介護医療院とは|医療と生活の機能を兼ね備えた施設。病院や介護施設との違いも理解しよう

「介護医療院ってどんな施設?」「介護療養型医療施設がなくなるってほんと?」このような疑問はありませんか?

介護医療院は2018年4月から始まった新しい介護サービスで、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設と同じ介護保健施設のひとつです。介護医療院は、継続した医療的ケアを受けながら、日常生活に必要な介護のサービスを提供しています。

今回は、介護医療院のサービス内容や費用、他の施設との違いについて紹介しています。サービスの終了が決まっている介護療養型医療施設についても解説しているため、ぜひ参考にしてください。


#老人ホーム#介護保険施設#施設入居
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

介護医療院とは

介護療養型医療施設に代わる施設

介護医療院とは、2018年4月に始まった施設サービスで、原則65歳以上の要介護認定を受けている方が対象の施設です。40〜64歳の方でも、定められた16の疾病に該当する方は要介護認定を受けることができ、介護医療院の入居も可能です。

介護支援と医療的ケアの両方が必要な方向けの施設で、医療的ケアの重要度が高い方を優先して入居を進めています。

医療的ケアとは次のものがあります。

  • 胃ろう

  • 喀痰(かくたん)吸引

  • 褥瘡

  • 酸素療法

  • 看取り

上記のような医療的ケアが必要になると、一般的な介護施設への入所が困難な場合があります。しかし、介護医療院では、医師や看護師の配置が手厚いため様々な医療的ケアの対応が可能です。

介護医療院は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設と同じ介護保険施設のため、有料老人ホームと比べると、比較的費用を抑えることができます。介護医療院ができた背景には、2024年3月にサービスの全面終了が決まっている介護療養型医療施設の影響があります。

介護療養型医療施設は、介護保険が施行された2000年から長期にわたり運営してきました。また、医療保険で利用できる医療療養型病院も創設され、医療療養病床・介護療養病床に分けられました。しかし、医療療養型病院との差別化ができておらず、医療ニーズの高い方と低い方が混同した状態となりました。

そのため、利用する方の入居条件となる医療区分が課題となり、医療ニーズがあり介護支援も必要な方が入所できる施設として、介護医療院は誕生しました。

介護療養型医療施設は、2024年3月にサービスが終了するため、代わりの施設として介護医療院が注目されています。


介護医療院の種類と設備

医療ニーズに合わせてⅠ型・2型の2つのサービスがある

介護医療院には、Ⅰ型とⅡ型の2つのサービスがあります。それぞれの違いについて見ていきましょう。


Ⅰ型
Ⅱ型

利用目的

継続した医療的ケアが必要な方の日常生活の支援

利用対象者


要介護1~5の認定を受けている方で、継続的な医療ケアが必要な方

重篤な身体疾患のある方で身体合併症を有する認知症高齢者など

Ⅰ型に比べ状態の安定している方

人員配置

介護療養病床に近く手厚い配置

介護老人保健施設に近い配置

Ⅰ型は、Ⅱ型に比べて身体状況が重度で医療ニーズが高い方が入所する分、人員配置が手厚い特徴があります。また、Ⅰ型には療養機能強化型AとBに分かれ、それぞれで利用料金や職員体制が異なります。


療養機能強化型A
療養機能強化型B

重症度

50%以上

医療処置

50%以上

30%以上

ターミナルケア

10%以上

5%以上

リハビリ

要件あり

地域貢献活動

要件あり

療養機能強化型Aは、Ⅰ型の中でも医療ニーズやターミナルケアを受ける方が多い傾向にあります。

続いて設備基準について確認していきましょう。介護医療院の施設基準には、次のようなものがあります。


基準の詳細

診察室

指定基準

居室

定員4名以下で1名あたり床面積8㎡以上。転換する場合は、大規模改修まで6.4㎡以上

浴室

身体的に不自由な方も入浴しやすい状態や設備

食堂

利用者1名につき1㎡以上

機能訓練室

40㎡以上のスペースを確保

談話室

談話が楽しめるスペースを確保

レクリエーションルーム

十分なスペースの確保

医療設備

エックス線・処置室・臨床検査室・調剤室

廊下

1.8m以上。中廊下の場合は2.7m以上。※転換の場合、廊下幅1.2m以上。中廊下の場合1.6m以上。(中廊下とは、廊下の両側に居室がある設計の廊下を指します)

その他

洗面所・トイレ・サービスステーション・洗面所・洗濯室・汚物処理室・調理室

一般的な介護施設と違い、医療設備が設置されていることが特徴です。

出典:厚生労働省「介護医療院とは?」


介護医療院の人員体制やサービス内容

医師・看護師など医療職種の配置が手厚い

介護医療院はⅠ型とⅡ型により、人員の配置が変わります。それぞれの違いについて確認してみましょう。

職種
Ⅰ型
Ⅱ型

医師

入居者48名に対して1人以上

(48:1)

