特別養護老人ホーム(特養)とは?費用や特徴、入居条件と入居難易度を紹介

特別養護老人ホーム(特養)とは?

特別養護老人ホームとは要介護高齢者のための生活施設で、介護保険サービスを利用できる公的施設「介護保険施設」の一種です。介護保険制度上の正式名称は「介護老人福祉施設」ですが、一般的に特別養護老人ホーム(通称:特養)と呼ばれているため、この記事でも特養と記載します。
さて、介護保険施設は全部で3種類に分けられますが、特養は「要介護高齢者の生活の場」としての役割を担っていることが特徴です。各施設の役割について比べてみましょう。
介護保険施設の種類 | 役割 |
特別養護老人ホーム(特養) | 要介護高齢者の生活の場 主として介護サービスを提供 |
介護老人保健施設(老健) | 要介護高齢者の自宅復帰 リハビリテーションを提供 |
介護医療院 (2024年に廃止された介護療養型医療施設の転換先) | 要介護高齢者の長期療養・生活 介護と医療の両方を提供 |
特養は入浴・排泄・食事といった日常生活の世話はもちろん、機能訓練や健康管理、さらには療養上の世話も提供しており、他施設よりも「介護」に重きを置いているのです。そのため介護が必要な方が亡くなるまで特養で生活することも多く、いわゆる「終の棲家」としても機能しています。
特別養護老人ホームの特徴
先ほども少し触れましたが、特別養護老人ホームの特徴としては次の2点が挙げられます。
● 24時間体制で介護サービスが受けられる
● 看取り介護に対応している施設が多い
それぞれの特徴について、さらに詳しく見ていきましょう。
24時間体制で介護サービスが受けられる
特養には介護スタッフが24時間常駐しており、昼夜を問わず介護サービスを受けられます。そのため介護の必要性が高い方でも安心して生活できることが特徴です。排泄介助や体位変換などのいわゆる「ナイトケア」を負担に感じている場合は、特養への入居を検討してみてください。
なお、日中は看護師も配置されているため、一定の医療ケア(インスリン注射や点滴、経管栄養など)も受けられます。ただし看護師については24時間配置が義務付けられていないため、夜間の対応範囲は施設によって異なることを覚えておきましょう。
看取り介護に対応している施設が多い
特養は長期間の利用を前提としています。終身利用する方も珍しくなく、看取り介護に対応している施設が多いことも特徴です。とくに病気にかかっているわけではないものの日常生活動作の機能が著しく低下し、自宅で暮らすことが現実的ではない場合には、看取りに対応している特養への入居を検討してみてください。
なお、看取り自体は「介護付き有料老人ホーム」や「グループホーム」など他の高齢者向け施設でも対応しています。しかしこれらの施設の利用費用は、特養よりも高いケースが多いです。終身で利用したいものの、なるべくコストも抑えたい場合には、特養への入居を優先するといいでしょう。
特別養護老人ホームの入居条件

手厚い介護サービスを受けられる特養ですが、誰でも入居できるわけではありません。特養の入居条件は次のとおりです。
● 要介護認定で「要介護3~5」と認定された方(原則)
● 原則65歳以上の方
それぞれの条件について詳しく見ていきましょう。
要介護認定で「要介護3~5」と認定された方
要介護認定とは、被保険者(高齢者)が「介護を要する状態」であると、保険者(自治体)が認定することです。要介護と判断された場合、介護の必要性に応じて要支援1〜2・要介護1〜5の7段階のいずれかに認定されます。(要支援1に近いほど介護の必要性が低く、要介護5に近いほど介護の必要性が高い)
要介護と認定されれば介護保険の給付対象となりますが、特養については原則として要介護3〜5と認定された方のみが入居できます。それぞれの区分がどのような状態なのか、例を見てみましょう。
認定区分 | 認定の目安 | 具体的な状態 |
要介護3 | 要介護認定等基準時間が70分以上90分未満 要介護2と比べて基本動作能力(日常活動に必要な能力)が著しく低下している ほぼ全面的な介護が必要な状態 | 手すりがあっても自分で立ち上がれない 杖を使っても自力歩行できない スプーンを使っても自分で食事ができない 認知症による徘徊症状が見られる |
要介護4 | 要介護認定等基準時間が90分以上110分未満 要介護3よりも動作能力が低下している 介護がなければ日常生活を送ることは難しい 思考力・理解力にも著しい低下が見られる | 日常生活動作をほとんど自分で行えない(トイレ・入浴・食事など) 介助がなければ座れない 要介護3よりも認知症の症状が強い |
