介護付き有料老人ホームの費用相場を紹介!入居一時金や月々の料金も

「介護付き有料老人ホーム」は、身の回りの洗濯・掃除などのサポートや、充実した介護サービスが魅力の介護施設です。入居を検討するにあたり、「どれくらい費用がかかるのか」「その他の介護施設と費用の違いはあるのか」などの疑問を持つ方も多いことでしょう。

そこで今回は、介護付き有料老人ホームの費用相場を詳しく解説します。費用負担を軽減する方法なども紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

介護付き有料老人ホームの費用相場を紹介!入居一時金や月々の料金も
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介護付き有料老人ホームに入る場合の費用は?


初期費用

月額費用

0〜数百万円

約15.0〜35.0万円

 

介護付き有料老人ホームとは、自立から要介護の方までを受入れ対象としている老人ホームのことです。介護スタッフが24時間常駐しており、食事や入浴、排せつなどの介護サービスや、機能訓練、レクリエーションなどのサービスが受けられます。

介護付き有料老人ホームの入居にかかる費用は、入居するタイミングで支払う初期費用と、入居後に月々支払う月額費用の2つがかかります。それぞれの費用の相場は、以下のとおりです。

●     初期費用:0〜数百万円

●     月額費用:約15.0〜35.0万円

 

介護付き有料老人ホームの「初期費用」は、設備や介護サービスの充実度の違いや、施設の立地などによって変動します。また「月額費用」に関しても、サービス内容やスタッフの人員などによって幅があるため、上記の費用はあくまで参考の目安にしてください。初期費用や月額費用それぞれの内訳について、詳しく後述します。

 

なお、介護付き有料老人ホームの入居条件やサービスの内容に関する詳しい情報は、以下も参考にしてください。



介護付き有料老人ホームの費用の内訳

介護付き有料老人ホームの費用内訳について解説します。主な内訳は、入居一時金(初期費用)と月額費用です。

入居一時金(初期費用)

介護付き老人ホームの初期費用としてかかる「入居一時金」は、入居時に一定期間の家賃を前払いする費用です。施設によって「入居金」や「入居時費用」と呼ばれることもあります。

入居一時金は、想定される入居期間を「償却期間」と定め、償却期間中は入居一時金のなかから毎月の家賃に一定額ずつが充当される仕組みです。入居一時金が不要な施設もありますが、その場合は毎月の利用額が高く設定されていることがほとんどです。

また豪華な設備があったり医療体制が充実したりしている施設だと、入居一時金が数千万〜数億円と高額な費用がかかることもあります。

月額費用

介護付き老人ホームへの入居後は、居住費や食費のほか、施設介護サービス費などの費用が毎月発生します。月額費用としては、主に以下のような項目が発生します。

●     居住費

●     管理費

●     食費

●     施設介護サービス費

●     サービス加算

●     上乗せ介護費用

●     その他費用

それぞれの項目について解説します。

居住費

居住費は施設に住むための費用であり、いわゆる家賃に相当します。マンションなどの賃貸住宅と同様に、キッチンなどの設備や部屋の広さ、利便性などによって変動します。

管理費

管理費は、施設を管理・運営するために必要な費用です。共用設備のメンテナンスや事務費用に関するものが含まれます。一般的に水光熱費用も管理費に含まれますが、施設によっては別途請求するところもあります。

食費

食費は、施設で提供される食事に関する費用です。食材や調理、維持管理費などが含まれており、外部業者に委託している場合は、その費用も含まれます。1食あたりで費用が設定されていたり、月額で設定されていたりと、施設によって異なります。

施設介護サービス費

施設介護サービス費は、介護付き老人ホームでの食事や入浴、排せつなどの介助を行うための費用です。介護保険が適用され、要介護度や所得によって費用は異なります。基本的には1割の負担、所得によっては2〜3割を負担します。

サービス加算

介護付き老人ホームのサービス内容や設備、人員配置体制などが充実していて、手厚いケアやサービスが受けられる場合、「サービス加算」の支払いも必要です。具体的には「看護師などを配置して看護体制を整備する」「外部のリハビリ専門職と連携して生活機能向上を図る」などがその一例です。

