特別養護老人ホーム(特養)とは?特徴や費用について徹底解説!
特別養護老人ホーム(特養)は、要介護3以上の認定を受けた高齢者が安心して生活できるよう、24時間体制で多様な介護サービスを提供する公的施設です。
日常生活の基本的な支援からレクリエーション活動、看取りケアまで、入居者一人ひとりのニーズに合わせたサポートが行われます。
特別養護老人ホームには、いくつかの種類があり、費用も異なるため、入居条件も合わせて紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
特別養護老人ホーム(特養)とは?
特別養護老人ホーム(特養)とは、要介護3以上の認定を受けた方が生活するための施設です。
特養は、日常生活を自立して送ることが難しい高齢者に対して、食事・入浴・排泄などの基本的な支援から、レクリエーションなどの余暇活動まで、24時間体制で包括的な介護サービスを提供します。
特養の最大の特徴は、長期的な介護を必要とする高齢者が、安心して生活できる環境が整えられている点です。
施設によっては終末期の高齢者を対象とした看取りケアまで提供しているため、希望すれば最期のときまで暮らし続けられます。そのため、「終の住処(ついのすみか)」とも呼ばれている施設です。
特別養護老人ホーム(特養)のサービス内容
特別養護老人ホーム(特養)では、入居者が安心して快適な生活を送れるよう、多様なサービスが提供されています。
生活支援サービス
特養では、入居者一人ひとりの身体状態や認知症の有無に応じた個別の支援計画に基づいて、日常生活に必要な支援を行います。例えば、移動や移乗動作の支援やシーツ交換、居室の掃除、家族への連絡などです。
他にも、食事の介助・衣服の着脱・排泄の介助など、一人で生活することが難しい高齢者に対して、尊厳を保ちながら必要なサポートを提供します。
食事サービス
特養の食事サービスは、栄養バランスが考慮されたメニューで、入居者の嚥下(えんげ)能力に合わせた食事(一口大カット・ソフト食・ミキサー食など)を提供します。
また、持病に合わせて、糖尿病食・心臓病食・腎臓病食など、特定の栄養素を制限した食事も提供可能です。
他にも、季節の行事に合わせた特別メニューや、誕生日には特別な食事を用意するなど、食の楽しみも大切にしています。
入浴サービス
入浴は、身体を清潔に保つだけでなく、リラクゼーションの効果もあります。特養では、安全・快適に入浴できるように、スタッフが入居者一人ひとりの体調や好みに応じた入浴介助を行います。
また、身体状況に合わせた機械浴(リフト浴・チェアー浴・ストレッチャー浴)も準備されており、寝たきりになっても入浴可能です。介護保険制度の定めにより、最低週2回の入浴が行われています。
機能訓練
理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・看護師などが機能訓練指導員となり、一人ひとりに合わせた機能訓練メニューを作成・実行します。機能訓練は、入居者の自立支援と健康維持が目的です。
機能訓練を行うことで、筋力の維持向上や関節の可動域を広げ、日常生活動作(ADL)の維持・改善が期待できます。
レクリエーション
季節イベントの開催・趣味活動・外出イベントなど、入居者が社交的に活動できる機会を提供します。レクリエーションの中には身体を使ったメニューもあり、機能訓練の一環としても行われています。心の健康を支えるレクリエーションも、特養の大切なサービスのひとつです。
レクリエーションに参加することで、他者との交流が図れるだけでなく、ストレス解消や認知機能の改善も期待できます。
看取り
看取りケアでは、死に対する恐怖や痛みによる不安から精神的に不安定になる入居者に対し、看護師や介護士などが精神的なケアを重視しています。
職員は悩みを傾聴し、顔なじみの職員による安心感の提供や、身体のケアに加えて、入居者がその人らしい最期を迎えられるよう支援します。また、看取りケアにおいては、入居者だけでなく家族への精神的なケアも大切です。
家族が安心して過ごせるような支援や、死期が近づく兆候の説明なども行い、入居者と家族が穏やかに最期の時を過ごせるよう配慮します。
特別養護老人ホーム(特養)の種類
特養といっても様々な種類があるのをご存じでしょうか。それぞれの特徴を紹介します。
広域型特別養護老人ホーム
広域型特別養護老人ホームは、複数の市区町村にまたがる広範囲から入居者を受け入れる施設のことを指します。一般的に大規模であり、他県にお住まいの高齢者が入居することも可能です。