要介護5 | 要介護認定等基準時間が110分以上 要介護4よりもさらに動作能力が低下している 介護がなければ生活を送ることはほぼ不可能 コミュニケーション・意思疎通が難しい | 自力で食べ物を飲み込めない 自力で寝返りができない (24時間の介護を要する) |
このように介護の必要性が著しく高い高齢者でなければ、原則として特養に入居することはできません。(例外は後述します)
原則65歳以上の方
そもそも介護保険サービスを利用できるのは、原則として要介護認定を受けた65歳以上の高齢者のみとされています。そのため介護保険施設である特養に入居できるのも、65歳以上の高齢者のみです。ただし次の特定疾病が原因で要介護状態となった場合、40歳から介護保険サービスを利用できます。
- がん(末期)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
つまり、これらの特定疾病が原因で要介護3以上となった場合には、40歳〜64歳の方であっても特養の入居対象となるのです。
要介護1~2の方が入居できるケース
さて、基本的には要介護3〜5の人のみが特養へ入居できますが、以下のいずれかの状態に当てはまる場合には、要介護1〜2の方であっても入居対象となりえます。
● 認知症に起因して日常生活に支障のある症状が見られる
● 知的障害・精神障害などがあり、日常生活に支障をきたす症状・行動や、意思疎通の困難さが頻繁に見られる
● 家族などからの深刻な虐待が疑われ、心身の安全確保が困難
● 「単身世帯」「同居家族の高齢・病弱」などの理由により家族からの支援が期待できず、地域での介護サービス・生活支援の供給が不十分
このような場合は特例として入居が認められる可能性もあるため、ケアマネジャーや地域包括支援センターの担当者などに相談してみてください。
特別養護老人ホームの種類
さて、特別老人ホームは「広域型特別養護老人ホーム」「地域密着型特別養護老人ホーム」「地域サポート型特別養護老人ホーム」の3種類に分けられます。それぞれの概要は次のとおりです。
比較項目 | 広域型 | 地域密着型 | 地域サポート型 | |
サテライト型 | 単独型 | |||
利用条件 | 居住地の制限なく入居可能 | 施設のある市区町村に住んでいる高齢者 | 在宅介護を受けている高齢者 | |
定員 | 30人以上 | 29人以下 | 規定なし | |
サービス内容 | 食事・入浴・排泄などの介護 機能訓練 レクリエーション | 24時間の見守り・巡回 | ||
特徴 | 居住地の制限がないため入居しやすい | 本体施設の近隣にあるため、設置基準・人員基準が緩和されている | 本体施設がないため少人数介護に特化している | サービス提供地域が限定的 |
それぞれの特徴について、さらに詳しく見ていきましょう。
広域型特別養護老人ホーム
広域型特別養護老人ホームはいわゆる通常の特養のことで、全国の特養の大半が広域型として運用されています。入所要件に居住地制限がなく、入所定員も30人以上と大規模なことから、他の特養と比べると比較的入所しやすいことが特徴です。
介護スタッフだけではなく、医師や看護師・ケアマネジャー・機能訓練員などの各専門職が配置されているため、一定範囲の医療ケアやリハビリテーションも受けられます。
地域密着型特別養護老人ホーム
地域密着型特別養護老人ホームは、定員29人以下の小規模な施設です。施設のある市区町村に住んでいる高齢者のみを対象としており、地域住民や家族との連携を重視しています。施設規模や人員配置基準などにより、さらに「サテライト型」と「単独型」に分類されることが特徴です。
サテライト型
サテライト型は、定員30人以上の広域型特別養護老人ホームなどを本体施設とした小規模な特養のことです。本体施設は郊外に立地するケースが多いですが、サテライト型施設は入居者が慣れ親しんだエリアで生活できるように街中に設置されています。
本来、特養にはさまざまな人員配置基準・設備基準を満たす必要がありますが、サテライト型は本体施設から20分以内程度の距離に設置されるため、各種基準が緩和されていることが特徴です。たとえばサテライト型の施設には、医師・生活相談員・介護支援専門員などを配置する必要がありません。
単独型
本体施設からのサポートを前提に運営されるサテライト型に対し、その施設単体でサービス運営するのが単独型です。一般的な特養と異なり小規模・少人数のアットホームな雰囲気が特徴ですが、広域型特別養護老人ホームと同等の設備を持ち、サービス内容にも遜色はありません。
個室とリビングの両方を備えた「ユニット型」で運営している施設が多く、小規模多機能型介護やデイサービスなどを併設していることもあります。
地域サポート型特別養護老人ホーム