対象となるサービス加算の項目は細かく法令で決められていますが、どのようなサービスがあるかは施設によって異なります。

サービス加算についても、自己負担額は基本的に1割、所得に応じて2〜3割を支払います。

上乗せ介護費用

施設によっては、「上乗せ介護費用」が発生することがあります。上乗せ介護費用はスタッフの人件費に値する費用であり、施設ごとに金額の設定は異なります。

介護付き有料老人ホームは国の法律により人員配置基準が定められており、介護が必要な入居者3名に対して、看護師あるいは介護職員を1名配置しなければなりません。この基準を超えて看護・介護職員を配置している施設では、介護体制が充実していることから「上乗せ介護費用」として入居者に請求してもよいとされています。

なお、上乗せ介護費用は、サービス加算とは別の費用です。

その他費用

そのほか生活に必要な日用品や消耗品代、通院や治療にかかった医療費、趣味・嗜好品などの費用が発生することが考えられます。施設によっては、イベントやサークルの活動費などが別途かかることもあります。自身の健康状態やライフスタイルを考慮して、「どのような費用が発生するか」「どれくらい費用がかかるか」をイメージしておくことが大切です。

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月額費用はホームによって差がある

介護付き有料老人ホームの月額費用の相場は、約15.0〜35.0万円とかなり差があります。食事や入浴、排せつなどの介護サービス、生活支援などを提供していますが、どの施設でも同じサービス内容、同じ価格設定というわけではありません。

近年、介護付き有料老人ホーム数は増え続けており、他施設との競争が激化している状況です。他施設との差別化を図るため、「入居しやすいように安価な価格帯を設定している」「手厚いサービスで満足度を上げている」など、施設によって売りとなるポイントは異なります。その結果、価格差が生まれるのです。

食事にこだわっている、病院への送迎がある、レクリエーションが充実しているなどのサービスが充実すればするほど、月額費用は高額になります。また都市部や駅から近く利便性の高い立地にある施設や、設備が充実していることも月額費用が上昇する要素です。

どのポイントを重視するかによって、入居後の月額費用は大きく左右されます。候補にあげた施設だとどれくらいの月額費用になるか、しっかりと計算して検討することが大切です。

入居一時金は返還制度について

介護付き有料老人ホームへ支払う入居一時金は「返還制度」があり、退去時に一部の費用が返金されることがあります。

すでに紹介したように入居一時金は、償却期間(想定される入居期間)が設定されていて、毎月一定額ずつが償却されます。償却期間内に退去した場合は、入居一時金を払い過ぎていることとなり、償却されなかった費用が返却されるという仕組みです。

償却期間は施設によって異なりますが、一般的に3〜10年、長いと15年前後としているところもあります。以下を例にして、入居一時金の返還金について見てみましょう。

 

【返還金の一例】

<計算式>

返還金は以下の計算式で求められます。

入居一時金 ÷ 償却月数 ×(償却月数 - 入居月数)= 返還金

 

<例>

●     入居一時金:600万円

●     償却期間(償却月数):10年(120か月)

●     入居期間(入居月数):7年(84か月)

 

上記の例をもとにした返還金は、以下のとおりです。

600万円 ÷ 120か月 ×(120か月 - 84か月)=  180万円

 

入居一時金600万円を10年(120か月)かけて償却することとなり、月額に換算すると償却額は5万円です。

しかし施設を7年(84か月)で退去した場合、残りの3年(36か月)分の償却額は未償却となり、180万円が返還されることになります。

つまり入居期間が償却期間よりも長いか短いかによって返還金の有無が決まり、その期間によって返還金額は異なります。

初期償却の有無について

入居一時金が償却される仕組みとして、以下の2つ方法があります。

●     初期償却

●     均等償却

「初期償却」は入居一時金のうち、入居の時点で一定の割合が償却されることをいいます。初期償却の割合は施設によって異なりますが、一般的に「15〜30%」程度で設定されることが多いです。

