介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームの違い
介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームの違いや、どちらが入居先として良いのか、わからないまま施設を探している方が多いのではないでしょうか。この2つの施設について、特徴を比較しながら解説していきます。ぜひ、参考にしてください。
とぐち まさき
渡口 将生
施設の特徴の比較と違い
介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームは、同じ「有料老人ホーム」と名付けられていますが、それぞれ特徴がありシステムにも違いがあります。6つの項目に沿って比較することで、入居対象者あるいはご家族にとってどちらの施設が合うのか検討していきましょう。
1-1.入居条件
各施設には入居条件があります。まずは、介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームの条件の違いをみていきます。
1-1a.介護付き有料老人ホームの入居条件
介護付き有料老人ホームには、「介護専用型」「混合型」「自立型」と3つのタイプがあります。
介護専用型は、要介護1以上の方が入居対象となっています。介護度の高い要介護5の方はもちろん、認知症の方も受け入れ可能です。
反対に、自立型は自立の方のみを受け入れており、入居時点で要支援・要介護の方は基本的に対象外です。
混合型は、介護度の低い方(自立・要支援1、2)から要介護5までの方を受け入れる施設です。
3つのタイプに共通しているのは、65歳以上の高齢者を受け入れるというところで、入居対象となる方の身体状況や要介護度によって分けられています。
1-1b.住宅型有料老人ホームの入居条件
住宅型有料老人ホームは、60歳以上で自立(お一人暮らしができる方)から要介護5までの方が入居対象となります。幅広く受け入れはおこなっていますが、基本的なサービスは生活支援がほとんどのため、介護度の高い方にはサービス内容が物足りないという可能性があります。
そのため、利用される方は、比較的介護度の低い方が多い傾向です。介護度が高くなると住宅型有料老人ホームでは対応が困難になり、退去の話が出る場合もあります。
1-2.介護サービスやその他サービスの提供方法
続いてサービスについて見ていきます。
1-2a.介護付き有料老人ホームのサービス
名前の通り「介護付き」の施設で、24時間介護スタッフが常駐しており、必要時は支援を依頼できるので安心です。介護付き有料老人ホームで受けられるサービスは以下の通りです。
【介護付き有料老人ホームのサービス】
身体介護・生活支援を含めたケア
ケアマネジャーが担当に付きケアプランの作成
機能訓練
食事の提供
看取りケア ※すべての施設ではありません
サービスの提供には、介護認定で受けている負担限度額(介護保険の単位)を使い切って、利用するという特徴があります。そのため、介護付き有料老人ホーム以外の介護保険サービスを、介護保険を使って利用できないので注意しましょう。
1-2b.住宅型有料老人ホームのサービス
基本的には、生活支援が中心のサービスと食事の提供です。それ以外で、排泄や入浴介助などの身体介護は、外部の事業所と契約を結びサービスを受ける必要があります。
【住宅型有料老人ホーム入居時に利用できる外部サービス】
ケアマネジャーによるケアプラン作成
デイサービス
デイケア
訪問介護
訪問看護
訪問リハビリ
福祉用具貸与 など
自宅で介護サービスを利用していた方にとっては、介護サービスを受ける場所が自宅から施設に変わったと考えると分かりやすいです。
1-3.費用
次に、介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームの費用について比較していきます。費用は、入居一時金と月額利用料があります。
入居一時金は、施設によりさまざまで、0円から数千万円まで幅があります。入居一時金が必要な場合は、入居一時金として支払った金額が、毎月の利用料にあてられるため、月々の費用が安くなります。
入居一時金は想定される施設の利用期間を償却期間と設定し、償却されていきます。償却方法は施設ごとに異なりますので、契約時にしっかりと確認しておきましょう。想定利用期間よりも前に、退去する際は返還金制度があります。
1-3a.介護付き有料老人ホームの費用
介護付き有料老人ホームは、前章でも解説した通り、介護保険の限度額をすべて使用してしまうため、介護保険を使用して外部サービスを利用できません。もし、利用する場合は全額自己負担となるため、費用の負担が大きくなります。
ほかにも、食費、消耗品のオムツや尿取りパット、光熱費、管理費などが必要です。
1-3b.住宅型有料老人ホームの費用
住宅型有料老人ホームは、生活支援のサービス費、食費、光熱費、管理費が必要です。
生活支援以外は外部のサービスを利用するという特徴があるので、利用するサービスが増えれば増えるほど利用料は上がります。介護保険は利用できるので、保険点数内で収まるようにケアマネジャーと相談しましょう。
1-4.職員体制
職員体制は大きく変わります。理由としては、介護付き有料老人ホームは介護保険法において「特定施設」の指定を受けており、職員体制の基準が設けられているからです。
以下で、違いについて詳しく見ていきます。
1-4a.介護付き有料老人ホームの職員体制
介護付き有料老人ホームには、要介度者が3名につき、介護職員または、看護職員を1名配置しています。1日を通して、入居者数に対し職員が何時間稼働しているかで計算します。
1日を通して計算するため、ほとんどの施設で夜間帯は職員数は少なく、日中に人員を多く配置しています。夜間帯も含め、常時3:1の配置ではないので注意しましょう。
他にも、機能訓練指導員や看護師、ケアマネジャー、相談員といった専門職の配置が定められています。
1-4b.住宅型有料老人ホームの職員体制
住宅型有料老人ホームの人員配置は、管理者1名以外に明確な決まりはなく、入居者に対して必要数とされています。各施設により入居者の身体状況や受入れ範囲、人員配置に対する考え方が異なることからも、施設ごとに問い合わせが必要です。
