グループホームとは?入居条件や特徴、サービス内容を分かりやすく解説

認知症の高齢者を対象とした施設であるグループホームは、その生活スタイルが認知症の進行を緩やかにするとして注目を集めています。しかし他の高齢者施設と何が違うのか、また、どのように施設を選んだらいいのか分からないという方も多いでしょう。そこでこの記事では、グループホームの入居条件や特徴、サービス内容を分かりやすく解説します。グループホームについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

グループホームとは?入居条件や特徴、サービス内容を分かりやすく解説
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グループホームとは?


グループホームとは、簡単に説明すると認知症を患っている方が入居する、少人数制ユニット型施設のことです。「認知症対応型共同生活介護施設」とも呼ばれます。

5〜9人で構成される1つのユニットで、共同生活を送るのが特徴です。

 

要支援2以上、原則65歳以上で認知症と診断を受けている方が入居対象です。専門の職員からサポートを受けながら、入居者同士で役割分担をして生活します。職員がすべて行うのではなく、できることは自分で行って生活するスタイルであるため、認知症の進行を緩やかにする効果が期待できます。

 

グループホームは、介護保険における地域密着型サービスに属しています。そのため、原則として住民票がある市区町村にある施設に入居しなければなりません。

障害者グループホームとの違い

グループホームは法律上、「認知症対応型共同生活介護」と「共同生活援助」の2種類に分けられます。これらは根拠となる法律が異なり、高齢者を対象とした「認知症対応型共同生活介護」は介護保険法、障害のある方を対象とした「共同生活援助」は障害者総合支援法によって定められていることが特徴です。
どちらも共同生活を送ることは共通していますが、障害者手帳(身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳)を保有している方は共同生活援助で定められた障害者グループホームに、要介護・要支援と認定されている高齢者は認知症対応型共同生活介護で定められたグループホームに入ります。今回の記事で解説するグループホームは、「高齢者向けのグループホーム」のことです

グループホームの入居条件4つ

グループホームに入る人はどんな人なのか、気になっている方も多いでしょう。グループホームに入居するためには、次の4つの条件を満たしている必要があります。

 


それぞれの条件について、詳しく見ていきましょう。

【条件1】65歳以上、要支援2または要介護1以上

まず第一条件として、入居者が「65歳以上」「要支援2または要介護1以上」である必要があります。要支援・要介護とは「要介護認定」の区分で、介護の手間を時間に換算して判断されるものです。要支援1がもっとも軽く、要介護5に至るにつれて介護の必要度が高くなります

要支援
要支援1
要支援2
要介護
要介護1
要介護2
要介護3
要介護4
要介護5

「要支援2または要介護1以上」ということは、要支援2に指定されている、もしくは要介護1〜要介護5のいずれかに指定されているということです。ただし特定疾病に起因して要介護認定を受けている40歳〜64歳の方も、入居対象が認められる可能性があります。なお、グループホームはあくまでも自立支援を目標としており、寝たきりの方、障害の程度が重い方など、自立が難しい方は入居を断られるケースがあることも知っておきましょう。

【条件2】認知症と診断を受けている

そもそもグループホームの役割は「認知症の進行を和らげること」「身体機能の維持を目指すこと」で、正式名称が「認知症対応型共同生活介護」となっていることから分かるとおり、認知症の方を対象とした施設です。そのためグループホームに入るためには、医師から認知症と診断されている必要もあります。入居時に診断書が求められるため、あらかじめ取得しておきましょう。

【条件3】グループホーム所在地と同地域に住民票がある

グループホームは自治体が運営する「地域密着型サービス」の一つです。そのためグループホームの所在地と、入居者の居住地は同じである必要があります。もし現住所とは別の自治体のグループホームへ入居したい場合は、あらかじめ住民票を移しておかなければなりません。ただし認知症の方が別の自治体で住所を用意することは難しいため、現実的には現住所の自治体内でグループホームを探したほうがいいでしょう。(本人の住民票を家族・親族の自宅に移すなど、今住んでいる自治体以外のグループホームへ申し込むための方法も存在します)

