特別養護老人ホームの費用相場は?自己負担額や費用内訳を紹介

介護施設にはさまざまな種類がありますが、中でも「特別養護老人ホーム」は月額利用料が安いことで知られています。しかし費用が安いといっても、どのくらいの自己負担が生じるのかや、どのような費用内訳なのか、気になるという方も多いでしょう。

そこでこの記事では、特別養護老人ホームの費用相場について詳しく紹介します。特別養護老人ホームにかかる費用を抑える制度や、特別養護老人ホームに入れない場合の対処法についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

特別養護老人ホームの費用相場は?自己負担額や費用内訳を紹介
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特別養護老人ホームは初期費用がかからない

「特別養護老人ホーム」は、「特養」とも呼ばれ、自治体や社会福祉法人が運営する公的施設です。介護保険制度における「介護老人福祉施設」に該当し、介護保険が適用されます。

公的施設なので入居にあたって初期費用がかからず、月額費用も民間の有料老人ホームに比べると安いのが特徴です。費用が安い分、人気が高く入居待ちの方も多いため、入居までに半年〜数年かかる場合もあります。

 

特別養護老人ホームの費用相場

特別養護老人ホームにかかる費用相場は、以下の通りです。

初期費用

月額利用料

0円

4.9~15.0万円

 

特別養護老人ホームは、公的機関が運営する公的施設のため、国からの助成があります。そのため、民間施設である介護付き有料老人ホーム等と比べると、費用負担を抑えて利用できます。

前述した通り、敷金や入居一時金といった初期費用がかからないため、入居時にまとまったお金が必要ないのが特徴です。そのため、人気度が高く入居待ちの方が多い施設でもあります。


特別養護老人ホームの月額利用料の内訳

月額利用料とは、施設サービス費や居住費・食費などを合算して月々支払うものです。納得して費用を支払うためには、月額利用料の内訳を理解する必要があります。特別養護老人ホームにかかる月額利用料は、大きく以下の5つに分けられます。

●     介護サービス費

●     居住費

●     食費

●     日常生活費

●     介護保険対象外のサービス費


介護サービス費

介護サービス費は、介護サービスを提供する施設で発生するものです。介護サービスに対して発生する基本料である「施設介護サービス費」と、サービス内容や人員配置に応じて追加で発生する「サービス加算」があり、どちらも介護保険が適用されます。介護保険における自己負担額は基本的には1割ですが、所得に応じて2割、3割と変わってきます。必ずご自身の自己負担割合を確認しましょう。

施設介護サービス費は、要介護度や居室のタイプによって異なります。また、基準を超えた人員配置や手厚いサービスを提供している場合、「サービス加算」が発生します。特別養護老人ホームにおけるサービス加算には、以下のような種類があります。

個別機能訓練加算

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を1名以上配置し、個別機能訓練計画に基づいて、入居者それぞれに適したリハビリを行う場合に算定

夜勤職員配置加算

夜間・深夜に、痰の吸引といった認定特定行為が行える介護職員を配置した場合に算定

看取り介護加算

看取り体制の整備や看取りに向けた手厚い介護サービスを実施している場合に算定

居住費

居住費は、通常の賃貸契約における家賃に該当する費用です。施設の立地や居室の広さ・タイプ、キッチン・浴室といった設備の有無などによって異なります。

特別養護老人ホームの居室には、以下の4つのタイプがあります。

特養の入居条件は要介護3以上のため、要介護3以上の自己負担額の費用目安を紹介します。

ユニット型個室

10人程度のユニットを形成し、ユニットごとに共用スペース(リビング)が設置されているタイプです。共用スペースを囲うように個室が設置されています。

要介護度

居住費
食費

介護サービス費

(1割)

合計

要介護3

6万1,980円
4万3,350円

2万4,450円

12万9,780円

要介護4

2万6,580円

13万1,910円

要介護5

2万8,650円

13万3,980円

参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)

