賢い老人ホームの選び方マニュアル 老人ホームの種類や見学のポイント、入居までの流れも解説
高齢者の安心安全な生活を実現するのが老人ホームです。しかし、一口に老人ホームと言ってもたくさんの種類や施設があります。はじめての老人ホーム選びは分からないことが多いと思います。
この記事では、老人ホームを選ぶ際に事前に整理するべき条件、入居までの流れや準備、そしてご希望に合った老人ホームの見分け方を解説します。ぜひ老人ホーム選びの参考にしてください。
老人ホームの選び方
まずは、自分に合った老人ホームを選ぶために注目したい9つのポイントについて解説します。
老人ホームの費用
老人ホームの入居条件
老人ホームの退去条件
介護・生活支援サービス
医療・リハビリ体制
食事
レクリエーション・イベント
そのほかのチェックポイント
1.老人ホームの種類
老人ホームをはじめとする高齢者向け介護施設には、多くの種類があります。
介護施設は、国や地方自治体などが運営する公的施設と、民間企業が運営する民間施設に大きく分けられます。その中でも、公的施設は5種類、民間施設は6種類に分かれます。
一口に「老人ホーム」と言っても6種類に分類され、それぞれ特徴や受け入れ対象、受けられるサービスなどが異なります。
以下では、老人ホームの種類別に特徴を解説します。
特別養護老人ホーム
養護老人ホーム
軽費老人ホーム(ケアハウス)
介護付き有料老人ホーム
住宅型有料老人ホーム
健康型有料老人ホーム
介護医療院
介護老人保健施設
グループホーム
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
シニア向け分譲マンション
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、自治体や社会福祉法人が運営する公的施設です。
介護サービスをメインに提供し、要介護度3以上の方が入居の対象になります。
公的施設なので入居にあたって入居一時金はかからず、月額費用も民間の有料老人ホームに比べると安いのが特徴です。
養護老人ホーム
養護老人ホームは、特別養護老人ホームと同じく公的施設です。自宅で生活することが難しい高齢者の生活・自立支援をメインに行っており、介護を主たる目的としていない点が特徴です。そのため、自立した生活を送れる高齢者が入居対象となります。
軽費老人ホーム(ケアハウス)
軽費老人ホームは、地方公共団体が運営し、名前の通り他の施設に比べて安く利用することができる老人ホームのことです。軽費老人ホームにはA型、B型、C型があり、C型はケアハウスと呼ばれます。自立しているが自宅での生活に不安を感じる高齢者を対象としていますが、ケアハウスの中にも介護サービスを受けられる介護型が存在します。
介護付き有料老人ホーム
「介護付き有料老人ホーム」とは、要介護の方を対象とした民間運営の老人ホームのことです。食事や掃除などの身の回りのことから身体介護、レクリエーションまで、生活を幅広くサポートするサービスを提供しています。都道府県から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けており、介護サービスの提供基準を満たしている場合のみ「介護付き有料老人ホーム」となります。
住宅型有料老人ホーム
「住宅型有料老人ホーム」は、食事や洗濯などのサービスを提供する高齢者施設のことです。「介護付き有料老人ホームから介護サービスがなくなったもの」と考えると分かりやすいです。介護付き有料老人ホームのようにスタッフが介護サービスを提供することはありません。そのため、介護が必要になった場合は外部の介護事業所(居宅介護支援事業所)と契約をし、訪問介護による介護サービスを受けることとなります。
健康型有料老人ホーム
「健康型有料老人ホーム」とは、生活に関する基本的なことは自分でできるという高齢者に対し、食事や家事などをサポートする老人ホームのことです。あくまでも「サポート」であり、身の回りのことは自立してできることが前提なので、要介護になった場合は退去となります。
介護医療院