【条件4】共同生活が送れる 

グループホームは自立支援を目的に「共同生活」を送るための施設です。そのため、たとえ要支援・要介護に認定されているとしても、ある程度自立して生活できることも入居の条件とされています。入居者同士で家事・食事の準備をすることになるため、洗濯や料理などができるかどうかもポイントです。(認知症は脳への刺激が少ないと進行してしまうケースがあるため、共同生活の中で家事をこなすことによって、進行を緩やかにする効果が期待できます。)

グループホームの入居拒否や退去を求められるケース

年齢や要支援・要介護の状態、診断書などの条件を満たしていたとしても、グループホームの入居を拒否されたり、入居後に退去を求められるケースも存在します。グループホームは先述したとおり「共同生活」を送ることが前提であるため、他の入居者とトラブルになってしまうような方、たとえば暴言・暴力などが見られる方は入居できません。自傷行為が見られる場合も、安全性の観点から入居を断られる可能性があります。
また、必要となる介護の程度が重かったり、医療的ケアを必要としたりする方も、共同生活が難しいためグループホームへの入居はできません。とくに看護師が在籍していないグループホームの場合、医療行為の必要性に伴って退去しなければならないケースも多いです。(グループホームには看護師配置の義務がありません)
グループホームへの入居が難しい、もしくは退去を迫られてしまった場合には、特別養護老人ホームなど他の介護施設への入居を検討したほうがいいでしょう

グループホームと他の介護施設との違い


さて、高齢者が入居できる施設はグループホームだけではなく、次のような種類が挙げられます。

●     特別養護老人ホーム

●     有料老人ホーム

●     介護老人保健施設

●     サービス付き高齢者向け住宅

グループホームとこれら他の介護施設との違いについて、詳しく見ていきましょう。

 

特別養護老人ホームとの違い

特別養護老人ホームとは、自治体や社会福祉法人が運営する、公的な老人ホームです。介護サービスをメインに提供しており、入居対象は要介護3以上の方です。

 

充実した介護サービスを受けられると同時に、費用が比較的安いのが特徴です。公的施設のため、入居一時金がかからず、月額費用も安い傾向にあります。

費用が安い分人気が高く、入居待ちが多く発生している点には注意が必要です。希望の施設に入居できるまで、半年以上かかることもあります。

特別養護老人ホームでは、認知症の方を受け入れているケースが多いです。

有料老人ホームとの違い

有料老人ホームは、民間企業が運営する老人ホームです。介護サービスや生活支援サービス、レクリエーションやリハビリテーションといった、幅広いサービスを提供しています。施設数が多く、豊富な選択肢の中から施設ごとに、独自の特色を打ち出しているのも特徴です。

 

有料老人ホームは、さらに以下の3つに分けられます。

・介護付き有料老人ホーム

・住宅型有料老人ホーム

・健康型有料老人ホーム

 

​介護付き有料老人ホームは、自立から要介護の方まで、幅広い入居者を対象とした老人ホームです。食事や入浴、排泄といった身体介護サービスを中心に、生活支援サービスやレクリエーションなどを提供しています。都道府県から特定施設入居者生活介護の指定を受け、介護サービスの提供基準を満たしている場合のみ「介護付き」と名乗ることができるのがポイントです。

 

住宅型有料老人ホームは、生活支援サービスを提供する老人ホームです。介護サービスは原則提供しないため、介護サービスが必要な場合は、外部の事業所と契約する必要があります。

 

健康型有料老人ホームは、自立している方を対象に、食事や洗濯といった身の回りをサポートする老人ホームです。自立していることが前提であるため、介護が必要になった場合は、退去する必要があります。

認知症患者の受け入れ状況は、有料老人ホームによって異なります。事前に問い合わせて確認しましょう。

 

