要介護認定の申請方法とは?必要な書類やサービス利用までの流れを詳しく紹介

「要介護認定の申請方法がわからない」「必要な書類やサービス内容が知りたい」このような疑問はありませんか?

介護保険サービスを利用するためには要介護認定が必要です。要介護認定を受けるためには、要介護認定の申請手続きを出し、認定調査を受けるなどいくつかの過程があります。そのため、すぐに介護保険サービスが必要な状態でも、要介護認定を受けておらず、利用が先延ばしになってしまうケースもあるでしょう。

今回は、要介護認定の申請方法や必要な書類、サービス利用までの流れについて詳しく解説しています。これから要介護認定を受けて介護保険サービスを利用したいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。

#制度#手続き関係#豆知識
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

要介護認定とは?

自立から要介護5までの要介護区分がある

要介護認定は、高齢者や障がいを持つ方が介護サービスを利用する際、どの程度のサポートが必要かを判断するための公的な認定です。この認定を受けることで、介護保険サービスを受けられるようになります。

【8つの介護区分】

要介護認定は、8つの区分があり、これによって介護の必要度を判断します。日常生活における動作や生活の自立度に基づいて、非該当(自立)、要支援1、要支援2、要介護1~5の計8つの区分があります。要支援1は軽度、要介護5が最も重度で介護が必要となる状態です。

【要介護認定を申請する方法】

要介護認定を受けるためには、要介護認定の申請を行う必要があります。申請方法は以下の通りです。

  1. 申請書の取得|市区町村の介護保険課などで、要介護認定の申請書を取得できます。ホームページからダウンロードも可能です。

  2. 必要事項の記入| 取得した申請書に、必要事項を正確に記入します。必要事項には、かかりつけ医や連絡先、認定調査の実施可能な曜日や時間帯を記載します。

  3. 申請書の提出|記入が終わったら、申請書を市区町村に提出します。

  4. 認定調査|提出後、市区町村の調査員が自宅などに訪問し、日常生活の様子や健康状態を調査します。

  5. 主治医の意見書|かかりつけの主治医に意見書の作成を依頼します。2の申請書に依頼先を記載しておくと、市区町村から主治医に作成依頼します。

  6. 結果の通知:|調査結果と主治医の意見書をもとに、要介護区分が決定され、通知されます。

【申請に必要なもの】

介護保険の申請時には、以下のものが必要となります。

  1. 介護保険被保険者証(65歳以上の方)

  2. 健康保険証(64歳以下の方)

  3. 印鑑( 一部の市区町村では不要な場合があります)

  4. 申請書(市区町村の窓口またはホームページからダウンロード可能)

  5. マイナンバーカードまたは通知書( 一部の市区町村では不要な場合もあります)

  6. 身分証明書(顔写真つきのもの)

  7. かかりつけ医の診察券など(主治医を確認される場合があります)

申請は、基本的に本人あるいは家族が行います。家族の対応が難しい場合、地域包括支援センターまたは居宅介護支援事業所に代行してもらうこともできます。具体的な手続きの内容や必要書類は、市区町村によって異なる場合があるため、詳しい情報は市区町村の窓口で確認することをおすすめします。

参考:シニア・エンディングの情報メディア「ひとたび」

申請後から認定結果までの具体的な流れ

申請から結果まで約30日かかる

要介護認定の申請書を提出した後は、認定調査や判定など、さまざまな過程があります。2つの判定を通して、申請者の日常生活の様子や健康状態を評価し、介護保険サービスの必要性が判断されます。それぞれの過程は以下の通りです。

【認定調査】

申請書が市区町村に提出されると、認定調査員が申請者の自宅や施設を訪れ、身体状況や精神状態を確認します。申請書に記載した希望の認定調査日(曜日・時間帯)に合わせて日程調整できるため、連絡があった際は、予定と照らし合わせて相談していくと良いでしょう。

認定調査は、申請者の日常生活の様子や生活の自立度を実際に確認するためのものです。調査員は、移動や食事、排泄、入浴などの日常生活動作や認知機能についての質問をして、詳しい状態を把握します。

認定調査の際、申請を受ける対象者が「できない」ことも「できる」と伝えてしまうことがあります。認定調査員は事実確認をしますが、場合によっては事実と異なる調査結果が出る可能性があるため注意が必要です。普段、一緒に生活している家族や申請者の近況を把握している方がいる場合は、立ち会って日頃の様子を調査員に伝えると良いでしょう。メモなどを用意しておくと伝え忘れを防げるためおすすめです。

【主治医意見書の作成】

要介護認定申請者の主治医に意見書の作成を依頼します。主治医意見書は、医師が申請者の健康状態や疾患、症状について詳細に記述するものです。この意見書には、申請者の病歴や現在の状態、治療の内容などが詳細に書かれています。

申請者から依頼するケースもありますが、基本的には要介護認定の申請書を提出すると、市区町村から主治医に依頼する仕組みになっています。依頼する医師にもよりますが、主治医の意見書作成に時間を要する場合があるため注意が必要です。要介護認定結果を急ぐ場合は、主治医に直接作成を依頼したり、状況に応じて作成を急いでもらえるか相談すると良いでしょう

