元気なうちから入れる!健康型有料老人ホームとは?費用や入居条件を紹介
「健康型有料老人ホーム」は自立した高齢者を対象とした有料老人ホームです。介護サービスは提供していませんが、食事や生活支援サービスを提供してくれるため、「一人暮らしには不安がある」「運転免許証を返納するために食事・生活支援が必要」などのニーズがある方に最適な施設といえます。この記事では健康型有料老人ホームの費用や入居条件について詳しく紹介するので、まだ介護は必要ないものの、高齢者向け施設への入居を検討しているという方はぜひ参考にしてみてください。

健康型有料老人ホームとは
健康型有料老人ホームは、有料老人ホームの形態の一つで、自立した高齢者を対象とした民間施設です。自立して生活を送れるものの、万が一を考えると自宅での生活に不安がある場合に選択肢になるでしょう。生活支援サービス(食事や掃除など)も提供されるため、加齢に伴い家事が面倒だと感じるようになった方が入居するケースもあります。そんな健康型有料老人ホームの主な特徴は次の2点です。
● 自立した健康な方が対象の施設
● 全国で20施設と数が少ない
それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
自立した健康な方が対象の施設
住宅型有料老人ホームや介護付き有料老人ホームは介護が必要な高齢者でも入居できますが、健康型有料老人ホームは自立した健康な高齢者のみを対象としています。あくまでも家事全般を施設に任せ、趣味や娯楽に時間を使いたい高齢者のための施設だということです。
全国で20施設と数が少ない
アクティブな老後を過ごしたい方にとって魅力的な健康型有料老人ホームですが、実は全国に20施設しかありません。これは有料老人ホーム全体の約1%程度に過ぎず、必ずしも希望するエリアに健康型有料老人ホームがあるとは限りません。もしエリアを重視する場合は、健康型有料老人ホームと似たサービスを提供している住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅も選択肢に入れてみてください。
健康型有料老人ホームで提供されるサービス
健康型有料老人ホームで提供される主たるサービスは、食事・掃除・洗濯などの生活支援や、スタッフによる見守りです。
安否確認 | 食事の提供 | 生活支援 | 各種アクティビティ | 介護・医療サービス |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
どのようなサービスが提供され、どのようなサービスは受けられないのか、詳しく見ていきましょう。
生活支援が受けられる
健康型有料老人ホームでは食事・掃除・洗濯などの生活支援サービスを受けられるため、自分で家事をする必要がありません。たとえば食事については、栄養バランスが考慮されたメニューが1日3食提供されます。好みやアレルギーなど、入居者個々人の事情にも配慮してもらえることもポイントです。ただし居室にキッチンがある施設も多く、料理を楽しみたい場合は自分で調理しても構いません。
また、定期的に居室を清掃してもらえますし、衣類やリネン類の洗濯も任せられるため、衛生的に暮らせることも特徴です。買い物代行(もしくは同行)が可能な施設もあるため、自動車や自転車に乗れなくなってからも安心して生活できるでしょう。
イベントに力を入れている施設が多い
入居者への生活支援サービスは、同じく高齢者向けの施設である「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」で受けられることもあります。しかしサ高住はあくまでも高齢者向けの賃貸住宅であるため、入居者同士が交流するイベントなどはあまり開催されません。
一方、健康型有料老人ホームは入居者の交流・楽しみも重視しており、イベントに注力している施設が多いです。施設内のイベントだけではなく、外出してのレクリエーションが催されることもあります。そのため活動的な老後を過ごしたいと考えている方こそ、健康型有料老人ホームに入居するといいでしょう。
介護・医療サービスは提供されない
さまざまなサービスが充実した健康型有料老人ホームですが、介護・医療サービスは提供されていません。しかし緊急時に備えて医療機関と連携している施設もあるため、万が一の場合もスピーディーに対応してもらえるでしょう。
また、施設としては介護サービスを提供していないものの、入居者は外部の居宅サービス事業者と個別に契約を結べます。そのため介護保険制度の「要支援」に認定されたとしても、居宅サービス事業者から支援を受けながら施設で暮らし続けることも不可能ではありません。(ただし「要介護」に認定され、あまりに介護の必要性が高まった場合には退去する必要があります)
健康型有料老人ホームの入居条件
健康型有料老人ホームの入居条件は次のとおりです。
● 自立して生活できる
● 60歳以上の高齢者
看取りケアには対応しておらず、終身利用することはできません。また、認知症がある場合も入居を断られる可能性が高いです。さらに施設によっては、入居金・月額利用料を滞りなく支払える方のみを受け入れるために、資産要件を設けていることもあります。その他に独自の入居基準が設けられていることもあるため、施設のホームページを確認してみてください。
健康型有料老人ホームの設備
健康型有料老人ホームの設備状況は施設によっても差がありますが、次のような状態が多いでしょう。
