グループホームと有料老人ホームの違い
「グループホームと有料老人ホームは何が違うの?」と悩まれていませんか?サービスの違いや入居時の費用はいくら必要なのかと、気になることも多いでしょう。今回はグループホームと有料老人ホームの違いを6つの点で比較しながら解説していきます。それぞれの施設の特徴やサービスが理解できるので、施設選びの参考になります。ぜひ、参考にしてください。


とぐち まさき
渡口 将生
施設の特徴の比較と違い
それぞれの施設の特徴を比較していきましょう。入居される方の状態に合わせて、施設を選ぶとよいでしょう。
入居条件
まずは、グループホームと有料老人ホームの入居条件を確認していきましょう。
グループホームの入居条件
65歳以上で認知症の診断を受けている方が対象者です。グループホームは、数ある介護施設の中でも認知症対応型の介護施設です。認知症の方を受け入れしている施設は他にもありますが、グループホームは認知症の診断を受けていないと入居できないという特徴があります。
また、要支援2以上の介護認定を受けている方が対象となります。少人数制なので、密な関係になりやすい特徴があり、共同生活が送れることも入居条件のひとつです。
グループホームの入居条件をまとめると以下の通りです。
65歳以上(場合によっては65歳未満の方も可)
認知症の診断を受けている
共同生活が可能
医療ケアが必要ない
施設と同じ地域に住所がある
看護師の配置がないため、医療ケアが必要な方は入居できない場合があります。また、施設がある地域に住んでいる方が入所できる施設です。グループホームは、住み慣れた地域で生活できることをコンセプトにしています。
有料老人ホームの入居条件
有料老人ホームは、60歳以上で自立した生活ができる方から、比較的介護度の低い方までを対象とした施設が多いです。
有料老人ホームの入居条件をまとめると以下の通りです。
60歳以上で介護があまり必要ない方
60歳未満の方でも条件によっては入居可能
施設ごとに特色がある
しかし、介護付き有料老人ホームの場合は、職員数も多く施設内でケアをおこなえるため、比較的介護度の高い方でも入居できます。
60歳未満の方でも、特定疾病の診断を受け、介護認定を受けた方も入居が可能です。認知症がある場合でも基本的に入居可能です。しかし、自傷他傷行為や、共同生活に支障のある方は入居できない場合もあるので注意しましょう。
施設ごとに特色や入居条件が異なるため、希望の施設があったら相談してみるとよいでしょう。
介護サービスやその他サービスの提供方法
次はサービスについて比較してみましょう。
グループホームのサービス
グループホームは、少人数制でユニット型の施設です。グループホームのユニット型は、5〜9名を1つのユニットとし、ひとつの施設で最大2ユニットまでとなります。地域によっては3ユニットまである場合もあります。
少人数制ユニット型のため、顔なじみの関係ができやすく、環境の変化が少ないことが特徴です。認知症の方が安心して生活できるように、職員が入居者と一緒に買い物に出かけたり、調理をしたりと生活の援助をおこないます。また、入浴や排泄といった身体介護を受けられます。
最近では、看取りケアができるグループホームもありますので、終の棲家として利用できる場合もあります。
有料老人ホームのサービス
有料老人ホームで受けられるサービスは、基本的に生活支援サービスが中心です。掃除・洗濯・食事などのサービスを受け、生活を援助してもらえます。排泄や入浴のような身体介助や医療ケアが必要な場合は、外部のサービス事業所を利用します。
有料老人ホームの中でも、介護付き有料老人ホームでは、24時間職員が常駐しているため、日常生活全般のサービスを受けられるので安心です。他にもケアマネジャーや機能訓練指導員が常駐しているので、医療ケアや機能訓練を受けられます。
費用
次に、グループホームと有料老人ホームの費用について比較していきましょう。どちらの施設でも、日常生活に必要な消耗品は適宜必要です。
【主に必要と考えられる消耗品】
尿取りパット
紙パンツ
紙おむつ
ティッシュ
トイレットペーパー
歯ブラシ
歯磨き粉
入れ歯洗浄剤 など
その他、施設ごとに必要な費用が異なるため、確認していきましょう。
グループホームの費用
グループホームに入居するときには、入居一時金や保証金が必要です。そのため、入居時にはまとまった費用が必要になるので注意しましょう。
入居一時金や保証金は、月々の費用にあてられ利用料金を抑えることができます。また、退去時には、修繕費などを差し引いて返金されます。金額設定は事業所によってさまざまなので、希望の施設に問い合わせてみるとよいでしょう。
毎月必要な費用として、介護度に合わせた介護サービス費と賃料・食費・光熱費などが必要です。また、イベント費用やレクリエーション費などが必要となる場合があります。
有料老人ホームの費用
有料老人ホームでは、入居一時金が必要な場合が多いです。費用は数百~数千万円ほどのまとまった費用が必要な場合があります。
最近は、入居一時金が必要ない施設も増えてきていますので、まとまった費用の準備が難しい場合は一時金不要の施設を探してみるとよいでしょう。
