要介護1とはどんな状態?自宅で一人暮らしできるかどうかを解説

「要介護1の判定基準はなに?」「要介護1ではどんなサービスが利用できるの?」このような疑問はありませんか?

要介護1は、介護区分において比較的軽い状態と判断された要介護度です。利用できる介護サービスや利用回数も限られているため、要介護1の方が自宅で生活を継続することは難しいと感じる方もいるでしょう。

今回は、要介護1の判定基準や利用できるサービス、一人暮らしができるかについて解説します。要介護1の認定を受けた方は、ぜひ参考にしてみてください。

#要介護度#条件#生活#制度#豆知識
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

要介護1とはどのような状態?

要介護区分の中で一番軽い認定

要介護1とは、基本的な日常生活動作は問題なく行うことができますが、運動機能や認知機能の低下によって一部の動作に介助や見守りが必要な状態を指します。たとえば、食事や排泄・入浴は自分でできる人も多くいますが、準備や確認などの支援が必要な状態です。

【必要な支援の例】

・歩くことはできるが、一人での歩行に不安があるため、杖や歩行器などの支えが必要

・立ち上がる際に手すりや人の支えが必要

・包丁を使うのが難しいため、調理や食材調達に支援が必要

・入浴時に浴槽をまたぐことができないため、スライドボードなどの福祉用具や介助が必要

上記のように要介護1の認定を受けた方には、部分的な介助や支援が必要です。また、身体的な状態だけでなく、病気などによっては精神的に不安定な状態や認知症の症状などにも支援が必要な場合もあります。

【認定の基準】

要介護認定において「1日に必要な介護の時間が32分以上50分未満」に該当した方が要介護1の認定を受けます。要介護認定は居住区の地域包括支援センターや役所で申請し、認定調査や主治医の意見書を基に算出する仕組みです。

認定調査では、全74項目の基本調査と特記事項・環境などの聞き取りや動作確認を行います。その後、コンピューターによる一次判定を行い、主治医の意見書・認定調査の特記事項などを加味して要介護判定が決定します。

【区分支給限度額】

要介護1の区分支給限度額は、16,765単位です。つまり、1ヶ月間で16,765単位分の介護保険サービスを受けられることを意味します。

介護度別の区分支給限度額は以下の通りです。

介護区分

区分支給限度額

要支援1

5,032単位

要支援2

10,531単位

要介護1

16,765単位

要介護2

19,705単位

要介護3

27,048単位

要介護4

30,938単位

要介護5

36,217単位

要介護1の区分支給限度額を金額に換算すると以下の通りです。

要介護区分

介護負担割合

自己負担額

要介護1

1割負担

16,765円

2割負担
33,530円
3割負担
50,295円

区分支給限度額を超えてサービスを利用した場合は、超過分が全額自己負担となるため注意が必要です。

要介護1で利用できる介護サービス

要介護1は自分でできることも多いため介護サービスの選択肢が少ない

要介護1で利用できる介護保険サービスは、以下の通りです。

サービスの種類

利用できるサービス

訪問型サービス

訪問介護(夜間対応型含む)

訪問看護

訪問入浴

訪問リハビリ

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

居宅療養管理指導

通所型サービス

通所介護(デイサービス)

通所リハビリ(デイケア)

地域密着型通所介護(デイサービス)

認知症対応型通所介護(認知症デイ)

療養通所介護

短期入所型サービス

短期入所生活介護(ショートステイ)

短期入所療養介護(療養型ショートステイ)

公的施設サービス

介護老人保健施設

軽費老人ホーム

養護老人ホーム

介護療養型医療院

介護療養院

民間施設サービス

有料老人ホーム

サービス付き高齢者住宅

認知症対応型共同生活介護

複合型サービス

小規模多機能型居宅介護

看護小規模多機能型居宅介護

その他

福祉用具貸与

特定福祉用具販売

住宅改修

【訪問型サービス】

訪問型サービスでよく利用されるのは、訪問介護(ホームヘルパー)です。日常生活で必要な家事(掃除、洗濯、調理、買い物など)の支援や、入浴、排泄など身体的な支援を受けることが出来ます。

【通所型サービス】

通所型サービスでは、通所介護(デイサービス)や通所リハビリ(デイケア)を利用する方が多い傾向です。デイサービスでは日常生活の支援やアクティビティをメインに、デイケアではリハビリをメインに提供しています。