1-5.設備
介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームでは共に、「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」により、部屋の床面積が18㎡以上(一人床面積13㎡)とされています。
これは、トイレやお風呂、ベランダを除いた部分を指します。しかし、すべての施設が準拠しているわけではありません。基準は適宜改訂されるため、建設・運営している施設に関しては、施設の設備などは見学時に確認しておくとよいでしょう。
1-5a.介護付き有料老人ホームの設備
介護付き有料老人ホームでは、上記の他、以下のような設備基準が設けられています。
個室の床面積が13㎡以上
バリアフリー
トイレ・浴室・食堂・機能訓練室を設置
緊急時の避難経路の確保
介護専用居室は地上に設置
全室個室の施設が増えてはいますが、相部屋(2~4名)や夫婦部屋がある施設もあります。また、温泉付きや医務室、理美容室を設けている場合もあるので、確認しておくとよいでしょう。
1-5b.住宅型有料老人ホームの設備
住宅型有料老人ホームは、個室・相部屋・夫婦部屋と3タイプあり、どのタイプも13㎡以上となっています。食事は、共有スぺ―スにある食堂で一斉に食べる場合が多い傾向です。
娯楽スペースや機能訓練室、理美容室を設置している施設もあり、施設ごとの特色で大きな違いがあります。希望するサービスと設備が整っているか、可能な限り施設見学を行い、比較したり施設に直接問い合わせると安心です。
1-6.アクティビティ、その他
アクティビティは、高齢者にとって非常に重要な要素です。生活にメリハリが出て、脳の活性化や身体機能の維持・向上が期待できるものもあります。介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームを比べたときに、施設の種別による大きな差はありません。
しかし、施設の運営会社や施設ごとに、具体的なサービス内容や特色、取り組み方に違いがあります。気になる施設ではどのようなレクリエーションに取り組んでいるのか、また実施頻度などを確認するとよいでしょう。
施設全体で取り組む行事やイベントには、地域住民の協力を得て行うものもあり、にぎやかに開催されます。また、参加される入居者の身体的状況によっても取り組む内容が変わるため、アクティビティが好きな方や、ご希望の趣味活動がある方は、具体的な内容だけでなく、入居後に希望の活動を実施できるか確認することをお勧めします。
その他、施設によって温泉が入り放題の施設や高級ホテルのレストランのような食事、夫婦部屋、ペットと過ごせる居室など特徴はさまざまです。また、特徴のある施設では、その分費用が高くなる傾向にあります。
介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームのメリットとデメリット
それぞれ施設ごとに特徴や違いがある
【介護付き有料老人ホームのメリット】
・特定施設の指定を受けているため、入居者に対して職員数が確保されており、配置されている専門職もさまざまです。
・24時間介護を受けられるため、介護度の高い方でも入居できます。また、施設により、看取りケアの対応もおこなっています。
・機能訓練指導員がいるため、身体機能の低下予防にも期待でき、看護師の配置も定められているため、医療の面でも安心です。
・費用は、月々定額になるため、費用計画が立てやすいのが特徴です。
【介護付き有料老人ホームのデメリット】
・費用が高くなる傾向にあります。また、施設内の提供サービスで生活が行えるため、外部サービスの利用は基本的に自費となることから、費用負担と刺激の少なさを感じる場合があります。
・最近では、看護師が24時間常駐している体制を特徴とする施設が増えましたが、その分、入居費用は高くなる傾向です。
・施設内のケアマネジャーが担当になるため、外部のケアマネジャーに変更することができません。
【住宅型有料老人ホームのメリット】
・自由度が高く、入居者の身体状況に応じてサービスを組めるため、介護費用は必要な分だけ負担します。
・ケアマネジャーや介護サービスは外部の事業所と契約が必要ですが、自分で選べるという特徴があります。入居前に自宅で介護サービスを受けていた場合は、サービス提供エリア内であれば、引き続き利用できるので安心です。
・比較的、介護度の低い方が多く、アクティビティが盛んな施設が多い傾向です。
【住宅型有料老人ホームのデメリット】
・施設自体に介護を提供するサービスがなく、介護度が高い方には、必要なサービスが足りない場合があります。特に、介護だけでなく看護・医療が多くなると、他の施設への転居が必要になる可能性があります。
・職員数の基準が具体的に定められていないため、日中・夜間の職員配置を、入居前に確認しておきましょう。
・外部のサービスを利用するので、契約は毎回おこなわないといけません。入居前に利用していたサービスを引き継いだ場合は省略できます。
まとめ
介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームは、同じ「有料老人ホーム」でありながら、比較すると大きく違いがあります。どちらの施設がご自身あるいは入居対象者に合っているかのか検討していく必要があります。
施設選びのポイントは以下の通りです。
【介護付き有料老人ホーム】
介護度が高い、あるいは24時間の介護が必要な方
施設入居後、転居の心配をせず長期的に利用したい方
看護師や機能訓練指導員が配属されている環境で安心して生活したい方
【住宅型有料老人ホーム】
介護度が低く、アクティビティや余暇活動が充実した施設を希望する方
今まで利用していた介護サービスを継続したい方(デイサービスや訪問介護など)
少しでも施設にかかる費用を抑えたい方
よりよい施設選びの参考にしてください。
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。