入居者100名に対して1人以上

(100:1)

薬剤師

入居者150名に対して1人以上

(150:1)

入居者300名に対して1人以上

(300:1)

看護職員

入居者6名に対して1人以上

(6:1)

介護職員

入居者5名に対して1人以上

(5:1)

入居者6名に対して1人以上

(6:1)

ケアマネジャー

100名に対して1人以上

(100:1)

栄養士

必要な数

調理スタッフ

必要な数

リハビリ職員

必要な数

事務員

必要な数

医師の当直

あり

なし

上記のように、Ⅰ型とⅡ型では人員配置が異なります。特に、医師や薬剤師については2倍以上の違いがあるため、注意が必要です。

介護医療院では、日常生活上の必要な介護支援をはじめ、医師や看護師の人員配置基準が手厚いことから、充実した医療的ケアを受けることができます。また、リハビリもできるため、身体能力の維持や向上を期待できるでしょう。

また、介護療養型医療施設では実施が少ないレクリエーションや行事・イベントなども行われており、療養が必要な方でも、生活面に目を向けたサービスを提供しています。


介護医療院の費用

Ⅰ型やⅡ型などのタイプによって費用は変わる

介護医療院では、施設のタイプによって費用が異なります。また、サービス費用だけではなく、食費や居住費などの介護保険外の費用が必要なため、注意が必要です。

それぞれのサービス費用の目安は、次の通りです。

【Ⅰ型介護医療院 療養機能強化型A 多床室(職員配置)看護6:1・介護4:1の場合】

介護度
1日あたりの費用

要介護1

825円

要介護2

934円

要介護3

1,171円

要介護4

1,271円

要介護5

1,362円

【Ⅰ型介護医療院 療養機能強化型B 多床室(職員配置)看護6:1・介護4:1の場合】

介護度
1日あたりの費用

要介護1

813円

要介護2

921円

要介護3

1,154円

要介護4

1,252円

要介護5

1,342円

【Ⅰ型介護医療院 療養機能強化型B 多床室(職員配置)看護6:1・介護5:1の場合】

介護度
1日あたりの費用

要介護1

797円

要介護2

905円

要介護3

1,137円

要介護4

1,236円

要介護5

1,326円

【Ⅱ型介護医療院 多床室(職員配置)看護6:1・介護4:1の場合】

介護度
1日あたりの費用

要介護1

752円

要介護2

847円

要介護3

1,054円

要介護4

1,143円

要介護5

1,222円

【Ⅱ型介護医療院 多床室(職員配置)看護6:1・介護5:1の場合】

介護度
1日あたりの費用

要介護1

763円

要介護2

859円

要介護3

1,065円

要介護4

1,154円

要介護5

1,233円

【Ⅱ型介護医療院 多床室(職員配置)看護6:1・介護6:1の場合】

介護度
1日あたりの費用

要介護1

752円

要介護2

847円

要介護3

1,054円

要介護4

1,143円

要介護5

1,222円

※1単位=1円で計算 地域加算やその他加算は含まない

※職員配置は、入居者数:職員数で表記。例:看護6:1の場合、入居者6名に対して看護職員1名。

参考:厚生労働省「介護医療院サービスコード表

次に介護保険以外の費用をみていきましょう。介護保険外の費用には、主に食費や居住費があります。居住費は多床室や個室により費用が異なります。

【食費】


1日の基準額

食費

1,445円

【居住費】

居室タイプ
1日の基準額

ユニット型個室

2,006円

従来型個室

1,668円

多床室

377円

上記の金額は、全国で定められている基準額です。非課税世帯の場合、預金額の要件を満たしていると、介護保険負担限度額認定証を受け取ることができます。介護保険負担限度額認定証には、食費や居住費の減免された金額が記載されており、額面通りの支払いとなります。そのため、月々2〜5万円程の減免を受けることができ、費用負担が少なくなります。ただし、介護保険負担限度額認定証は自己申請のため、管轄の役所で申請が必要です。

介護保険負担限度額認定証は、介護保健施設の特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療院・介護療養型医療施設の入居やショートステイで利用可能な減免制度です。


介護医療院のメリット・デメリット

最大のメリットは介護と医療のサービスが同時に受けられること

介護医療院のメリットとデメリットを確認してみましょう。

メリット

介護医療院の最大の特徴は、日常的な介護支援と医療的ケアが同時に受けられることです。また、他の介護保険施設と同じく、有料老人ホームと比べて安価な費用で利用できます。