最近では短時間(2~3時間)の利用ができる事業所もあります。長い時間利用したい・お風呂や食事、レクリエーションに参加したい人はデイサービス、短時間でリハビリに集中したいなど利用目的によって選択可能です。

【短期入所型サービス】

短期入所型サービス(ショートステイ)は、宿泊を目的としたサービスで最大30日まで連続して利用可能です。要介護1の区分支給限度額の範囲で利用すると、15日前後利用できます。

※宿泊する事業所のサービスによって必要な単位数が異なるため、詳しくは担当のケアマネジャーに確認すると良いでしょう。

主な利用目的は以下の通りです。

  • 介護している者が体調不良

  • 介護している者が不在

  • 介護している者が精神的・肉体的に疲労を感じている

  • 一人暮らしで時折孤独を感じる

  • 本人の状態が悪化したため家族での介護が難しくなった

  • 突然の施設入所だと抵抗があるのでイメージをつかむために利用

このように、様々な理由でショートステイは利用されています。

【公的施設サービス】

病気やケガで入院した後、在宅復帰するためにリハビリを受けられる介護老人保健施設(老健)や継続して医療的ケアが必要な場合に利用する介護医療院などがあります。

【民間施設サービス】

民間の施設サービスでは、要介護度の認定が不要な施設もありますが、必要な場合、要介護1以上としていることがほとんどです。例えば、居住を移して利用する有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅などがあり、利用条件に関しては、希望する介護施設に確認すると良いでしょう。

【複合型施設】

複合型施設は、小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護があります。

小規模多機能型居宅介護とは、通い(デイサービス)・訪問(訪問介護)・泊まり(ショートステイ)の3つのサービスを組み合わせて利用できるサービスです。看護小規模多機能型居宅介護は、上記3つのサービスに加えて、訪問看護サービスを提供しています。

1つの事業所で3つのサービスを提供するため、契約は1度だけです。

【その他】

・福祉用具貸与

要介護1の場合、手すり・歩行器・歩行補助杖・スロープ・自動排泄処理装置(排尿に限る)の5つがレンタル可能です。車椅子や特殊寝台(介護用ベッド)はレンタル対象外になります。しかし、医師が必要性を認めた場合や適切なケアマネジメントにより必要性が認められた場合に限り、例外的にレンタルが認められるケースもあります。

・特定福祉用具販売

特定福祉用具販売は、1年間(4月から翌年3月まで)で購入金額10万円を上限に介護保険を利用できるサービスです。特定福祉用具販売は以下の5種類になります。

  • 腰掛便座

  • 自動排泄処理装置の交換可能部品

  • 入浴補助用具(入浴用いす・浴槽用手すり・浴槽内いす・入浴台・浴室内すのこ・浴槽内すのこ・入浴用介助ベルト) 

  • 簡易浴槽

  • 移動用リフトのつり具部分

これらは、介護保険を利用して購入金額の1〜3割の費用で購入できます。

※購入した代金を全額支払ったのちに、申請を行うことで保険費用分の返金を受けることができます。(償還払い)

【住宅改修】

在宅生活を継続するために、不便な箇所に対して住宅改修を行うことができます。住宅改修の内容は以下の通りです。

  • 手すりの取り付け

  • 段差の解消

  • 滑り防止や移動を円滑にするため床や通路面の材料変更

  • 扉を引戸へ取替

  • 洋式便器へ取替や位置・向きの変更

  • 上記の各工事に付帯して必要と認められる工事

これらの住宅改修費の支給上限は20万円です。利用は一人1回が基本ですが、20万円までであれば、複数回に分けることができます。また、介護度が3段階以上上がった場合や引っ越しした際には、再度、20万円まで利用可能です。

介護保険を利用するため、支払いは負担割合によって1〜3割で利用できます。また、償還払いと受領委任払のどちらかを選んで利用できます。

参照:厚生労働省「福祉用具・住宅改修」

要支援2との違い

要介護1と判定基準は同じ

要支援2とは、基本的には自立しているが心身の機能に低下がみられる状態です。部分的に、見守りなどのサポートが必要な状態と言えるでしょう。

要介護1と要支援2では、認定基準が同じで「32分以上50分未満」となります。要介護1と要支援2の具体的な違いは以下の通りです。

①認知症高齢者の日常生活自立度がⅡ以上またはМである場合(認知機能や思考・感情などの障害により予防給付の理解が困難な状態)