ユニット型準個室

ユニット型個室とは、ユニット型個室と異なり、部屋同士が壁ではなくパーテーションで仕切られており、完全な個室になっていないタイプです。

2万4,450円2万4,450円

要介護度

居住費
食費

介護サービス費

(1割)

合計

要介護3

5万1,840円         
4万3,350円      

2万4,450円

11万9,640円

要介護4

2万6,580円

12万1,770円

要介護5

2万8,650円

12万3,840円

参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)

従来型個室

従来型個室とは、一般的な個室のことで1人1部屋になります。

2万1,960円        

要介護度

居住費
食費

介護サービス費

(1割)

合計

要介護3

3万6,930円    
4万3,350円      

2万1,960円                  

10万2240円        

要介護4

2万4,060円        

10万4,340円

要介護5

2万6,130円        

10万6,410円

参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)

多床室

多床室は、一般的な相部屋となります。

要介護度

居住費
食費

介護サービス費

(1割)

合計

要介護3

2万7,450円      
4万3,350円         

2万1,960円                  

9万2,760円             

要介護4

2万4,060円        

9万4,860円

要介護5

2万6,130円        

9万6,930円

参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)

食費

介護保険の対象となる介護保険施設における食費は、1日3食分がかかります。例えば、外泊で夕食を欠食した場合でも、3食分が請求されます。ただし、入院や長期の外泊などで数日間施設を離れる場合は、食事をストップさせることで請求されないことがほとんどです。なお、食費は約43,350円(1,445円/日)となります。

日常生活費

入居者ご本人が個人で使用する、洗面用具やティッシュペーパーなどの日用品にかかる費用です。

おむつ代などは、施設側の負担となります。

介護保険対象外のサービス費

介護保険対象外のサービス費には、施設が独自に行い入居者が任意で参加するレクリエーションやイベント・サークル活動にかかる費用、理美容代などが該当します。


特別養護老人ホームと他の介護施設を比較

さて、特別養護老人ホームの費用が他の介護施設と比べてどのくらい安いのか、一覧表で比較してみましょう。


種類
費用相場
入居金
月額利用料
公的
特別養護老人ホーム (特養)
0円
4.9~15.0万円
介護老人保健施設 (老健)
0円
6.7~16.2万円
介護医療院
0円
6.8~17.0万円
軽費老人ホーム (ケアハウス)
0~30.0万円
9.3~22.0万円
民間
介護付き有料老人ホーム
0~630万円
15.0~35.1万円
住宅型有料老人ホーム
0~46.0万円
13.4~31.5万円
健康型有料老人ホーム
0~1億円
10.0~40.0万円
サービス付き高齢者向け住宅 (サ高住)
0~22.1万円
11.3~23.9万円
グループホーム
0~15.4万円
12.4~19.7万円
シニア向け分譲マンション
2,300~4,350万円
10.0~29.2万円

民間施設である介護付き有料老人ホームなどと比べると、特別養護老人ホームの費用は半額程度であることが分かります。また、民間の介護施設へ入居する場合、数十万円〜数百万円の入居金がかかるケースも多いですが、先述したとおり特別養護老人ホームでは初期費用がかかりません。これは大きなメリットといえるでしょう。

また、特別養護老人ホームにかかる費用は、同じく公的施設である介護老人保健施設や介護医療院と比べても一段と低いことも分かります。介護老人保健施設はリハビリテーション、介護医療院は医療ケアも提供しているため、介護だけを提供する特別養護老人ホームよりも少しだけ高めの料金体系であるためです。介護だけを必要としている場合、特別養護老人ホームを選ぶのがもっとも費用負担が少ないことは知っておきましょう。


特別養護老人ホームの費用は年金で賄える?

