要介護認定とは?認定基準や区分、申請方法から介護保険サービスの利用まで紹介

要介護認定とは?
日本の介護保険制度は、公的医療保険とは異なり、被保険者証を持っているだけでは保険給付を受けることができません。保険給付を受けるためには、保険者(行政)から介護が必要な状態であると認めてもらう必要があるのです。この認定を「要介護認定」といいます。
なお、介護保険制度では「要介護」と「要支援」の2つの介護レベルが定められています。日常生活で介護が必要なときに認定されるのが「要介護」で、介護は必要でないものの見守り・支援を必要とするのが「要支援」です。
そのため厳密に考えると、「要介護認定」と「要支援認定」はそれぞれ異なるものといえます。しかし実務的には、「要介護」と「要支援」のいずれかに認定されることが「要介護認定」と呼ばれているため、この記事でも「要介護」と「要支援」の両方について見ていきましょう。
要介護認定の認定基準
要介護認定の基準となるのが、「要介護認定等基準時間」です。これは介護にかかる時間(手間)を可視化したもので、まず直接生活介助・間接生活介助・問題行動関連行為・機能訓練関連行為・医療関連行為の5分野で、それぞれどのくらいの時間が必要なのかを算定します。そして、ここで求めた「要介護認定等基準時間の長さ」と「痴呆性高齢者の指標」を加味して、最終的な介護レベルが決まります。
要介護認定等基準時間の分類
要介護認定等基準時間を求めるための5分野が、それぞれどのような介護を想定しているのか見てみましょう。
直接生活介助 | 入浴・排泄・食事などの介護 |
間接生活介助 | 洗濯・掃除といった家事援助など |
問題行動関連行為 | 徘徊に対する探索・不潔な行為に対する後始末など |
機能訓練関連行為 | 歩行訓練・日常生活訓練などの機能訓練 |
医療関連行為 | 輸液の管理・褥瘡(じょくそう)の処置などの診療補助 |
これらの5分野に必要な時間に基づき、要介護認定の一次判定が行われます。
要介護認定等基準時間の分類
上記の5分野に基づき算出された要介護認定等基準時間がどのくらいなのかによって、次のように介護レベルが認定されます。
要介護認定等基準時間 | 認定区分 | 心身の状態の例 |
25分未満 | 自立 (非該当) | 自分で歩行・起き上がりなどの基本動作ができる 薬の内服・電話などの日常活動の支援も必要ない |
25分以上32分未満 | 要支援1 | 基本動作はほぼ自分で行える 薬の内服などの日常活動は見守りが必要な状態 |
32分以上50分未満 | 要支援2 | 基本動作はほぼ自分で行えるが、要支援1よりさらに見守りが必要 筋力が衰えることで歩行・立ち上がりなどの基本動作が不安定になり、将来的に介護が必要になる可能性が高い状態 |
要介護1 | 薬の内服などの日常活動に必要な能力が低下している部分的な介護が必要な状態 認知機能の低下が見られることもある(認知症の初期段階) | |
50分以上70分未満 | 要介護2 | 要介護1に加え、基本動作についても部分的な介護が必要 |
70分以上90分未満 | 要介護3 | 要介護2と比べて日常活動に必要な能力・基本動作能力が著しく低下している ほぼ全面的な介護が必要 |
90分以上110分未満 | 要介護4 | 要介護3に加えてさらに動作能力が低下している 介護がなければ日常生活を送ることが難しい状態 思考力・理解力にも著しい低下が見られる(認知症が進行している) |
110分以上 | 要介護5 | 介護4よりさらに動作能力が低下している 介護がなければ日常生活を送ることがほぼ不可能 コミュニケーション・意思疎通が難しいこともある |
各区分ごとの要介護認定等基準時間は、あくまでも要介護認定の調査テストで求められる時間であり、家庭で実際に対応している介護時間とは異なります。介護の必要性を可視化するための目安であるため、介護認定後に受けられるサービスの合計時間と連動しているわけでもありません。
また、この要介護認定等基準時間に基づいてコンピュータが一次判定を行いますが、最終判定は介護認定審査会で行われることも特徴です。上記はあくまでも目安であり、実際には高齢者の状態に応じて適宜適切な介護レベルを認定してもらえます。
