介護付き有料老人ホームとは?特徴、入居条件、設備、人員配置基準も
一口に「有料老人ホーム」といっても、実はいくつか種類があることをご存知でしょうか。老人ホームと聞くと要介護の高齢者が入居できる施設だという印象を持っているかもしれませんが、もし介護が必要な場合、「介護付き有料老人ホーム」を選ばなければなりません。この記事では介護付き有料老人ホームと他の介護施設との違いや、メリット・デメリットについて紹介します。

介護付き有料老人ホームとは

介護付き有料老人ホームは、介護サービスが付いた高齢者向け施設のことです。
また、有料老人ホームの中のひとつで「老人福祉法第29条第1項の規定に基づき、老人の福祉を図るため、その心身の健康保持及び生活の安定のため」行政から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている施設のみを指します。
高齢者の日常生活を支えるため、24時間、介護スタッフが常駐し洗濯・掃除などの生活支援サービスをはじめ、排泄・入浴・食事といった身体介護を提供しています。
自立した人から、介護が必要な人まで、幅広く受け入れを行っており、長期的な介護を受けることができます。また、看取りケア(終末期介護)を行っている施設もあり、終の住処を探している人の選択肢のひとつになります。
全国有料老人ホーム協会が平成26年3月に発表したデータでは、有料老人ホームのうち、約6割が介護付き有料老人ホームである、という結果が出ています。
出典:公益社団法人 全国有料老人ホーム協会「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業 結果概要」
介護付き有料老人ホームの特徴
介護付き有料老人ホームの特徴は、以下のとおりです。
原則、要介護認定を受けた方が入居対象
介護付き有料老人ホームは、行政から「特定施設入居者生活介護」の認定を受けた施設です。介護サービスを提供することが前提であるため、入居対象者は原則要介護認定されている方となります。
介護サービス費が定額
介護付き有料老人ホームの月額費用のうち、介護サービス費については、介護度別に定額となっています。そのため、支出の見通しを立てやすいのが特徴です。(ただし、介護サービスの内容によっては、上乗せ介護費が発生する場合があります。)
充実したサービスを提供
介護サービスをはじめ、生活支援サービスやリハビリ、レクリエーションなど、多様なサービスを受けることができるのもポイントです。施設によってサービスや費用は異なり、施設ごとに独自の強みや魅力を打ち出しています。
介護付き有料老人ホームの種類

介護付き有料老人ホームは、入居対象となる方の要介護度や身体状況によって、さらに3つのタイプに分けられます。
・介護専用型(介護型)
・混合型
・自立型
介護専用型(介護型)
介護専用型は、要介護の認定を受けた方が入居する介護付き有料老人ホームです。介護が必要な方が快適な生活を送ることができるよう、設備や環境を備えています。また、緊急時の対応も想定されているため、介護度が高い方でも安心です。
混合型
混合型は、自立レベルの方から、要支援・要介護の方まで、幅広く受け入れを行っているのが特徴です。
現在自立や要支援の認定を受けており、すぐには介護が必要でない方であっても、将来的に介護が必要になるケースは十分に想定されます。混合型であれば幅広く入居者を受け入れているため、介護が必要になったときも安心です。
夫婦が入居する際、1人が要介護、もう1人が自立である場合も、同じ施設に一緒に入居することができます。
自立型
自立型は、自立した生活ができる方が対象の施設です。介護専用型や混合型に比べて施設数が少ないため、お住まいの地域にはない場合も考えられます。
自立しているものの、一人暮らしに心配がある方に適した施設です。
設備が充実している場合が多く、その分費用が高くなる傾向にあります。
介護付き有料老人ホームの入居条件
介護付き有料老人ホームは、原則60歳以上、または65歳以上の要支援1~要介護5の要介護認定を受けた方を入居対象としています。
種類によって入居条件が以下のように定められています。
● 介護専用型(介護型):要介護の方 ● 混合型:自立・要支援・要介護の方 ● 自立型 :自立している方 |
施設の中には、要介護認定を受けていない方の入居が可能な場合や、入居できる方を要介護1以上の方に限定しているところもあります。
認知症の方も入居できる