「介護医療院」とは、医療機能と生活施設としての機能を併せ持ち、充実した医療ケアを提供しているのが特徴の介護施設です。I型とII型があり、I型は重篤な疾患を抱えた方、II型は比較的容態が安定している方を対象としています。
医師と看護師が常駐しており、看取りやターミナルケアにも対応しているのがポイントです。持病がある方や、手厚い医療ケアを受けたい方などに適しています。
介護老人保健施設
「介護老人保健施設」とは、退院後、リハビリや介護、医療ケアなどのサービスを受けながら在宅復帰を目指すための施設です。病院を退院した後、すぐには在宅で生活できない方を対象としています。
理学療法士や作業療法士などのリハビリの専門職が常駐していることが多いのが特徴です。また、初期費用がかからず、費用が安いというメリットもあります。ただし、長期間入所できるわけではなく、入所期間は原則3〜6か月程度と定められている点に注意が必要です。
グループホーム
「グループホーム」は、要支援2以上、原則65歳以上で認知症と診断を受けている方が対象の施設です。認知症を患っている方が5〜9人ほどのユニットを組み、役割分担をしながら生活します。専門の職員のサポートを受けながら、それぞれができる家事を自分で行うというスタイルが特徴です。認知症の進行を緩やかにしながら、安心して生活できます。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」は、高齢者の方が暮らすのに適したバリアフリー構造の住宅のことです。要介護度が低い高齢者を対象とした「一般型」と、担当の介護士が介護サービスを提供する「介護型」があります。
サービス付き高齢者向け住宅は介護施設ではなく、住宅に該当します。1日のスケジュールは決められておらず、自由に外出・外泊できるのが特徴です。生活相談サービスや見守りサービスなどを受けられるため、自由度が高く安心した生活を送りたい方に適しています。
シニア向け分譲マンション
「シニア向け分譲マンション」は、高齢者の方が暮らしやすいようバリアフリー構造で設計され、設備やサービスが充実した分譲マンションです。主に富裕層の方を対象としており、生活支援サービスを受けられたり、温泉やシアタールームといった設備が完備されていたりと、豊かなシニアライフを満喫できます。
シニア向け分譲マンションは、購入することにより、所有権を持つことができるのが特徴です。一般のマンションと同様に資産として保有でき、売却や相続もできます。
2.老人ホームの費用
老人ホームをはじめとする高齢者向け施設の費用は、施設によって様々です。
基本的には、公的施設の方が民間施設よりも費用が安い傾向にあります。
高齢者向け施設の費用相場は、それぞれ以下のとおりです。
種類 | 費用相場 | ||
入居時費用 | 月額利用料 | ||
公的 | 特別養護老人ホーム (特養) | 0円 | 4.9~15万円 |
介護老人保健施設 (老健) | 0円 | 6.7~16.2万円 | |
介護医療院 | 0円 | 6.8~17万円 | |
軽費老人ホーム (ケアハウス) | 0~30万円 | 9.3~22万円 | |
民間 | 介護付き有料老人ホーム | 0~630万円 | 15~35.1万円 |
住宅型有料老人ホーム | 0~46万円 | 13.4~31.5万円 | |
健康型有料老人ホーム | 0~1億円 | 10~40万円 | |
サービス付き高齢者向け住宅 (サ高住) | 0~22.1万円 | 11.3~23.9万円 | |
グループホーム | 0~15.4万円 | 12.4~19.7万円 | |
シニア向け分譲マンション | 2,300~4,350万円 | 10~29.2万円 |
なお、上記はあくまでも目安であり、設備やサービス内容、スタッフの人員配置などによって大きく異なります。
3.老人ホームの入居条件
多くの老人ホームでは、入居する上で以下の5つの条件をクリアする必要があります。
要支援・要介護度
年齢
必要な医療行為
収入
身元保証人
要支援・要介護度