さらに理学療法士や作業療法士によるリハビリテーションが受けられるため、身体機能の維持や向上が期待できるでしょう。他にもレクリエーションや行事・イベントなども実施されるため、楽しみを持って生活できます。

介護医療院では、ほとんどの施設で一般的な病院が併設してあるため、万が一の場合でも入院に繋がりやすいという特徴もあります。病状の悪化が心配な方でも、安心して入居が出来るでしょう。

デメリット

介護医療院は、介護保健施設の中で費用は高めの施設と言えます。理由として医師や看護師の配置が手厚いことから、その分の保険単位が高くなるためです。費用負担が心配な方は、所得に応じた減免制度があるため、管轄の高齢者や介護の窓口で介護保険負担限度額認定証の申請を行いましょう。

また、介護医療院はあくまでも療養を想定した方が利用する施設です。そのため、療養が必要なくなった方には、退去の促しをする場合があります。退去に関しては、利用している施設のケアマネジャーや相談員に、退居先について相談するとよいでしょう。

入居を検討する場合は、メリットとデメリットを把握して施設選びをするとよいでしょう。


介護医療院と他の介護施設との違い

他の施設と比較して違いを把握する

介護医療院とその他の施設について違いを確認しておきましょう。

介護療養型医療施設

介護療養型医療施設は、介護医療院の前段階の施設と言えるでしょう。介護と医療的ケアの両方を受けられる施設として運営してきましたが、2024年3月にはサービスの終了が決まっています。

介護療養型医療施設は、どちらかと言えば病院の雰囲気に近く、自由度は低いです。また、レクリエーションや行事・イベントなどのサービスはほとんどありません。

今後、介護医療院に転換することから、生活施設としてどのように改善していくか注目されています。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームは要介護3以上の方が入居でき、日常的な介護支援を提供する施設です。特別養護老人ホームの中には看取りケアを行っている施設もあります。しかし、多くの施設では看護師の勤務が日中のみのため、夜間に吸引などの医療的ケアが必要な方は対応ができません。レクリエーションや行事・イベントに関して力を入れている施設が多く、楽しみを持って生活できるでしょう。

近年、創設された特別養護老人ホームではユニット型個室が主流となっているため、居室料金が高くなる傾向にあります。

介護老人保健施設

介護老人保健施設は、病院と在宅の中間施設でリハビリに特化した介護施設です。基本的にリハビリを行って在宅に帰ることを目的に運営しています。介護医療院でもリハビリは実施されますが、介護老人保健施設の方が集中したリハビリが提供されています。

介護医療院の位置付けとして、病院と介護老人保健施設の中間施設と考えると良いでしょう。

有料老人ホーム

有料老人ホームは施設ごとに様々な特徴があります。他の施設に比べても自由度が高く、レクリエーションや行事に力をいれている施設が多くあります。介護医療院でもレクリエーションを行いますが、有料老人ホームと比べると頻度は少ない場合が多いでしょう。

また、有料老人ホームでは、入居一時金が高額な場合もあります。さらに、月々の費用が介護保険施設に比べ高くなる場合がほとんどです。費用面と自由度を求めるなら、有料老人ホームがおすすめです。しかし、医療的ケアに対応できない施設もあるため、各施設に確認しましょう。


介護医療院を選ぶポイント

施設を選ぶ時は細かい部分に着目する

介護医療院を選ぶ際は、できるだけ見学に行くと良いでしょう。パンフレットや口コミではわからないことも多くあります。感染症対応の影響で、見学が出来ない、あるいは見学部分の制限がある場合もありますが、可能な限り一度足を運んでおくと良いでしょう。

見学時は、案内をする職員の接遇や、実際の現場の雰囲気を確認できます。挨拶や接遇マナー・職員同士のコミュニケーションの様子・入居者への対応などを観察していきます。

また、ゴミは落ちていないか・悪臭はないかなども確認しておくとよいでしょう。掃除が行き届いていない場合は、職員がゴミなどに対しての意識が低い可能性があります。細かい部分に気づけない場合は入居者に起こる日々の細かい変化には気づけない可能性も高いでしょう。

まとめ

介護医療院は、介護保険施設のひとつで、継続した医療的ケアが必要な方でも入居できる介護施設です。医師や看護職員の配置が手厚く、安心した生活が送れるでしょう。2024年3月にサービスが終了する介護療養型医療施設の代わりになる施設で、現在は移行期間となっています。

他の介護施設と比較しても費用が安い点も特徴のひとつです。介護保険施設では非課税世帯(一部要件あり)であれば利用料金の減免制度も受けられます。介護療養型医療施設の終了に向けてこれから、注目の集まる施設となるでしょう。今回の記事で、介護医療院の理解につながれば幸いです。

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