介護付き有料老人ホームの多くが、認知症の方の入居にも対応しています。介護スタッフが24時間常駐しているため、認知症で介護が必要な方も、安心して生活できるでしょう。
施設によっては、認知症の方専用のフロアを設けて専門的なケアを提供している場合もあります。
ただし、受け入れ可否は施設や認知症の度合いによって異なります。事前に施設に相談しましょう。

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介護付き有料老人ホームと他の介護施設との違い

介護付き有料老人ホームと、他の介護施設との違いを解説します。
住宅型有料老人ホームとの違い
有料老人ホームには、以下の3つがあります。
・介護付き有料老人ホーム
・住宅型有料老人ホーム
・健康型有料老人ホーム
このうち、要介護の方に対応しているのが、介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームです。
費用・サービス内容の違い
この2つは、費用や介護サービスの充実度で違いがあります。
介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームの費用相場は、それぞれ以下のとおりです。
施設 | 入居時費用 | 月額利用料 |
介護付き有料老人ホーム | 0~630万円 | 15~35.1万円 |
住宅型有料老人ホーム | 0~46万円 | 13.4~31.5万円 |
介護付き有料老人ホームは、人員体制が手厚く、充実した介護サービスを受けることができるのが特徴です。一方、住宅型有料老人ホームは、基本的には生活支援サービスを提供する施設です。介護サービスを受けたい場合は、外部の居宅介護支援事業所と契約し、訪問介護による介護サービスを受ける必要があります。
このように、介護付き有料老人ホームの方が介護サービスが充実しているため、費用が高くなりやすいです。
入居期間の違い
介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームは、入居期間にも違いがあります。介護付き有料老人ホームは要介護の高齢者を対象としているため、要介護度が高くなっても住み続けることができ、基本的には亡くなるまで出ていく必要はありません。長期にわたって利用できることは、介護付き有料老人ホームならではのメリットだといえます。
一方で、住宅型有料老人ホームは自立して日常生活を送れる方を対象とした施設です。もし入居後に介護が必要になったとしても外部の介護事業者から居宅サービスを受けることは可能ですが、要介護度が高くなり施設内での暮らしが難しくなると、退居・転居を求められることもあります。介護が必要となった場合を考えると、介護付き有料老人ホームのほうが長期にわたって住み続けられることは覚えておきましょう。

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特別養護老人ホームとの違い
特別養護老人ホームとは、自治体や社会福祉法人など、公的機関が運営する施設です。要介護3以上の方を対象としています。
公的施設のため、民間施設である介護付き有料老人ホームと比較して、月額利用料が安い傾向にあります。また、入居一時金もかかりません。特別養護老人ホームは、費用負担を抑えながら介護サービスを受けたい方に適した施設と言えるでしょう。
ただし、人気が高く、入居待ちが発生している点には注意が必要です。入居までに半年〜数年かかる場合もあるため、今すぐに入居したい方は、より選択肢の多い介護付き有料老人ホームを選ぶのがおすすめです。

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サービス付き高齢者向け住宅との違い
サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリー構造で設計され、高齢者の暮らしやすさを重視した住宅です。介護施設ではなく、住宅に分類されるのがポイントです。
サービス付き高齢者向け住宅は、安否確認や生活相談など、安心して生活するためのサービスを提供しています。しかし、介護施設のように1日のスケジュールに決まりはないため、必要なサポートを受けながら、自由度の高い生活を送りたい方に適しています。
サービス付き高齢者向け住宅には、以下の2つがあります。