「均等償却」は、初期償却がなく、入居一時金を償却期間に応じてすべて均等に償却する方法です。

初期償却がある・ないは施設ごとに異なりますが、どのような差があるのでしょうか。

【初期償却がある場合の償却方法】

初期償却がある場合、定められた初期償却費が入居時に償却されます。そして差し引かれた残額が、償却期間で等分されて毎月償却されていく仕組みです。

結論からいうと、入居者側にとっては「初期償却の割合が低い方が有利」となります。初期償却がある場合、入居すると施設の売り上げとなり、すぐに退去しても返還されないお金だからです。

以上のことに注意しながら、初期償却費の計算方法や一例をみてみましょう。初期償却費は、施設が定める入居一時金と初期償却率から算出できます。

 

<初期償却費の計算式>

入居一時金 × 初期償却率 = 初期償却費

以下のような条件だった場合の、初期償却費を計算してみましょう。

<条件例>

●     入居一時金:300万円

●     初期償却率:20%

300万円 ×  20% =60万円

 

このケースの初期償却費は、60.0万円となります。入居一時金(300万円)から初期償却費(60.0万円)が差し引かれた残額(240万円)が、償却期間で等分されて毎月償却されます。

 

初期償却費がある場合の、返還金の計算方法も把握しておきましょう。

<返還金の計算式>

返還金 = 入居一時金 × (1 - 初期償却率)÷ 償却月数 ×(償却月数 - 入居月数)

以下の条件をもとに、償却期間までに退去した場合の返還金は以下のようになります。

<条件例>

●     入居一時金:300万円

●     初期償却率:20%

●     償却期間(償却月数):5年(60か月)

●     入居期間(入居月数):4年(48か月)

<返還金>

300万円 × (1 - 20%)÷ 60か月 ×(60か月 - 48か月) = 48万円(返還金)

 

初期償却や償却期間は施設が独自に設定しているため、必ず確認しておきたいポイントです。入居1年後、2年後の返還金をシミュレーションしてみるとよいでしょう。

【均等償却の場合の償却方法】

初期償却費がない場合は、入居一時金は償却期間で均等に償却されることとなり、これを「均等償却」といいます。

償却は、「月単位」の場合や「年単位」の場合があり、施設によって異なります。

●     月単位

月単位の場合は、入居一時金を入居想定月数で割った額が、毎月償却される仕組みです。

●     年単位

年単位の場合は、月単位と同じく入居一時金を入居想定月数で分割し、その1年分が契約月を起算に毎年償却される仕組みです。

 

介護付き有料老人ホームでは、基本的に初期償却の仕組みを設けている施設が多いですが、なかには初期償却のない場合もあります。病院への転院を余儀なくされたなどなんらかの事情が発生し、早く出ないといけないケースもあり得ます。その場合は、初期償却費が小さいほど返還金が大きくなり、入居者にとって有利となります。

 

 

介護付き有料老人ホームの入居一時金0円はお得?


介護付き有料老人ホームの初期費用としてかかる入居一時金ですが、「0円」のプランを用意している施設もあります。数百万、数千万と高額な費用を用意しなければならない施設がある一方で、入居一時金0円は、とても魅力に感じるのではないでしょうか。

しかし入居一時金0円、あるいは安く設定している場合、入居期間によってはトータルの費用が高くなる可能性がある点には注意が必要です。入居一時金を設定している施設のほとんどは、月々の家賃の前払いを目的に徴収しています。そのため、入居一時金0円や安く設定している施設だと、月額の利用料が高くなることが一般的だからです。

以下を例にして、支払い総額をシミュレーションしてみましょう。

【例】

●     入居一時金(200万円)・月額費用(20.0万円)

●     入居一時期なし(0円)・月額費用(25.0万円)

この条件で、20か月・40か月・60か月入居した場合の、支払い総額は以下のとおりです。

 

20か月

40か月

60か月

入居一時金

あり

600万円

=200+(20×20か月)