老人ホームの種類によって、入居できる要支援・要介護の基準が異なります。入居者の介護度が入居したい施設の受け入れ対象外である場合は、原則入居できないため注意が必要です。
受け入れ対象の要支援・要介護度は、老人ホーム別に以下のとおりです。
特別養護老人ホーム | 要介護3以上(原則) |
養護老人ホーム | 自立 |
軽費老人ホーム | 自立〜要介護 |
介護付き有料老人ホーム | 要介護(原則) |
住宅型有料老人ホーム | 自立〜要介護 |
健康型有料老人ホーム | 自立 |
現在だけでなく、将来の状態も見据えて老人ホームを選ぶことが大切です。たとえば、健康型有料老人ホームに入居しており、将来的に要介護認定された場合は、要介護を受け入れている別の施設に入居しなければなりません。
年齢
介護サービスを受けることが前提の施設の場合、介護保険法に従い「65歳以上」が入居の対象となります。介護を前提としない住宅型有料老人ホームや健康型有料老人ホームでは、「60歳もしくは65歳以上」と定めていることが多いです。
しかし、40歳以上65歳未満で特定の疾病により介護が必要であると認定された場合、入居できるケースもあります。
必要な医療行為
疾病などにより医療行為や医療的ケアが必要である場合、それが施設で行えるかどうかが論点になります。看護師でなければ行えないもの、研修を受けた介護福祉士なら実施できるもの、介護福祉士全員が行えるものなど、ケアに応じて実施できる職種が異なります。
胃ろうやカテーテル、痰の吸引など、何らかの医療行為や医療的ケアが必要である場合は、それが施設で受け入れられるかが入居の条件になります。
収入
必要な費用の支払い能力があるかを確かめるため、入居前に収入の確認が行われます。資産を含めた収入や、年金収入額が確認されます。収入の審査が行われることも多いです。
ちなみに、生活保護を受けているから必ず入居できない、ということはありません。公的施設の場合は支援制度もあるので、事前に確認しましょう。
身元保証人
多くの老人ホームが、契約時に身元保証人を必要としています。身元保証人は、費用が払えなくなった際の保証や退去手続きの対応、緊急時の連絡先などの役割を担います。
しかし、何らかの事情で保証人をつけられない方もいらっしゃいます。そのような方は、保証人が不要の老人ホームを探すことが必要です。
4.老人ホームの退去条件
終身利用を考える場合は、入居条件だけでなく退去条件についてもチェックしましょう。
介護度が変化したり、疾患を抱えて医療ケアが必要になったりなど、入居中に状態が変わることは珍しくありません。その際に、退去条件によっては施設の住み替えが必要になります。
退去条件では、具体的には以下のような点について確認しましょう。
介護度が変化した場合、どの程度であれば入居し続けられるか
医療ケアが必要になった場合、入居し続けられるか
長期の入院が必要になった場合、施設に戻れるか
認知症になった場合、入居し続けられるか
どのようなトラブルを引き起こした場合、退去が必要になるのか
老人ホームの運営会社が倒産した場合の対応はどうなるのか
5.介護・生活支援サービス
介護サービスを提供する老人ホームを選ぶ際は、介護体制の充実度合いがポイントになります。
介護付き有料老人ホームには、介護保険法で「3人の入居者に対し1人の介護スタッフ」という最低基準が設けられています。老人ホームの中には、最低基準よりもスタッフ人員を増やすことにより、手厚い介護サービスを提供しているところもあります。
その分上乗せ介護費がかかり月額費用が高くなる場合もありますが、ゆとりのある介護サービスを受けたい場合は人員配置に注目しましょう。
また、生活支援サービスについてもチェックしてください。生活支援サービスの内容は施設によって異なりますが、主に以下のとおりです。
洗濯
掃除
見守り・セキュリティコール
郵便や宅配の取り次ぎ
フロントやコンシェルジュによる来訪者の応対
買い物代行
役所や銀行などの手続き代行
充実した生活を送るためには、手厚く、入居者のニーズに合った生活支援サービスを提供している施設を選びましょう。
6.医療・リハビリ体制
