サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは?入居条件、サービス内容、特徴を解説
一口に老人ホームといっても、さまざまな種類が存在します。その中で昨今注目を集めているのがサービス付き高齢者向け住宅、通称「サ高住」です。この記事ではサ高住の費用感・サービス内容について紹介します。「サ高住」が自分や家族に合った施設であるのか知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

サービス付き高齢者向け住宅とは

サービス付き高齢者向け住宅とは、生活に不安のある高齢者が安心して暮らせるように、さまざまなサービスを付帯した賃貸住宅のことです。ある程度自立している高齢者から、要介護状態の高齢者まで、生活に不安のある方を幅広く受け入れています。なお、「サ高住」「サ付き」という名称はサービス付き高齢者向け住宅を省略したもので、どちらも意味は同じです。(サ高住は厳密にいうと有料老人ホームではなく、あくまでも「高齢者向けのサービスが付帯した賃貸住宅」とされています)
サービス付き高齢者向け住宅は入居者が暮らしやすいようバリアフリー構造になっており、さらに見守り・生活相談といったサービスを受けられることが特徴です。高齢者が単身で利用することはもちろん、夫婦世帯として居住することも可能です。高齢者からのニーズの高まりや、建設時に国の補助金を活用できることなどを受けて民間企業の参入も盛んになっており、サ高住の数は増加傾向にあります。
サービス付き高齢者向け住宅の種類
サービス付き高齢者向け住宅はそのサービス内容・想定される利用者に応じて、次の2種類に分類されています。
● 一般型
● 介護型
それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
一般型
「一般型」は入居者が自分のペースで生活を送ることを前提としたものです。自由に外出することはもちろん、施設内のイベントに参加したりダイニングで他の入居者と交流したり、活発に活動できます。また、オプションとして「食事の提供サービス」がラインナップされているサ高住も多いですが、義務化されているサービスではないため、食事提供を希望する場合はあらかじめ確認しておきましょう。(サービスがない場合、入居者が自分で食事を用意する必要があります)
このような特性上、一般型は自立した高齢者の利用が想定されており、もし将来的に介護が必要になった場合には、外部サービスを利用しなければなりません。施設によっては、要介護度が高くなると対処しなければならないこともあります。なお、サ高住の多くは一般型として運営されています。
介護型
「特定施設入居者生活介護」の指定を受けたサービス付き高齢者向け住宅は「介護型」と分類されています。(特定施設入居者生活介護として認められると、介護保険の対象となります)要介護・要支援の認定を受けた利用者が入居する施設のため、食事・入浴の介助はもちろん介護・看護サービスなど、一般的な有料老人ホームと同じようなサービスを受けられることが特徴です。
一般型はあくまでも自立して生活していく必要があり、要介護状態になると退去しなければならないこともありますが、介護型なら終末期まで安心して暮らせるでしょう。ただし介護型の場合、施設によっては外出・面会に制限が設けられていることもあります。一般型と比べると自由度が低くなることは否めません。
なお、「特定施設入居者生活介護」は原則として有料老人ホーム・軽費老人ホーム(ケアハウス)・養護老人ホームのための制度です。しかし「有料老人ホーム」に該当する 「サービス付き高齢者向け住宅」については、特定施設となると定められています。しかし指定を受けていないにも関わらず、「介護型」として要介護認定の高齢者の入居を促しているサービス付き高齢者向け住宅も存在するため、十分に注意してください。
サービス付き高齢者向け住宅と他の介護施設との違い
さて、先ほど「有料老人ホーム」など、「サ高住」以外の施設についても言及しました。他の介護施設との違いについても知っておくために、「住宅型有料老人ホーム」「介護付き有料老人ホーム」との違いについて詳しく紹介します。
住宅型有料老人ホームとの違い
「サービス付き高齢者向け住宅」と「住宅型有料老人ホーム」との違いは次のとおりです。
比較項目 | サービス付き高齢者向け住宅 | 住宅型有料老人ホーム |
入居条件 | 60歳以上の方 自立して生活できる人~介護認定を受けている人 (要支援・要介護認定の60歳未満の方が入居することもある) | 60歳以上の方 自立して生活できる人~介護認定を受けている人 (比較的介護度が低い方) |