1,000万円

=200+(20×40か月)

1,400万円

=200+(20×60か月)

入居一時金

なし

400万円

=0+(25×20か月)

1,000万円

=0+(25×40か月)

1,500万円

=0+(25×60か月)

 

上記の例を見るとわかるように、20か月時点では入居一時金0円のほうがお得です。しかし、40か月時点で支払い総額は同額となり、60か月(5年)住み続けると入居一時金0円のほうが100万円高くなっています。

入居一時金0円の介護付き有料老人ホームは、初期費用の負担が軽くなるため「まとまった入居一時金を支払うことが負担になる場合」や「一時的な入居を検討している場合」には向いてます。しかし長期間入居する場合は、入居一時金があるほうがトータルの費用を抑えられることもあるため、じっくりと検討しましょう。

 

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介護サービスを利用した場合の自己負担額

介護付き有料老人ホームは、食事や入浴、排せつなどの介護サービスを受けられます。これらにかかる介護サービス費は、要介護度ごとに定められており毎月一定額です。そしてその金額すべてを支払う必要はなく、自己負担額は1割ですみます。

【介護サービス1か月あたり(30日)の自己負担額】

要介護度

介護保険単位数

介護保険報酬

自己負担額(1割)

要支援1

5,490単位

54,900円

5,490円

要支援2

9,390単位

93,900円

9,390円

要介護1

16,260単位

162,600円

16,260円

要介護2

18,270単位

182,700円

18,270円

要介護3

2370単位

203,700円

20,370円

要介護4

22,320単位

223,200円

22,320円

要介護5

24,390単位

243,900円

24,390円

参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造」

 

●     介護保険単位数

介護保険単位数は、要介護度ごとに定められているものです。

●     介護保険報酬

介護保険報酬は「1単位=10円」で計算していますが、掛け率は地域によって異なります。地域ごとに人件費などが変動するなどの理由から、その差を考慮して掛け率が決められています。都市部に近いほど掛け率があがり、自己負担額も増えることになります。

●     自己負担額

自己負担額は基本的に、介護保険報酬額の1割です。所得に応じて2割3割となる場合もあります。

施設によって必要な上乗せサービス費とは?

「上乗せサービス」とは、介護保険で定められた支給限度額以上のサービスを、自治体が負担して提供するサービスのことをいいます。介護保険報酬の限度額を超えて介護サービスを受けた場合、超過した分の費用は基本的に全額自己負担となります。そのため限度額を超過することのないように、ケアプランが作成されています。

しかし介護保険で定められた支給限度額は、自治体が独自の財源で引き上げが可能であり、引き上げを行うことを「上乗せ」といいます。上乗せサービスが可能な場合、介護サービスの時間や回数を増やすことができ、支給限度額を超えた分も1割(所得に応じて2割3割)の負担ですみます。

ただし、自治体の財源が必要となるため、上乗せサービスを実施しているところは実際のところ少ない状況です。上乗せサービスがあるかどうかについては、自治体のホームページなどを確認する必要があります。

横出しサービス費は介護保険対象外

「横出しサービス」とは、介護保険では対象外となるサービスを自治体が負担して提供するサービスのことをいいます。たとえば、おむつの配布や配食サービスなどが挙げられます。これらの横出しサービスの利用が可能であれば、入居者の実費負担を減らせます。

ただし横出しサービスも上乗せサービスと同じく、自治体が独自の財源で実施しているものです。提供している自治体は少ないため、横出しサービスの有無についても自治体のホームページなどを確認してください。

 

※「上乗せサービス」や「横出しサービス」の定義は上記のとおりです。しかしインターネットの情報などで、保険適用外である施設独自のオプションサービスのことを「横出しサービス」、人員配置基準以上の人員配置した人件費である「上乗せ介護費」のことを「上乗せサービス」などと説明しているケースもみられます。混在しないように十分に注意が必要です。