特別養護老人ホームの月額利用料は4.9〜15.0万円程度であるため、入居者本人の年金収入で賄うことも十分可能です。もし年金収入が少ないとしても、住民税非課税世帯などを対象とした措置を活用すれば、入居者本人の年金収入で賄える金額に利用料が減免されます。このような減免措置は公的施設ならではであるため、年金収入が少ない方こそ、特別養護老人ホームに入居するといいでしょう。


特別養護老人ホームの費用を抑える制度

特別養護老人ホームの費用負担を抑える制度があります。

制度を利用する際は、市区町村の窓口に申請が必要です。ここでは、4つの制度について解説します。多くの制度で利用要件となっている住民税の課税状況については、毎年6月頃に届く介護保険料決定通知書で確認できます。


高額介護サービス費

高額介護サービス費制度とは、介護保険の自己負担額が上限限度額を超えた際、市区町村に申請することで超過分が「高額介護サービス費」として返還される制度のことです。

対象区分と上限限度額は以下のとおりです。

区分

負担の上限額(月額)

課税所得690万円(年収約1,160万円)以上

140,100円(世帯)

課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円)未満

93,000(世帯)

市町村民税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満

44,400円(世帯)

世帯の全員が市町村民税非課税

24,600円(世帯)

世帯の全員が市町村民税非課税の世帯のうち、前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下の方等

24,600円(世帯)

15,000円(個人)

生活保護を受給している方等

15,000円(世帯)

出典:厚生労働省「令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」

高額医療・高額介護合算療養費制度

高額医療・高額介護合算療養費制度とは、1年間で支払った医療保険と介護保険の合計額が自己負担限度額を上回った場合に、超過分が払い戻される制度のことです。限度額は年額56万円を基本とし、課税所得や年齢などに応じて以下のように設定されています。

所得区分
課税所得
負担限度額
(70歳以上)
負担限度額
(70歳未満)
現役並み所得者Ⅲ
690万円以上
212万円
現役並み所得者Ⅱ
380万円以上
141万円
現役並み所得者Ⅰ
145万円以上
67.0万円
一般
145万円未満
56.0万円
60.0万円
低所得Ⅱ
市町村民税世帯非課税
31.0万円
34.0万円
低所得Ⅰ
市町村民税世帯非課税 (所得が一定以下)
19.0万円

出典:厚生労働省 高額介護介護合算療養費

負担限度額認定

介護保険施設の月額費用のうち、「介護にかかる費用」は保険給付の対象であるため1割~3割の自己負担とされていますが、「食費・居住費」は保険給付の対象外であるため全額自己負担しなければなりません。
この全額自己負担となる費用を軽減できるのが、特定入所者介護サービス費制度(通称:負担限度額認定制度)です。世帯全員が住民税非課税かつ下記の預貯金額基準を満たしている場合、負担限度額を超えた部分に対しては介護保険から費用が支給されます。

負担段階
補足給付の主な対象者

預貯金額

(括弧内は夫婦の場合 )

第1段階
生活保護受給者
要件なし
世帯全員が市町村民税非課税である老齢福祉年金受給者

1,000万円以下

(2,000万円以下)

第2段階

年金収入金額+合計所得金額80万円以下

650万円以下

(1,650万円以下)

第3段階 ①

年金収入金額+合計所得金額が80万~120万円以下

550万円以下

 (1,550万円以下)

第3段階 ②

年金収入金額+合計所得金額が120万円超

500万円以下

(1,500万円以下)

参考:厚生労働省

たとえば第1段階の方が多床室を利用する場合、居住費は0円にまで軽減されます。

利用者負担軽減制度

利用者負担軽減制度とは、一定の収入要件を満たした所得が低い方に対し、訪問介護や特別養護老人ホームなどの利用にかかる負担額が軽減される制度です。特別養護老人ホームの場合は、介護保険サービス費自己負担額・食費・居住費が対象となり、4分の1または2分の1が軽減されます。

収入要件は以下のとおりで、全ての要件を満たしており、かつ市区町村に認められる必要があります。

●     住民税が非課税であること

●     年間収入が150万円以下であること(単身世帯の場合。世帯員が1人増えるごとに50万円を加算)

●     預貯金の額が350万円以下であること(単身世帯の場合。世帯員が1人増えるごとに100万円を加算)

●     日常生活に供する資産以外に活用できる資産がないこと

●     負担能力のある親族等から扶養・援助を受けていないこと

●     介護保険料を滞納していないこと


特別養護老人ホームに入れない場合はどうする?