介護老人保健施設との違い

介護老人保健施設は、退院後、在宅での生活に不安がある方が利用する施設です。老健とも呼ばれます。あくまでも在宅復帰を目指すための施設のため、入居期間は3〜6ヶ月ほどと限定されているのが特徴です。

 

また、理学療法士や作業療法士といったリハビリの専門家が在籍しており、リハビリが充実しているのもポイントです。

介護老人保健施設は、認知症の方の入居も可能です。中には、認知症ケアを専門とした介護老人保健施設も存在します。

 

サービス付き高齢者向け住宅との違い

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者が生活しやすいよう、バリアフリー構造で設計された住宅のことです。施設ではなく、住宅に分類されます。1日のスケジュールが決められているわけではないため、自由度の高い生活を送ることができるのが魅力です。

 

サービス付き高齢者向け住宅は幅広い入居者を対象としており、一般型と介護型の2種類に分けられます。一般型では介護サービスが提供されないため、介護サービスを受けるためには、外部の事業者と契約する必要があります。

認知症患者の受け入れ状況は住宅によって異なりますが、対応していないケースが多いです。


グループホームの居室タイプは2種類

一口にグループホームといっても、その居室タイプによって次の2種類に分けられます。

ユニット型

少人数のユニットで共同生活

サテライト型

プライベートな空間を確保

それぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。

ユニット型 | 少人数のユニットで共同生活

入居者が5人〜9人のユニットごとに共同生活するのが「ユニット型」です。認知症の高齢者が穏やかに暮らしやすいよう、ユニットの最大人数は9人までと定められています。また、一つのグループホームにつき構成できるユニット数は原則として2つまでです。
認知症の方は異なる環境に慣れたり、見ず知らずの方と人間関係を築いたり、新しいものを認識することが苦手だといわれています。そのため大人数が過ごす老人ホームは、認知症の方にとってストレスを感じやすい環境だといえるでしょう。しかしユニット型なら顔なじみのメンバーと落ち着いて過ごせるため、ストレスを感じづらいことがメリットです。また、大規模な施設と比べると、ユニット型は職員の入れ替わりも多くありません。その点も認知症の方に優しいポイントだといえます。
グループホームに入居することに不安を感じる方もいるかもしれませんが、ユニット型は高齢者同士がまさに家族のように暮らせる形態であるため、安心してください。一般的な老人ホームでストレスを感じてしまった経験がある方も、ユニット型のグループホームなら楽しく過ごせるかもしれません。

サテライト型 | 1人暮らしができる

サテライト型は「本体住居」と「サテライト型住居」で構成されているグループホームで、プライベートな空間を確保しつつ、専門職員のサポートを受けられることが特徴です。本体住居での過ごし方や受けられるケアについてはユニット型と同様ですが、「サテライト型住居」においては自由に過ごせます。
「サテライト型住居」は本体住居の周辺に複数設置されるケースが多いです。本人が食事やレクリエーションを希望すれば、気軽に本体住居へ訪問できます。そして「本体住居には専門職員が常駐しており、困ったことがあれば24時間体制で支援を受けられることがポイントです。

完全な一人暮らしには不安があるものの、ユニット型グループホームのような共同生活には抵抗を覚える場合には、サテライト型グループホームを活用してみてください。

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グループホームで受けられるサービス


ここでは、グループホームで提供される主な3つのサービスについて解説します。

・認知症ケア

・介護サービス

・看取り

認知症ケア

グループホームでは、充実した認知症ケアを受けることができるのが魅力です。

 

認知症ケアの具体的な内容としては、以下が挙げられます。

・家事

・リハビリテーション

・レクリエーション、イベント

・地域交流

 

多種多様な認知症ケアが行われているため、充実した生活を送りながら、認知症の進行を緩やかにできる可能性が高いです。

特に、リハビリの一環として、地域交流を取り入れている施設が多いのが特徴です。地域の清掃活動やお祭りに参加したり、近隣の子どもたちと触れ合ったりすることにより、生活に変化や彩りが加わります。地域の人が、認知症に対する理解を深めるきっかけにもなるでしょう。