なお、要介護認定はあくまでも介護の必要性を軸にした制度であるため、高齢者の「病気の重さ」と「要介護度の高さ」が必ずしも一致するとは限りません。たとえば認知症が進行しているものの、身体の状態が比較的良好な場合、徘徊などの問題行動が顕著に見られることもあります。この場合、介護に要する手間が非常に多いといえるでしょう。(そのため介護レベルは高くなります)
一方、寝たきりの方が認知症を発症したとしても、徘徊などの問題行動は発生しないため、介護の手間は大きく増えません。そのため介護レベルが据え置かれる可能性が高いです。このように、介護にかかる手間は、その方の心身の状態によって大きく変わることを覚えておきましょう。
要介護認定の区分
要介護認定の区分は、要支援1〜2および要介護1〜5の7つに分けられます(非該当を「自立」として8区分にすることもあります)ここからは、それぞれの区分ごとに特徴を見ていきましょう。
認定区分 | 心身の状態の例 |
要支援1 | 家事・掃除にサポートが必要 (食事・排泄・入浴などは自立) |
要支援2 | 家事・掃除とあわせて、歩行などにもサポートが必要 (食事・排泄・入浴などは自立) |
要介護1 | 杖・歩行器を使えば一人で歩行できる 包丁を使うのが難しい (基本的な日常生活動作には問題がない) |
要介護2 | 立ち上がったり歩いたりするとふらつく 背中を一人で洗えない 判断能力の低下が見られる(お金の管理が難しい、など) |
要介護3 | 立ち上がり・歩行が自分一人では難しい スプーンなどを使っても一人での食事が難しい 認知症が進んで徘徊などが見られる |
要介護4 | ほとんどの日常生活動作を一人で行えない 認知症の症状が強く出ている |
要介護5 | 24時間の介護を要する 身体機能の低下が顕著(食べ物を飲み込めない・自力での寝返りが難しい、など) |
要支援1
「要支援1」は、もっとも介護(介助)の必要性が軽い認定区分です。日常生活を送るために必要な食事・排泄・入浴・立ち上がり・歩行は一人でできるものの、家事全般のサポートが必要な場合が該当します。
「要支援1」と認定されている方は、あまり支障を感じることなく日常生活を送れるでしょう。しかし何も対策をしていないと、将来的には介護の必要性が高くなってしまうかもしれません。そのため適切に「介護予防サービス」を利用し、心身の状態を維持・改善していくことが重要です。

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要支援2
「要支援1」よりも介助の必要性が高いものの、まだ要介護の状態とはいえない場合、「要支援2」に認定されます。食事・排泄・入浴などは自立して行えるものの、家事全般や立ち上がり・歩行にサポートが必要な場合、「要支援2」と認定される可能性が高いでしょう。「要支援2」と認定された場合、心身の機能が要介護状態まで悪化してしまわないように、適切に介護予防サービスを利用していくことが重要です。
なお、受けられる介護予防サービスについては、「要支援1」と「要支援2」で内容に違いはありません。ただし1か月あたりの支給限度額は要支援1は50,320円、要支援2は105,310円とされています。
要介護1
「要介護1」は、日常生活動作に大きな支障はないものの、運動機能・認知機能の低下により一部動作に介護の必要性が生じた場合に認定される区分です。たとえば歩行のために杖や歩行器が必要だったり、調理器具を扱えなくなったり、入浴時に浴槽をまたげなくなったりした場合、「要介護1」と認定される可能性が高いです。また、身体機能は大きく衰えていないものの、認知症の初期症状が見られる場合にも、「要介護1」と認定される可能性があります。
「要介護1」以上に認定されると、「介護サービス」を利用できるようになる点が特徴です。訪問看護・訪問入浴・訪問リハビリなどの居宅サービスや、通所介護(デイサービス)・短期入所生活介護(ショートステイ)などを活用すれば、自宅で暮らし続けることも可能でしょう。
要介護2
軽〜中度の要介護状態になると、「要介護2」と認定されます。たとえば立ち上がり・歩行でふらつく場合や、自分一人では背中を洗えない場合には「要介護2」と認定される可能性が高いでしょう。認知機能が低下して金銭管理が難しくなった場合も「要介護2」に該当します。
