【比較】グループホームとサ高住ってどう違うの?サービス内容や費用、入居条件まで詳しく解説
「グループホームとサ高住ってどう違うの?」「それぞれの違いが知りたい」このような悩みはありませんか?
介護施設や高齢者の住まいを探していると、多くの種類があり驚く人も多いでしょう。グループホームとサ高住は、それぞれまったく違ったサービスを提供している施設です。目的と異なったサービスを利用すると、その後の生活に大きく影響するため、慎重に検討する必要があります。
今回は、グループホームとサービス付き高齢者向け住宅の違いについて解説しています。ぜひ参考にしてみてください。


とぐち まさき
渡口 将生
グループホームとサ高住を比較しよう
利用目的とサービス内容が大きく異なる
グループホームとサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)では、サービスの内容や利用目的が大きく異なります。
グループホームは認知症の方専用の施設です。入居条件として、認知症の診断を受けた要支援2以上の方を対象としています。ユニットケアを導入し、認知症の方でも安心して共同生活が送れる施設です。
ユニットケアとは、少人数制(グループホームでは9人以下)のグループを作り、同じ職員が対応することで環境の変化が少ないケアのことを指します。また、個別ケアに重点を置いたサービスです。
一方、サ高住は高齢者向けの住まいを提供する住宅です。60歳以上で自立した方から介護度の低い方を対象としている住宅が多くあります。サ高住では、要介護認定の有無は問われません。しかし、介護度が高くなると退去しないといけない場合があります。
サ高住には「一般型」と「介護型」の2つがあり、それぞれで入居対象やサービス内容が異なるため注意が必要です。介護型は、令和4年8月時点で、全体の8.9%が介護型のサ高住として登録されています。
また、介護型は厚生労働省の定める基準を満たし、特定施設入居者生活介護の指定を受けており、「特定施設」と呼ばれます。
グループホームとサ高住の大まかな違いは以下の通りです。
グループホーム | サ高住(一般型) | サ高住(介護型) | |
---|---|---|---|
対象者 | 要支援2以上で認知症の診断を受けた方 | 60歳以上の高齢者 | 65歳以上の高齢者 |
認知症対応 | 専門として提供 | 施設によるが重度になると対応不可 | 対応可能な場合も多い |
主なサービス |
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費用 | 初期費用+月々の費用 | 敷金+月々の費用 | 敷金+月々の費用 |
※地域加算などは含まない
グループホームの初期費用は、入居一時金や保証金など、施設によって異なります。サ高住は基本的に家賃の数ヶ月分の敷金が設定されており、退去時に原状回復分を差し引いて返却されます。
グループホームとサ高住のサービス内容の違い
「認知症ケア」のグループホームと「住まいを提供」するサ高住
グループホームとサ高住では、提供するサービスや目的が異なります。
グループホームのサービス
グループホームでは、認知症の方を対象に認知症ケアを提供している施設です。日常生活において必要な入浴・排せつ・食事のケアを中心に、認知症の方でも安心して過ごせるように職員がサポートしています。
9人以下のユニットで共同生活を行い、職員の見守りやサポートを受けながら、できる限り入居者が自立した生活ができるよう支援します。ユニットケアを行うことで、顔馴染みの関係ができるため、環境の変化が起こりにくく、安心して生活できる施設です。
グループホームは、1事業所に最大2ユニット(18人)までの運営と定められており、少人数制のケアが特徴的な施設です。
サ高住(一般型)のサービス
一般型のサ高住では、安否確認サービスと生活相談サービスを提供します。安否確認サービスでは、定期的に入居者宅を訪問し、身体の状態を確認します。また、生活相談では、日頃の困り事や生活上の悩みについて対応するサービスです。
この他、食事の提供や買い物の代行などのサービスがありますが、住宅によってオプションとして設定されており、追加料金が必要な場合があります。
しかし、介護サービスの提供はありません。そのため、介護が必要になった場合は、外部のケアマネジャーと契約し、訪問介護やデイサービスなどの介護保険サービスを利用する必要があります。サービスの内容や頻度は必要性に応じて調整が可能です。
サ高住(介護型)のサービス
介護型のサ高住は、特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設のため、24時間の介護サービスが提供されています。また、居室の掃除や食事の提供なども一体的に提供されているため安心です。また、看護師や機能訓練指導員が配置されているため、医療ケアや機能訓練を受けることができます。