介護サービス

グループホームでは、食事や入浴、排泄などの介護サービスを受けることができます

グループホームでは、できることは自分でやるという方針ですが、本人に任せきりというわけではありません。1人では難しい行動については職員がサポートするため、安心して生活できます。

看取り

看取りに対応しているグループホームも増えています。医療体制や看護体制が整っているグループホームでは、看取りに対応でき、終身利用が可能です。24時間の看護が必要になった場合も、安心して入居し続けられるでしょう。

看取りに対応しているかどうかは、費用の中に「看取り加算」が含まれているかで判断できます。

 

医療ケアが必要な方は注意が必要

グループホームでは、看護師の配置が義務付けられていないため、基本的に医療ケアは提供されません

バイタルチェック(検温、血圧測定など)や服薬管理といった基本的なサービスを受けることはできても、病気や症状により対応してもらえない可能性があります。

 

医療ケアが必要な場合は、医療機関との連携がとれているグループホームを選びましょう。費用に「医療連携体制加算」が含まれている場合は、医療体制が充実していると判断できます。

グループホームの費用相場


グループホームを利用する場合の費用相場は、以下のとおりです。

 

初期費用

月額費用

0~15.4万円

12.4~19.7万円

 

民間の有料老人ホームに比べ、費用は安い傾向にあります。

以下では、それぞれの内訳について見ていきましょう。

初期費用

初期費用として、入居一時金の支払いが必要になる場合があります

 

入居一時金とは、通常の賃貸契約における敷金や保証金に該当する費用のことです。退去時の原状回復などに使われ、施設ごとに定めた期間や割合によって償却されます。

 

退去時は、入居一時金の一部が返還されます。ただし、入居期間が長ければ長いほど、返還される金額は少なくなるため注意が必要です。

月額費用

グループホームを利用する場合、賃料・食費・水道光熱費・その他費用が毎月発生します。

賃料

8.0万円前後

食費

4.0万円前後

水道光熱費

1.5万円前後

その他(おむつ代・サービス費用など)

2.0万円前後

合計

15.5万円前後

費用相場は12.4〜19.7万円の範囲に収まるケースが多いでしょう。とくに賃料については、グループホームの立地で大きく左右されます。もし月額費用が相場よりも高いと感じる場合は、内訳を確認してみてください。月額費用の大部分を賃料が占めている場合、エリアを移すことで費用を減らせるかもしれません。(ただし先述したとおり、入居できるグループホームは利用者の住民票がある自治体に限られます)月額費用の詳しい内訳については、グループホームの料金表などを確認してみてください。

1ヶ月あたりのサービス負担費

介護サービス費には、介護保険が適用されます。利用者負担は原則1割であり、介護度やユニットの数に応じて設定されています。1ヶ月あたりの利用者負担は以下のとおりです。料金表で紹介します。

 

1ユニット

2ユニット

要支援2

22,830円

22,470円

要介護1

22,950円

22,590円

要介護2

24,030円

23,640円

要介護3

24,720円

24,360円

要介護4

25,230円

24,840円

要介護5

25,770円

25,350円

参照:認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

そのほか、通院代や薬代、日用品の購入費用や理美容代などもかかります。

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グループホームの運営基準

ここでは、グループホームの運営基準として、人員配置基準と設備基準について紹介します。

人員配置基準

グループホームにおける人員配置基準は、以下のとおりです。

【代表者】

代表者はグループホーム全体の管理を行います。代表者は、以下の要件を満たす必要があります。

・認知症の介護従事経験、もしくは保健医療・福祉サービスの経営経験がある

・厚生労働大臣が定める「認知症対応型サービス事業開設者研修」を修了している

【管理者】

グループホームの管理者は、ユニットごとに配置されています。主な仕事は管理業務ですが、介護現場に入る方も多い傾向です。また、計画作成担当者を兼務しているケースも見られます。

