地域包括支援センターとは?利用対象者や利用方法をわかりやすく解説

高齢者やその家族の暮らしを支援するための施設である「地域包括支援センター」をご存知でしょうか。名前は聞いたことがあるものの、どのように利用したらいいのか分からないという方もいるかもしれません。そこで今回は、地域包括支援センターの利用対象者や利用方法を詳しく解説します。相談事例も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

地域包括支援センターとは?利用対象者や利用方法をわかりやすく解説
#在宅介護#関連サービス#制度#豆知識

地域包括支援センターとは?


地域包括支援センター(包括センター)は市町村が設置主体の施設で、住民の健康保持・生活安定のために必要な援助を通じ、「保健医療の向上」や「福祉の増進」を包括的に支援することを目的としています。保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などが配置されており、主に高齢者にまつわる悩み事について対応していることが特徴です。簡単にいうと、地域包括支援センターは高齢者の総合相談窓口といえるでしょう。
なお、地域包括支援センターはすべての市町村に設置されており、その設置数は全国で5,000箇所を超えています。他の行政機関と同じく、基本的には平日の日中のみ開いていることも覚えておきましょう。(なお、市町村が直営する形態は全体の2割で、残りの8割は社会福祉法人や社会福祉協議会などに委託されて運営されています)

地域包括支援センターの役割

地域包括支援センターの主な役割は「介護予防支援」「包括的支援」です。介護予防支援は保険給付の対象で、要支援者に対するケアプラン作成などに対応します。包括的支援は地域支援事業の一部として実施されており、具体的な業務内容は次のとおりです。

総合相談支援業務

住民の各種相談を幅広く受け付け、制度横断的な支援を実施すること

権利擁護業務

成年後見制度の活用を促進したり、高齢者虐待へ対応したりすること

介護予防ケアマネジメント業務

二次予防事業対象者(旧特定高齢者)に対する介護予防ケアプランの作成

包括的・継続的ケアマネジメント支援業務

「地域ケア会議」などを通じた自立支援型ケアマネジメント支援

ケアマネジャーへの日常的個別指導・相談

支援困難事例などへの指導・助言

参考:厚生労働省|地域包括支援センターの業務

地域包括支援センターに相談できること


地域包括支援センターに相談できることとしては、次のような例が挙げられます。

●     介護予防ケアマネジメント

●     包括的・継続的ケアマネジメント支援

●     総合相談・支援

●     権利擁護

●     認知症に関する相談

●     在宅療養に関する相談

それぞれ相談できる内容について、具体的に見ていきましょう。

介護予防ケアマネジメント

介護予防ケアマネジメントとは、介護予防ケアプランを作成することです。介護予防ケアプランとは要支援1・2の高齢者を対象にした介護サービス計画書のことで、高齢者の介護予防・自立支援を目的に作成されます。介護予防ケアプランに含まれる主な項目は次のとおりです。

●     目標とする生活

●     現在の状況

●     本人や家族の意向

●     「運動・移動」「日常生活」などの領域における課題

●     総合的課題

本人や家族からのヒアリングをもとに計画を作成し、日常生活を営むために必要なサービスを適切に受けられるようにすることが、地域包括支援センターの主たる業務であるといえます。(介護予防ケアプランに基づき生活することには、要支援者が要介護状態にならないようにする効果も期待できます)

包括的・継続的ケアマネジメント支援

地域包括支援センターは高齢者だけでなく、ケアマネジャーを支援する役割も担っています。これが「包括的・継続的ケアマネジメント支援」です。具体的には「地域ケア会議」などを通じて自立支援型ケアマネジメントをサポートしたり、ケアマネジャーへの個別指導・相談に対応したりしています。また、支援が難しい事例に対して、どのように対処すべきか指導・アドバイスしていることも特徴です。このようにケアマネジャーを支援することで、結果として地域の高齢者が適切に介護を受けられるようになります。

総合相談・支援

支援対象となる住民(センターのある地域に暮らす65歳以上の高齢者・高齢者支援に関わっている方など)からの各種相談に幅広く対応することも、地域包括支援センターの業務の一つです。これは高齢者の生活に関する総合相談窓口ともいえるでしょう。
たとえば初めて介護・支援が必要になった場合、どうしたらいいのか全く分からないこともあります。そのような場合、近くの地域包括支援センターへ相談に行くことで、どのような手続きを進めるべきか、各種制度を横断したベストな方法を教えてもらうことができます。高齢者本人だけではなく、高齢者の家族からの相談も受け付けているため、困ったことがあれば一度相談してみてください。