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介護付き有料老人ホームの支払い方式は3種類

介護付き有料老人ホーム費用の支払い方式は、以下の3種類があります。

●     前払い方式

●     月払い方式

●     併用方式

それぞれの支払い方式について解説します。

1.前払い方式

想定される入居期間の家賃を、入居時に「全額」支払うことを「前払い方式」といいます。家賃はすべて入居時に支払っているため、入居後の家賃支払いはありません。入居時のハードルはあがりますが、月々の負担は軽減されます。

2.月払い方式

一方「月払い方式」は、入居時に前払いをせず、毎月の家賃を月額費用として支払う方法です。月払い方式は、入居時にまとまった資金がなくても入居できる点がメリットですが、毎月の利用が増えてしまい入居を継続することが難しくなるという懸念も考えられます。

3.併用方式

併用方式は、想定される入居期間の家賃を入居時に「一部」だけ前払いし、残額の賃料を月々支払う方法です。「前払い方式」と「月払い方式」の要素が組み合わさっています。入居時にある程度まとまった資金が必要ですが、入居後の家賃は無理なく支払いやすいといえるでしょう。


一定期間であればクーリング・オフが適応される

クーリング・オフ制度(短期特例解約)とは、契約したあとも一定期間内であれば無条件で契約解除できる制度です。介護付き有料老人ホームでも適応され、クーリング・オフの適用期間は90日です。契約後や入居後であっても、入居から90日以内であれば契約解除の申し出が可能であり、入居一時金などが返金されます。


ただし入居一時金のすべてが戻ってくるわけではありません。施設に入居していた期間の家賃や食費、居室の原状回復などにかかった費用は差し引かれます。クーリング・オフ制度が適用される点は安心ですが、トラブルを避けるためにも契約内容はしっかりと確認しておきましょう。


介護付き有料老人ホームの費用の負担を軽減する方法


介護付き有料老人ホームの費用相場について紹介しましたが、費用の捻出が難しいと感じる場合は負担を軽減できる制度もあります。

高額介護サービス費制度

高額介護サービス費制度は、介護保険の自己負担額(1割〜3割)の月額が上限限度額を超えた場合、超過分が還付される制度です。毎月の上限額は、個人または世帯ごとの所得に応じて定められています。高額介護サービス費の区分とそれぞれの負担上限額は、以下をご覧ください。

【高額介護サービス費の負担額】

区分

負担の上限額(月額)

生活保護の受給者など

15,000円(個人)

世帯全員が市町村民税非課税かつ、

前年の公的年金等の収入金額+その他所得金額等の合計が80万円以下の方

15,000円(個人)

世帯全員が市町村民税非課税

24,600円(世帯)

課税所得380万円未満

44,000円(世帯)

課税所得380万円以上690万円未満

93,000円(世帯)

課税所得690万円以上

140,100円(世帯)

参考:厚生労働省「高額介護サービス費の負担額」

この制度は介護保険サービス費の自己負担分が対象であり、住居費や食費などは還付の対象外となるため注意してください。

高額医療・高額介護合算制度

高額医療・高額介護合算制度は、「医療保険」と「介護保険」の2つサービスを利用し、世帯での合計が高額になる場合に負担を軽減する制度です。1年間(8月1日〜翌年7月31日)に支払った合計額が、自己負担限度額を超えた場合、超過分が払い戻されます。

この制度を利用するためには、同一の医療保険に加入していることが条件です。同一世帯でも、夫が「後期高齢者医療保険」、妻が「国民健康保険」など、加入している保険が異なる場合は不可となります。

障害者控除

障害者控除とは、本人や配偶者、扶養親族のいずれかに障害がある場合、所得税法の障害者に当てはまれば所得控除を受けられる制度です。高齢者の場合、要介護認定を受けることで「障害者控除」が適用される可能性があります。障害者控除は「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」の3つの区分に分けられ、区分によって控除額が異なります。

【控除される金額】

区分

所得税の控除額

住民税の控除額

障害者

27万円

26万円

特別障害者

40万円

30万円

同居特別障害者

75万円

53万円

参考:国税庁「障害者控除」(国税庁のサイトには所得税の控除のみ記載されています。住民税の控除については、各自治体のホームページにて確認してください。)