「要介護2」に認定されたとしても、ある程度のことは自立して行えるため、居宅サービスを利用しながら自宅で暮らし続けることも可能です。しかし介護を必要とする場面が増えるため、自宅での暮らしに不安を感じる方もいるでしょう。もし自宅での生活が難しい場合には、介護付き有料老人ホームなどへの入居を検討してみてください。
要介護3
「要介護3」は、介護の必要性が中〜重度の場合に認定される介護レベルです。手すりを使っても立ち上がれなかったり、杖を使っても歩けなかったりする場合には、「要介護3」と認定される可能性が高いでしょう。自分一人での食事が難しい場合や、認知症による徘徊が見られる場合も、「要介護3」と認定されます。
「要介護3」と認定されるのは、上記のように自宅での生活が困難な方です。「要介護3」に認定されると特別養護老人ホーム(特養)への利用申し込みも可能となるため、介護施設への入居を検討してみてください。ただし特別養護老人ホームは要介護4以上の方を優先しているケースもあるため、もし入居が難しい場合には、介護レベルの高い高齢者も受け入れている民間の介護付き有料老人ホームも選択肢に入れてみてください。
要介護4
「要介護4」は、介護の必要性が重度の場合に認定される介護レベルです。座るだけでも介助が必要だったり、認知症の症状が強く出ていたり、ほとんどの日常生活動作を自分一人では行えない場合には「要介護4」と認定される可能性が高いです。
「要介護4」の方は特別養護老人ホームに優先的に入居できる可能性もありますが、すでに満床で空きが出るのを待たなければならないこともあります。自宅での介護が難しいと感じる場合には、特別養護老人ホームが空くまでの間、介護付き有料老人ホームへ入居してもいいでしょう。
要介護5
介護の必要性がとくに重度の場合に認定されるのが「要介護5」です。24時間の介護を要し、食べることや寝返りも一人では難しい方などが該当します。看取りの必要性も生じるため、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、もしくは医療体制の整った介護付き有料老人ホームへの入居を検討してみてください。
要介護認定申請の対象者
要介護認定申請の対象者は介護サービスを受けられる方、すなわち原則として介護保険の第1号被保険者(65歳以上の方)です。ただし加齢によって発症する可能性のある「特定疾病」と診断された場合には、第2号被保険者(40歳以上64歳以下の方も)も要介護認定を申請できます。特定疾病は次の16種類です。
- がん(末期)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
なお、申請は本人だけではなく、本人の家族はもちろん、地域包括支援センター・居宅介護支援事業者・介護保険施設の職員に代行してもらうことも可能です。
要介護認定の申請方法
それでは、要介護認定の申請方法を見ていきましょう。主な流れは次のとおりです。
- 要介護認定の申請
- 認定調査の実施
- 主治医による意見書の作成
- 一次判定
- 二次判定
- 「要介護度」の認定結果の通知
それぞれのステップはもちろん、必要なもの・申請先・申請者についても詳しく紹介します。
申請に必要なもの
まずは要介護認定の申請にあたって必要なものを紹介します。お住まいの市区町村によって異なることもありますが、ほとんどの自治体で必要な書類は次のとおりです。
● 要介護・要支援認定の申請書
● 介護保険の被保険者証(65歳以上の場合)
● 医療保険の被保険者証(65歳未満の場合)
● かかりつけ医が分かるもの(診察券など)
● 主治医意見書
● 申請者の身分証明書(運転免許証・身体障害者手帳など)
● マイナンバーを確認できる書類
申請する場所・申請者
要介護認定は、被保険者が居住している市区町村の役所へ申請します。申請窓口の名前は統一されていませんが、「介護保険課」「高齢者支援課」などとされているケースが多いです。あらかじめホームページで確認しておくか、役所の受付で聞いてみてください。なお、地域包括支援センターに申請できることもあります。