・一般型:自立した方の入居を想定しており、介護サービスは提供されない。介護サービスを利用する場合は、外部の介護事業者と契約する必要がある。
・介護型:担当の介護士が介護サービスを提供してくれるため、要介護度が高くても入居できる。
契約形式の違い
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、あくまでもバリアフリー完備の「高齢者向け賃貸住宅」です。そのため入居にあたって結ぶ契約は「賃貸借契約」であり、一般的なアパートで結ぶ契約と変わりありません。サ高住で介護サービスを利用する場合、この賃貸借契約とは別に、外部事業者と個別にサービス利用契約を結ぶことになります。
また、賃貸借契約もさらに「建物賃貸借方式」「終身建物賃貸借方式」の2種類に細分化されます。「建物賃貸借方式」は契約期間が存在し、住み続けるためには契約更新する必要がある契約方式です。(更新費用はかからず、正当な事由がない限りは更新されます)そして「終身建物賃貸借方式」は契約期間がなく、亡くなるまで契約が続く方式です。
一方、介護付き有料老人ホームは「住居施設」と「介護サービス」が同じ事業者によって提供されていることがポイントです。そのため『施設を使い、なおかつサービスを受けること』を一括して契約することになります。これは「利用権方式」という契約形態です。

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介護付き有料老人ホームで受けられるサービス

介護付き有料老人ホームで受けられるサービスは、施設によって違いがあります。
基本的には、以下のようなサービスを受けることができます。
介護サービス
介護付き有料老人ホームでは、介護保険の適用範囲内で介護サービスが提供されます。
中には、人員配置の最低基準よりも多くの介護スタッフを配置し、入居者一人ひとりに手厚いサービスを提供している施設もあります。その分、サービス加算や上乗せ介護費がかかる可能性がありますが、介護サービスの充実度を重視して施設を選ぶのもおすすめです。
生活支援サービス
生活支援サービスは、快適な生活を送れるよう、身のまわりの様々なことをサポートするサービスです。掃除や洗濯といった家事のサポートから、買い物や手続きの代行、生活相談や見守り、緊急時の対応まで、幅広い支援を受けることができます。
介護付き有料老人ホームの中には、オプションでサービスを追加できる施設もあります。
健康管理サービス
健康管理サービスとは、介護職員や看護職員が、入居者の健康状態を確認して職員間で共有・対応するサービスです。近隣の医療機関とも連携しているため、緊急事態が発生した際は、医療機関の指示のもと、迅速かつ適切な対応が可能です。
食事
介護付き有料老人ホームでは、栄養士が管理した健康的な食事が、朝・昼・夜に提供されます。栄養バランスに優れていることはもちろん、入居者の体調や咀嚼能力などに応じて、食べやすい形で提供されるのがポイントです。
飽きないよう、バラエティー豊かなメニューを揃えている施設も多いです。また、お正月のおせちやクリスマスケーキのように、イベントごとに行事食を提供している施設も存在します。
リハビリ
介護付き有料老人ホームの中には、身体機能や認知機能が低下しないよう、リハビリの専門家である理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)によるリハビリを実施している施設もあります。
専門家が行うリハビリの特徴は、以下のとおりです。
| 目的 | 例 |
理学療法士(PT)によるリハビリ | 運動機能を回復させ、日常動作を自分で行えるようにする | 歩行訓練、筋トレ、温熱治療など |
作業療法士(OT)によるリハビリ | 今の身体機能でできることを広げ、日常動作を自分で行えるようにする | レクリエーション、ゲーム、メンタルケアなど |
言語聴覚士(ST)によるリハビリ | 言語機能や嚥下機能など、口唇や舌に関わる機能を回復させる | アイスマッサージ、嚥下体操、咀嚼訓練など |
さらに、食事や入浴などの日常生活そのものをリハビリと捉える生活リハビリも行われます。必要な部分はスタッフがサポートしながら、できることは入居者にやってもらうことにより、生活能力の維持や寝たきりの予防を図ります。
医療ケア・看護サービス
介護付き有料老人ホームでは、医療ケアや看護サービスを受けることができます。