地域サポート型特別養護老人ホームは、在宅介護の高齢者を対象に24時間体制で生活支援を行う施設です。施設へ入居してもらうのではなく、生活援助員が日中時間帯に訪問したり、看護師が夜間相談に対応したりすることで、要介護者ができる限り自宅で過ごせる体制を整えています。ただし地域サポート型施設の数は非常に少なく、必ずしもサービスを受けられるとは限りません。
特別養護老人ホームの費用
特別養護老人ホームの入居にかかる費用相場は次のとおりです。
初期費用 | 月額利用料 |
0円 | 4.9~15.0万円 |
初期費用がかからず、さらに月額利用料も民間施設よりも低く抑えられていることが特徴です。なお、月額利用料の内訳は次の4つに大別されます。
● 居住費
● 食費
● 介護サービス費
● 日常生活費
これら費用がどのように決まるのか、詳しく見ていきましょう。
居住費と食費は居室のタイプによって決まる
実は特養には、4種類の居室タイプがあり、それぞれ費用が異なります。
比較項目 | 従来型個室 | 多床室 | ユニット型個室 | ユニット型個室的多床室 |
30日あたりの費用 | 36,930円 | 27,450円 | 61,980円 | 51,840円 |
「ユニット型」は入居者一人ひとりに合わせた個別ケアが提供されることもあり、従来型個室や多床室と比べて費用が高めに設定されています。なお食費についてはいずれの居室タイプであっても共通で、30日あたりの費用は43,350円(一日1,445円)です。
居住費・食費の軽減について
特養を含む介護保険施設は公的施設であることから、低所得かつ預貯金が一定金額以下の方が入居する場合、居住費・食費の負担を軽減する措置を受けられる可能性があります。主な対象者は次のとおりです。
段階 | 対象 |
第1段階 | 老齢福祉年金受給権者 生活保護受給者 |
第2段階 | 本人の合計所得金額・課税年金・非課税年金の合計が年間80万円以下 |
第3段階(1) | 本人の合計所得金額・課税年金・非課税年金の合計が年額80万円を超え120万円以下 |
第3段階(2) | 世帯全員が市区町村民税非課税で、なおかつ本人の合計所得金額・課税年金・非課税年金の合計が年額120万円超 |
上記のいずれかに該当する場合は、自治体へ「負担限度額認定」を申請してみてください。
介護サービス費・日常生活費
介護サービス費は介護保険の給付対象とされており、個室タイプと要介護度によって1日あたりの自己負担額が決まります。
要介護度 | 自己負担額(1日あたり) | |||
従来型個室 | 多床室 | ユニット型個室 | ユニット型個室的多床室 | |
要介護1 | 589円 | 589円 | 670円 | 670円 |
要介護2 | 659円 | 659円 | 740円 | 740円 |
要介護3 | 732円 | 732円 | 815円 | 815円 |
要介護4 | 802円 | 802円 | 886円 | 886円 |
要介護5 | 871円 | 871円 | 955円 | 955円 |
参考:厚生労働省
また、特養で日々行われるレクリエーションなどにかかる費用や、理美容代・日用品購入費などが、「日常生活費」として徴収されます。施設によって異なりますが、おおむね月額1万円程度が相場です。特別養護老人ホームにかかる費用についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひ下記の記事もチェックしてみてください。
特別養護老人ホームで受けられるサービス

特別養護老人ホームでは次のようなサービスを受けられます。
● 生活支援サービス
● 食事サービス
● 入浴サービス
● 機能訓練(リハビリ)
● レクリエーション
● 看取り対応
それぞれどのようなサービスなのか、詳しく見ていきましょう。
生活支援サービス
特養では、入居者一人ひとりの身体状態や認知症の有無に応じた個別の支援計画に基づいて、日常生活に必要な支援を行います。例えば、移動や移乗動作の支援やシーツ交換、居室の掃除、家族への連絡などです。
他にも、食事の介助・衣服の着脱・排泄の介助など、一人で生活することが難しい高齢者に対して、尊厳を保ちながら必要なサポートを提供します。
食事サービス
特養の食事サービスは、栄養バランスが考慮されたメニューで、入居者の嚥下(えんげ)能力に合わせた食事(一口大カット・ソフト食・ミキサー食など)を提供します。
また、持病に合わせて、糖尿病食・心臓病食・腎臓病食など、特定の栄養素を制限した食事も提供可能です。
他にも、季節の行事に合わせた特別メニューや、誕生日には特別な食事を用意するなど、食の楽しみも大切にしています。
入浴サービス