申請者については先述したとおり、本人・本人の家族・地域包括支援センター・居宅介護支援事業者が代理することも可能です。介護保険施設については、入居者が申請する場合のみ代理申請できます。なお、本人以外の方が代理申請する場合、先ほど紹介した必要書類とあわせて「代理権確認書類(委任状・申述書など)」「代理人確認書類」「代理人所属確認書類」なども必要です。
step1:要介護認定の申請
書類を用意したら、役所の窓口へ申請に行きます。申請から要介護認定がおりるまで相応の時間が必要なため、日常の中で支援・介護の必要性が生じ始めたと感じたら速やかに申請するといいでしょう。入院中は介護保険サービスは利用できませんが、退院後に備えるため、入院中に申請するのもおすすめです。
そもそも要介護認定を申請すべきかどうか迷っている場合には、近くの「地域包括支援センター」もしくは役所に相談してみてください。相談の結果、要支援・要介護が必要そうだと判断されれば、そのまま要介護認定の申請を受け付けてくれます。
step2:認定調査の実施
申請後、市区町村の職員・委託ケアマネジャーなどが申請者の自宅を訪問し、介護レベルを決めるための調査を実施します。申請者の状態はもちろん、日常生活の姿・家族の状況・住まい環境などについて質問されるため、正直に答えましょう。第三者の訪問があると気丈に振る舞いたくなるかもしれませんが、不自由なことがあれば遠慮なく伝えたほうが、正しい介護レベルに認定してもらえます。なお、調査内容は全国共通で、主な内容は次のとおりです。
調査項目 | 調査内容の例 | |
概況調査 | 現在利用中の介護サービス(ある場合) 家族の状況 居住環境 日常的に使用する機器 傷病・既往症 | |
基本調査 | 身体機能・起居動作 | 麻痺があるか 関節の動きに制限があるか 寝返りができるか 起き上がれるか 視力・聴力 |
生活機能 | 移動・移乗できるか 食べ物を飲み込めるか 排泄ができるか 歯磨き・洗顔・整髪できるか 衣服の着脱ができるか 外出の頻度 | |
認知機能 | 意思の伝達ができるか 自分の生年月日・年齢・名前を答えられるか 今日の日付を答えられるか 直前にしていたことを思い出せるか 今の季節・場所などを理解しているか 徘徊があるか | |
精神・行動障害 | 被害妄想があるか 作り話があるか 感情が不安定になるか 昼夜が逆転しているか 介護に抵抗するか ひどい物忘れがあるか 自分勝手な行動があるか 繰り返し同じ話をすることがあるか | |
社会性への機能 | 一人で薬を内服できるか 一人で金銭管理ができるか 一人で買い物ができるか 一人で簡単な調理ができるか 集団行動をとれるか |
上記の例を含め、74項目が調査されます。また、過去14日間に特別な医療行為(透析・ストーマ処置・カテーテルなど)を受けているかどうかも調査対象です。調査にかかる時間は30分〜1時間程度を見込んでおきましょう。
step3:主治医による意見書の作成
つづいて市区町村からの依頼で、主治医(かかりつけ医)が意見書を作成します。もし主治医がいない場合は申請時に窓口へ相談し、いずれかの医療機関で診断を受けなければなりません。この意見書には、申請者の身体上の障害・精神上の障害・疾病・負傷状況などが記載されます。
step4:一次判定
訪問調査の結果はコンピューターに入力され、記事前半で紹介した「要介護認定等基準時間」として数値化されます。この数値によって、要支援1〜2および要介護1〜5のいずれか、もしくは自立(非該当)と一次判定されますが、ただちに認定結果として通知されるわけではありません。
step5:二次判定
「一次判定の結果」や「主治医意見書」「訪問調査時の特記事項」などをもとに、介護認定審査会が申請者の介護レベルを二次判定します。介護認定審査会とは、医師・看護師・社会福祉士・介護福祉士など介護分野に精通した専門家が5人1組で構成している市町村の附属機関です。
どの介護レベルとして認定されるかは、要介護認定等基準時間で機械的に決まるわけではなく、各申請者の個別状況も加味されます。そのため、訪問調査でありのままの姿・状態を伝えることが重要なのです。
step6:「要介護度」の認定結果の通知
二次判定の後、「認定結果通知書」と「認定結果が記載された被保険者証」が通知されます。これらの書類が届いたら、介護サービス(要支援の場合は介護予防サービス)を受ける準備を始めましょう。