医療ケアやリハビリが必要な方は、医療・リハビリ体制にも注目しましょう。
医療機関との連携
老人ホームは、医療機関と連携をとることにより、訪問診療や緊急時の対応に備えられるようにしています。特に緊急時の対応は重要です。どのような医療機関と連携しているか、見学時に確認しておきましょう。
認知症への対応
ご本人が認知症を患っている場合は、認知症の方を受け入れている施設を選ぶ必要があります。
以下の施設では、認知症の方に対応しているケースが多いです。
グループホーム
特別養護老人ホーム
介護療養型医療施設
介護付き有料老人ホーム
また、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、軽度の認知症の方を受け入れているケースが見られます。
認知症の方に対応している施設では、認知症に関する専門知識を持ったプロのスタッフがケアを行ってくれたり、認知症の方専門のフロアを設けていたりします。そのため、認知症の方も安心して生活できるのが魅力です。
看取りへの対応
終身利用を考えている場合は、看取りに対応している施設を選びましょう。
看取りとは、施設で最期を迎えることです。ご本人やご家族の希望を尊重しながら、身体的・精神的苦痛を緩和し、尊厳ある生活を送ることができるようにサポートします。なお、医療ケアを伴う場合は、看取りではなくターミナルケアに該当します。
看取りに対応している施設は増えており、特に特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームの8割以上が対応しています。一方、自立を対象とした施設では、対応していないケースが多いため注意が必要です。
リハビリ体制の充実
老人ホームの中には、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などがリハビリを行ってくれるところもあります。これらの専門家を常駐させ、リハビリ体制を強化している施設は安心して利用できます。また、食事や入浴、トイレなどの日常生活が自立して行えるよう訓練することによって、寝たきりの予防や生活能力の維持を図るところもあります。こうした生活リハビリを支援してくれる施設を選ぶこともおすすめです。
7.食事
食事は生活の楽しみのひとつです。老人ホームでは栄養士が食事の内容を管理していますが、栄養バランスだけでなく味や見た目も重要です。冷めた料理を提供していないか、食器・盛り付けなどが工夫されているか、食事に関する説明は十分かなどを確認することが大切です。
また、食事の内容だけでなく、食事を味わう食堂の環境も重要になります。清掃が行き届いているか、利用者が楽しそうに食事をしているか、なども見分けるポイントです。
8.レクリエーション・イベント
有料老人ホームの中には、レクリエーションやイベントに力を入れているところもあります。レクリエーションが豊富なところなら、趣味を見つけたり他の入居者と活発にコミュニケーションを取ったりしやすいです。
レクリエーションやイベントの充実度合いは、認知症予防の面でも大事にしたいポイントです。
老人ホームで行われているレクリエーションやイベントの例は、以下のとおりです。
<レクリエーション>
体を動かすレクリエーション:ラジオ体操、風船バレー、ボーリングなど
手先を使うレクリエーション:折り紙、季節のお菓子作りなど
頭を使うレクリエーション:クイズ、伝言ゲーム、しりとりなど
地域交流・社会貢献につながるレクリエーション:バザー、近隣の幼稚園児との交流、ボランティア活動など
<イベント>
お正月
お花見
夏祭り
紅葉狩り
クリスマス
お誕生日会 など
9.そのほかのチェックポイント
そのほか、以下の4つのポイントについても、併せて確認しておきましょう。
運営法人の経営状況
私物をどのくらい持ち込めるか
夫婦同室で入居できるか
ペットと入居できるか
運営法人の経営状況
運営法人の経営状況は、施設に長く入居し続けるために欠かせないポイントです。少子高齢化が進む現在、多くの民間企業が介護施設運営に参入しています。施設の数が増えていると同時に、経営が傾き、倒産して廃業に追い込まれるケースが増えているのが現状です。施設が倒産してしまった場合、住み替えが必要になることもあります。