上記に該当した場合、要介護1と判断されます。ただし、該当しなかった人すべてが要支援2になるかというとそうではありません。

参照:厚生労働省「認知症高齢者日常生活自立度」

②おおむね半年以内に心身の状態が悪化して介護の手間が増大し、要介護度の再検討の必要があると考えられる場合

上記の場合、要介護1と判断されます。①②ともに該当しない方は要支援2の判定となります。

要介護1と要支援2では利用できるサービスが異なります。要支援2で利用できる介護サービスは以下の通りです。

サービスの種類

利用できるサービス

訪問型サービス

介護予防訪問看護

介護予防訪問入浴

介護予防訪問看護

介護予防訪問リハビリ

介護予防居宅療養管理指導

通所型サービス

介護予防通所介護(デイサービス)

介護予防通所リハビリ(デイケア)

短期入所型サービス

介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)

介護予防短期入所療養介護(療養型ショートステイ)

施設サービス

軽費老人ホーム

養護老人ホーム


有料老人ホーム

サービス付き高齢者住宅

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

複合型サービス

介護予防小規模多機能型居宅介護

その他

福祉用具貸与

介護予防住宅改修

要介護1で利用できる訪問介護サービスは、要支援2の方では総合事業の一環となります。総合事業とは、生活支援サービスとして各自治体が主となった介護事業です。支援内容として、見守り支援・外出支援・買い物・調理・掃除などの生活支援などがあります。

要介護2との違い

要介護1から一段階上の介護区分

要介護2とは、日常生活動作や理解力・判断力が低下して部分的に介護が必要なため一人で過ごすことが困難な状態です。例えば、歩行や立ち上がりは何らかの助けがないと行えず、食事や排泄も部分的に手助けが必要になります。

さらに、理解力や判断力も低下している場合が多く、内服管理や金銭管理も他者の支援が必要な状態です。 そのため、要介護1と要介護2の大きな違いは、自分の身の回りのことができるかできないかで判断される傾向です。

要介護2では、利用できる区分支給限度額が19,705単位となり、要介護1と比べ利用できる区分支給限度額は3,000単位ほど多くなります。

また、要介護2以上になると、特殊寝台(介護用ベッド)や車椅子などの福祉用具がレンタル可能です。

要介護1で必要な介護サービス費用の目安 

施設に入居すると費用が高くなる

在宅介護と施設介護では、同じ介護度でも必要となる費用は大きく変わります。

【在宅介護費用の目安】

在宅介護費用は、大きく分けると「介護サービス費」と「介護サービス費以外」に分けることができます。

種類

内訳

介護サービス費

訪問介護やデイサービスなどの介護サービスを利用した費用

介護サービス費以外

医療費

介護に関する用品購入費(おむつ・パットなど)

介護タクシー利用費 など

平成30年度生命保険に関する全国実態調査では、要介護1の方を在宅介護した場合、1ヶ月に介護費用として45,000円が必要と公表されています。介護費用以外にも、居住費・食費・光熱費・消耗品費などが必要です。

参照:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(P165図表Ⅱ-64介護費用)

また、在宅介護を始める際、環境を整えるため住宅改修や介護用ベッド・車椅子などの必要な介護用品を準備する費用がかかります。要介護1ではその費用の平均が約51万円という調査結果があります。

参照:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(P164 (e)介護費用)

【施設利用時の費用目安】

介護施設には様々な種類がありますが、今回は要介護1の人が利用できる公的施設の介護老人保健施設と民間企業が運営している介護付き有料老人ホームについて紹介します。

・介護老人保健施設

在宅復帰を目的にリハビリを行いながら、一定期間入所できる施設です。費用面は、民間施設よりも安価に利用できます。また、非課税世帯で一定の要件を満たしていれば、介護負担限度額認定を受けることができるため、さらに安価に利用できます。費用の目安は以下の通りです。


多床室

従来型個室

ユニット型個室

介護サービス費

23,640円

21,420円

23,880円

居住費

11,310円

50,040円

60,180円

食費
43,350円
合計
78,300円
114,810円
127,410円
※1ヶ月30日で計算、自己負担割合1割の場合

※老健タイプ:基本型、「地域加算」を含む各種加算は含めないもの

また、上記以外にも、医療費(他科受診分)・日常生活費(洗濯代・理美容代など)が必要となります。公的施設には初期費用(入居一時金など)は一切かかりません。また、おむつや尿とりパットなども施設負担です。