居室形態 | 個室 |
食堂・リビング | ○ |
居室内浴室 | ○ |
機能訓練室 | ○ |
健康管理相談室 | ○ |
洗濯室 | × (洗濯代行サービスあり) |
居室内トイレ・キッチン | ○ |
理美容室 | ○ |
健康型有料老人ホームは資産に余裕のある高齢者を対象としているため、一般的な老人ホームのような多床室(相部屋)ではなく、基本的には個室が用意されています。ただし食事については、食堂・リビングでとるケースが多いです。居室配膳を希望する場合は、入居前に対応可否を確認しておきましょう。また、トイレ・浴室・キッチンなども居室に完備されているケースが多いですが、間取り・広さは施設によって異なります。
居室以外のスペースとして、機能訓練室や健康管理相談室などの専門的なエリアだけではなく、理美容室やカラオケルーム・麻雀ルーム・フィットネスルームなどの娯楽施設を設置している施設も多いです。
共有スペースが充実した施設も多い
居室や共有ルームの設備の豪華さについては、⼊居費⽤が⾼額であればあるほどグレードが上がります。先述した例をはじめ、次のような施設が整備された健康型有料老人ホームもあるため、これら娯楽施設の好みで入居先を選んでもいいでしょう。
● カラオケルーム
● 麻雀ルーム
● フィットネスルーム
● 園芸室
● アトリエ
● 図書室
● プール・温泉
● ゲストルーム
● レストラン
健康型有料老人ホームの費用
健康型有料老人ホームを利用する場合にかかる費用は、入居一時金と月額利用料の2つに大別されます。それぞれの相場は次のとおりです。
入居一時金 | 月額利用料 |
0~1億円 | 10~40万円 |
月額利用料はその名のとおり、健康型有料老人ホームから毎月サービスを受けるための費用です。月額利用料の内訳としては、食費や家賃(居住費)などが挙げられます。一方、入居一時金は想定入居期間分の前払い家賃としての性質を持つ費用です。入居時に一度だけ支払う費用ですが、十数年分の家賃を支払うことになるため非常に高額になります。
なお、入居一時金は10%〜30%程度が入居手続きに対する手数料として初期償却され、残額は5年〜15年かけて償却されることが特徴です。そのため償却期間中に退去した場合には、残額が返還されます。返還金の計算式は次のとおりです。
入居一時金×(1ー初期償却率)÷償却期間 ×(償却期間ー入居期間)=返還金 |
なお、入居一時金はすべての健康型老人ホームで請求されるわけではありません。入居一時金はあくまでも前払い家賃であるため、運営企業にとってただちに必要な経費ではないためです。そのため入居者を獲得するために、あえて入居一時金を0円(もしくは低額)に設定している施設もあるのです。ただし入居一時金が0円の施設は、月額利用料が高めに設定されている傾向にある点は覚えておきましょう。
健康型有料老人ホームに入居するメリット
ここまで紹介した情報をふまえると、健康型有料老人ホームに入居するメリットとしては次の3点が挙げられます。
● 一人暮らしの生活不安を解消できる
● 生活支援を受けながら、融通の利いた生活ができる
● 人との交流が増え活動的に生活できる
これらのメリットに魅力を感じる方は、ぜひ健康型有料老人ホームへの入居を検討してみてください。それぞれのメリットについて詳しく解説します。
一人暮らしの生活不安を解消できる
高齢になると、たとえ普段は自立して生活できているとしても、突然の体調不良や転倒、もしくは災害時の避難などに不安を感じることもあるでしょう。健康型有料老人ホームにはスタッフが常駐しているため、このような心配をする必要はありません。自宅で一人暮らしを続けるよりも安心して生活できる点は、施設への入居ならではのメリットです。本人だけではなく、別居している家族にとっても安心でしょう。
生活支援を受けながら、融通の利いた生活ができる
健康型有料老人ホームでは⾷事・洗濯・掃除などの⽣活⽀援サービスを受けられるため、高齢者には負担の大きい家事から解放されます。身体が楽になることはもちろん、自由に活動できる時間が確保しやすい点も大きなメリットといえるでしょう。介護が必要な状態ではないからこそ、健康型有料老人ホームに入居して娯楽設備やレクリエーション・イベントを楽しみ、余生を謳歌してみてください。
人との交流が増え活動的に生活できる
健康型有料老人ホームでの生活では、食堂や共用スペースで他の入居者と顔を合わせる機会が多くあります。そのため自然と人とのつながりが生まれやすく、活動的に生活できる点もメリットといえるでしょう。
レクリエーションやイベントが定期的に開催されるため、孤立感を抱くことなく生活できる点もメリットです。日常的な話し相手がいることや、毎日・毎週楽しみがあることで、心身の健康を維持する効果も期待できます。
健康型有料老人ホームに入居するデメリット
健康型有料老人ホームには多くのメリットがありますが、入居してから後悔しないためには、次のデメリットについても知っておくべきでしょう。
● 要介護になると退去の可能性がある
● 費用が高めに設定されている施設が多い
● 人付き合いが苦手な場合はストレスを感じる人も
それぞれ詳しく紹介します。
要介護になると退去の可能性がある
健康型有料老人ホームはあくまでも元気で自立した高齢者のための施設であるため、要介護状態になると退去を求められる可能性があります。要支援状態なら居宅サービス事業者の支援を受けながら暮らせるケースもありますが、要介護1〜2以上に認定された場合は他の施設へ移らなければなりません。自立した状態で入居し、そのまま終身利用できるわけではない点は覚えておきましょう。