長く安心して住み続けるためには、運営法人の経営が安定しているか、介護事業での実績は豊富であるかなどを確認しましょう。
私物をどのくらい持ち込めるか
私物を多く持ち込める施設であれば、ご本人が愛用している日用品や思い出の写真などを居室に持ち込むことができます。施設によって、持ち込める私物の数や種類は異なります。特に、大型の家具や貴金属、多額の現金などについては、持ち込みを禁止している施設が多いです。
自宅のようにリラックスした状態で過ごせるよう、私物をどのくらい持ち込めるか、持ち込んではいけないものは何か、事前にチェックしましょう。
夫婦同室で入居できるか
夫婦で入居する場合は、夫婦で1つの居室に入居するか、それぞれ個室で生活するか考えておくと良いでしょう。基本的に、2人部屋がある民間施設では、夫婦同室が認められているケースが多く見られます。介護度が離れていたり、入居後に状態が変わることで、夫婦どちらかに負担がかかることも想定されるため、夫婦入居のケースを施設に確認すると良いでしょう。
なお、特別養護老人ホームに入居したい場合は、夫婦同室だけでなく、夫婦同時の入居も難しいため注意が必要です。特別養護老人ホームは月額利用料が安いことから人気が高く、入居待ちも多いです。夫婦であっても、入居できる順番は別々に決められるため、入居時期がずれてしまうことを理解したうえで申し込みましょう。
ペットと入居できるか
ご本人がペットを飼育している場合は、ペットと入居できるかを確認しましょう。最近では、アニマルセラピーの効果が注目されており、動物との触れ合いが心身に良い影響を与えるとして、ペットと入居できる施設も増えています。
施設によって、受け入れ可能なペットの種類や大きさなどは異なるため、事前に確認が必要です。
老人ホーム入居までの5つの流れ
老人ホーム選びから入居までの流れは、以下のとおりです。
希望条件の整理
条件に合う施設の検索
見学
体験入居
契約・入居
それぞれのステップについて見ていきましょう。
1.希望条件の整理
まずは入居者ご自身とご家族で話し合い、希望条件を複数洗い出しましょう。しかし、希望がすべて叶う施設を見つけるのは難しいため、希望条件を出し終わったら、「これは譲れない」「これがあれば嬉しい」など、優先順位をつけていきましょう。
話し合いの中でいろいろな条件が出てくると思いますが、特に重要なポイントは以下の3つです。
立地条件
資金計画
サービス内容
立地条件
ご家族が訪問するうえで、立地は重要です。都道府県だけでなく、車で行きやすいか、交通機関を使って行くことはできるかなど、アクセスの部分で検討することも大切です。
資金計画
前述の通り、入居前には審査があるところも多いです。収入に見合わない高額な施設を選んでしまうと、あとで行き詰まってしまいます。無理なく費用を支払い、住み続けられる場所を選ぶ必要があります。
サービス内容
設備や介護など、生活するうえで最低限のサービスが担保されていることが前提です。さらにQOLの高い生活を送るためには、食事の内容や雰囲気、どのようなレクリエーションが用意されているか、などプラスアルファの部分も重要になります。
イベントを通じて趣味を継続できる、食事を楽しめるなど、入居者ご自身の趣味嗜好に合ったサービスが提供されるかどうかが重要になります。
2.条件に合う施設の検索
希望条件に優先順位をつけたら、優先順位の高いもの順に検索をかけていきます。
検索するうえではポータルサイトの利用がおすすめです。
3.見学
候補を何個かに絞ったら、見学予約をしましょう。施設を訪れ、実際に設備や雰囲気などを確認することにより、ホームページやパンフレットだけではわからない生の情報を得ることができます。見学時は、必ず事前に予約をして施設に迷惑をかけないようにするのがマナーです。また、複数施設を見学して比較検討しましょう。
見学時に見るべきポイント
設備の実態