契約形態 | 賃貸借契約 | 利用権方式 |
サービス内容 | 見守り・生活相談 | 掃除・洗濯・食事など |
サービス付き高齢者向け住宅に入居できる方は幅広く、60歳以上で自立して生活できる人から介護認定を受けている人はもちろん、要支援・要介護認定の60歳未満の方が入居することもあります。一方、住宅型有料老人ホームに入居するのも60歳以上の方で、自立して生活できる人から介護認定を受けている人と幅広いですが、比較的介護度が低い方が入居するケースが多い点が違いといえるでしょう。
契約形態については大きな違いがあります。サービス付き高齢者向け住宅は先述したとおり、あくまでも「高齢者向けのサービスが付帯した賃貸住宅」であるため、賃貸借契約を結ぶことが特徴です。介護・医療サービスが必要な場合は、外部の事業所と別途契約を結びます。一方で住宅型有料老人ホームは「老人ホーム」であるため、掃除・洗濯・食事などのサービスを受ける「利用権契約」をするのが一般的です。サービス付き高齢者向け住宅で受けられるサービスは見守り・生活相談などに限られることも覚えておきましょう。

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介護付き有料老人ホームとの違い
「サービス付き高齢者向け住宅」と「介護付き有料老人ホーム」との違いは次のとおりです。
比較項目 | サービス付き高齢者向け住宅 | 介護付き有料老人ホーム | ||
介護専用型 | 混合型 | 自立型 | ||
入居条件 | 原則60歳以上 自立して生活できる人~介護認定を受けている人 | 要介護度1以上 (要支援1以上のホームもある) | 自立して生活できる人~介護認定を受けている人 | 自立して生活できる人 |
契約形態 | 賃貸借契約 | 利用権方式 | ||
介護サービスの有無 | なし | あり | ||
費用 | 入居時:敷金 毎月:家賃 | 入居時:入居費用(前払い一括・一部払い) 毎月:月額利用料(介護サービス費・生活費) |
介護付き有料老人ホームは、入居条件によって介護専用型・混合型・自立型の3種類に分けられます。いずれの型であっても、掃除・洗濯など身の回りのサポートはもちろん、介護・健康管理なども受けられることが特徴です。そのため住宅型有料老人ホームと同じく、介護付き有料老人ホームの契約形態も「利用権方式」です。
サービス付き高齢者向け住宅には介護サービスがないため、もし介護を必要とする場合は、外部事業者と別途契約を結ぶ必要があります。そのため介護を必要としている場合には、介護付き有料老人ホームを選んだほうが手間が少ないでしょう。
費用体系にも違いがあります。サービス付き高齢者向け住宅はあくまでも賃貸住宅です。そのため入居時には敷金、ランニングコストとして家賃がかかります。(一般的なアパートを借りる場合と同じです)一方、介護付き有料老人ホームの費用体系は多岐にわたります。たとえば入居時に今後の利用料を全額支払う場合、毎月の利用料は発生しません。入居時に利用料の一部を支払い、残りはランニングコストとして支払っていく形態もあります。また、入居費用は0円で、ランニングコストとして介護サービス費・生活費を支払うプランも少なくありません。世帯ごとの資金状況に応じて支払方法を選びやすいことはメリットだといえるでしょう。

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サービス付き高齢者向け住宅の入居条件
サービス付き高齢者向け住宅には一般型と介護型の2種類があると紹介しましたが、それぞれ入居条件は次のように定められています。
比較項目 | 一般型 | 介護型 |
年齢 | 原則60歳以上 介護認定を受けていれば60歳未満も可 | |
連帯保証人 | 必要 | |
介護の必要性 | 介護不要~軽度の介護が必要な方 | 介護不要~要介護5の方 |
認知症への対応 | 症状による | 対応可能 |
年齢については原則60歳以上とされていますが、介護認定を受けていれば60歳未満の方でも入居できることがあります。また、入居のためには連帯保証人が必要です。(ここまでの条件は、一般型・介護型で共通しています)
介護の必要性については、一般型・介護型で大きくことなります。一般型は介護が不要で自立している方が主たる対象で、軽度の介護が必要な方なら入居できるものの、認知症を発症しているなど自立した生活が難しい場合は入居できない可能性が高いです。一方、介護型は介護が不要な方から、要介護5の方まで幅広く受け入れており、認知症の方でも受け入れてもらえます。