広域型特養は、地域の枠を超えてサービスを提供することで、入居待機中の高齢者の問題を解消することにも貢献しています。
さまざまな地域からの入居者が集まることで、多様な背景を持つ人々との交流が生まれ、社会的なつながりやコミュニティ形成ができる場となっています。
地域密着型特養
地域密着型特養とは、地域や家族との結びつきを重視し、利用者一人ひとりの意思や人格を尊重しながら、地域密着型施設サービス計画に基づいた生活支援を提供します。
施設は29人以下の入所定員で、プライバシーに配慮された施設です。ユニットケアを実施し、10人以下で構成された少人数のケア体制により、「今までと変わらない生活」を目指します。
地域密着型サービスは、認知症や要介護状態の高齢者が地元で安心して暮らし続けられるよう支援する制度です。2006年に介護保険法の改正によって設立され、各市区町村が認定した事業者が地域住民に向けて多様な支援を提供しています。
このサービスは特定の市町村に住む人だけが利用でき、事業所は地元の人々との交流がしやすい場所に設けられていることが大きな特徴です。また、地域のボランティア団体や医療機関と連携を取りながら、日々の生活や介護が必要な人々のサポートを行います。
施設の規模が比較的小さいため、一人ひとりのニーズに合わせた細やかな対応が可能で、自分の住んでいる地域で過ごしたいと考える人にとって、非常に重宝されています。
サテライト型
サテライト型特養は、広域型特別養護老人ホーム(特養)の近くで運営される施設で、主に地元の市区町村に住む人たちが入所できます。本体施設から車で20分程度の距離に位置しており、地域に密着したサービスを提供することを目的とした施設です。
サテライト型特養は、より多くの高齢者にサービスを提供するために、スタッフの配置や施設の設備に関する基準が一般的な特養よりも緩和されています。
たとえば、医師や栄養士などの専門スタッフを常に配置する必要がなく、調理室の代わりに簡単な調理設備で対応できるなどの決まりがあり、サービスの提供をより柔軟に行うことが可能になっている施設です。
単独型
単独型特養はサテライト型特養と異なり、自立した施設として地域に根ざした特別養護老人ホームを指します。ユニットケアが採用されており、共有のリビングスペースを中心に、プライバシーを守れる個室が配置されています。
この設計により、少人数で親密な雰囲気の中、質の高い介護サービスを受けることが可能です。
また、ショートステイやデイサービス、小規模多機能型介護などのサービスを併設している施設もあり、多様な介護ニーズに応えることができる場合もあります。
地域サポート型特別養護老人ホーム
地域サポート型特別養護老人ホームは、在宅の高齢者向けに特化した支援を行う施設です。見守りや生活相談など、高齢者が自宅で安心して暮らせるようなサービスを提供しています。
要介護認定がなくても、65歳以上で見守りサービスが必要な高齢者なら誰でも利用することが可能です。
しかし、地域サポート型特別養護老人ホームを設けている自治体は少ないため、選択肢に上がらない可能性があります。主に、一人暮らしの高齢者や高齢の夫婦世帯、家族と住んでいても日中は一人になる高齢者が対象です。
特別養護老人ホーム(特養)の入居条件
特別養護老人ホームへの入居条件は、以下の通りです。
【入居条件】
・65歳以上の方で、要介護3以上の認定を受けている高齢者。
・40歳から64歳で特定の疾病により、要介護3以上の認定を受けている方。
【特例】
・要介護1または2の認定を受けているが、特定の理由で在宅介護が困難な方。
要介護1または2でも特例で入居が認められることがあります。特例が適用される条件は以下の通りです。
【特例条件】
・認知症や知的障害、精神障害等により日常生活や意思の疎通が難しい方。
・家族や同居者からの虐待が疑われる場合。
・一人暮らし、または支援が期待できない病弱・高齢の同居家族がいる方。
市区町村の認可が必要になるため、審査に時間を要する場合があります。希望する場合は早めに申請や手続きをしていくと良いでしょう。
次に特養で生活を続けられなくなり、退去を求められるケースを紹介します。
・要介護度が改善して軽くなった(要介護2以下)場合。
・体調が悪化し、長期にわたる医療行為や入院が必要になった場合。
・他の入居者や職員に迷惑をかける行為が繰り返された場合。
・入居申込み時の書類に虚偽があった場合。