なお、同じ有料老人ホームでも、介護付き有料老人ホームなら終身利用が可能です。また、住宅型有料老人ホームも基本的には自立した高齢者を対象としていますが、最近は居宅サービスを受けることを前提に要介護度の高い方を受け入れている施設もあります。
費用が高めに設定されている施設が多い
健康型有料老人ホームは提供サービスや居室・娯楽設備が非常に充実していることが特徴です。そのため入居一時金・月額利用料は高めに設定されています。基本的には富裕層・資産に余裕のある方を対象とした施設であるため、毎月の年金から月額利用料を捻出しなければならない場合などは、他の施設を選んだほうがいいでしょう。
人付き合いが苦手な場合はストレスを感じる人も
健康型有料老人ホームはレクリエーション・イベントが多く、食堂での食事を基本としているため、入居者同士の交流が多く発生します。これは健康型有料老人ホームならではのメリットでもありますが、人付き合いが苦手な場合はストレスを感じるかもしれません。あまり他人と関わらず自分のペースで生活を送りたい場合には、サービス付き高齢者向け住宅を選んだほうがいいでしょう。
健康型有料老人ホームとサ高住との違い
ここまで何回か、健康型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を比較する場面がありました。両施設とも自立した高齢者を対象としていますが、どのような違いがあるのでしょうか。
比較項目 | 健康型有料老人ホーム | サービス付き高齢者向け住宅 |
施設の目的 | 高齢者がアクティブに生活すること | 高齢者が安心して生活すること |
入居条件 | 自立状態の高齢者 (要介護状態の方は対象外) | 自立~要介護度が軽度の高齢者 |
初期費用 | 0~1億円 | 0~22.1万円 |
月額費用 | 10~40万円 | 11.3~23.9万円 |
契約形態 | 利用権方式 | 建物賃貸借契約 |
提供サービス | 生活支援サービス | 安否確認サービス 生活相談サービス など |
介護サービス | 入居者本人が外部の居宅サービス事業者と契約する | |
医療サービス | 緊急時には提携医療機関が初期対応 |
両施設は似ていますが、契約形態が大きく異なることは知っておくべきでしょう。健康型有料老人ホームに入居する場合、掃除・洗濯・食事などのサービスを受ける「利用権」を契約します。一方、サ高住はあくまでも高齢者向け賃貸住宅であるため、締結するのは「建物賃貸借契約」です。食事などの提供を受ける場合、別途オプションサービスを契約しなければなりません。
また、健康型有料老人ホームは自立状態の高齢者のみを対象としていますが、サ高住は要介護度が軽度の高齢者でも入居できる可能性があります。このような違いも知ったうえで、ニーズに合う施設を選ぶようにしてみてください。
健康型有料老人ホームを検討している人におすすめの施設
健康型有料老人ホームは魅力的な施設ですが、費用が高めであり施設数も少ないため、誰でも入居できるわけではありません。そのため、もし健康型有料老人ホームへの入居を検討している場合は、次の施設も選択肢に入れてみてください。
● 住宅型有料老人ホーム
● サービス付き高齢者向け住宅
なぜそれぞれの施設が健康型有料老人ホームの代替となるのか、詳しく解説します。
住宅型有料老人ホームは費用の選択肢が広い
住宅型有料老人ホームも原則として自立した健康な高齢者を対象としていますが、最近は居宅サービスを利用すれば、要介護度が高くなっても暮らし続けられる施設が増えています。提供されているサービス内容は健康型有料老人ホームと変わらず、さらに高額から安価な施設まで選択肢の幅が広いことが特徴です。費用面や立地面の条件にあう健康型有料老人ホームが見つからない場合は、ぜひ住宅型有料老人ホームも候補にしてみてください。住宅型有料老人ホームについてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。
サ高住は介護サービスを柔軟に利用できる
サ高住は先述したとおり、高齢者向けの賃貸住宅です。こちらも原則としては自立した健康な高齢者を対象としていますが、介護度が重くなったとしても、居宅サービスを上手に組み合わせれば入居を継続しやすい点はメリットといえるでしょう。サ高住についてはこちらの記事でも紹介しているため、あわせてご覧ください。
まとめ
健康型有料老人ホームは元気な高齢者が入る老人ホームであるため、健康かつ自立して生活しているものの、家事などの負担を減らしたい場合にはぜひ入居を検討してみてください。食事や洗濯など生活全般に対してサポートしてもらえるため、高齢者の一人暮らし生活を満喫したい方向けの施設ともいえるでしょう。
ただし健康型有料老人ホームは選択肢が非常に少なく、希望する予算・立地では施設が見つからないケースもあります。スムーズに入居先を決めたい場合は、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅も選択肢に入れるといいでしょう。スマートシニアでは、好みの条件で絞ってこれら施設を検索できるため、ぜひ活用してみてください。
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。