介護老人保健施設とは|役割と目的を知り、他の施設との違いと選ぶポイントを解説

「介護老人保健施設ってどんな施設?」

「どんなサービスが受けられるの?」

このような悩みはありませんか?

介護老人保健施設は、介護福祉施設のひとつで、リハビリを目的とした施設です。今回は、介護老人保健施設の概要について紹介します。この記事を読むと、他の施設との違いや必要な費用まで理解が深まるでしょう。ぜひご覧ください。


#老人ホーム#老健#介護保険施設#施設入居
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

介護老人保健施設とは

介護福祉施設のひとつでリハビリに特化した施設

介護老人保健施設は、介護福祉施設のひとつで「老健」と呼ばれています。リハビリテーションができる介護施設として、ニーズのある施設です。また、看護師が24時間勤務している施設が多いため、医療ニーズの高い方でも入所できます。

入所期間は3〜6ヶ月程度と考えられており、比較的短期間の利用となるケースが多いです。

老健は、病院から自宅への退院が困難と考えられる人が、リハビリを目的に入所します。病院からだけでなく、在宅やその他の施設からも入所することができます。

居室のタイプは施設によって様々ですが、大きく「個室」と「多床室」に分けられます。多床室は2〜4人でひとつの部屋になっているため、「大部屋」と呼ばれる場合もあります。施設によっては、全室個室のみの施設もあるため、費用や希望に合わせて検討すると良いでしょう。

居室には、ベッドやチェストが備え付けられています。トイレは居室ごとにある場合と、居室外にある場合があるため、確認しておきましょう。

老健の人員基準は、「利用者3名に対して、介護・看護職員が1名以上」と定められています。また、看護職員の割合は「介護職員7:看護師2以上」となっています。そのため、他の施設に比べ看護師の配置が多いことが特徴のひとつです。

老健には5つの区分があり、費用も異なります。それぞれの特徴を確認しておきましょう。


基本サービス費
在宅復帰の加算
リハビリの回数

超強化型

強化型と同じ

あり

週3回以上

強化型

基本型より高い

なし

週3回以上

加算型

基本型と同じ

あり

週2回以上

基本型

基準値

なし

週2回以上

その他

基本型より低い

なし

規定なし

老健の区分を決めるために、以下の基準が設けられています。

  • 老健の目的である在宅復帰が円滑に行われているか?

  • 専門職の人員配置が基準以上か?

  • 介護4又は5の方をどれぐらい受け入れているか?

など、10個の項目から評価し、自治体に届け出ることで決まります。

超強化型や強化型は、在宅復帰に力を入れているため、長期の利用は難しい場合が多いです。費用も基本型に比べて高いですが、在宅復帰を前提に考えている場合は利用を検討すると良いでしょう。

介護費用に関して

介護サービス費用は、全国的に定められているため、基本サービス費に大きな差はありません。ただし、施設ごとに取得している加算やその他の費用は異なり、負担限度額によっても大きく変わります。介護費用に関しては、利用を検討している施設に確認しておくと良いでしょう。

負担限度額は、個人の収入によって段階が定められており、食費や居住費が引き下げられます。また、介護保険費用の上限額が定められているため、支払い費用が軽減できます。役所での申請が必要なため、老健の利用を検討している場合は、役所で相談すると良いでしょう。


入所条件と入所の流れ

要介護1から入所できるが長期的な利用はできない

老健の入所条件は、「要介護1以上」の介護認定を受けた方です。ただし、老健で対応できない医療ケアがある場合は、入所できない場合もあります。

他の施設に比べて医師の常駐や看護師の配置が多いことから、医療行為の必要な方でも受け入れができます。医療行為の主な内容は以下の通りです。

  • 胃ろう

  • 吸引

  • インスリン

  • 点滴 など

夜間も看護師を配置している場合が多いため、医療行為がある方も安心して生活できるでしょう。

特別養護老人ホームや有料老人ホームでは、生涯施設で過ごすことも想定しているため、施設に住所を移す方も多いです。しかし、老健では基本的に住所変更は行いません。在宅復帰を目的としているため、帰るための自宅が必要になります。そのため、住民票の移動や住所変更は必要ありません。


老健と特養の違い

同じ介護福祉施設でもリハビリの有無は大きな違い

特養(特別養護老人ホーム)は、主に要介護3以上の方が入所する施設です。終身まで利用可能な場合が多く、「終の棲家」と呼ばれています。老健との違いについて表にまとめました。


特養
老健

費用目安(月額)