・利用料金の支払いがなされない場合。
ただし、回復が見込めない方への看取りケアを行う施設も増えています。入居を検討される際は、事前に施設の方針や対応を確認しておくことが重要です。
特別養護老人ホーム(特養)の費用相場
特別養護老人ホームは公的施設であり、介護保険の適用を受けるため、民間の有料老人ホームと比較して費用が比較的安価に設定されています。
特に、多くの有料老人ホームで必要とされる高額な入居一時金が必要ない点が大きな特徴です。月額の費用はおおむね10〜15万円程度に設定されています。
また、特養では、負担限度額申請が適応となるため、低所得者や生活保護の方はさらに安く利用できます。
食費や居住費に関しては施設ごとに差があるので注意が必要です。食費・居住費の最低額は全国で以下のように定められています。
食費(日) | 居住日(日) | |
個室 | 多床室 | |
1,445円 | 2,006円 | 377円 |
※※2024年2月現在
上記費用に加えて、地域性や物価などの要因から、施設ごとに金額調整が行われています。しかし、世帯収入に応じた上限額が設定されており、負担限度額認定を受ければ食費や居住費にかかる費用を抑えられる場合があります。
特別養護老人ホームのメリット
特別養護老人ホームのメリットは、24時間体制での専門的な介護サービスを受けられる点です。要介護度が高い高齢者も安心して生活でき、個々の介護ニーズに合わせたきめ細かいケアが提供されます。
また、公的な施設であるため、介護保険適用による経済的な負担軽減も大きな利点です。
また、希望があれば看取りケアを受けられる施設もあります。基本的には入所すれば、比較的安価な利用料で最期まで生活できるとして人気の施設です。
特別養護老人ホームのデメリット
特別養護老人ホームのデメリットとしては、すでに入居されている方がなんらかの理由により退居するまで部屋が空かないため、入居が決まるまでに長い時間を要することです。
メリットで紹介した理由から入居を希望される方が多いため、3〜12ヶ月程度(場合によってはそれ以上)の待機期間が発生します。
また、施設によってはプライバシーの確保が難しい(従来型の特養など)場合もあり、一人ひとりの自由度が制限されることがあります。さらに、家族や居宅で受けていたサービス事業所から離れることによる心理的な負担も考慮する必要があるでしょう。
特別養護老人ホーム(特養)の入居までの流れ
特別養護老人ホーム(特養)への入居までには、いくつかの過程があります。それぞれ順番に見ていきましょう。
ステップ1: 情報収集・申込み
入居希望者や家族は、地域の特別養護老人ホームに関する情報を収集します。この段階では、施設の立地・サービス内容・コストなどを比較検討し、条件に合った施設を選んで申込みを行いましょう。
申込みには、要介護認定結果や健康状態に関する情報が必要になる場合があります。申込書は、施設のある地域を管轄している市区町村の役所や希望する施設で入手するか、役所ホームページからダウンロード可能です。
ステップ2: 入居可否判断・診療情報提供
申込み後、施設側は提出された書類や健康状態を基に入居可否を判断します。必要に応じて、追加の健康診断や診療情報の提供を求められることもあるため、希望する施設に必要な書類の確認をしておくと良いでしょう。
この時点では、施設が提供するサービスとのミスマッチがないかの確認がおこなわれます。また、申込を出した時に家族の印象なども影響する場合があるため、注意しましょう。
ステップ3: 入居前面談・契約
入居が決定した後は、施設側との入居前面談が行われます。面談では、入居者の生活習慣や希望するサービス、医療ニーズについて詳細に話し合い、最終的な契約に至ります。
家族との面談を行う施設も多いため、質問内容や伝えることなどをまとめておくと良いでしょう。入居条件・費用負担・サービス内容などの契約内容を確認し、双方が納得した上で契約を結びます。
まとめ
特別養護老人ホームへは、多様なサービスが比較的安価に提供されているため、介護施設の中でも人気があります。
しかし、入居希望者が多く、申し込みをしてもすぐに入居できないことがほとんどです。入居を検討する際は早めに申し込みすることをおすすめします。
長期利用を前提とした施設のため、最期の場所になることも珍しくありません。そのため、入居を希望する特養選びは慎重に行いましょう。
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