なお、一部の医療ケアを除き、基本的に介護職員は医療ケアを行えません。医療ケアが必要な方は、看護職員が常駐している施設を選びましょう。
また、対応している医療ケアの種類は施設によって異なるため、事前に受け入れ可能か確認する必要があります。
レクリエーション・イベント
介護付き有料老人ホームの中には、レクリエーションやイベントに力を入れ、施設での生活が単調にならないよう工夫しているところもあります。
・レクリエーションには、以下のような種類があります。
・体を動かすレクリエーション
・手先を使うレクリエーション
・頭を使うレクリエーション
・地域交流・社会貢献につながるレクリエーション
レクリエーションは、楽しみながら取り組めると同時に、身体機能や脳機能の維持・向上にも役立ちます。
イベントは、お正月や七夕、クリスマスなど、季節ごとに行われるものです。飾り付けや行事食を楽しみ、施設全体で盛り上がることができます。
看取り
看取りとは、延命治療を行わず、亡くなるまでの過程を自然に見守ることです。医師の指示に従って、身体的・精神的な苦痛を和らげ、その方らしい最期を迎えられるようサポートします。
介護付き有料老人ホームでは、2012年から看取り加算が始まりました。そのため、現在では看取りに対応している施設が多く存在します。
介護付き有料老人ホームの費用相場
介護付き有料老人ホームの費用相場は、以下のとおりです。
入居時費用 | 月額利用料 |
0~630万円 | 15.0~35.1万円 |
前述した通り、介護付き有料老人ホームは介護サービスが充実しているため、費用が高くなりやすい傾向にあります。
介護付き有料老人ホーム入居にかかる費用の内訳
入居時費用
入居時費用は、契約時にまとめて支払う費用です。数年分の月額家賃の前払い額である入居一時金や、敷金などにあたります。
介護付き有料老人ホームによっては、入居時に数百万円の支払いが必要になる場合もあるため、事前に準備しておきましょう。
入居一時金には、以下の3つのパターンがあります。
● 前払金プラン(全額払い):入居一時金を全額支払う分、家賃や管理費などは発生しない ● 前払金プラン(一部払い):入居一時金の一部を支払う分、家賃や管理費などが減額される ● 0円プラン(月額払い):入居一時金がかからない代わりに、家賃や管理費などはそのまま請求 |
※一時金の有無に関わらず、介護サービス費は必要となります。
入居一時金は、月々に必要な居住費や管理費などのコストに充てられるため、入居一時金を支払うことにより、その分月々の支払いが安くなるのがポイントです。
月額利用料
月額利用料とは、居住費や食費などを合算して、月々支払うものです。
月額利用料は、さらに以下の2つに分けられます。
介護サービス費
介護サービス費は、介護付き有料老人ホームが提供する介護サービスに対して発生する費用です。
要介護度に応じて一定の金額が決められており、要介護度が大きくなるほど、費用も高くなります。介護保険が適用されるため、基本的に自己負担額は1割です。(所得に応じて2割、3割と変動します。)
介護サービス費としては、基本料である「施設介護サービス費」のほかに、「サービス加算」が発生する場合があります。サービス加算とは、人員配置やサービス内容に応じて、追加で発生する費用です。介護サービスが手厚く充実している施設は、サービス加算がかかる場合があるため、事前に確認しましょう。
生活費
生活費には、以下のような費用が含まれます。
・居住費:家賃に該当する費用。立地や居室の広さ、居室のタイプや設備などによって大きく異なる。
・食費:材料費や厨房維持管理費、外部の事業者への委託費用などをもとに、施設が独自に設定する。
・管理費:水道光熱費や施設のメンテナンス費用、事務費用など。
・日常生活費:日用品にかかる費用。
・上乗せ介護費:人員配置基準よりも多くの介護職員を配置し、手厚い介護サービスを提供している場合に加算される費用。
・介護保険対象外のサービス費:レクリエーションやイベントにかかる費用や、理美容代など、そのほかのサービスにかかる費用。

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介護付き有料老人ホームの費用
介護付き有料老人ホームの費用負担を軽減する方法

介護付き有料老人ホームの費用負担を軽減する方法として、以下を利用できる場合があります。
各制度の対象者を確認し、利用できるものは積極的に活用しましょう。
以下では、それぞれの制度の概要について解説します。