同居人の条件
次の条件を満たしている場合、サービス付き高齢者向け住宅で同居することも可能です。
● 配偶者(事実婚を含む)
● 60歳以上であったり、要支援・要介護認定を受けていたりする親族
● 特別な理由があり、同居の必要性を知事が認める者
夫婦なら問題なく同居できるケースが多いですが、配偶者以外の方と同居したい場合は、あらかじめ施設側に確認しておきましょう。
サービス付き高齢者向け住宅で受けられるサービス

サービス付き高齢者向け住宅ではさまざまな「サービス」が受けられますが、一口にサービスといっても、必ず受けられるサービスもあれば、オプションとして追加するサービスが存在します。とくにオプションについては施設ごとに異なるため注意しなければなりません。また、一般型・介護型それぞれで提供サービスが異なることもポイントです。
必ず受けられるサービス
まずはサービス付き高齢者向け住宅で必ず受けられるサービスについて見ていきましょう。
● 安否確認(見守り)サービス
● 生活相談サービス
それぞれ詳しく解説します。
安否確認(見守り)サービス
安否確認(見守り)サービスは、その名のとおりスタッフが定期的に居室を訪問し、生活に問題がないか見守ってくれるサービスです。見守りの時間・頻度は施設ごとに異なりますが、万が一困ったことが発生しても、すぐに助けてくれることは大きなメリットだといえます。家族からしても、高齢者が一人で暮らしているより、定期的に安否確認してくれるサ高住で暮らしているほうが安心でしょう。
生活相談サービス
サービス付き高齢者向け住宅には通常、介護福祉士や介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)、さらには施設によって看護師などの専門家が常駐しています。高齢者ならではの生活の悩みについてこれら専門家に相談できることも、サ高住の基本的なサービスです。わざわざ医療機関に出向く必要がないような軽微な相談なら、施設内で完結できるでしょう。
その他オプションのサービス
その他オプションのサービスとしては、次のような項目が挙げられます。
● 緊急時対応サービス
● 生活支援サービス
● 食事提供サービス
● 介護サービス
● 医療サービス
● リハビリ・レクリエーションサービス
● 看取り対応
それぞれ受けられるサービスについて、例を見ていきましょう。
緊急時対応サービス
体調不良になってしまったり、転んで怪我をしてしまったり、何らかの緊急事態が発生したときに施設スタッフにサポートしてもらうことも可能です。たとえば主治医・家族へ連絡したり、サ高住が提携している医療機関へ往診を依頼したり、場合によっては救急車を要請したり、緊急時に必要なことを全般的に任せられます。
生活支援サービス
生活支援サービスは日常生活のサポートはもちろん、入居者が外出するときのサポート・付き添い、買い物の代行などを任せられるオプションです。通院時の送迎・付き添いなど、一人での外出が不安な場合のサポートも依頼できます。
居室を清掃してもらったり、洗濯を代行してもらったりすることも可能です。家事が身体の負担になってしまう場合には利用してみてください。
食事提供サービス
サービス付き高齢者向け住宅では基本的に入居者が自らの食事を用意します。しかしオプション契約を結べば、食事を提供してもらうことも可能です。提供形態は施設ごとに異なり、代表例は次のとおりです。
● 宅配弁当を手配する
● 業者から購入した加工済み食材を施設で温める
● 施設内で毎食調理する
どの形態であっても栄養バランス・カロリーなどは計算されているため、安心してください。ただし、しっかり調理された料理を食べたいという場合には、施設内に調理室を構えたサービス付き高齢者向け住宅を選ぶ必要があります。入居後に後悔しないように、食事の提供方法についてあらかじめ確認しておきましょう。
介護サービス
訪問介護・デイサービスなど外部の介護保険サービスと契約することで、サービス付き高齢者向け住宅に暮らしながら介護を受けることも可能です。サ高住によっては、外部の事業者と提携しているケースもあるため、介護利用を検討している場合には確認してみてください。
また、施設内に「訪問介護事業所」「通所介護事業所」などを併設している場合もあります。たとえ入居時は自立していても将来的に介護が必要となる可能性もあるため、同じ施設に長く住み続けたい場合には、これら施設が併設されているサ高住を選ぶと安心でしょう。
医療サービス
