老人ホーム入居までの流れ 見学時に見るべきポイントとは
老人ホーム入居までに行った方が良いこととして、老人ホームの見学があります。多くの方にとってはじめての経験となるため、見学といっても「どのように行うのか」「何を確認するべきなのか」など、わからないことは多いと思います。
この記事では、見学が必要な理由や見学までのステップ・ポイントなどを詳しく説明いたします。ぜひ老人ホーム見学時の参考にしてください。

老人ホーム選びにおいて見学が必要な理由
老人ホーム選びにおいて、見学は非常に重要な役割を果たします。施設を訪れ、実際に設備や雰囲気などを確認することで、ホームページやパンフレットだけではわからない情報を得ることができます。それらの情報は、施設選びの重要な判断材料となります。
また、ホームページやパンフレットの写真は良く見えるよう工夫されて撮られていることが多いです。パンフレットでは豪華そうに見えた設備が、実際に見学してみると意外と簡素だった、ということもありうるので、実態を知ることが大切です。
入居してから「こんなはずではなかった」と後悔しないよう、必ず見学をしましょう。
見学までにすべき5つのステップ
老人ホーム見学までは、以下のようなステップで進めましょう。
見学に行きたい施設をピックアップする
見学候補日時を複数出す
施設に連絡をとり、予約する
見学時に確認すべきポイントや質問をリストアップする
持ち物を確認する
各ステップについて、以下で詳しく説明いたします。
1.見学に行きたい施設をピックアップする
見学は、1ヶ所の施設ではなく複数行うことがおすすめです。複数施設を見学することで、比較検討することができます。入居予定のご本人とご家族でホームページや資料を見て、見学に行きたい施設を一緒に選ぶのがおすすめです。
また、見学に行く数が多すぎても、負担になってしまいます。3カ所ほどに絞るのがおすすめです。見学には最低でも1施設1時間はかかるので、それを考慮したうえで、負担にならない数の候補をピックアップしましょう。
2.見学希望日時を複数出す
見学に行きたい施設が決まったら、見学希望日時を出しましょう。施設側の都合もあるので、複数日時を出すことが大切です。また、見学は入居予定者ご本人とご家族一緒に訪れるのがおすすめです。2〜3人で訪れると、1人では気づかない点がわかったり、1人は写真撮影・1人はメモのように役割分担できたりするので、見学の時間を有効活用できます。
3.施設に連絡をとり、予約する
老人ホーム見学の際は、事前に予約をすることが大切です。「飛び込みで見学した方が施設本来の姿がわかる」と考える方が時々いらっしゃいますが、他の見学者と重なったり担当者が不在だったりする可能性もあり、せっかく見学に訪れても十分に時間をとって対応してもらえない場合もあります。見学者・施設双方にとって納得のいく見学になるよう、必ず予約をしましょう。
施設に連絡をする際は、以下の点を伝えましょう。
氏名
見学希望日時
見学人数
当日の交通手段
当日の連絡先(携帯電話番号やメールアドレスなど)
試食の希望の有無
見学時の写真撮影の可否
当日もらいたい資料(契約書の雛形や契約時に必要な資料一覧など)
試食については、希望すれば施設で出されている食事を試食できるところもあります。前もって準備が必要なので、予約時に試食希望の旨を伝えましょう。
施設によっては、見学の予約時に入居予定者の身体状況や入居条件などについて質問されることもあります。施設が指定している質問事項に答えることで、見学がスムーズに進みます。
4.見学時に確認すべきポイントや質問をリストアップする
見学時に確認すべきポイントや質問事項については、「つい確認し忘れてしまった」ということがないようメモ帳にリストアップし、当日持参できるようにしましょう。
見学時に見るべきポイントについては、次の項目で詳しく説明するのでぜひ参考にしてください。
5.持ち物を確認する
当日は、以下の持ち物を用意しましょう。
筆記用具
確認事項をリストアップしたメモ
カメラ
メジャー(居室に置ける家具のサイズを確認するため)
歩きやすい靴(施設だけでなく、周辺を散策して周辺環境を確認するため)
見学時に見るべき5つのポイント
ここでは、老人ホーム見学時に特に見るべきポイントについて説明いたします。
食堂やリビングなどの共有スペース
食堂やリビングなどの共有スペースは、多くの入居者が集まるため、施設の雰囲気を感じ取りやすいです。また、共有スペースは他の入居者とのコミュニケーションの場であり、過ごす時間も長いため、老人ホームでの生活において重要な役割を果たします。
パンフレットやホームページの写真では豪華そうに見えたが、実際に見てみると意外と簡素だった、ということも珍しくありません。清掃が行き届いているか、スペースは使いやすそうかなど、見学で実態を確認することが大切です。
専用居室
老人ホームでは、居室で過ごす時間も想像以上に長いので、老人ホーム生活においては重要な役割を果たします。日当たりや眺望が良い居室なら充実した生活が送れます。また、トイレやシャワー・洗面台などの設備は、使い勝手を確認しましょう。
さらに、メジャーを持っていけば家具を置くスペースについても確認できます。実際にそこで生活することを想像しながら見学しましょう。
スタッフの雰囲気
スタッフの働いている様子を見ることで、サービスの質が分かります。人手は十分に足りていそうか、利用者への対応は十分か、などスタッフの雰囲気を直接確認しましょう。
また、質問した際の対応や言葉遣いが丁寧かどうかを見ることで、スタッフへの接遇・マナー教育が行き届いているかも確認できます。
スタッフの中でも、特に施設長が重要です。施設長は、スタッフや施設の雰囲気に大きく影響を与えるためです。見学の際に施設長と接する機会があるなら、施設長の人柄・雰囲気や、質問などに真摯に対応してくれたかどうかをよく確かめることが大切です。