権利擁護

地域包括支援センターは介護にまつわることだけではなく、高齢者の権利を保護する役割も担っています。たとえば加齢に伴って判断能力が低下すると、金銭管理が難しくなったり、悪質な業者に騙されたりするかもしれません。判断能力が不十分な状態では保険契約や老人ホームへの入居契約も締結できず、本人も家族も困ってしまいます。
このような状況で利用できるのが「成年後見制度」です。本人の判断能力に応じ、「後見人」「保佐人」「補助人」などを家庭裁判所に選任してもらうことで、本人の代わりに各種法律行為を実施できるようになります。
しかし成年後見制度は身近なものでないため、どのように手続きを進めるべきか分からない方も多いでしょう。このような状況で地域包括支援センターに相談すれば、手続き方法をアドバイスしてもらえます。

認知症に関する相談

65歳以上の高齢者を対象にした令和4年度の調査推計では、認知症の人の割合は約12%、軽度認知障害(MCI|認知症の前段階)の人の割合は約16%、合計すると3人に1人が認知機能に関わる症状があることが分かりました。(参考:政府広報オンライン|知っておきたい認知症の基本
認知症になる可能性は年齢とともに高まるとされているため、不安を感じている方もいるでしょう。実は地域包括支援センターは、認知症に関する相談をすることも可能です。たとえば認知症になっても住み慣れた地域で自分らしく生活するにはどうしたらいいのか、そのエリアごとにアドバイスをしてもらえます。

在宅療養に関する相談

地域包括支援センターには、在宅療養に関することも相談できます。そもそも在宅療養とは、通院が難しい病状でも入院せず、自宅で医療・介護を受けながら療養を続けていくことです。政府としても、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるような地域包括ケアシステムの構築を目指しており、その一翼を地域包括支援センターが担っています。
もし病院・老人ホームではなく自宅で暮らし続けたいものの、サポートがなければ生活がままならないという場合には、地域包括支援センターに一度相談してみてください。

 

地域包括支援センターの利用対象者

地域包括支援センターの利用対象者は、以下のように定められています。

●    センターが置かれている地域に暮らす65歳以上の高齢者

●    高齢者支援に関わっている方

「高齢者支援の活動に関わっている方」とは、高齢者本人の家族のように、高齢者の介護やサポートなどを行っている方のことです。また、本人の判断能力が低下していて自力では地域包括支援センターを利用できない場合は、家族が代理になることができます。

なお、家族が高齢者本人と離れた地域に暮らしている場合は、本人が暮らしている地域の地域包括支援センターを利用する必要があります。

地域包括支援センターの利用料金

地域包括支援センターではさまざまなことを相談できますが、利用料金は無料です。ケアマネジャーや保健師・社会福祉士などの専門家に相談するとしても、行政サービスの一環であるため、費用はかかりません。そのため高齢者にまつわる悩みがある場合は、気軽に相談してみてください。(ただし地域包括支援センターから紹介された各種介護サービスなどを利用する際は費用がかかります)

地域包括支援センターの設置場所

地域包括支援センターの設置数は全国で5,451箇所、ブランチ・サブセンターを含めた場合は7,362箇所に及びます。(令和6年時点)すべての市町村に設置されているため、お住まいの自治体のホームページで場所を調べてみてください。人口の多い市の場合、複数設置されていることもあります。

地域包括支援センターの利用方法

それでは地域包括支援センターの利用方法について見ていきましょう。まず前提として、高齢者本人がどの地域に住んでいるかによって、どのセンターが担当するかが決まります。そのため初めて利用する際は、あらかじめお住まいの自治体に問い合わせ、どのセンターに相談すべきか確認しましょう。また、予約がなくても相談できますが、スムーズに相談するためには担当センターにも事前に連絡しておくことをおすすめします。(相談内容・状況によっては、センターのスタッフが訪問してくれることもあります)
一度相談しておくと、スタッフから適切な対処方法やその方にあった制度、支援を提示してもらえます。たとえば「要介護認定はどのように取得すればいいのか」「介護保険を使うためにはどうしたらいいのか」といった具体的な悩みはもちろん、「親の物忘れが激しくなってきており、認知症かもしれないが、どうすればいいか」といった漠然とした悩みも相談可能です。

地域包括支援センターの相談事例


ここでは、地域包括支援センターに寄せられる相談事例と、地域包括支援センターの対応について解説します。

●    事例1:介護保険申請に関する相談

●    事例2:認知症患者の徘徊の捜索・防止、認知症に関する支援活動

●    事例3:何気ない相談から病気の早期発見に

事例1:介護保険申請に関する相談

 