サービス付き高齢者向け住宅によっては、施設に医療機関が併設されていることもあります。また、提携医療機関が訪問診療・訪問看護サービスを提供しているケースも珍しくはありません。このようなオプションは「医療サービス」と呼ばれています。持病がある場合など、医療機関へ通院する頻度が多い場合には、医療サービスが充実したサ高住を選ぶといいでしょう。
リハビリ・レクリエーションサービス
一般型のサ高住であっても、訪問リハビリ・通所リハビリなど外部サービスと提携することで、リハビリ・レクリエーションサービスを提供していることがあります。介護型に入居する程ではないものの、身体が思うように動かせないといった場合には、施設内にリハビリ・レクリエーション設備があるサ高住を選ぶとより安心です。
看取り対応
いずれ迎える寿命のために、看取りに対応しているサービス付き高齢者向け住宅もあります。看取り対応というと介護型を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、一般型であっても24時間対応の訪問看護サービス・訪問診療を組み合わせることは可能です。ただしオプション費用が高額になるケースが多いため、看取りまで想定している場合には、介護型を選んだほうが安心でしょう。(介護型の場合は看護師が24時間常駐しており、さらに医師と連携している施設も珍しくはありません)
介護型で受けられるサービス
ここまで一般型のサービス付き高齢者向け住宅で受けられるオプションサービスを紹介してきましたが、介護型のサ高住は「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているため、介護付き有料老人ホームと同等のサービスを受けられることが特徴です。
介護型の施設なら食事・家事・健康管理・介護サービスまで全て施設内で受けられるため、一般型でオプションを数多くつけるよりは、介護型のサ高住に入居したほうがいいでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅の費用相場
さて、サービス付き高齢者向け住宅を利用する場合、入居時には敷金が、ランニングコストとしては毎月の家賃(オプションを追加する場合はサービス費用)が発生すると紹介しました。それでは具体的にいくらくらいの費用が必要となるのか、金額について見ていきましょう。
初期費用
初期費用は「敷金」「入居一時金」「保証金」などの名目で請求され、その相場は次のとおりです。
一般型 | 介護型 |
0円〜数十万円 | 数十~数千万円 |
一般型の場合、敷金として数十万円を請求されるケースが多いですが、敷金が0円に設定されている場合もあります。(その場合はランニングコストが割高になります)一方、サービス内容が手厚い分、介護型のほうが初期費用が高額となるケースが多いです。なお、前払いとして一括で費用を支払い、その後の利用料(月額費用)を大幅に削減できるプランも存在します。退職金などでまとまった金銭を用意できる場合には、一括払いを視野に入れてみてください。
月額費用
月額費用は「家賃(居住費)」と「オプション費用(サービス利用料)」の2つに大別されます。相場は次のとおりです。
一般型 | 介護型 |
5〜25万円 (光熱費・食費・オプション費は別途) | 15〜40万円 (食費など込み) |
一般型はあくまでも純粋な賃貸契約であるため、周辺の賃貸物件の家賃に準じている施設が多いでしょう。なお、光熱費・食費・オプション費は別途必要です。介護型は介護サービスが付帯するため、一般型と比べると10万円以上高くなります。ただし食費なども月額費用に含まれているため、支出の見通しが立てやすいことはメリットといえるでしょう。

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サービス付き高齢者向け住宅の設置基準
さて、サービス付き高齢者向け住宅は、国が定めたさまざまな基準を満たしている必要があります。この基準は入居者が快適に過ごすためにも不可欠なものであるため、どのようなことが決められているのか見ていきましょう。
人員配置基準
サービス付き高齢者向け住宅では、下記いずれかの資格を有した人員が日中は常駐して、状況把握サービス(安否確認サービス)・生活相談サービスを提供することとされています。(常駐しない時間帯は緊急通報システムで対応)
● 社会福祉法人・医療法人・指定居宅サービス事業所などの職員
● 医師・看護師・介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員・ヘルパー2級以上の資格を有する者