特養では一般的に週2〜3回程度、入浴サービスを提供しています。寝たきりの方でも機械浴槽を用いて入浴させてもらえるため、自宅より衛生的に生活できることがポイントです。なお、心身の状態によっては入浴できないこともありますが、そのような場合は清拭ケアも受けられます。
機能訓練(リハビリ)
特養では日常生活に必要な身体機能の改善・減退防止を目的に、機能訓練(リハビリテーション)サービスも提供されています。施設により、理学療法士・作業療法士などが関与した本格的なリハビリを受けることもできるため、入所前より自分でできる動作が増える可能性もあるでしょう。
レクリエーション
入居者が楽しめるように、簡単なゲームやカラオケ、季節にあわせたイベントなどのレクリエーションが催されることもあります。ただしレクリエーションの内容は施設によって異なるため、気になる方は入居前に確認してみてください。
看取り対応
特養は終身利用する方も多いため、看取りにも対応しています。病院ではなく慣れ親しんだ施設で最期を迎えられることは、入居者本人にとっても大きなメリットだといえるでしょう。なお、看取り対応を依頼する場合、月額利用料に「看取り加算」が追加されます。加算費用(自己負担額)は次のとおりです。
看取りに対応した日 | 看取り介護加算Ⅰ (自己負担額1割の場合) |
死亡日45日前~31日前 | 79円/日 |
死亡日30日前~4日前 | 157円/日 |
死亡日前々日・前日 | 742円/日 |
死亡日 | 1,396円/日 |
特別養護老人ホームの人員配置
特別養護老人ホームは、次の基準に基づき人員が配置されています。
職務 | 配置基準 | 主な役割 |
介護職員 | 入居者3名に対して看護職員もしくは介護職員を1人以上 | 要介護者の身体介護 |
生活相談員 | 入所者100名に対して1人以上 | 入居者や家族からの相談対応 行政や医療機関との調整 |
看護職員 | 常勤1人以上 | 入所者の健康管理 ターミナルケア |
機能訓練指導員 | 1人以上(他職務との兼務可能) | 日常生活動作や身体機能などのリハビリテーション |
栄養士 | 1人以上 | 栄養バランスの取れたメニュー作成 |
医師 | 入所者に対して健康管理・療養上の指導を行うために必要な数 | 健康管理・療養上の指導 |
介護職員や看護職員、機能訓練指導員の配置基準については、特定施設入居者生活介護の指定を受けた特定施設(介護付き有料老人ホームなど)と変わりありません。ただし医師や栄養士の配置基準は、特養ならではの配置基準です。また、ユニット型の特養では各ユニットごとにリーダーを配置することも定められており、よりきめ細かな介護が期待できます。
特別養護老人ホームの設備と居室のタイプ
ここまで何度か触れているとおり、特別養護老人ホームには4種類の居室タイプがあります。
比較項目 | 従来型個室 | 多床室 | ユニット型個室 | ユニット型個室的多床室 |
特徴 | 1部屋に1名が入居する | 1部屋に4名ほどが入居する | 居室は完全個室 居室の前に廊下ではなくリビングスペースがある | 大部屋を簡易的な壁で仕切って個室のように使用する |
それぞれの特徴について、さらに詳しく見ていきましょう。
従来型個室
従来型個室は廊下を挟んで個室が並んだタイプの特養です。1部屋に1名が入居し、なおかつ居室から共用スペースまで距離があるため、プライバシーを保ちやすいことがメリットといえるでしょう。
多床室
多床室は1部屋に4名ほどが入居するタイプの特養です。各人のベッドは、家具やカーテンなど可動するもので区切られています。プライバシーは確保しづらいですが、入居費用がもっとも安価なことがメリットです。
ユニット型個室
ユニット型個室は、共有スペース(台所・食堂・リビングなど)の周りを居室が囲んだ造りの特養です。居室の前に廊下ではなくリビングスペースがあるため入居者同士が交流しやすい構造ですが、居室は完全個室なためプライバシーも確保できます。
ユニット型個室的多床室
ユニット型個室的多床室は、大部屋を簡易的な壁(パーテーション)で仕切って個室のように使用するタイプの特養です。従来型の多床室よりはプライバシーを保ちやすく、ユニット型個室より安価に入居できることがメリットといえるでしょう。ユニット単位の固定スタッフからサポートしてもらえるため、個別的なケアを受けやすいことも特徴です。
特別養護老人ホームに入居するメリット
ここまで紹介してきた各種ポイントを踏まえると、特養に入居するメリットとしては次の3点が挙げられます。
● 費用が他の老人ホームと比べて安い
● 長期の入所が可能
● 利用中の病院も通院できる
それぞれのメリットについて詳しく紹介します。
費用が他の老人ホームと比べて安い