100,000~200,000円

100,000~200,000円

居室

ユニット型個室が多い

従来型多床室が多い

利用期間

長期~終身

3~6ヶ月程度

リハビリテーション

機能訓練指導員が対応

リハビリ職員で対応

看護師の配置

夜間不在の場合が多い

24時間勤務している場合が多い

医療行為の実施

夜間はできない場合がある

対応可能な場合が多い

薬代

個人が医療保険で負担

施設負担

近年、特養はユニット型個室の施設が増え、全居室が個室対応で、10人程度のユニットケアを実施しています。ユニットケアは、少人数のユニットを作ることで、個々に寄り添ったケアを提供できるとして考えられたケア方法です。

老健と違いリハビリがなく、リハビリ職員の代わりに、機能訓練指導員が配置されています。機能訓練指導員は、身体機能の向上や機能訓練を行う職種ですが、医師の指示のもと行うリハビリテーションとは内容が異なります。機能訓練指導員の配置は、老健のリハビリ職員に比べて少なく、機能訓練の頻度も少ない傾向です。

また、看護師は日中のみ勤務している場合が多いため、医療行為が必要な方は受け入れが難しいといった特徴もあります。


老健と有料老人ホームの違い

費用やサービスなど大きな違いがある

有料老人ホームは老健とは違い、民間の企業が運営しています。有料老人ホームには、「介護付き」「住宅型」「健康型」と3つのタイプがあり、それぞれ異なる仕組みやサービスが提供されています。有料老人ホームと老健の違いについて表にまとめました。


有料老人ホーム
老健

入居時費用

0~数億円

なし

費用目安(月額)

200,000円前後

100,000~200,000円

居室

個室または夫婦部屋

従来型多床室が多い

利用期間

長期~終身

3~6ヶ月程度

リハビリテーション

機能訓練指導員や訪問リハビリを利用できる場合がある

基本サービス

看護師の配置

施設による

24時間勤務している場合が多い

医療行為の実施

施設による

対応可能な場合が多い

オムツやパット代

個人負担

施設負担

大きな違いは、入居時費用がかかるかどうかです。老健や特養のような介護福祉施設では入居時費用が不要ですが、有料老人ホームでは、施設により高額な費用が必要になります。

利用できる期間は、老健に比べると長く、終身まで利用できる施設が増えています。しかし、介護度が重くなったり医療行為が増えた場合、対応できないこともあるため注意が必要です。

また、有料老人ホームでは機能訓練指導員が機能訓練を行う場合と、訪問リハビリを利用する場合があります。「介護付き」の場合は機能訓練指導員が行い、「住宅型」では訪問リハビリを利用するため、どのタイプの施設かを確認しておくと良いでしょう。

看護師の配置は施設の特色に合わせて様々あるため、医療行為があれば、対応してもらえるか確認が必要です。


老健のメリットとデメリット

デメリットも理解して施設を検討しよう

老健のメリットとデメリットについても確認していきましょう。

メリット

老健の大きなメリットは、リハビリができることです。理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が在籍し、在宅生活に沿ったリハビリを実施します。リハビリ以外の時間でも、生活リハビリとして日常生活動作を可能な限りご自身で行いながら、在宅での生活を目指します。

老健の管理者は、常勤の医師と定められています。介護施設の中でも、医師が在籍している施設は珍しく、医療ニーズが高い方には安心できるポイントです。また、看護師が24時間勤務している施設も多いため、胃ろう・吸引・在宅酸素・血糖測定・インスリンなど、常時医療管理が必要な方でも利用できます。

費用面では、負担限度額認定により、非課税の方であれば食費を半額程度まで減額したり、居室料金の負担を減らすことが可能です。費用を抑えられることから、生活保護受給者でも利用しやすいことが特徴といえるでしょう。

他にも、薬やオムツ・尿取りパットなどは施設が負担するため、一切自己負担はかからないため、費用負担の軽減ができます。

デメリット

老健は長期利用できる施設ではなく、3〜6ヶ月程度の場合が多いです。施設により、長く利用できる場合もありますが、3ヶ月を目安にリハビリの評価や入所継続の必要性について審査が行われます。

また、老健では利用者に薬代の負担がないというメリットがありますが、すべての薬を使える訳ではありません。中には老健で使用が難しい薬もあるため、老健で使用可能な薬に変更できない場合は、入所できない可能性もあります。そして、病院受診を希望する際は、管理者(医師)の判断と紹介状が必要となっており、自由に通院することができません。