パンフレットでは豪華そうに見えたが、実際に見てみると意外と簡素だった、ということも珍しくありません。見学で設備の実態を確認することが大切です。
スタッフの雰囲気
スタッフの働いている様子を見ることにより、サービスの質が分かります。人は足りていそうか、利用者への対応は十分か、などスタッフの雰囲気を確認することは非常に重要です。
また、質問した際の対応や言葉遣いが丁寧かどうかを見ることにより、スタッフへの接遇・マナー教育が行き届いているかも確認できます。
アクセス・周辺環境
施設に訪れることにより、アクセスや周辺環境も分かります。家族が訪れる際にも不便ではないか、散歩や買い物などがしやすい環境か、静かで落ち着いているかなどもあわせて確認しましょう。
4.体験入居
老人ホームの中には、契約の前にお試しで短期間入居することができる体験入居を実施しているところが多くあります。初期費用なしで実際の老人ホームでの生活を体験できるので、重要な判断材料になります。
体験入居で確認したいポイント
入居者やスタッフの様子
他の入居者の様子やスタッフの雰囲気、対応などは非常に重要です。特に、体験入居中に他の入居者とコミュニケーションをとることによって、その老人ホームに関する生の声を聞くことができます。
また、スタッフの雰囲気や対応は、老人ホームでの生活の快適さを大きく左右するポイントです。こちらも併せて確認しましょう。
設備の様子や使い勝手
居室の広さや設備、共用設備などは、実際に使ってみることにより、使い勝手が分かります。老人ホームにかかる費用の中でも多くを占めるのが設備にかかる費用です。納得して費用を払うためにも、設備の使い勝手はしっかり確認しましょう。
音や匂いなどの生活環境
一定期間施設で過ごすことにより、掃除が行き届いているか、隣の居室の音がうるさくないか、嫌な匂いがしないかなど、生活環境も確認できます。生活環境が悪いと、その後の生活における大きなストレス要因になってしまいます。
5.契約・入居
老人ホームが決まったら、いよいよ契約です。契約の際は、必要なものを準備し、契約内容をしっかり確認することが必要です。
契約時に必要な書類の例
老人ホームによって契約時に必要な書類は変わります。以下は必要書類の例です。
戸籍謄本
住民票
印鑑、印鑑証明
所得証明書
健康診断書
介護保険被保険者証
診療情報提供書
書類の中には、すぐに入手できないものもあります。特に、診療情報提供書・健康診断書は取得までに2週間以上かかることもあります。余裕をもって準備することが大切です。
重要事項説明とは
重要事項説明とは、契約にあたって大切な事項を消費者に説明することです。重要事項説明書には、契約の中でも特に重要なポイントが書かれています。入居後にトラブルにならないよう、しっかり確認しましょう。重要事項説明では、特に以下の3つのポイントを確認する必要があります。
入居一時金の償却期間と償却率
老人ホームの中には、契約時に入居一時金を支払う必要がある施設があります。入居一時金は、「想定入居期間分の家賃の前払い」という位置付けの費用のことで、指定の居住期間より前に退去した場合、残りの入居期間分の金額が返還されるという仕組みになっています。
この想定入居期間は施設によって異なるので、契約時に確認しましょう。
また、入居一時金の償却でもう1つ重要なのが「初期償却」です。初期償却とは、入居一時金から引かれる一定額のことで、退去時に返還されない額のことです。初期償却は、入居金の10%〜30%と定めているところが多いですが、こちらも施設によって割合が変わるため、契約時に確認する必要があります。
上乗せ介護費の有無
上乗せ介護費とは、人員配置基準よりも多く看護・介護職員を配置している場合に徴収できる費用のことです。上乗せ介護費の有無は施設によって異なるので、契約時にしっかりと確認することが必要です。
クーリングオフ(短期解約特例)に関する記載
入居一時金が必要となる有料老人ホームについては、90日以内に解約した場合、一時金の返還義務があります。法律で義務付けられているとはいえ、短期解約特例についてきちんと契約書に書かれているかを確認しましょう。
良い老人ホームの見分け方