自治体によって障害者区分の認定基準は異なりますが、多くの自治体が要介護3以上の場合、「特別障害者」として認定しています。

扶養控除

扶養控除とは、控除対象となる扶養親族がいるときに、適用される控除制度のことです。控除の対象は、配偶者以外の親族、生計を一にしていること、年間の合計所得金額が48万円以下などが挙げられます。

施設に入居する前から扶養控除の制度を利用している場合、入居した後も、条件を満たせば継続して控除が受けられることがあります。たとえば、施設入居前から親を扶養に入れていた、同居はしていないが仕送りをしていたなどが当てはまります。

控除額は、扶養対象1人につき38万円、70歳以上の場合であれば48万円が控除されます。

医療費控除は対象外となる

特別養護老人ホーム(特養)などでは利用できる「医療費控除」は、介護付き有料老人ホームでは基本的に利用できないため注意が必要です。医療費控除は、医療費が一定額を超えた場合、超過金額に対して税が控除される制度です。

ただし一定の医療行為を受けた場合などは、例外的に控除の対象となる可能性があります。


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介護付き有料老人ホームと他の高齢者施設との費用比較

介護付きの高齢者施設は複数のタイプがあるため、介護付き有料老人ホームとその他の施設とで、迷っているという方もいることでしょう。ここでは以下の2つの施設と費用を比較します。

●     住宅型有料老人ホーム

●     サービス付き高齢者向け住宅

 

住宅型有料老人ホームとの費用比較

 

比較項目

介護付き有料老人ホーム

住宅型有料老人ホーム

入居にかかる費用

0〜数百万円

0~数十万円

月額費用

約15.0〜35.0万円

13.4~31.5万円

 

住宅型有料老人ホームは、食事提供、食事介助、掃除などの生活援助サービスを提供する施設です。必要に応じて外部の介護サービスを利用するため、介護付き有料老人ホームよりも費用を抑えながら生活ができます。



サービス付き高齢者向け住宅との費用比較

 

比較項目

介護付き有料老人ホーム

サービス付き高齢者向け住宅

入居にかかる初期費用

0〜数百万円

一般型:0円~数十万円

介護型:数万円~(一部数千万円)

月額費用

約15.0〜35.0万円

一般型:5.0~25.0万円

介護型:15.0~40.0万円

 

サービス付き高齢者向け住宅(通称:サ高住)は、安否確認や生活相談などのサービスが提供されるバリアフリー構造の賃貸住宅です。自立した方の入居を想定した一般型と、介護サービスも受けられる介護型があり、介護型であれば介護付き有料老人ホームと同等のサービスを受けられます。ただし介護型のサ高住は少ないため、入居の難易度が高い点には注意が必要です。



介護付き有料老人ホームの費用以外で注意したいポイント


介護付き有料老人ホームを選ぶ際は、費用以外にも以下のポイントを押さえておきましょう。

必要な医療ケア・サービスが受けられるか

持病や心身の状態、要介護度に応じて、必要とする医療ケア・サービスは人それぞれ異なります。介護付き有料老人ホームでは、入居者3人に対して1名以上を人員配置することが定められていますが、看護師が常勤している、提携している医療機関、緊急時の対応などは施設によって異なります。検討する際は、これらの項目を確認しておきましょう。

ホームとの雰囲気はあっているか

入居後の生活を考えるうえで、ホームの雰囲気があっているかも大切なポイントです。実際に施設を見学してみて、パンフレットだけでは感じられない普段の様子を確認するのがおすすめです。入居者がどのように過ごしているか、そのほか男女比や年代、要介護度の割合などをチェックします。また食事の献立や、レクリエーションなどの活動などについてもみておくとよいでしょう。

丁寧な対応でケアしてくれるか

ホームの雰囲気に加え、スタッフの人柄や質もチェックするのがポイントです。見学申し込みのときの電話対応や、スタッフ同士の会話、入居者に対する対応はどうだったかなどが判断材料となります。可能であればスタッフに気になることを質問して、受け答えの丁寧さをみてもよいかもしれません。

介護付き有料老人ホームに関するよくある質問

介護付き有料老人ホームに関するよくある質問をまとめました。

入居中に費用が払えない場合は?