グループホームとサ高住の設備の違い
どちらもプライバシーに配慮された個室
グループホームとサ高住はどちらも基本的に個室が準備されています。長期的に利用することが多いため、プライバシーに配慮された設備です。また、サ高住には、一部夫婦で利用できる2人部屋がある施設もあります。
居室の広さはそれぞれ異なり、グループホームでは7.43㎡以上(4.5畳以上)、サ高住では25㎡以上と定められています。グループホームに比べてサ高住は居室が広いことがほとんどです。
グループホームでは、入居者が共同で生活する施設のため、食堂・台所・トイレ・洗面所・浴室・消防設備(スプリンクラー)などの設置が定められています。
サ高住は、バリアフリーが建物内すべてに施された住宅です。段差がなくトイレや浴室、廊下などには手すりが設置されています。また、緊急通報システムがさまざまな場所に設置されているため、万が一のときでも安心です。
各居室には、キッチン・トイレ・収納・洗面所・浴室などが用意されています。しかし、共同で使用するキッチンやリビングに十分な広さが確保されている場合は、各居室に設置していない住宅もあります。その場合、居室の広さは18㎡以上でも規定違反にはなりません。
グループホームとサ高住の費用の違い
グループホームとサ高住には初期費用が必要な場合がある
ここからは、グループホームとサ高住の費用についてみていきましょう。
それぞれの費用目安は以下のとおりです。
グループホーム | サ高住(一般型) | サ高住(介護型) | |
---|---|---|---|
一時金・保証金 | 数十万~数百万円 | なし | 一時金または敷金 ※施設によって異なる |
敷金 | なし | 家賃2~3ヶ月分 ※施設によって異なる | |
介護サービス費 (1割負担) | 要介護2|24,000円 (1ユニットの場合) | サービス利用内容や利用頻度による | 要介護2|18,120円 |
入居時に必要になる一時金や保証金、敷金は徴収していない施設や住宅もあります。また、介護型のサ高住では、前払い金を支払う場合もあります。前払いとして、入居時にまとまった費用を支払うことで、月々の費用が安くなるシステムです。
他にも、月々必要な費用として次のものがあります。
食費・おやつ代
居住費
日用品費
介護サービス費(加算分)
おむつ・パット
理美容費
医療費・薬 など
それぞれの施設・住宅によって費用は異なるため、希望する施設のホームページやパンフレットから確認すると良いでしょう。
グループホームとサ高住の入居条件の違い
入所要件が大きく異なる
グループホームとサ高住では、入居条件が大きく異なります。
グループホームは要支援2以上で認知症の診断を受けた方が対象の施設です。また、グループホームは、地域密着型サービスのため、施設と同じ地域に住所がある方のみが入居対象になります。要支援2以上の認定を受けていることが条件のため、必然的に要介護認定を受けられる65歳以上が対象です。しかし、40〜64歳までの方でも、若年性認知症の診断を受けた要支援2以上の方は入居対象になります。
一方、一般型のサ高住は60歳以上の高齢者が対象の住宅です。要介護認定を受けていない方でも入居できます。認知症の受け入れは住宅ごとに対応が異なるため、希望するサ高住へ確認が必要です。また、介護サービスはついていないため、身の回りのことを自立して行える方が対象になります。一概に介護度だけでは判断できない部分があるため、確認すると良いでしょう。
介護型のサ高住の場合は、65歳以上の要介護認定(要介護1以上)を受けた方が対象となる住宅です。認知症でも入居可能な場合が多いですが、こちらも住宅ごとに対応状況が異なるため、希望するサ高住に確認すると良いでしょう。介護区分に制限がないため、介護度が高くなった場合でも継続して入居ができます。
入居条件をまとめると以下のようになります。
グループホーム | サ高住(一般型) | サ高住(介護型) | |
---|---|---|---|
年齢 | 65歳以上 | 60歳以上 | 65歳以上 |
介護度 | 要支援2以上 | なし~要介護(低め) | 要介護1~5 |
住所の制限 | 施設と同じ市区町村 | 特になし | 特になし |
認知症※1 | 診断が必須 | 要相談 | 要相談 |
※1.認知症の区分による明確な入居条件はありません。また、サ高住でも認知症対応に特化したところもあり、住宅ごとに異なります。
グループホームとサ高住のメリット・デメリットの違い
目的に合わせて選択が必要な一長一短のサービス