管理者は、以下の要件を満たしていることが必要です。

・3年以上の認知症の介護従事経験がある

・厚生労働大臣が定める「認知症対応型サービス事業管理者研修」を修了している

【介護職員】

グループホームでは、入居者3名に対して1名以上の介護職員を配置するよう定められています。

1日を通して計算されるため、常時適用されるわけではありません。夜間帯は、介護職員1名以上と定められています。基本的に、夜間の職員は少ない傾向にあります。

【計画作成担当者】

計画作成担当者は、入居者ごとにケアプランを作成するスタッフです。最低1人は介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を持っていることと、各ユニットに1人を配置するよう定められています。

【看護師】

グループホームには、看護師の配置義務がありません。必要な場合は注意しましょう。

設備基準

グループホームは、原則個室であり、床面積は7.43平方メートル以上(4.5畳以上)です。有料老人ホームに比べて、居室が狭い傾向にあります。必要と認められた場合、1室を2名(夫婦など)で利用することもあります。

また、居室に近接しているところに、食堂やリビングなど、入居者同士で交流を図ることができる設備が備わっているのが特徴です。

 

キッチンやトイレ、浴室、洗面所といった日常生活に必要な設備については、10名を上限とする生活単位ごとに区分して配置されています。

グループホームに入居するメリット

ここでは、グループホームに入居するメリットを4つ解説します。

・認知症の進行を緩やかにする

・認知症ケア専門職員が常駐

・少人数で打ち解けやすい

・住み慣れた土地で生活できる

認知症の進行を緩やかにする

グループホームでは、ほかの入居者と役割分担をして共同生活を送るため、認知症の進行を緩やかにするメリットがあります。

 

認知症は、発症してすぐに日常生活が難しくなるわけではありません。家事を行ったり、認知機能のリハビリを行ったりすることにより、症状の進行を抑えることができる場合があります。

 

本人ができることは自分でやる、というスタイルで生活するグループホームであれば、認知症の進行を遅らせながら、生活の質を高められる可能性が高いです。

認知症ケア専門職員が常駐

グループホームには、認知症ケアのプロである職員が常駐しています。

 

前述のとおり、グループホームの代表者には、認知症高齢者介護経験や認知症対応型サービス事業開設者研修の修了が義務づけられています。また、介護職員も認知症ケアに関する知識と経験を持っている場合が多いです。

 

プロが入居者それぞれの状況に合わせてケアを行うため、ご家族にとっても安心して任せることができるでしょう。

少人数で打ち解けやすい

グループホームは、少人数で生活する施設のため、入居者同士打ち解けやすいというメリットもあります。

 

認知症の方は、環境変化が得意ではない傾向にあります。グループホームでは、顔なじみの人と生活し、人の入れ替わりも少ないため入居者にストレスがかかりにくいのが特徴です。

住み慣れた土地で生活できる

グループホームに入居する際は、住民票と同一の市区町村にある施設を選ぶ必要があります。そのため、入居者にとって住み慣れた土地で生活できるのは大きなメリットです。入居後の環境変化によるストレスを受けにくく、グループホームでの生活をスムーズにスタートできるでしょう。

グループホームに入居するデメリット

一方、グループホームに入居する際は、以下の3つの点に注意が必要です。

・定員が少なく入居待ちの可能性がある

・医療ケアが充実していない

・施設の選択肢が狭い

それぞれ解説します。

定員が少なく入居待ちの可能性がある


出典:内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)」内閣府「令和3年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)」より作成

 

グループホームは、1ユニットが5〜9人、1つの施設につき原則2ユニットまでと決められています。そのため、1つの施設に入居できるのは、最大18名までです。

定員が少ないため、希望の施設にすぐに入居できない可能性がある点には注意が必要です。

特に、高齢化により認知症を患う方が増えている現在、グループホームの需要は高まっています。

グループホームへの入居を希望している場合は、早めに施設選びをスタートすることが大切です。

医療ケアが充実していない

グループホームでは看護師の配置が義務付けられていないため、医療ケアが充実していない可能性が高いです。看護師がいないグループホームでは、医療行為に対応していません。