参照:介護給付費単位数等サービスコード表「令和3年4月」

   厚生労働省「サ―ビスにかかる利用料」

・介護付き有料老人ホーム

同じ介護付き有料老人ホームでも、施設によって費用が大きく異なります。初期費用として0〜数千万円以上かかる施設もあるため、事前に確認が必要です。

介護付き有料老人ホームでは、介護保険を利用した介護サービスを受けることができます。ひと月に必要な介護費用の目安は以下の通りです。

費用項目

詳細

家賃

利用する居室や共用部分の利用料金

※周辺の地価や居室のグレードによって異なる。

管理費

一般的に光熱費・水道代・設備管理費など

※施設によって金額や内容が異なる。

介護サービス費

16,140円(要介護1・自己負担割合1割の場合)

食費

提供される食事を利用した場合

日用品費

おむつや個人で使う洗面用具・洗剤・ティッシュペーパーなど

医療費

訪問診療・訪問歯科・病気などで受診した際の医療費・内服薬など

施設によって費用は様々ですが、ひと月に15〜30万円程度必要な施設が多い傾向です。民間施設の場合、立地条件や提供されるサービスによって設定されている料金が大きく異なるため、事前に確認し毎月の支払いが継続できるか検討する必要があります。

要介護1で利用できるおすすめの施設

費用を抑えながら自由度の高い施設がおすすめ

介護度の低い要介護1の状態で施設利用を検討する場合は、自由度の高い施設や住宅がおすすめです。例えば以下の2つがあります。

【サービス付き高齢者向け住宅】

60歳以上の自立した高齢者を対象としており、施設内は個室・バリアフリーで過ごしやすい環境が整っています。賃貸型の住宅で比較的安価に利用でき、基本的には自由に生活できます。

安否確認や生活相談などが義務付けられているため、万が一体調が急変しても安心です。生活支援や食事の提供などは、施設によっては対応していない場合があるため注意しましょう。介護サービスが必要な際には、外部の事業所と契約して利用できます。

【住宅型有料老人ホーム】

自立〜介護度の低い方を対象とした施設です。食事の提供・生活支援・健康管理・見守り・生活相談のサービスを提供しています。入居一時金や保証金が必要となる施設もあるため、事前に確認が必要です。介護サービスが必要な際には、外部の事業所と契約して利用できます。

どちらも民間の施設のため、費用設定は様々です。見学や相談を通して十分に検討することをおすすめします。

要介護1で一人暮らしはできるのか 

一人暮らしは十分可能と考えられる 

要介護1は、要介護区分の中でも比較的軽度な状態で、基本的に身の回りのことを自身で行うことができるため、部分的なサポートで十分一人暮らしが可能と考えられます。

部分的なサポートとは、例えば家族の支援や訪問系サービスの利用です。定期的に見守りできる環境があれば、急な体調変化にもすぐに対応できるでしょう。在宅で一人暮らしをする場合は、担当のケアマネジャーと相談の上、必要なサービスを検討して安心できる環境を整えていきます。

できること・できないことを明確にして、何に困っているのかをケアマネジャーに伝えましょう。そのうえで、介護保険制度や社会資源を活用しながら一人暮らしの準備を進めます。

まとめ 

まとめ

今回は、要介護1の状態や利用できるサービス、一人暮らしができるかについて解説しました。

要介護1は、要介護度の中では比較的軽度な状態で、日常生活全般において自立している方も多く、在宅生活の継続は十分に可能と言えるでしょう。しかし、身体が動く分、転倒のリスクが高い、あるいは認知症の症状によっては外出から自宅に帰って来られなくなることもあります。そのため、将来に備えて介護施設の検討を始める人もいます。

在宅生活を送るにあたっては、本人のできることや心身の状態、性格に合わせて必要な介護サービスを選択していくことが大切です。また、費用面や生活の希望、受けたいサービスについてもしっかりと話し合い、本人にとって安心して過ごすことができる生活環境を目指すと良いでしょう。

今回の記事内容が、最適な介護サービスを選択する手助けになれば幸いです。

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