サ高住に入居するからには、生活相談に魅力を感じている方が多いと考えられますが、それぞれの資格者によって専門ジャンルは異なります。たとえば病気について相談したい場合は医師・看護師が在籍しているサ高住を選ぶといいでしょう。一方、それほど専門的な相談をする予定がなければ、配置人員の資格はそれほど気にしなくてもいいかもしれません。
設置基準
サービス付き高齢者向け住宅は入居者が快適に暮らしやすいように、ハード面の基準も定められています。主な基準は次のとおりです。
● 居室の床面積は原則25平方メートル以上
● バリアフリー構造(廊下幅の広さ確保・段差の解消・手すり設置など)
なお、居室の床面積は原則として25平方メートル以上とされていますが、居間・食堂・台所・その他の住宅の部分が高齢者の共同利用に十分な面積を有している場合には、18平方メートル以上でも構わないとされています。
また、各居住部分に台所・水洗便所・収納設備・洗面設備・浴室を備えていることも条件です。ただし共同利用に適切な台所・収納設備・浴室を備えている場合は、これら設備が各戸になくとも構わないとされています。
運営基準
運営基準で重要なポイントは次の3つです。
● 必須サービスが提供されている
● 居住者の安定が図られた契約となっている
● 敷金・家賃・サービス対価以外の金銭を徴収しない
繰り返しとなりますが、サ高住では「安否確認」と「生活相談」が必ず提供されています。この2点の提供状態については、必ず確認しましょう。また、敷金・家賃・サービス対価以外の金銭を徴収されることはありません。不明瞭な名目での請求がある場合、それがサービス対価なのか、もしくは運営基準から外れた金銭なのか、念のため確認してみてください。
サービス付き高齢者向け住宅の契約形態
すでに記事内で少し触れましたが、一般的な有料老人ホームの契約形態は『建物に住むための契約』『各種サービスを利用するための契約』の2つを含有した利用権方式であるのに対し、サービス付き高齢者向け住宅の契約形態は「基本賃貸借契約」です。ここからはサ高住の契約形態について、より詳しく見ていきましょう。
「建物賃貸借方式」と「終身建物賃貸借方式」の2種類
一口に「賃貸借契約」といっても、サ高住の契約形態は「建物賃貸借方式」「終身建物賃貸借方式」の2種類に分けられます。どちらも居室を借りる契約ですが、若干の差異があるため、自身のニーズにマッチした契約形態を選びましょう。
建物賃貸借方式とは
「建物賃貸借方式」はその名のとおり建物に住むための契約で、一般的な賃貸住宅(アパートなど)を借りるときと同じ内容です。契約期間が存在するため、住み続けるためには更新する必要があります。(更新費用はかからないケースが多いです)
なお契約期間が存在するといっても、「普通建物賃貸借契約」を結んでいる場合、正当事由がない限り更新することが前提となっているため安心してください。また、通常の賃貸借契約であるため、もし入居者が亡くなった場合、その契約内容は相続人に引き継がれます。
終身建物賃貸借方式とは
「終身建物賃貸借方式」も建物に住むための契約ですが、契約期間がなく、亡くなるまで住み続けられることが特徴です。ただし契約締結者が亡くなった場合、契約が自動的に終了するため、契約内容が相続人に引き継がれることはありません。煩雑な契約終了手続きが存在しないため、相続人の負担を減らせることが特徴です。
サービス付き高齢者向け住宅のメリット
サービス付き高齢者向け住宅に入居するメリットは、以下のとおりです。
・供給数が多く選択肢が豊富
・バリアフリー構造で生活しやすい
・生活の自由度が高い
・自立した高齢者も入居できる
それぞれ解説します。
供給数が多く選択肢が豊富

※サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム「サービス付き高齢者向け住宅の登録状況(R5.8末時点)」を参考に作成
サービス付き高齢者向け住宅は、供給数が多く、有料老人ホームに比べると入居難易度は高くありません。幅広い選択肢の中から自分に合った住宅を見つけやすい、というメリットもあります。
バリアフリー構造で生活しやすい
サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリー構造で設計されているため、段差でつまずいて怪我をしたり、廊下で転倒したりするリスクを抑えて安全に生活できます。
特に、高齢者の転倒には注意が必要です。たった一度の転倒によって骨折したり、頭を強く打ったりして、寝たきりになってしまう可能性もあります。
バリアフリーが徹底されたサービス付き高齢者向け住宅なら、安心して生活できるでしょう。
生活の自由度が高い