【一次・二次判定】

要介護認定の判定は一次判定と二次判定に分けて行われます。一次判定では、認定調査の評価を基にコンピューターによる判定が行われます。コンピューターによる一次判定は、認定調査票の控えがあれば自宅でも結果を見ることが可能です。

ケアマネジャーも、認定調査票の控えからコンピューター診断を実施して、要介護認定のシミュレーションを行い、今後の介護サービス計画の予定を立案することもあります。認定調査票の控えは、市区町村によって申請者に渡さない場合もあるため、もらえない場合は、調査票でチェックされてる項目をコピーやメモしておくと良いでしょう。ただし、最終結果は二次判定によって決まるため、シミュレーション結果はあくまでも予測にすぎないことに留意しましょう。

二次判定は、一次判定の結果を基に保険・医療・福祉の学識経験者5名前後で実施します。認定調査の特記事項や主治医意見書の内容から、最終的な要介護区分が決定します。

【結果通知】

一次判定や二次判定の結果を基に、要支援や要介護の区分が確定します。確定した結果は、申請者に文書で通知されます。通知書には、認定された区分や認定期間などが記載されています。もし、申請者が結果に納得できない場合は、再評価の申し出や異議申立てを行うことも可能です。

申請から認定までのプロセスは複数のステップを経て、申請者の介護の必要性を客観的に評価されます。正確に評価するためには、本人や家族からの情報提供が重要となるため、調査員や主治医とのコミュニケーションを大切にしましょう。

要介護認定の有効期間

要介護認定には有効期間がある

要介護認定を新規で受けた場合は原則6ヶ月です。その後の更新時には、申請者の状態に合わせて、最長4年間の有効期間が与えられます。次回の更新時に回復が期待される疾病がある場合は、有効期間が短くなる傾向です。反対に、慢性的な疾病の場合は有効期間が長くなります。

有効期間の切れる約60日前には、更新申請に必要な書類が自宅に届きます。更新申請にも約30日程度の期間が必要になるため、更新申請は早めに済ませておくと良いでしょう。万が一、有効期間が過ぎてしまった場合は、効力がなくなり介護保険サービスが受けられない、または全額自己負担となるため、注意が必要です。

また、更新申請後に何らかの事情で判定が遅れる場合がありますが、有効期間内に申請していればその時点での要介護度は継続されます。介護保険サービス利用にかかる費用は、要介護度が確定しない限り正しい請求額にならないため、要介護度の決定通知が届くまでは請求が保留となります。

要介護認定の疑問

要介護認定にかかる疑問を解決

ここからは、要介護認定に関してよくある疑問について回答します。

Q1.区分が決まる基準は?

要介護の区分は、1日(24時間)で介護が必要な時間で算出します。認知症の有無や身体状況も考慮されますが、それらによってどれだけの介護が必要かどうかで決まります。詳しくは以下の通りです。

要介護度

介護が必要な時間

要支援1

25分以上32分未満

要支援2
32分以上50分未満
要介護1
要介護2
50分以上70分未満
要介護3
70分以上90分未満
要介護4
90分以上110分未満
要介護5
110分以上

参照:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」

Q2.調査結果に納得できないときは?

要介護の認定結果に納得がいかない場合、不服申し立てをすることができます。その場合、都道府県が設置している介護保険審査会に「不服申したて」をします。ただし、不服申し立てをして再審査をおこなっても要介護度が変わらないこともあります。

Q3.要介護認定の申請はいつからできるの?

基本的に、65歳以上であればいつでも申請可能です。40歳以上65歳未満の方は、特定の疾患を持っている場合のみ申請できます。

Q4.入院中に要介護認定の申請はできるの?

入院中でも要介護認定の申請は可能です。認定調査は病院で行います。入院中は、治療中あるいは安静状態のことが多いため、介護度が高く出る傾向にありますが、退院後の生活を想定した判断がなされ、認定有効期間も短い場合があるため注意が必要です。

Q5.本人が申請できないときはどうするの?

本人が身体的な理由や認知症により判断や決定ができない場合、家族・親族・法定後見人・ケアマネジャーなどの代理人が申請することができます。その場合、身分証など申請者との関係を証明できるものが必要になることがあります。

Q6.結果はどれくらいでわかるの?

要介護認定の結果は、申請から約30日程度で通知されます。ただし、地域や状況によっては期間が長くなる場合があるため注意が必要です。延長される場合は要介護認定審査会(二次判定)の日程を通知する場合があります。

介護保険サービスの利用方法

選択する介護保険サービスによって利用方法が異なる

介護保険サービスは、高齢者や障がいを持つ方が日常生活を安心して送れるようサポートするためのものです。居宅サービスや施設入居など、介護保険サービスの種類に合わせた利用方法を確認しておきましょう。

要支援の場合、地域包括支援センターのケアマネジャー、または包括から委託された居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当になります。一方、要介護の場合、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当です。

担当のケアマネジャーがついた後は、相談や担当者会議をしながら介護サービス計画書(ケアプラン)を作成し、各サービス事業所と連携・契約します。

受けられる居宅介護サービスの一例は以下の通りです。

【居宅介護サービスの種類】

サービスの種類

サービス内容

予防(要支援1.2)