扶養控除
扶養控除とは、要件に該当する扶養親族がいる場合、課税所得額を減額できる制度です。
介護付き有料老人ホームに入居する前から扶養控除を利用しており、入居者ご本人が扶養親族としての要件を満たしていれば、扶養控除を利用できる可能性があります。
控除額は、区分ごとに以下のように定められています。親御さんが介護施設に入居する場合は、同居しているとはみなされないため、老人扶養親族のうち同居老親等以外に該当します。
区分 | 扶養額 | |
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 | |
特定扶養親族 | 63万円 | |
老人扶養親族 | 同居老親等以外 | 48万円 |
同居老身等 | 58万円 |
障害者控除
障害者控除とは、配偶者や扶養親族に障がいがあり、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳を交付されているなど、所得税法上の障害者に該当する場合に利用できるものです。
区分ごとに、以下のように控除額が定められてます。
障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者(※) | 75万円 |
※同居特別障害者とは、特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族で、納税者自身、配偶者、その納税者と生計を一にする親族のいずれかとの同居を常況としている方のこと。
自治体によっては、要介護3以上の方を特別障害者と認定している場合もあります。区分により控除額が大きく異なるため、詳しくはお住まいの市区町村に確認してください。
介護付き有料老人ホームの費用は医療費控除の対象にはならない
介護付き有料老人ホームの費用は、基本的には医療費控除の対象にはなりません。
ただし、施設入居中に医療機関の診察を受けた場合、診察代や薬代、診察にかかる交通費などは対象となります。また、特定の条件を満たす場合、介護サービス費の一部に医療費控除が適用される可能性があります。
なお、以下の施設にかかる費用は、医療費控除の対象となります。
<全額>
介護老人保健施設
介護医療院
<費用の1/2>
特別養護老人ホーム
地域密着型特別養護老人ホーム
介護付き有料老人ホームの人員配置基準

介護付き有料老人ホームの場合は、介護保険法によって「要介護者:介護・看護職員が3:1以上」という、介護体制に関する人員基準が設けられているのがポイントです。
各職種ごとの最低人数は、以下のとおりです。
管理者 | 1人(専従) |
生活相談員 | 1人以上 |
介護・看護職員 | 要介護者3人に対して1人以上 |
機能訓練指導員 | 1人以上 |
ケアマネジャー | 1人以上 |
手厚いサービスを受けたい方は、最低人員配置基準よりも多くの職員を配置している施設を選びましょう。
介護付き有料老人ホームの設備
それでは介護付き有料老人ホームにはどのような設備が備わっているのか、「居室」「共有スペース」と双方の観点から見ていきましょう。
居室
介護付き有料老人ホームの居室は、基本的には「個室」であることが多いです。居室面積は最低でも13㎡(約8.5畳)が確保されているため、広々と過ごせるでしょう。一人用の個室が主流ですが、夫婦で入居できるよう二人用の居室が用意されている施設もあります。いずれの場合も、自宅と同じようにプライベートを確保しやすいことが特徴です。
洗面所やトイレなどは共有スペースにしか用意されていない施設もあります。よりプライベートを確保したい場合には、居室の水回り設備のある施設を選ぶようにしてみてください。
共有スペース
共有スペースとしては「食堂」「浴室」「ロビー」などが挙げられます。入居者が食堂に集まって食事をする施設だと、他社とのコミュニケーションを保ちやすく、入居者が孤独感を感じづらくなるためおすすめです。また、居室に浴室のある施設も多いですが、介護付き有料老人ホームには要介護度の高い高齢者が入居する特性上、寝たきり状態でも入浴可能な浴室が共有設備として用意されています。
介護付き有料老人ホームに入居するメリット
介護付き有料老人ホームに入居するメリットとしては、次の3点が挙げられます。
● 手厚いサポートが受けられる
● 要介護の高い方でも入居ができる
● 看取りを行っている施設も選べる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
