件や提供サービス、入居できない際の代替策についても紹介しました。

公的施設として比較的安く利用できる特別養護老人ホームは、手厚い介護サービスを受けることができ、終身にわたって利用できます。一方、人気が高く入居待ちの方が多いことも現状です。そのため、特別養護老人ホームの利用を検討している方は、早いうちから施設選びを始める必要があります。また、費用負担を抑える減額制度もあります。利用要件に該当する場合は、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

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