他の入居者の様子
他の入居者の表情や雰囲気などは、施設での暮らしが快適で楽しいものかを反映します。楽しそうに笑顔を浮かべている入居者が多いなら、それだけ明るく良い雰囲気の施設と判断できます。もちろん、入居者に勝手に話しかけるのは迷惑になってしまいますので、控えましょう。
アクセス・周辺環境
実際に施設に訪れることで、アクセスや周辺環境も分かります。家族が訪れる際にも不便ではないか、散歩や買い物などがしやすい環境か、静かで落ち着いているかなど、施設だけでなくアクセスや周辺環境についても併せて確認しましょう。
見学時に質問すべき5つの事項
見学時には気になる点や不明な点を質問することができます。事前に質問事項をまとめて、漏れなく確認できるようにしましょう。ここでは、特に質問しておきたい事項について解説していきます。
介護体制・支援サービス
施設によって、入居者に提供するサービスは様々です。入居者の身体状況に応じて、入浴介助や排泄介助など、生活を送るうえで必要な介護・支援サービスは異なります。そのため、入居前に必要なサービスを提供しているかどうかを確認することが大切です。
特に、介護付き有料老人ホームのように介護サービスを提供している施設の場合、介護体制については必ず質問しましょう。
中でも、人員体制は介護サービスの手厚さを左右するので確認が必要です。例えば、介護付き有料老人ホームの場合は「要介護者3人に対して介護職員または看護職員を1人以上配置しなければならない」という決まりがあります。施設の人員体制が最低基準をクリアしているのは前提ですが、それよりも余裕のある人員体制なら、より手厚くゆとりのあるサービスを受けられると判断できます。
医療体制
老人ホームでの暮らしを安心安全なものにするためには、医療体制の確認も重要です。協力している医療機関や対応可能な医療行為について確認しましょう。
特に、入居者が持病を患っている、あるいはそれに伴い医療行為を必要とする場合、施設がそれに対応しているかどうかを確認する必要があります。介護職員と看護師・医師では、扱える医療行為が異なるため、必要な医療行為を行える人員体制かどうかは確認しましょう。特に、夜間にも医療行為が必要なら、24時間看護師が常駐している施設を選ぶ必要があります。
入居予定者ご本人の疾患と症状について相談し、施設の医療体制的に受け入れ可能かを質問しましょう。
リハビリ内容
身体機能の維持・向上のためにリハビリは重要です。最近では、独自のプログラムやイベント・レクリエーションなどを通じてリハビリに力を入れている施設もあります。リハビリのプログラムや設備、リハビリ担当スタッフの人員体制などを確認しましょう。
契約にあたり必要な書類の一覧
老人ホームによって契約時に必要な書類は変わります。以下は必要書類の例です。
・戸籍謄本
・住民票
・印鑑、印鑑証明
・所得証明書
・健康診断書
・介護保険被保険者証
・診療情報提供書
書類の中には、すぐに入手できないものもあります。特に、診療情報提供書・健康診断書は取得までに2週間以上かかることもあります。余裕をもって準備できるよう、見学時に必要書類の一覧を確認しておきましょう。
契約に関する内容
入居条件や費用・契約内容など、契約に関する質問事項は事前に徹底的に質問してクリアにしましょう。その際、契約書や重要事項説明書の雛形をもらうとスムーズです。
特に重要事項説明書には、初期費用や月額費用、提供サービスの内容やオプションサービス、人員体制など、施設に関する重要な内容が細かく書かれています。比較検討の際に重要な判断材料になります。
見学時の心得・注意点
老人ホーム見学は、他の方のお家にお邪魔するという心構えで行いましょう。以下の心得・注意点を理解したうえで見学に行かれてください。
人数変更は事前に連絡し、連絡した人数以上で訪れない
施設側は、見学予定の人数に合わせて試食や書類などの準備をしています。人数変更がある場合は、必ず事前に連絡しましょう。特に予定よりも人数が増える場合は、それだけ施設側の準備負担も増えてしまいます。事前連絡なしに、連絡した人数以上で訪れるのは避けましょう。
入居者の方の邪魔にならないよう配慮する
老人ホームは、まわりの入居者の方が生活しているスペースです。大声を出したり勝手に話しかけたりして不快な思いをさせないよう、しっかり配慮しましょう。
写真撮影が可能かを確認する
見学の際は、施設や設備を写真に残しておくと、見学後に比較検討する際に役立ちます。写真を撮る場合は、撮影しても問題ないかを必ず施設に確認してください。また、他の入居者の方の顔が写らないよう配慮しましょう。
気になることは遠慮なく質問する
せっかくの見学ですので、気になることは遠慮せず質問しましょう。施設側にとっても、入居者ご本人とご家族双方が納得したうえで選んでいただきたいと考えています。質問に丁寧に答えてくれる施設が多いので、些細なことでも疑問点や不安点は質問し、不安のない状態で施設を選べるようにしましょう。
老人ホーム見学に最適な時間帯
老人ホーム見学に最適な時間帯は、一概には言えませんが昼食の時間がおすすめです。
昼食の時間なら、入居者が居室から食堂に集まるため、施設の雰囲気を掴みやすいです。また、施設で提供される食事や、食事介助の様子がわかります。試食できる可能性も高いので、実際に味を確認することもできます。
もちろん、ご本人やご家族が重視するポイントによって最適な時間帯は変わります。新型コロナウイルスの影響で制限がある場合もあるので、ご自身が重視するポイントや施設の都合に合わせて時間帯を選択しましょう。
まとめ
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有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。