手厚いサポートが受けられる
介護付き有料老人ホームには介護スタッフが24時間常駐しており、困ったことがあればすぐに助けを求められます。また、看護スタッフが在籍している施設なら、医療ケア(一定範囲の医療行為)を受けられることも特徴です。他の施設と比べてサポート内容が手厚いことは、介護付き有料老人ホームならではのメリットだといえるでしょう。
要介護の高い方でも入居ができる
要介護度が高い高齢者でも入居できることは、介護付き有料老人ホーム最大のメリットだといえます。要介護度が高い高齢者向けの施設としては「特別養護老人ホーム(特養)」「介護老人保健施設(老健)」なども存在しますが、これら施設は人気が高く、簡単には入居できません。
これらの施設と比べると、介護付き有料老人ホームは費用を払うことさえできれば、比較的入居しやすいといえます。要介護の高いものの、特養・老健の空きがなく入居先に困っている場合は、ぜひ介護付き有料老人ホームへの入居を検討してみてください。
看取りを行っている施設も選べる
有料老人ホームのうち、「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」は自立して生活を送れる高齢者を対象としています。そのため看取りまでの対応は現実的ではありません。一方で「介護付き有料老人ホーム」は介護を前提としており、医療ケアにも対応しているため、看取りまで任せられる施設もあります。亡くなるまで同じ施設で暮らせることも、介護付き有料老人ホームならではのメリットの一つです。
介護付き有料老人ホームに入居するデメリット
介護付き有料老人ホームに入居することには、少なからずデメリットも存在します。
● 他の施設と比べて費用が高い
● 施設選びに時間がかかる
それぞれのデメリットとその対策について、詳しく見ていきましょう。
他の施設と比べて費用が高い
介護付き有料老人ホームはサービス内容が手厚い分、他の施設と比べると入居費用が高い傾向にあります。入居時に数百万円、月額費用が10〜数十万円かかるケースが多く、決して安い金額とはいえません。公的施設である特養・老健は初期費用がかからず、月額費用が10〜15万円であることと比べると、その差は大きいといえるでしょう。
月額費用については、入居者本人の年金でまかなえることもあります。月額費用が少し割高になりますが、入居費用が0円の施設もあるため、上手に活用してみてください。
施設選びに時間がかかる
介護付き有料老人ホームは施設数が非常に多く、施設ごとに提供サービス・設備面の特徴が異なるため、施設選びに時間がかかってしまうかもしれません。費用面や立地で迷うこともあるでしょう。すべての観点が優れた施設が見つかるとは限らないため、入居先をスムーズに決めるためには、優先順位をつけるようにしてみてください。
たとえば入居者本人が住み慣れたエリアから離れたくないという場合には立地を、施設入居後も快適に暮らしたいという場合には居室設備を重視するといいでしょう。ケアマネジャーに相談してアドバイスをもらうこともおすすめです。
介護付き有料老人ホームに入居するまでの流れ
介護付き有料老人ホームに入居するまでの流れは、以下のとおりです。
- 希望条件を整理する
- 施設を検索する
- 見学で比較検討をする
- 体験入居を申し込む
- 申し込み・必要書類の提出
- 面談・入居審査
- 契約・入居
施設を選ぶ際は、見学が欠かせません。最低でも2〜3ヵ所は見学し、パンフレットやホームページだけではわからない情報を収集しましょう。
施設が決まったら、入居申し込みを行います。
申し込み後、面談と入居審査が行われ、身体状況や希望条件、経済状況や身元保証人の有無などが確認されます。面談時はご家族の方も同席を求められる場合があります。施設とは長期的な関わりになるため、ご本人とご家族の関係性や施設サービスへの理解、緊急時の対応などを、入居前に確認することが目的です。条件や要望のミスマッチを防ぐためにも、面談にはご家族が同席することをおすすめします。
介護付き有料老人ホームの入居に必要な書類
必要書類は施設によって異なりますが、基本的には以下のような書類を提出します。
・利用申込書
・戸籍謄本
・住民票
・印鑑、印鑑証明
・所得証明書
・健康診断書
・介護保険被保険者証
・診療情報提供書
中には、すぐに入手できない書類もあるため、計画的に準備することが大切です。