老人ホームの中には、豪華な設備や手厚いサービスが自慢の高級老人ホームもあります。
もちろん設備やサービスが充実していることに越したことはないですが、高級老人ホームが必ずしも良い老人ホームとは言えません。ここでは、費用面以外での良い老人ホームの見分け方をご説明します。
施設長をはじめとしたスタッフの雰囲気・対応が良い
他の入居者が楽しそうに生活している
入居後の生活を詳しく説明してくれる
入居後も定期的にご家族に連絡してくれる
施設内で受けられるサービスが充実している
施設長をはじめとしたスタッフの雰囲気・対応が良い
老人ホームでの暮らしの快適さを左右するのがスタッフの人柄や対応です。穏やかな雰囲気か、マナー教育が行き届いているか、入居者の目線に立って接してくれるか、食事や入浴などの際に適切な支援を提供してくれるかどうかなどは、老人ホームを選ぶ際のポイントになります。
また、スタッフや施設の雰囲気に大きく影響を与えるのが施設長です。見学や体験入居の際に施設長と接する機会があるなら、施設長の人柄や、質問などに真摯に対応してくれたかどうかをよく確かめることが大切です。
他の入居者が楽しそうに生活している
他の入居者の様子も重要な判断基準です。楽しそうな表情をしているか、安心して暮らせているか、スタッフと円滑なコミュニケーションがとれているかなど、老人ホーム全体の雰囲気は入居者の様子から感じ取ることができます。このポイントは特にパンフレットやホームページでは分からない部分なので、見学や体験入居の際に注目してみてください。
入居後の生活を詳しく説明してくれる
見学時や契約前に、スタッフが入居後の具体的な生活について詳しく説明してくれるか、も重視しましょう。
老人ホームに入居するということは、新しい場所で、新しく出会う人たちと共同生活を送るということです。入居後にうまくやっていけるのか、楽しく生活できるのかなどを不安に思うことは、ごく自然なことです。
入居後の生活について詳しく説明してくれる施設であれば、入居前に不安を解消できます。1日のスケジュールや1年間のイベント、入居者の声などを積極的に共有してくれる施設を選びましょう。
入居後も定期的にご家族に連絡してくれる
施設の中には、入居後も定期的にご家族に連絡し、入居者ご本人の様子を伝えてくれるところがあります。
老人ホームでは面会ができますが、毎日施設を訪問できるわけではありません。特に、施設がご家族の家から離れた場所にある場合、面会に行ける頻度は限られてしまいます。
定期的に連絡してくれる施設であれば、安心して親御さんを任せられるでしょう。
入居者を獲得することばかりを考え、入居後のご家族とのコミュニケーションがなおざりになる施設もあります。入居後も真摯に対応してくれるかを確認しましょう。
施設内で受けられるサービスが充実している
施設内で受けられるサービスが充実しているかも、重要なポイントです。
パンフレットやホームページで、豊富なサービスを受けられることを謳っている場合でも、必ずしも居室内でサービスを受けられるとは限りません。受けられる介護サービスが、併設・隣接しているデイサービスや、契約している別の事業所による訪問介護である場合もあります。
入居後に後悔しないよう、誰が、どこでサービスを提供してくれるのかもチェックし、施設内でサービスを受けられるところを選びましょう。
【ケース別】老人ホームの選び方
ここでは、入居者ご本人のニーズに合った老人ホームの選び方を、以下の5つのケース別に紹介します。
- 手厚い介護サービスを受けたい場合
- 入居にかかる費用をなるべく抑えたい方
- 要介護でなるべく費用を抑えたい場合
- プライベートを確保したい場合
- 認知症を患っている場合
手厚い介護サービスを受けたい方には「介護付き」がおすすめ
介護サービスの手厚さを重視する場合は、介護付き有料老人ホームへの入居がおすすめです。
介護付き有料老人ホームなら、介護スタッフが常駐しており、24時間介護サービスを受けられます。看護師の配置や協力医療機関との連携も義務付けられているため、医療ケアが必要な方も安心です。