特養は公的施設であるため、一般的な老人ホームと比べて安価に利用できます。要介護度が高い高齢者も入居できる施設の利用費用相場を比べてみましょう。
種類 | 費用相場 | ||
入居金 | 月額利用料 | ||
公的施設 | 特別養護老人ホーム(特養) | 0円 | 4.9~15.0万円 |
介護老人保健施設(老健) | 0円 | 6.7~16.2万円 | |
民間施設 | 介護付き有料老人ホーム | 0~630万円 | 15~35.1万円 |
入居金がかからないことはもちろん、月額利用料を10万円未満に抑えることも可能な点は、特養を利用する最大のメリットだといえます。
長期の入所が可能
特養は入居してから長期にわたって暮らし続けることも可能です。病院のように退院を前提とすることもないため、家族の負担を軽減できることもメリットといえるでしょう。
利用中の病院も通院できる
特養に入所してからも、入所前に通っていたかかりつけ医のいる病院へ通うことも可能です。通院時に特養のスタッフが付き添ってくれることもあるため、あらかじめ施設に確認してみてください。(ただし本人の心身状態によっては、外出できないこともあります)
特別養護老人ホームの入居難易度
ここまで紹介したとおり特養はメリットが多いため、入居待ちが発生しているケースが多いです。そのため、たとえ要介護3以上かつ65歳以上の方が希望したとしても、スムーズに特養へ入居できるとは限りません。エリアによっても異なりますが、少なくとも数か月程度の待機時間が発生することは想定しておきましょう。
特別養護老人ホームと他の介護施設との違い
特養に空きがない場合、他の高齢者向け施設への入居を検討しなければなりません。ここからは、特徴とよく比較される施設との違いについて紹介します。
比較項目 | 特養 | 老健 | 介護付き有料老人ホーム | グループホーム |
入居対象 | 要介護3~ | 要介護 | 自立~要介護 | 要支援2~要介護 |
費用感 | 比較的安い | 比較的安い | 高め | 中程度 |
運営元 | 公的施設 (社会福祉法人や地方公共団体) | 民間施設 (株式会社など) | ||
看取り対応 | 可能 |
それぞれの施設の特徴と、特養と比較した際のポイントについて詳しく見ていきましょう。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設(通称:老健)は主にリハビリテーションを目的とした介護施設ですが、看護師が常駐しているため医療ケアにも対応していることが特徴です。病院から自宅へ直接退院することが難しい方が入所し、3〜6か月程度での退所を目指します。
【特別養護老人ホームとの違い】
老健はあくまでも自宅復帰を目指す施設です。そのため特養と異なり、退所を前提としなければなりません。ただし老健へ入所後に病状が悪化し、在宅復帰が難しくなってしまった場合には、痛みや不快感を和らげるターミナルケアを受けることも可能です。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは行政から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている民間有料老人ホームのことです。施設数が多く介護の必要性が高い高齢者も受け入れていることに加え、看取りにも対応しているため、特養の代替に入居する方も少なくありません。
【特別養護老人ホームとの違い】
介護付き有料老人ホームは特養と異なり、民間企業が運営している施設です。そのため特養と比べると利用料が高いことは否めません。一方、介護付き有料老人ホームは施設数が多いため入居待ちが発生しづらく、特養よりもスムーズに入居できることはメリットです。
グループホーム
グループホーム(認知症対応型共同生活介護施設)は、認知症の高齢者を対象とした施設です。認知症患者が5〜9人のユニットを組んで共同生活を送り、自分でできることは自分ですることで、認知症の進行を緩やかにする効果を狙っています。
【特別養護老人ホームとの違い】
グループホームは単純に介護するのではなく、認知症ケアにフォーカスしていることが特徴です。そのため入居中にあまりに要介護度が高くなると、退去を求められる可能性もあります。一方、特養も認知症患者を受け入れていますが、主に身体介護にフォーカスしていることが特徴です。たとえ要介護度が高くなっても、それを理由に退去を求められることはありません。
特別養護老人ホームの入居までの流れ
特別養護老人ホーム(特養)への入居までには、いくつかの過程があります。それぞれ順番に見ていきましょう。
ステップ1:情報収集・申込み
入居希望者や家族は、地域の特別養護老人ホームに関する情報を収集します。この段階では、施設の立地・サービス内容・コストなどを比較検討し、条件に合った施設を選んで申込みを行いましょう。