介護付き有料老人ホームの選び方
介護付き有料老人ホームを選ぶときは、下記の6点に注目してみてください。
● 必要なサービスを受けられるか
● 必要な医療ケアに対応しているか
● レクリエーションが充実しているか
● 施設の雰囲気はよいか
● 食事が口に合っている
● 丁寧な対応をしてくれるか
それぞれ詳しく見ていきましょう。
必要なサービスを受けられるか
介護付き有料老人ホームで提供されているサービスの代表例は次のとおりです。
● 介護
● 洗濯・掃除などの家事
● 買い物代行
● 役所などでの手続き代行
● 見守り
● 郵便・宅配の取り次ぎ
ただし施設ごとに提供サービスは異なるため、これらすべてに対応しているとは限りません。依頼したいサービスが決まっている場合には、そのサービスが提供されているかどうかあらかじめ確認しておきましょう。(ただしサービス内容が充実している施設ほど、月額費用は高くなる傾向にあります)
必要な医療ケアに対応しているか
必要な医療ケア(医療行為)に対応しているかどうかも重要なポイントです。たとえば介護職員なら、次のような医療ケアを実施できます。
● 体温測定
● 目薬の点眼
● 服薬の介助
● ガーゼの交換
● 湿布の貼付
さらに特定の研修を終えた介護福祉士がいると、一部の医療行為を実施できるようになります。代表例は次のとおりです。
● 口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の喀痰吸引
● 胃ろうなどによる経管栄養
そして看護師がいれば、次のような医療行為も任せられます。
● 点滴管理
● 人工呼吸器管理
● インスリン注射
このように、施設にどのような資格者が在籍しているかによって、任せられる医療ケア・医療行為は大きく異なります。入居後に必要なサポートを受けられるかどうか、あらかじめ確認しておきましょう。
レクリエーションが充実しているか
入居者が楽しく生活できるよう、レクリエーションの充実具合も確認してみてください。ラジオ体操・風船バレーなど身体を動かすレクリエーションはもちろん、折り紙・お菓子作りなど手先を使うレクリエーションも実施している施設だと、退屈することはないでしょう。
また、近隣の幼稚園児・小学生と交流したり、ボランティア活動に参加したり、地域交流・社会貢献につながるレクリエーションを実施している施設だと、他人とのつながりを保ちやすくおすすめです。
施設の雰囲気はよいか
施設の雰囲気もチェックすべきポイントの一つです。やはり明るい雰囲気の施設を選んだほうが、入居者もストレスなく暮らせます。提供サービス・医療ケア・レクリエーションなどはパンフレットから読み取ることもできますが、施設の雰囲気について確認するためにも、候補先の施設には一度見学に行ってみてください。
なお、いきなり訪問しても見学させてもらえないため、あらかじめ連絡し、見学希望を伝えてみてください。入居を検討していることを伝えれば、居室などまで見学させてもらえるケースが多いです。
食事が口に合っているか
食事が口に合っているかどうかも、暮らしやすさに直結します。昨今では献立のバリエーションが豊かな施設も増えているため、メニュー例を教えてもらうといいでしょう。また、入居者の個別状況に応じたメニューが用意されているかどうかもチェックポイントの一つです。たとえば咀嚼能力は加齢によって低下してしまうため、嚥下食が必要な高齢者も少なくありません。生活習慣病がある場合は、療養食を用意してもらったほうがいいでしょう。介護が必要となる方が入居する施設であるからこそ、食事の味はもちろん、食事の提供方法も確認すべきなのです。
丁寧な対応をしてくれるか
有料老人ホームで快適に暮らせるかどうかは職員の質によって大きく左右されるため、職員が丁寧に対応してくれるかどうかも判断材料の一つといえるでしょう。見学などを申し込んだとき、職員が丁寧に対応してくれる施設なら、入居後も安心して任せられます。反対に、入居を検討している方に対して忙しそうに対応したり迷惑そうに接したりする施設は信頼できないかもしれません。
スタッフの質を肌で感じるためにも、やはり入居を検討している施設には実際に訪問してみることをおすすめします。(ただし忙しい時間帯に訪問することは迷惑になってしまうため、施設側の都合も考慮するようにしてください)

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老人ホームの選び方は?