 

身体状況が変化して医療ケアが必要になった場合は、退去の可能性もある点には注意が必要です。

 

施設の選択肢が狭い

グループホームに入居する際は、住民票と同じ市区町村にある施設を選ぶ必要があります。

 

入居者にとっては、住み慣れた土地で生活できるというメリットがある一方、施設の選択肢が狭くなるため注意が必要です。

お住まいの市区町村に、希望条件を満たすグループホームがない可能性もあります。

 

もし本人と、家族・親族が別々の市区町村に住んでおり、家族・親族の住む自治体のグループホームに入居してもらいたいときは、本人の住民票を家族・親族の自宅に移す必要があります。

グループホームの1日の流れ


グループホームでは、1日のスケジュールが決められており、全員が役割分担して共同生活を送ります。

1日のスケジュール例は、以下のとおりです。

 

7:00

起床

8:00

朝食準備、朝食

9:00

歯磨き、服薬、バイタルチェック、体操

11:00

掃除、洗濯

12:00

昼食準備、昼食

14:00

レクリエーション、リハビリ

15:00

おやつ

16:00

自由時間

18:00

夕食準備、夕食

20:00

入浴

21:00

就寝準備、ナイトケア、就寝

グループホームを選ぶ際のポイント


さて、グループホームを選ぶときに意識すべきポイントとしては、次の6点が挙げられます。

●     面会に行きやすい立地であるか

●     支払い続けられる費用か

●     介護体制は充実しているか

●     必要な医療ケアを受けられるか

●     ホームの雰囲気が入居者に合っているか

●     地域との交流が盛んか

それぞれ詳しく見ていきましょう。

面会に行きやすい立地であるか

グループホームで共同生活を送るとはいえ、家族として面会に行くことは可能です。面会に行きやすい場所のグループホームを選べば頻繁に会いにいけることはもちろん、入居者の体調が急変した場合などにも駆けつけやすいでしょう。また、物理的な距離が近いほうが、入居者・家族ともに精神的な負担が小さくなることもメリットの一つです。
また、認知症になったとしても、慣れ親しんだ土地で暮らしたいと考える高齢者は少なくありません。可能であれば入居者の自宅からも近く、なおかつ家族が面会に行きやすい立地のグループホームを選ぶといいでしょう

支払い続けられる費用か

先述したとおり、グループホームの費用相場は次のとおりです。

初期費用

月額費用

0~15.4万円

12.4~19.7万円

相場と同水準のグループホームに入居する場合、入居者の年金収入で賄えるケースが多いでしょう。月額費用には賃料・食費・水道光熱費など生活に必要な費用がおおむね含まれているため、家族としての持ち出しは必要ないかもしれません。
しかし入居者の年金加入状況によっては、自身の年金額だけではグループホーム費用を支払えない可能性もあります。グループホームは長期にわたって利用することが前提であるため、支払い続けられる費用かどうかは必ず確認しましょう。

介護体制は充実しているか

グループホームの介護体制についても要確認です。たとえばグループホームでは、基本的に利用者3人に対して介護職員1名以上の配置が定められています。ただしこの比率は日中・夜間では異なるため、24時間体制で3:1以上のスタッフ比率が保持されているわけではありません。
介護職員を確保できるかどうかは、施設運営者の技量によって左右されます。もし認知症の程度、もしくは介護を必要とする程度が重い場合には、なるべく介護職員が豊富なグループホームを選んだほうが安心でしょう。