入居一時金は想定される施設の利用期間を償却期間と設定し、毎月償却されるので、月々の費用負担が減ります。償却方法はグループホームと同じです。
入居一時金は想定入居期間から算出されます。途中退居した場合は返金制度があるので安心です。返金方法などは、入居前の契約時に確認しておくとよいでしょう。
費用には、家賃の他、食費・光熱費・管理費などが必要です。また、介護サービス費も必要になりますので、トータルでかかる費用についてはしっかりと確認しておくとよいでしょう。
職員体制
ここからは職員体制を比較して見ていきましょう。
グループホームの職員体制
グループホームでは、入居者3名に対して1名以上の介護職員配置が定められています。認知症の研修や資格を取得した職員が配置されているため、認知症に専門の職員が配置されています。
また、ユニットごとに計画作成者が配置されているので、生活の課題や日々の相談をするとよいでしょう。看護師の配置に定めがないので、看護師はいない場合がほとんどです。
有料老人ホーム
有料老人ホームの中でも、介護付き有料老人ホームは、要介護者3名に対して1名の介護職員の配置と定められています。また、入居者30名に対して1人の看護師の配置が定められているので、医療ケアが必要な場合も安心です。
その他の有料老人ホームでは、職員配置が必要数となっており、施設ごとに異なるので注意しましょう。
設備
続いては設備についてみていきましょう。グループホームや有料老人ホームでは、原則個室の施設が多いです。グループホームの床面積は7.43㎡以上(4.5畳以上)となっています。対して、有料老人ホームは13㎡以上となっており、グループホームと比べると、少し広い印象があります。必要と認められた場合、1室を2名(夫婦など)で利用する場合もあります。
グループホームの設備
グループホームは、学生寮などをリフォームした施設もあり、完全バリアフリーではない場合もあります。しかし、新しい施設では、高齢者や認知症の方が過ごしやすい環境を整えている施設がほとんどです。
認知症の方が安心して生活できるように、自宅の環境に近い内装で、アットホームな設計の施設が多いです。
有料老人ホームの設備
有料老人ホームの基本設計は、バリアフリー構造と定められています。他にも、緊急時の避難経路が確保されているといった基準も設けられています。
他にも、さまざまな設備を設置して、シニアライフを楽しめる施設が多いです。
例えば、カラオケ・園芸・トレーニングルーム・温泉・夫婦部屋・ペットと過ごせる部屋などがある施設もあります。施設のコンセプトや特徴、立地条件によって変わるので、確認しておくとよいでしょう。
アクティビティ、その他
最後に、それぞれのアクティビティの違いを見ていきましょう。
グループホームのアクティビティ
グループホームは、地域密着型のサービスのため、地域との交流が盛んにおこなわれるのが特徴です。地域のお祭りやイベントに参加したり、施設の行事を地域住民が手伝ってくれる場合もあります。
また、認知症カフェや地域推進会議を通して、地域住民と関わりが持てるので、刺激のある生活を送ることができます。
有料老人ホームのアクティビティ
有料老人ホームでは、さまざまな設備を活用し、楽しいシニア生活を送れる工夫が施されている場合があります。施設側もイベントなどを実施していますが、普段から入居者同士で、設備を利用した趣味活動などを実施できます。
取り組める活動内容は施設によって異なるので、気になる施設には確認しておくとよいでしょう。
グループホームと有料老人ホームのメリットとデメリット
目的が違うので入居者にあった施設選びが大切
グループホームは認知症対応型の少人数制の施設で、アットホームな環境で生活ができます。顔なじみの関係で、環境の変化が少なく、役割をもった生活が送れます。認知症の研修や資格をもった職員やユニットごとの計画作成担当者がいるので、相談しやすいのがポイントです。
しかし、入居者数が少なく、施設数も多くないので入居するまで時間がかかる場合もあります。
有料老人ホームは、グループホームと比べると、少し費用は高額になる場合が多いですが、施設数が多く自由に生活できるのがメリットです。
サービスを選択できたり、外出できたりする場合もあるので、施設に確認しておくとよいでしょう。
まとめ
グループホームと有料老人ホームは、施設の設置基準から受け入れ条件までまったく違うサービスです。「受け入れてもらえるなら」と安易に選んでしまうと、後悔するかもしれません。
後悔しないためにも、それぞれの特徴を理解して、入居される方の状態に合った施設を選びましょう。
グループホームの特徴
有料老人ホームより費用は安い
認知症専門の施設で認知症に理解がある職員がいる
認知症の診断が必須
看護師がいないので、原則的に医療行為は行わない
有料老人ホームの特徴
入居時費用が高額になりやすい
看護師がいる施設もある
認知症の状態によっては入居できない場合がある
比較的介護度の低い方が入居することが多い
施設数が多いのですぐに入居できる可能性が高い
それぞれの特徴を把握して、施設選びをすることが重要です。この記事を通して少しでも施設の理解につながれば幸いです。
介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。