入居者に選ばれる施設にするために、魅力的な特色を打ち出している施設も多いです。医師を常駐させている、独自のリハビリプログラムやレクリエーションが充実している、レストランのような食事を楽しめるなど、様々な特色を持った施設の中から、理想的な施設を選べます。
費用を抑えたい方には「ケアハウス」がおすすめ
費用を抑えたい方には、ケアハウスがおすすめです。ほかの施設と比較して、安い費用で生活支援サービスや介護サービスを受けられます。レクリエーションが充実している施設もあり、低価格ながら充実した環境で生活できるのが魅力です。
さらに、介護型のケアハウスであれば介護度が重くなっても入居し続けられるため、終身利用もできます。
要介護でなるべく費用を抑えたい方には「特養」がおすすめ
年金だけで老人ホームの費用を賄いたい方や、生活保護を受給している方など、なるべく費用を抑えたい要介護の方には、特別養護老人ホームがおすすめです。入居一時金がかからず、月額利用料も高くないため、費用負担を軽減できます。お住まいの地方自治体によっては、費用負担をさらに抑える制度が利用できる場合もあります。
費用は安いですが、厚生労働省の配置基準に基づき、24時間スタッフによる介護サービスを受けられるのが特長です。
ただし、人気が高く入居待ちが発生しているため、入居まで時間がかかる場合がある点に注意しましょう。
プライベートを確保したい方には「サ高住」がおすすめ
自宅での生活に不安があるが、プライベートを確保して自由な生活を送りたい、という方には、サービス付き高齢者向け住宅がおすすめです。
前述のとおり、サービス付き高齢者向け住宅は介護施設ではなく、1日のスケジュールやプログラムは決められていません。自宅で過ごすのと同様に自由度の高い生活を送りながら、安否確認や生活相談などのサービスを受けられます。建物全体がバリアフリー構造である点も安心です。
認知症の方には「グループホーム」がおすすめ
認知症の方が自分らしく生活するためには、グループホームへの入居がおすすめです。認知症に対する理解と知識を持った専門スタッフがサポートしてくれます。スタッフが身のまわりのことをすべて行うのではなく、できることは自分でやる、というスタイルであるため、認知症の進行を緩やかにし、能力を維持できる点も魅力です。
共同生活を送るユニットは5〜9人と少人数であり、入居者やスタッフの入れ替わりも激しくないため、ストレスなく安心して生活できるでしょう。
老人ホームの選び方に関するQ&A
老人ホームの選び方に関してよくあるQ&Aを紹介します。
Q1.老人ホームの費用はなるべく安い方がよいですか?
Q2.立地のよさはどの程度重要ですか?
Q3.見学や体験入居は何施設分行くべきですか?
Q4.老人ホーム選びは何から始めるべきですか?
Q1.老人ホームの費用はなるべく安い方がよいですか?
老人ホームを選ぶうえで、費用の安さは最優先にすべきでしょうか?
Q2.立地のよさはどの程度重要ですか?
目星をつけている施設が自宅から離れたところにあります。立地のよさはどの程度重視すべきですか?
Q3.見学や体験入居は何施設分行くべきですか?
施設をじっくり選びたいのですが、見学や体験入居は何施設分行うべきでしょうか?
Q4.老人ホーム選びは何から始めるべきですか?
老人ホーム選びを何から始めるべきかわかりません。
老人ホームの選び方まとめ
最後に、老人ホームを選ぶ際のポイントをまとめました。
老人ホームの特徴や受け入れ対象がご本人に対応しているか
老人ホームの費用は無理なく支払い続けられる範囲か
入居条件・退去条件に問題はないか
介護・生活支援サービスは充実しているか
医療・リハビリ体制が整っているか
食事の時間を楽しめるか
レクリエーション・イベントが充実しているか
運営法人の経営状況に問題はないか
私物をどのくらい持ち込めるか
夫婦同室で入居できるか
ペットと入居できるか
まとめ
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有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。