要支援・要介護度に応じて1か月あたりの負担上限額が決まっているため、基本的にはその上限の中で介護サービスを受けることになります。それぞれの負担上限額は次のとおりです。
| 支給限度額 (1か月あたり) | 自己負担額 (1割) | 利用できるサービス回数の目安 |
要支援1 | 50,320円 | 5,032円 | 週2~3回程度 |
要支援2 | 105,310円 | 10,531円 | 週3~4回程度 |
要介護1 | 167,650円 | 16,765円 | 1日1回程度 |
要介護2 | 197,050円 | 19,705円 | 1日1~2回程度 |
要介護3 | 270,480円 | 27,048円 | 1日2回程度 |
要介護4 | 309,380円 | 30,938円 | 1日2~3回程度 |
要介護5 | 362,170円 | 36,217円 | 1日3~4回程度 |
具体的なサービス内容はケアマネージャーに相談し、「ケアプラン」を作成してもらいましょう。
要介護認定の申請~結果までの期間
要介護認定の申請から結果通知までの期間は、約30日程度です。ただし認定調査や主治医による意見書作成が遅れると、申請から通知まで2か月程度かかることもあります。スムーズに介護認定を受けるためにはなるべく早く認定調査の都合をつけ、かかりつけ医を見つけておくことが重要です。
要介護認定の注意点とポイント
要介護認定の注意点・ポイントとしては、次の3つが挙げられます。
● 必ず認定されるわけではない
● 有効期限が設けられている
● 心身状態の変化がみられたら区分変更申請が可能
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
必ず認定されるわけではない
要介護認定を申請されたからといって、必ず要支援・要介護と認定されるとは限りません。調査の結果、自立している(支援の必要がない)と判断される可能性もあるのです。もし「自立」という判定に納得できない場合や、想定よりも低いレベルの要介護度で認定されてしまった場合には、不服申し立てを行いましょう。結果通知を受け取った日の翌日から3か月以内に、都道府県ごとに設置されている「介護保険審査会」に申し立てれば、当初の認定結果が覆る可能性もあります。
認定されない場合でも受けられるサービス
不服申し立てをしても要支援・要介護の認定を受けられなかった場合、介護予防サービス・介護サービスを利用することはできません。しかし要介護認定を受けていない高齢者でも受けられるサービスも存在します。
たとえば、各市町村が実施している介護予防・日常生活支援総合事業(通称:総合事業)は、要支援者と65歳以上のすべての高齢者が対象です。総合事業は大きく分けて「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」の2つに分類されます。
このうち介護予防・生活支援サービス事業については、基本チェックリスト(生活機能に低下が見られるかどうか判定するリスト)に該当する高齢者のみがサービス対象です。サービスを利用するためにはチェックリストが基準を超えている必要がありますが、チェックそのものは65歳以上のすべての高齢者が受けられます。また、一般介護予防事業については、その自治体に住むすべての高齢者がサービス対象です。
もし要支援・要介護の認定は受けられなかったものの、何かしらの予防・サポートを受けたいという場合には、このような自治体ごとの取り組みを活用してみてください。
有効期限が設けられている
要介護認定を新規で受けた場合は原則6ヶ月です。その後の更新時には、申請者の状態に合わせて、最長4年間の有効期間が与えられます。次回の更新時に回復が期待される疾病がある場合は、有効期間が短くなる傾向です。反対に、慢性的な疾病の場合は有効期間が長くなります。
有効期間の切れる約60日前には、更新申請に必要な書類が自宅に届きます。更新申請にも約30日程度の期間が必要になるため、更新申請は早めに済ませておくと良いでしょう。万が一、有効期間が過ぎてしまった場合は、効力がなくなり介護保険サービスが受けられない、または全額自己負担となるため、注意が必要です。
また、更新申請後に何らかの事情で判定が遅れる場合がありますが、有効期間内に申請していればその時点での要介護度は継続されます。介護保険サービス利用にかかる費用は、要介護度が確定しない限り正しい請求額にならないため、要介護度の決定通知が届くまでは請求が保留となります。