ここからは、グループホームとサ高住のメリット・デメリットを見ていきましょう。
グループホーム | サ高住(一般型) | サ高住(介護型) | |
---|---|---|---|
メリット |
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デメリット |
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グループホームのメリット
グループホームの最大のメリットは、認知症ケアが手厚い点です。認知症ケアに特化した職員がサービスを提供し、少人数制のユニットケアでは、顔なじみの職員によるケアが受けられるため、安心して過ごせるでしょう。
グループホームのデメリット
グループホームには看護師の配置が義務付けられていません。そのため、多くのグループホームでは看護師不在で運営し、処置や治療が必要な場合は、提携の病院などに受診に行くことになります。
グループホームでは、初期費用として「一時金」や「保証金」が必要な場合があり、入居時にまとまった費用が必要になることが多い傾向です。月々の費用は、介護保険施設に比べると若干高く設定されてます。
サ高住(一般型)のメリット
サ高住(一般型)は要介護認定を受けていない方でも、60歳以上であれば利用可能です。安否確認や生活相談サービスを利用しながら、自宅に近い環境で自由な生活ができます。居住するだけなら、家賃や管理費などの費用のみで済むため、費用を抑えて利用可能です。
サ高住(一般型)のデメリット
サ高住(一般型)は高齢者向けの住宅のため、介護サービスの提供はありません。介護サービスが必要になった場合は、外部のサービスを利用します。また、住宅からオプションサービスとしてさまざまなサービスが提供されている場合もありますが、別途費用が必要です。介護度が高くなると、介護サービスが足りなくなることもあり、退去を検討しないといけない場合があります。
サ高住(介護型)のメリット
サ高住(介護型)では、24時間体制の介護サービスを提供しています。また、看護師や機能訓練指導員などの配置が義務付けられているため、手厚いサービスを受けられる施設です。サービスの利用料は定額のため、計画的な工面がしやすいのもメリットといえるでしょう。施設によっては看取り介護まで対応している場合もあります。
サ高住(介護型)のデメリット
サ高住(介護型)では、総合的なサービスを行うため、基本的にサービスの選択ができません。その分、費用は高めに設定されています。初期費用として、敷金が必要な場合が多いため、まとまった費用が必要です。
それぞれのメリット・デメリットがあるため、施設選びの参考にしてください。
グループホームとサ高住、それぞれにおすすめの人
状態や目的から入居先を検討する
それぞれの施設や住宅では、サービス内容が異なるため、入居対象者が異なります。
グループホームがおすすめの人
グループホームは認知症対応型の施設のため、認知症でお困りの方におすすめの施設です。
介護度の低い方でも認知症の診断があれば利用できます。(要支援2以上の認定は必要)住み慣れた地域で、顔馴染みの職員と共に安心して生活できるでしょう。
サ高住(一般型)がおすすめの人
サ高住(一般型)は介護サービスを必要としない自立した人におすすめです。身の回りのことを自分でできるが、「ひとり暮らしで心配」という方には、サ高住の安否確認サービスが役に立ちます。
自宅に近い環境で過ごせるため、他の介護施設とは違い自由な生活が送れるでしょう。
サ高住(介護型)がおすすめの人
サ高住(介護型)は、24時間の手厚い介護サービスを提供しているため、介護が必要な方から、これから介護度が高くなる見込みの方におすすめです。
介護度が高くなっても継続して入居し続けられるため、安心して利用できるでしょう。また、看護師や機能訓練指導員が常駐しているため、医療ケアや機能訓練を受けられます。
まとめ
グループホームとサ高住では、提供するサービスや目的に大きな違いがあります。利用前に目的やサービス内容を確認し、入居者に合った施設選びが重要です。
「認知症ケア」を求めるならグループホーム
「安心できる一人暮らし」を求めるならサ高住(一般型)
「手厚い介護」を求めるならサ高住(介護型)
上記のように目的に合わせた施設選びをしてみてください。
施設選びによっては、1日の流れや習慣が変わるため、今後の身体機能や生活の質に大きく影響があります。入居先を探す場合は、できる限り見学や体験利用を行い、実際の介護現場を見ておくと良いでしょう。この記事が施設選びの参考になれば幸いです。
施設を選ぶ
介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。