特別養護老人ホームは費用が安いため人気が高く、入居待ちになることも多いです。待機者数は全国に30万人ほどいると言われており、入居まで数年かかる場合もあります。

 

お住まいの市区町村の特別養護老人ホームが満員の場合は、別の市区町村にある広域型の特別養護老人ホームを探す、という方法もあります。どの施設も満員で、特別養護老人ホームへの入居が難しいという場合は、代替策として以下の3つの方法が考えられます。

●     民間の老人ホームに入居する

●     在宅で介護サービスを受ける

●     短期⽣活⼊所介護(ショートステイ)を利用する

そのほかには、自宅で暮らしながら在宅介護サービスを受ける、という選択肢も考えられます。また、短期⽣活⼊所介護(ショートステイ)を利用することで、施設に短期入居しながら、介護やリハビリなどのサービスを受けることができます。特にショートステイは、施設での生活に慣れるための練習にもなります。


特別養護老人ホームに入れない場合におすすめの施設

特別養護老人ホームに空きがなくすぐに入居できないものの、在宅での介護やショートステイも難しい場合、民間施設へ入居して空きが出るのを待つといいでしょう。特別養護老人ホームに入れない場合に選択肢になりうる施設としては、次の3つが挙げられます。

●    介護付き有料老人ホーム

●    住宅型有料老人ホーム

●    サービス付き高齢者向け住宅

それぞれの施設の特徴について、詳しく見ていきましょう。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは、行政から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている有料老人ホームです。特別養護老人ホームと同じく、介護の必要性が高い方も受け入れています。有料老人ホームのうち約6割が介護付き有料老人ホームであるため、比較的入居先を見つけやすいことが特徴です。

なお、介護付き有料老人ホームは看取りにも対応しています。そのため特別養護老人ホームの空きが出るまでのつなぎとして入居するケースもありますが、介護付き有料老人ホームを終の棲家とすることも可能です。

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは、原則として自立〜介護の必要性が低い方を対象とした施設です。しかし居宅サービスの利用を前提に、介護の必要性が高い方を受け入れる住宅型有料老人ホームも増えています。そのため特別養護老人ホームに空きができるまで、訪問介護・通所介護サービスを受けながら住宅型有料老人ホームで暮らすことも可能です。
ただし、基本的に住宅型有料老人ホームには看護師などの医療従事者は在籍しておらず、看取りに対応できないことが多い、いずれは転居する必要があることは知っておきましょう。

住宅型有料老人ホームを探す

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者向けの賃貸住宅である「一般型」が広く知られていますが、実は特定施設入居者生活介護の指定を受けた「介護型」の施設も存在します。介護型のサービス付き高齢者向け住宅は、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームと同じく、施設として介護サービスを提供しており、看取りにも対応していることが特徴です。

そのため介護型に入居すれば、住宅型有料老人ホームのように将来退去する必要はありません。介護型のサービス付き高齢者向け住宅の数は多くありませんが、同じ施設で落ち着いて暮らしたいという場合には選択肢にしてみてください。

サービス付き高齢者向け住宅を探す


まとめ

特別養護老人ホームは初期費用もかからず、他の介護施設と比べて安価な月額利用料で入居できることが特徴です。そのため介護施設への入居を考えた場合、はじめに選択肢と考える人も多いでしょう。しかし費用負担が少ないため人気が高く、入居待ちが発生しているケースが非常に多いです。希望したからといってすぐに入居できるわけではないため、まずは介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホーム、介護型のサービス付き高齢者向け住宅に入居し、空きが出たら転居することも検討してみてください。

スマートシニアではエリアや費用などの条件ごとに、特別養護老人ホームはもちろん、介護付き有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅を検索できます。入居先を効率的に探したい方は、ぜひ活用してみてください。

 


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この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

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