心身状態の変化がみられたら区分変更申請が可能
要支援・要介護の認定を受けた後、直近の調査時よりも心身の状態が悪化してしまった場合には、更新時期を待たずに「区分変更申請」をすることも可能です。認定されている要介護度によって支給限度額・利用できるサービスの種類も変わるため、早期に区分変更したほうが適切な介護を受けられます。区分を変更したい場合は、各市町村の担当窓口に「区分変更申請書」を提出してください。結果が出るまでの期間は約1か月です。
要介護認定後の介護保険サービス利用の流れ
それでは最後に、要介護認定を受けてから介護保険サービスを利用するまでの流れについて、代表的な例に沿って紹介します。
● 介護施設に入居する場合
● 「要支援1・2」の方が自宅でサービスを受ける場合
● 「要介護1」以上の方が自宅でサービスを受ける場合
それぞれ詳しく見ていきましょう。
介護施設に入居する場合
「介護付き有料老人ホーム」「特別養護老人ホーム」などの介護施設へ入居する場合、それぞれの施設のケアマネジャーがケアプランを作成してくれます。基本的にそのプランに従っていれば、困ることはありません。介護サービスにかかる費用は要介護度によって変わり、施設の月額費用に含まれます。なお、介護施設を選ぶときは、次のポイントを意識してみてください。
● どのくらいの介護度まで対応しているのか
● 看取り・医療ケアに対応しているのか
● 認知症患者も受け入れているのか
スマートシニアでは、上記のような条件はもちろん、月額費用や立地などで絞って介護施設を探すことも可能です。
「要支援1・2」の方が自宅でサービスを受ける場合
「要支援1・2」の方が自宅で介護予防サービスを受ける場合、地域包括支援センターのスタッフと介護予防のケアプランを作成します。なお、「住宅型有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」など介護サービスを提供していない施設へ入居する場合、その施設が「居宅」とみなされるため、自宅と同じようにサービスを受けることも可能です。
「要介護1」以上の方が自宅でサービスを受ける場合
「要介護1」以上の方が自宅でサービスを受ける場合、いわゆる「居宅サービス」を受けることになります。居宅サービスとは、ヘルパー・看護師などが自宅に来てくれるサービスです。そのためまずは、居宅サービスを提供している居宅介護支援事業者を探しましょう。居宅介護支援事業者は厚生労働省が提供する「介護サービス情報公表システム」などで検索できます。
なお、居宅介護支援事業者には必ずケアマネジャーが在籍していることがポイントです。気になる居宅介護支援事業者があれば問い合わせをし、ケアマネジャーにケアプランを作成してもらいましょう。
「住宅型有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」など自立した高齢者を対象とした施設に入居している場合も、居宅サービスを受けることは可能です。要介護度1〜2程度なら、そのまま同じ施設に暮らし続けてもいいでしょう。(ただしあまりにも介護の必要性が高まると、施設から退去を求められることもあります)
まとめ
ここまで紹介してきたとおり、介護認定を受けるためにはさまざまな書類を用意し、市区町村の調査に協力しなければなりません。そして介護認定を受けたら終わりというわけではなく、居宅サービス事業者を探したり、老人ホームを探したりする必要もあります。
介護認定そのものは自治体のスタッフが協力してくれるため、むしろ居宅サービス事業者・老人ホームを選ぶほうが手間がかかるでしょう。そのため介護認定の申請を検討し始めたら、同時に老人ホームなども探し始めてみてください。
スマートシニアを使えば、全国各地の老人ホームを費用・サービス・種類などの条件で絞って検索できます。施設探しの経験が豊富なコンシェルジュに、電話・オンライン・LINEなどで相談することも可能です。条件にマッチする老人ホームを探したい方は、ぜひスマートシニアをご利用ください。
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。