介護付き有料老人ホームに関するよくある質問
最後に、介護付き有料老人ホームについてよくある質問を4つ紹介します。
生活保護を受けていても入居できる?
生活保護を受給している方も、介護付き有料老人ホームに入居できる場合があります。施設によって受け入れ可否は異なるため、事前の相談が必要です。また、施設を選ぶ際は、入居費用が住宅扶助や生活扶助でまかなえる範囲内であることを確認しましょう。
ショートステイで利用できる?
ショートステイ(短期入所生活介護)とは、介護施設に短期間入居し、介護サービスや生活支援サービスなどを受けることです。連続利用可能日数は30日と定められています。介護付き有料老人ホームの中には、ショートステイの利用を受け入れている施設が多く存在します。対応の可否は施設によって異なるため、ショートステイの利用を検討している方は、施設に問い合わせましょう。
入居する際の注意点は?
介護付き有料老人ホームに入居する際は、入居一時金の初期償却と償却期間について確認しましょう。入居一時金は、想定入居期間(償却期間)分の家賃の前払い、という位置づけで、支払は一度きりです。そのため、想定入居期間の前に退去する場合、残りの金額が返還されます。想定入居期間を超えて入居している場合、入居一時金は返還されません。また、入居一時金の一部は初期償却として差し引かれ、返還されないことがあります。(90日以内の解約であれば、クーリングオフが適用されます。)初期償却は、不動産でいうところの礼金にあたるもので、入居一時金の何割が初期償却されるかは施設によって異なります。「退去時の返還金が予想より少なかった」という事態を避けるためにも、入居契約書や重要事項説明をよく読み、初期償却と償却期間をチェックしましょう。
入院しても元の施設に戻れる?
施設に入居中に入院した場合であっても、すぐに退去を求められるわけではありません。基本的には、退院後に元の施設に戻ることができます。ただし、3ヶ月以上の長期入院が必要になる場合は、契約解除を持ちかけられる可能性があります。また、退去の必要はなくても、入院代と月額利用料を二重に支払う必要がある点には注意しましょう。入院が長期化する場合は、その分費用負担が増大します。また、退院後に専門的な医療ケアが必要になり、入居中の施設で対応できない場合も、別の施設を探す必要があります。
まとめ
介護付き有料老人ホームについて理解しておきたいポイントは、以下のとおりです。
・介護付き有料老人ホームは、原則65歳以上で要介護の方を対象としている
・介護型・混合型・自立型の3つのタイプがあり、自立・要支援の方を受け入れている施設もある
・介護サービスをはじめ、生活支援サービスやリハビリ、レクリエーションなど、様々なサービスを受けることができる
・入居にかかる費用は、入居時費用と月額利用料の2つ
・扶養控除や障害者控除を利用し、費用負担を軽減できる場合がある
介護付き有料老人ホームは、大きく3つのタイプがあり、介護の必要度に合わせて施設を選択できます。また、施設ごとに様々な特徴があるので、生活の質を上げられるような施設を探してみるとよいでしょう。
厚生労働省の定める基準を満たした特定施設であるため、24時間の介護サービスを受けることができます。安心して生活したいと考える方は、介護付き有料老人ホームを選ぶのがおすすめです。
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。