サービス付き高齢者向け住宅では、ほかの介護施設のように1日のスケジュールが決まっているわけではありません。いつでも自由に外出できたり、好きな時間に入浴できたりします。(身体の状態により、職員の付き添いや介助が必要な場合は要相談となります。)
そのため、生活の自由度が高く、これまでの生活とギャップを感じにくいのがメリットです。
自立した高齢者も入居できる
サービス付き高齢者向け住宅は、自立している方も幅広く受け入れています。現在介護が必要ないものの、将来的に介護度が変化することを見据えて入居したい方や、自宅での生活に不安を感じ始めた方などにもおすすめです。
サービス付き高齢者向け住宅のデメリット
一方、サービス付き高齢者向け住宅に入居することには、以下のようなデメリットがあります。
・要介護度が高い方や認知症の方は入居できない可能性がある
・夜間の見守り体制が希薄な傾向にある
・医師や看護師が常駐していない施設も多い
介護施設に入居した方がよいケースもあるため、メリットとデメリットを比較して、よく検討してから入居先を決めることが大切です。
要介護度が高い方や認知症の方は入居できない可能性がある
サービス付き高齢者向け住宅の中でも、一般型の場合は、要介護度が高い方や認知症の方を受け入れていない可能性があります。
また、入居途中で身体状況が大きく変化し、施設に退去を勧められるケースも少なくありません。
入居条件を事前に確認しておくことや、入居中に身体状況が変化した際の住み替え先について検討しておくことが欠かせません。
夜間の見守り体制が希薄な傾向にある
夜間の見守り体制は、老人ホームやそのほかの介護施設に比べると希薄な傾向にあります。24時間の見守りが必要な方には、サービス付き高齢者向け住宅への入居はおすすめできません。
医師や看護師が常駐していない住宅も多い
サービス付き高齢者向け住宅の中には、医師や看護師が常駐していない住宅も多いです。医療ケアの充実度を重視する場合は、サービス付き高齢者向け住宅ではなく、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームの方が適しているでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅の入居難易度は?
ここまでの情報をふまえ、サービス付き高齢者向け住宅への入居を前向きに検討している方も多いでしょう。しかし普通の賃貸住宅と比べ、サービス付き高齢者向け住宅への入居は簡単ではないのではないかと懸念している方もいるのではないでしょうか。
サ高住の登録戸数は年々増加しており、国土交通省の資料「サービス付き高齢者向け住宅の現状等」によると、その数は令和2年11月末時点で260,854戸となっています。しかし入居率は90%を超えており、必ずしも空きが多い状況とはいえません。(とくに介護型は母数も少なく、なかなか空室が発生しないでしょう)
しかしこの記事で紹介してきたとおり、サ高住への入居条件そのものは、特別養護老人ホームなどと比べれば厳しくありません。気になる施設の空き状況を定期的に確認し、空室を見つけたらすぐに申し込むようにするといいでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅に入居するまでの流れ

サービス付き高齢者向け住宅に入居するまでの流れは、以下のとおりです。
1.希望条件を整理する
2.希望に合うサービス付き高齢者向け住宅を検索する
3.見学で比較検討をする
4.申し込み・必要書類を提出する
5.面談・入居審査
6.契約・入居
まずは、ご本人とご家族で希望条件を洗い出しましょう。すべての条件を満たすサービス付き高齢者向け住宅は難しいため、条件に優先順位をつけることが大切です。
その後、条件に合う施設を2〜3ヵ所ほど見学し、よく比較検討したうえで申し込み先を決めてください。
サービス付き高齢者向け住宅を選ぶ際のポイント
それではサービス付き高齢者向け住宅を選ぶ際のポイントについても見ていきましょう。とくに確認すべきポイントは次の5つです。
● 立地
● 費用
● サービス内容
● 居住環境
● 雰囲気
それぞれ詳しく解説します。
1.立地
サ高住は入居者が自立して生活することを前提としているため、日常生活に必要な施設が一通り揃っている立地のほうが快適に暮らせます。通常の賃貸住宅を探すときと同じく、スーパーや金融機関、公共交通機関などへのアクセスは必ずチェックしましょう。持病がある場合は、医療機関へのアクセスも要確認です。また、親族の居住地に近いエリアのサ高住を選んだほうが、交流を保ちやすいでしょう。もちろん、利用者本人が住みたいと感じるエリアであるかどうかも大切です。
2.費用