申込みには、要介護認定結果や健康状態に関する情報が必要になる場合があります。申込書は、施設のある地域を管轄している市区町村の役所や希望する施設で入手するか、役所ホームページからダウンロード可能です。
ステップ2:入居可否判断・診療情報提供
申込み後、施設側は提出された書類や健康状態を基に入居可否を判断します。必要に応じて、追加の健康診断や診療情報の提供を求められることもあるため、希望する施設に必要な書類の確認をしておくと良いでしょう。
この時点では、施設が提供するサービスとのミスマッチがないかの確認がおこなわれます。
また、申込を出した時に家族の印象なども影響する場合があるため、注意しましょう。
ステップ3:入居前面談・契約
入居が決定した後は、施設側との入居前面談が行われます。面談では、入居者の生活習慣や希望するサービス、医療ニーズについて詳細に話し合い、最終的な契約に至ります。
家族との面談を行う施設も多いため、質問内容や伝えることなどをまとめておくと良いでしょう。入居条件・費用負担・サービス内容などの契約内容を確認し、双方が納得した上で契約を結びます。
特養の入居を考えている人におすすめの施設

繰り返しとなりますが、特養は需要に対して施設数が少ないため、入所待ちになりやすいことが最大のデメリットです。そのため一刻も早く介護施設へ入居したい場合には、別の施設を検討しなければなりません。もし特養へ入居したいものの空きがない場合には、次のいずれかの施設も候補に入れてみてください。
● 介護付き有料老人ホーム
● 住宅型有料老人ホーム
なぜ特養の代替となりうるのか、それぞれ詳しく解説します。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは先述したとおり、要介護度の高い高齢者も受け入れている施設です。介護サービスにかかる費用は毎月定額であるため、要介護3以上の方であっても安心して利用できます。また、特養と同じく看取りにも対応しているため、終身利用を前提に入居することも可能です。さらに、介護付き有料老人ホームは施設数が多く、希望したらすぐに入居できる点もメリットといえるでしょう。
特養と比べると、介護付き有料老人ホームにかかる費用のほうが2倍近く高くなることもありますが、スムーズに高齢者向け施設に入居したい場合には、ぜひ介護付き有料老人ホームを選んでみてください。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームも自立〜要介護の方を受け入れている高齢者向け施設ですが、こちらは施設としては介護サービスを提供していません。サポートが必要な場合は外部の居宅サービス事業者と契約し、訪問介護・訪問看護などを受ける必要があります。
住宅型有料老人ホームはある程度自立した高齢者を受け入れている施設であるため、特養の代替にはならないと思っている方もいるかもしれません。しかし、最近は居宅サービスの利用を前提に要介護度の高い高齢者を受け入れる施設が増えていることも事実です。また、住宅型有料老人ホームの中には看取りケアを実施している施設もあります。
もし特養に入居できず、希望するエリア内に介護付き有料老人ホームもない場合には、住宅型有料老人ホームへの入居を検討してみてもいいでしょう。ただし要介護3以上の方を受け入れているかどうかは施設の方針によって異なるため、いくつかの施設へ相談することをおすすめします。
まとめ
特別養護老人ホームは公的施設である特性上、民間施設より安価に入居できることが最大のメリットです。所得によっては軽減措置を受けられることもあるため、経済的な事情で介護付き有料老人ホームなどへの入居を諦めている方は、ぜひ特養への入居を検討してみてください。
なお、とくに手厚くケアしてもらえるユニット型個室・ユニット型個室的多床室を利用するためには、相応の費用が必要です。なるべく費用を抑えたい場合には、従来型の個室・多床室を選ぶといいでしょう。これら従来型の居室タイプであっても、しっかり介護を受けられることに変わりはありません。
ただし、特養は費用が安いため入居希望者が多く、数か月以上待たないと入居できないこともあります。スムーズに高齢者施設へ入居したい場合には、特養ではなく介護付き有料老人ホーム・住宅型有料老人ホームといった民間施設も選択肢に入れてみてください。
スマートシニアでは費用やエリア、提供サービスなどの条件を絞って高齢者向け施設を探すことが可能です。希望にあった施設を効率的に探したい方は、ぜひスマートシニアをご利用ください。
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