必要な医療ケアを受けられるか

グループホームごとに受けられる医療ケアの内容にも差があります。そもそもグループホームは認知症患者がスタッフのサポートを受けながら共同生活を送ることを目的とした施設です。そのため「認知症ケア」の専門スタッフが常駐しているものの、看護師については配置義務がありません。そのためほとんどのグループホームでは、対応できる医療ケアに限界があるのです。
しかし看護師が在籍しているグループホームも増加してきており、そのような施設では医療ケア(胃ろう・点滴など)の管理にも対応しています。もし医療ケアが必要な場合には、グループホーム側の受け入れ態勢を確認してみてください。体調の急変・怪我などに備えて医療機関と提携しているグループホームなら、より安心できるでしょう

ホームの雰囲気が入居者に合っているか

主観的な判断基準ですが、グループホームの雰囲気が入居者に合っているかどうかもチェックポイントの一つです。入居者の過ごし方やスタッフの表情など、ホーム全体の雰囲気を感じるために現地に見学に行ってみてください。
生活感が伝わってくるようなホームなら、入居者が楽しく暮らしている可能性が高いです。反対にホーム全体の雰囲気が暗く、生活感も感じられない施設は、入居者の生活が不必要に管理されているかもしれません。

地域との交流が盛んか

実はグループホームは2か月に1回程度、入居者の家族はもちろん、地域住民にも事業所の運営状況・生活状況を知らせるための「運営推進会議」を開催するように義務づけられるなど、地域に開かれた施設であることが求められています。
認知症の方は見ず知らずの方と過ごすことが苦手だとはいえ、地域住民と関わったり催し物へ参加したりすることで脳に刺激を与え、認知症の進行を緩やかにすることも意識しなければなりません。やはり地域に密着した活動ができることもグループホームでの生活ならではの魅力であるため、地域との交流状況についても確認してみてください。

グループホームに入居するまでの流れ


まずは、入居を希望する施設に相談しましょう。入居までの主な流れは以下のとおりです。

 

・希望の施設を探す

・希望の施設に問い合わせする

・必要な書類を準備する

・面談を行う

・入所の可否を確認する

・契約を行う

・入居一時金の支払い

・施設に入居する

 

​​グループホームでは、体験入居(ショートステイ)を受け入れている場合もあります。体験入居を利用することにより、入居前に施設の雰囲気を確認できます。後悔しない施設選びのためにも、体験入居を申し込むことがおすすめです。

ただし、体験入居の場合は介護保険が利用できないため、費用が全額自己負担となる点には注意が必要です。

見学時のチェックポイント

グループホーム見学時は、スタッフの対応や人柄、ほかの入居者の様子をチェックするのがおすすめです。これらのポイントは、パンフレットやホームページではわからないため、実際にグループホームを訪れて確認する必要があります。

 

スタッフの対応が丁寧か、人柄は良さそうかについては、グループホームの雰囲気を大きく左右する重要な要素です。ご家族を安心して任せられる施設か、チェックしましょう。

 

また、ほかの入居者が楽しそうに生活しているかどうかも、良い施設を選ぶためには欠かせない判断基準です。

関連記事:老人ホームの見学のポイントは?

入居前面談のポイント

入居前に、入居対象者やご家族との面談が行われます。認知症対応型施設であるため、認知症の進行状態について話す場面も多いでしょう。

 

注意点としては、認知症について「〇〇が大変」「〇〇に困っている」などと、必要以上に言いすぎないことが大切です。必要以上に伝えすぎると、入居要件である「共同生活に支障がない」といった部分に触れてしまい、入居を拒まれる可能性があるためです。

 

面談ではありのままを話す必要がありますが、ご家族にとっては非常に大変な認知症の症状も、認知症の対応に慣れている職員にとっては一般的である、というケースは少なくありません。必要以上に言いすぎるのではなく、ありのままの状況を伝えることが大切です。

グループホーム以外で認知症ケアが受けられる施設

さて、認知症ケアを受けられる施設は、グループホームだけではありません。代表例は次の3種類です。

種類

特徴

特別養護老人ホーム

(特養)