介護付き有料老人ホーム入居中に、何らかの都合で費用が払えなくなった場合、すぐに退去となるわけではありません。ご本人が支払えない場合、まずは配偶者やお子さんなどの身元引受人に請求されます。身元引受人も支払えない場合は、定められた猶予期間の後に退去となります。

猶予期間は3〜6ヶ月と比較的余裕がある場合が多いですが、施設により短いところもあります。契約書や重要事項説明書に記載されているため、入居時に必ず確認してください。また、このようなことを防ぐためには、事前に入念な資金計画を立てることが大切です。


生活保護を受けている場合も入居できる?

生活保護を受けている方は、担当ケースワーカーに相談の上、介護付き有料老人ホームに入居することができます。介護サービスにかかる費用は自治体が負担し、居住費は住宅扶助として定められた上限限度額内、生活費は生活扶助として必要な金額が支給されます。

月額利用料が生活保護受給額とご本人の収入(年金など)でまかなえる老人ホームであっても、生活保護の方を入居対象としていない施設もあるため、担当ケースワーカーを通して確認しましょう。

前払い、月払いどちらがお得?

前払いと月払いでは、どちらがお得かについてですが、これは入居期間の長さによって異なります。そのため入居の時点で最終的な入居期間を想定することは難しく、断定はできません。

長期間の入居が想定されるのであれば、月々の費用を抑えられる「前払い」、短期間の入居とわかっているのであれば「月払い」を選択するのが一般的です。入居時点での年齢や健康状態などによって、適切な支払い方法は変わるといえるでしょう。

体験入居は介護保険適用?

介護付き有料老人ホームへの体験入居では、介護保険が適用されないため注意が必要です。体験入居では、実際に居室に宿泊して、生活支援サービスや食事、レクリエーションなどのサービスを体験できます。しかし介護サービスに関しては、基本的にケアプランに基づいて利用することが前提のため、体験入居では利用できません。

体験入居の費用は3食の食費やおやつなどを含み、1泊あたり3千円〜1万5千円ほどの価格帯であることが一般的です。

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介護付き有料老人ホームに入居するまでの流れ 

 

介護付き有料老人ホームに入居するまでの流れは、以下のとおりです。

 

  1. 希望条件を整理する
  2. 施設を検索する
  3. 見学で比較検討をする
  4. 体験入居を申し込む
  5. 申し込み・必要書類の提出
  6. 面談・入居審査
  7. 契約・入居

 

​​施設を選ぶ際は、見学が欠かせません。最低でも2〜3ヵ所は見学し、パンフレットやホームページだけではわからない情報を収集しましょう。

施設が決まったら、入居申し込みを行います。

申し込み後、面談と入居審査が行われ、身体状況や希望条件、経済状況や身元保証人の有無などが確認されます。面談時はご家族の方も同席を求められる場合があります。施設とは長期的な関わりになるため、ご本人とご家族の関係性や施設サービスへの理解、緊急時の対応などを、入居前に確認することが目的です。条件や要望のミスマッチを防ぐためにも、面談にはご家族が同席することをおすすめします。

まとめ

今回は介護付き有料老人ホームの費用について解説しました。入居には初期費用(入居一時金)と月額費用の2つが必要で、施設によってそれぞれの費用に開きがあります。

また費用も気にするべきポイントですが、施設によって償却方法や支払い方法に違いがあるため、どのプランが適しているか検討してみることが大切です。費用の負担が心配な方は、負担を軽減する方法も確認しましょう。

介護付き有料老人ホームの入居を考えるときは、今回紹介した費用比較や注意点を参考にしていただければ幸いです。



この記事の監修

すぎもと ゆりこ

杉本 悠里子

有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。

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