介護(要介護1~5)

訪問介護

自宅にヘルパーが訪問して必要な生活支援を提供。

月額制(定額)で実施しており、訪問回数の上限は事業所ごとに異なる。

週に1~2回で実施している場合が多い。

身体介護・生活支援・通院乗降介助などのサービスが受けられる。

サービスによって費用が異なり、利用回数に応じて加算。

通所介護(デイサービス)

介護サービス事業所に通い、日常生活上の支援やレクリエーション活動などに参加できる。

月額制(定額)で実施しており、利用回数の上限は事業所ごとに異なる。

週に1~2回で実施している場合が多い。

利用時間によって費用が決まっており、利用回数に応じて加算。

介護保険の負担限度額の範囲内であれば、週に5~6回でも利用可能。

訪問入浴

自宅に簡易浴槽を持ち込み入浴介助を提供するサービス。

基本的に看護師を含む3名の介助スタッフで訪問しますが、本人の状態に合わせて減員してサービスを提供することもある。

利用回数に合わせて費用が加算。

基本的に看護師を含む3名の介助スタッフで訪問。

利用回数に合わせて費用が加算。

短期入所(ショートステイ)
特別養護老人ホームなどの宿泊施設に短期間入所するサービス。
要介護度に合わせて費用が決まる。

​利用日数によって費用が加算されます。

​※予防の場合、負担限度額の上限が低いため、利用しすぎると他のサービスが利用できなくなることもあるため注意が必要。​
小規模多機能型居宅介護
通い・訪問・泊りの3つのサービスを柔軟に組み合わせて利用可能。
要介護度に合わせて利用料金が異なる。

それぞれ定額で利用でき、サービスも柔軟に組み合わせることが可能。

小規模多機能型居宅介護を利用すると、類似サービスにあたる訪問介護・通所介護・短期入所のサービスは利用できなくなる。

福祉用具貸与
車椅子や杖、手すりなどの福祉用具がレンタル可能。
福祉用具の種類に合わせて費用が異なる。

要介護度によってはレンタルができない。

(例:介護ベッドは要介護2以上)

上記以外にも、介護保険を利用しないサービス(インフォーマルサービス)などもあるため、担当のケアマネジャーと相談してみると良いでしょう。ニーズに合わせた最適なサービスを提案してもらえます。


施設入所を希望する場合は、ケアマネジャー以外にも施設相談員に相談ができます。

【介護施設の種類】

施設

サービス内容

予防(要支援1.2)

介護(要介護1~5)

特別養護老人ホーム

長期利用を目的とした介護施設。

施設によっては看取りケアを実施しているため、終身までの利用可能。

対象外

原則要介護3以上から利用可能。

(要介護1.2の方は特例の条件を満たした場合に限り利用可能)

介護老人保健施設

リハビリを目的とし在宅復帰を目指す施設。

利用期間は3〜6ヶ月程度と定めている施設が多い傾向。

対象外

要介護1~5の方が利用可能。

有料老人ホーム

長期利用を目的とした施設。施設ごとに特色が異なる。

介護付き有料老人ホームでは対象外。

介護度が高くなる(介護量が多い)と退去を促される場合がある。

軽費老人ホーム

所得に応じた料金で利用できる施設。

A~C型の施設があり、現在C型が主流。C型は「ケアハウス」と呼ばれている。

要介護認定がない高齢者でも利用可能。

特定施設の指定を受けている場合は要介護1以上の方のみ利用可能。

サービス付き高齢者向け住宅

高齢者向けの賃貸住宅。介護サービスの提供がないため、外部の介護保険サービスを利用するケースが多い。

要介護認定がない高齢者でも利用可能。

特定施設の指定を受けている場合は要介護1以上の方のみ利用可能。

グループホーム

認知症対応型の地域密着型のサービス。5~9名のユニットで生活するため、なじみの関係ができやすい環境。

認知症の診断を受けており、要支援2の方が利用可能。

要支援1は対象外。

認知症の診断を受けている方が利用可能。

養護老人ホーム
何かしらの理由で、経済的に困窮している方や家がない方が利用できる施設。

介護度に関係なく利用可能。

ただし、市区町村から「措置」の判定が必要。

介護施設はニーズに合わせて多岐にわたるため、利用する施設を判断できない場合もあるでしょう。担当のケアマネジャーや施設相談員に相談し、最適な施設を選択しましょう。

まとめ

まとめ

​​今回は、要介護認定の申請方法や介護保険サービス利用までの流れについて解説しました。

要介護認定は介護保険サービスを利用する際に必要です。申請から認定まで約30日かかるため、いつでも介護サービスを使えるよう早めに申請して認定を受けておくと良いでしょう。

要介護認定を受けた後は、紹介した介護保険サービスの利用が可能になります。本人や家族の希望を確認してケアマネジャーなどの専門職と相談しながら適切なサービスを選択していくと良いでしょう。

今回の記事が、要介護認定の申請やサービス利用時の参考になれば幸いです。

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