サ高住にかかる費用の大部分は「家賃」です。これはエリアによって相場も異なるため、まずは予算を決めてから立地を絞り込んだほうが探しやすいでしょう。敷金・礼金の扱いは施設により異なるため、ここも要チェックです。
食事提供などのオプション費用については、すぐに利用する予定がなくても将来的に必要になるかもしれないため、あらかじめ確認しておいたほうがいいでしょう。また、介護サービスが必要となることも見据えて、予算にはある程度の余裕を持たせておくと安心です。
3.サービス内容
サ高住では「安否確認サービス」と「生活相談サービス」の2つは必ず提供されますが、その他のサービスについては施設ごとにラインナップが異なります。食事提供や生活支援、介護など、利用する可能性が高いサービスの提供状況は確認しておきましょう。
たとえば手作りの料理が食べたい場合、施設内の厨房で食事を作っているサ高住を選んだほうがいいでしょう。介護サービスを活用する予定がある場合、介護事業所が併設されているサ高住を選んだほうが安心です。
4.居住環境
居室の広さ、水周りの設備、さらに共有施設など、居住環境を左右する要素についても確認しておきましょう。先述したとおりサ高住として登録を受けるためには、床面積やバリアフリー構造などの基準を満たしている必要がありますが、各種設備のグレードについては施設によって異なります。たとえば自炊を生きがいにしている場合はキッチンを重視するなど、やはり通常の賃貸住宅を探すときと同じ目線でチェックしてみてください。
5.雰囲気
主観的な要素となりますが、施設の雰囲気も重要な要素です。共用の娯楽スペースで入居者がコミュニケーションを取っている様子や、働いているスタッフの表情など、見学時に「雰囲気がいい」と感じた施設に入居したほうが、居住後の満足度も高いでしょう。雰囲気を肌で感じるためにも、パンフレットなどのみで入居先を選ぶのではなく、一度は現地に訪れてみることをおすすめします。
サービス付き高齢者向け住宅に関するよくある質問
最後に、サービス付き高齢者向け住宅についてよくある質問を紹介します。
Q1.入居中に退去を求められるケースはある?
サービス付き高齢者向け住宅に入居している途中で、退去を求められることはあるのでしょうか?
サービス付き高齢者向け住宅入居中に、強制的に退去となることは基本的にありません。しかし、長期の入院が必要になった場合や、サービス付き高齢者向け住宅で対応しきれないほど介護度が重くなった場合、認知症を患った場合などは、住み替えの相談をされる可能性があります。また、ほかの入居者や住宅にとって迷惑な行為をすることも、退去を求められる原因になりうるため、注意が必要です。
Q2.サービス付き高齢者向け住宅はどのような人におすすめ?
老人ホームにするかサービス付き高齢者向け住宅にするか迷っています。サービス付き高齢者向け住宅は、どのような人におすすめですか。
サービス付き高齢者向け住宅は、自立状態である、あるいは要介護度があまり高くない方におすすめです。介護施設で介護サービスを受けるほどではないもの、一人での生活に不安がある方や、見守りや安否確認サービスを利用して安心して生活したい方などに適しています。
Q3.サービス付き高齢者向け住宅に入居すべきタイミングは?
サービス付き高齢者向け住宅にはいつ頃入居すべきですか?
サービス付き高齢者向け住宅に入居すべきタイミングの目安は、一人暮らしに不安を感じたときです。自宅で転倒したり怪我をしたりする前に、安全な環境に移ることがおすすめです。また、ご本人が元気なうちに住宅選びをスタートさせることにより、ご本人・ご家族双方が納得できる入居先選びが実現します。
Q4.入居後も介護サービスやケアマネジャーを継続できる?
現在利用している介護サービスやケアマネジャーは、入居後も継続できますか?
サービス付き高齢者向け住宅は介護施設ではなく住宅であるため、基本的には、入居後もこれまで利用していた介護サービスやケアマネジャーを継続できます。ただし、ケアマネジャーの担当エリアから大きく外れている、あるいは施設に居宅介護支援事業所を併設している場合は、入居前に確認が必要です。
まとめ
高齢になり生活に不安はあるものの、自立して暮らしていきたいと考えている高齢者の間で、サービス付き高齢者向け住宅の人気は年々高まっています。なかなか空室が見つからないかもしれませんが、サ高住の登録数は年々増えているため、チャンスを逃さないために定期的に情報収集していくことが重要です。スマートシニアでも条件を絞ってサ高住を検索できるため、ぜひ活用してみてください。
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。