他の施設に比べて、リハビリに時間を割くため、生活支援サービスやレクリエーションが少ない場合もあり、日中の活動スケジュールなどを確認しておくと良いでしょう。


老健を選ぶときのポイント

希望に合わせた施設を選択しよう

老健も施設ごとに特徴があるため、選ぶのが困難な場合があります。老健を選ぶときにポイントとなるのは以下の点です。

  • 希望するリハビリが受けられるか

  • 在宅復帰率

  • ご本人の希望に合うか

それぞれ見ていきましょう。

希望するリハビリが受けられるか

老健を利用する一番の目的は、リハビリという方がほとんどでしょう。しかし、在籍するリハビリ職種やリハビリ環境により、希望する内容が行えないこともあります。例えば、希望が多い「嚥下訓練」や「発声訓練」は、言語聴覚士が行いますが、リハビリ職の中でも言語聴覚士の割合は少なく、老健に配属されていない場合もあります。言語聴覚士が行うリハビリを希望、または必要な場合は、配属されている施設を探す必要があります。

在宅復帰率

老健は在宅復帰を目的に運営していますが、すべての施設が在宅復帰に重きを置いているわけではありません。各施設の地域性や特色により、長期利用を可能としている施設もあります。短期間でリハビリをして在宅復帰を目指すのであれば「超強化型」や「強化型」の施設。長期利用をしたい場合は「基本型」や「その他」のように、老健の区分を確認し、目的に合わせて、施設を選ぶと良いでしょう。

ご本人の希望に合うか

老健を利用する利用者とご家族の間で、希望内容が食い違うことは良くあります。例えば「しっかりリハビリして、元のように歩けるようになってほしい」とご家族が思っていても、利用者は「リハビリはしんどい。できるだけ寝ていたい」と考えていることがあります。その場合、リハビリの回数が多い施設を選んでも、リハビリの効果が出にくく、利用者が老健での生活を負担に感じ生活の意欲も低下する恐れがあるため注意が必要です。


老健退所後の選択肢

老健からの退所先は在宅だけではない

老健は、リハビリを行い在宅復帰を目的とした施設のため終の棲家になりにくく、退所後の選択肢が必要となります。退所後の選択肢として考えられるものは以下の通りです。

  • 在宅(ご自宅)

  • サービス付き高齢者向け住宅

  • グループホーム

  • 有料老人ホーム

  • 特養への入居待ち

ひとつずつ見ていきましょう。

在宅

在宅は、一番に目標とする場所です。元々住んでいた家の場合は特に思い入れもあり、多くの方が「帰りたい」と考える場所といえるでしょう。しかし、在宅は段差や階段があったり、居室が狭かったりと身体状況と環境が合っていない場合もあります。また、片付けられていない・車いすで移動できない・介護度が低く介護サービスを利用するにも限度があるなど、検討内容は多いです。自宅にかえってどのように過ごすか、在宅の担当ケアマネジャーと相談しておくと良いでしょう。

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅は、賃貸マンションと同様の扱いのため、在宅復帰として考えることができます。介護・看護サービスは外部の事業所と契約するため、介護保険の自己負担額内で希望のリハビリを受けられるでしょう。

グループホーム

認知症の診断があり、住民票と同じ市区町村の事業所であれば、選択肢に入ります。しかし、施設数が少なく、定員が最大18名(一部27名の場合もある)と少ないため、入居までに時間がかかる場合もあります。 

有料老人ホーム

一般的に、老健と比べて費用が高いですが、リハビリ職種を配置していたり、リハビリ機器を導入している施設も多いため、退所先として候補に上がりやすいです。施設数が多く、特色も大きく異なるため、希望に合う施設を見つけるためには余裕をもって探すことがおすすめです。

 

特養への入居待ち

特養は終身で利用する場合が多く、利用料も安価なため入居待ちをする方が多いことから、空き部屋が出にくくなっています。そのため、特養に申し込みをして、空きが出るまで老健で待機しておくことも一つの選択肢となります。

これらの特徴を理解して、どのように老健で過ごすかは、できるだけ入所前から考えておくと良いでしょう。


まとめ

老健は、介護施設の中でもリハビリに特化した施設です。入院中の方が、自宅に帰る前段階として利用を検討することが多い施設です。また、看護師の配置が多いことも特徴のひとつで、医療行為が必要な方も利用できます。管理者が医師のため、万が一のときでも安心できるでしょう。

一般的な利用が3~6ヶ月であることから、短期間の利用になる場合も多いですが、短期集中リハビリが行えることは大きなポイントです。他の施設に比べ費用の負担も少ないため、在宅に帰ることに不安がある場合は、老健の利用を検討してみると良いでしょう。

今回の内容が、介護老人保健施設の理解につながれば幸いです。

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