自治体や社会福祉法人が運営

介護サービスをメインに提供

入居対象は要介護3以上

介護老人保健施設

(老健)

退院後、在宅での生活に不安がある方が利用

入居期間は3か月〜6か月ほどと限定

有料老人ホーム

民間企業が運営

レクリエーション・リハビリテーションなど幅広いサービスを提供

いずれも認知症ケアを受けることは可能ですが、グループホームとは担っている役割が異なることがポイントです。グループホームの役割は「認知症の進行を和らげること」「身体機能の維持を目指すこと」だと紹介しました。一方、特別養護老人ホームは介護サービスをメインに提供しており、純粋な「介護」が目的だといえます。介護老人保健施設は退院後の在宅生活に不安がある方が利用する施設で入居期間は3〜6が月ほどと限定されており、グループホームのように長期で利用することはできません。
有料老人ホームはレクリエーション・リハビリテーションなど幅広いサービスを提供しており、グループホームと同じように「認知症の進行を和らげること」「身体機能の維持を目指すこと」が期待できます。しかし有料老人ホームは認知症患者に限らず、ほとんど自立して生活できる方から要介護の方まで、幅広い入居者を受け入れています。グループホームのように認知症患者に特化しているわけではないため、必ずしもサービスが充実しているとはいえないでしょう。
認知症ケアが受けられる施設はさまざまですが、やはり「認知症の進行を和らげること」「身体機能の維持を目指すこと」に主眼を置き、長期にわたって利用したい場合には、グループホームがベストな選択肢となるケースが多いです。

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グループホームに関するよくある質問

最後に、グループホームについてよくある質問を4つ紹介します。

Q.グループホームは介護保険施設?

グループホームは、介護保険の地域密着型サービスに該当します。そのため、介護サービス費用には介護保険が適用されます。

Q.生活保護を受給していてもグループホームに入居できる?

生活保護を受給している方は、生活保護法による指定を受けているグループホームであれば、入居が可能です。また、同じグループホームでも、生活保護法の指定を受けた居室とそうでない居室が混在している場合もあります。施設全体が生活保護法の指定を受けていたとしても、居室が対象でなければその部屋には入居できません。

Q.グループホームで退去を求められるケースはある?

グループホームに入居中、強制的に退去させられることはありません。しかし、ほかの入居者に迷惑をかけたり、グループホームでは対応できない医療行為が必要になったりした場合は、退去を求められる可能性があります。共同生活の一員であるという自覚を持ち、ほかの入居者とうまくコミュニケーションをとりながら、円滑に生活できるかが重要です。

Q.グループホームの費用負担を抑える制度はある?

グループホームの入居にかかる費用を抑えるために、高額介護サービス費制度を利用できる場合があります。高額介護サービス費制度とは、介護保険の自己負担額が上限限度額を超えた際、超過分が返還される制度のことです。制度を利用するためには、市区町村への申請が必要です。また、限度額は所得によって定められているため、事前に確認しておきましょう。

 

まとめ

グループホームについて、理解しておきたいポイントは以下のとおりです。

●     グループホームは、地域に密着した認知症対応型の施設

●     ユニット型では、1ユニット5〜9人の少人数で役割分担しながら共同生活を送る

●     1人暮らしができるサテライト型も存在する

●     認知症ケアが充実しているため、認知症の進行を遅らせられる可能性がある

●     看護師の配置が義務付けられておらず、医療ケアが充実していない施設が多い

●     住民票と同じ市区町村にあるグループホームに入居する必要がある

グループホームは、認知症の方が安心して生活できる環境が整った施設です。認知症ケアのプロであるスタッフのサポートを受けられる、住み慣れた地域で生活できる、少人数でほかの入居者と打ち解けやすいなど、様々なメリットがあります。

一方、医療ケアが充実していなかったり、少人数ゆえに入居待ちの可能性があったりと、注意点もあります。入居者ご本人の身体状況や生活状況に鑑みて、グループホームへの入居を検討することが大切です。

 


この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

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