外出先で転倒・骨折してしまったAさんは、退院後にご自身だけで日常生活を送ることが難しくなってしまいました。そこで、地域包括支援センターに「何か良い方法はないか」と電話で相談しました。相談を受け、地域包括支援センターはヘルパーの利用やデイサービスの利用を提案し、介護保険サービス利用のために必要な介護保険申請を行うことになりました。

 

このように、地域包括支援センターは生活を送るうえでの困りごとを聞き、適切なサービスの提案とそれを利用するために必要な手続きまで案内します。

 

事例2:認知症患者の徘徊の捜索・防止、認知症に関する支援活動

 

認知症を患ったBさんは、物忘れが激しくなり、自宅への道にも迷うようになっていました。ある日、ご家族が目を離した隙に行方不明になってしまい、ご家族が地域包括支援センターに連絡を入れました。地域包括支援センターは、関係する機関やご家族と協力して捜索にあたり、無事にBさんを発見しました。

 

このように、地域包括支援センターの中には、認知症を患っている高齢者とそのご家族への対応としてGPS機器の貸与や家族会、「認知症サポーター養成講座」の開催などを行っています。

 

事例3:何気ない相談から病気の早期発見に

 

Cさんは、要介護の旦那さんに関する相談窓口として地域包括支援センターを利用していました。ある日、ご自身の体について、「左手で物を落としやすくなった」という何気ない相談をします。相談を受けた地域包括支援センターは、脳外科専門病院の受診を案内しました。そこでは異常がないと診断されたものの、左半身の違和感が治りませんでした。そこで、地域包括支援センターの看護師が別の総合医療センターへの受診を提案し、結果「初期の多系統委縮症」と診断されました。早期に発見することができ、現在も治療やサポートを受けながら在宅生活を継続しています。

 

このように、相談員が何気ない相談を受けて必要な医療機関を提案し、病気の早期発見に至った事例もあります。

 

地域包括支援センターに所属する専門家

地域包括支援センターには、以下のような専門家が在籍しています。


保険師

保健師は、医療・介護に関する相談やサポートを担当する医療面の専門家です。介護予防プランの作成や介護予防教室の開催など、介護予防に関するあらゆる業務を担います。また、医療機関と連携し、健康診断の受診を促したり、疾患を予防するための取り組みを行ったりなど、地域の健康増進を担当します。

社会福祉士

社会福祉士は、総合的な相談に対応したり、権利擁護に関する業務を担当したりする役割を担います。地域包括支援センターが総合相談窓口として機能するために欠かせない存在です。公的サービスや地域の団体などに対する知識が豊富で、相談者に応じて適切なアドバイスを行います。

また、成年後見人制度に関する相談や高齢者虐待・詐欺への対応・防止を務め、高齢者の権利を守るのも社会福祉士の大切な役割です。さらに、高齢世帯の自宅や施設を訪問して、安否確認や状況把握なども行います。

主任ケアマネジャー

主任ケアマネジャーは、介護に関するあらゆる相談に対応する介護の専門家です。高齢者やご家族からの相談に乗るだけでなく、介護サービス事業者と連携して地域のケアマネジャーのサポートを行います。ケアマネジャーからの相談に必要な指導・アドバイスを行ったり、地域ケア会議を開催したりと、介護に関するあらゆる問題に取り組みます。

 

 

地域包括支援センターを利用するメリット


地域包括支援センターの利用には、以下のようなメリットがあります。

●    無料で専門家に相談できる

●    介護に直面するご家族もサポートしてくれる

無料で専門家に相談できる

地域包括支援センターの利用料は、全国どの施設も無料です。無料で気軽に利用でき、在籍している専門家に様々な困りごとを相談できます。また、相談に対応するだけでなく、あらゆる外部機関と連携しているため、必要なサービスを紹介・つないでくれることもメリットです。

介護に直面するご家族もサポートしてくれる

地域包括支援センターは、高齢者本人だけでなく、そのご家族もサポートの対象としています。特に、初めて親御さんの介護に直面するご家族は、介護に対して不安や疑問を抱えていることがほとんどです。そのようなご家族に寄り添い、安心して生活できるよう適切なサポートを受けられることも地域包括支援センターを利用する大きなメリットです。

 

地域包括支援センターの注意点

地域包括支援センターには高齢者にまつわるさまざまな課題について相談できますが、利用に際して知っておくべき注意点もいくつか存在します。とくに留意すべき点は、地域包括支援センターはあくまでも介護・福祉などに必要なサービスを高齢者やその家族に紹介することを目的としており、高齢者に対して直接的な支援を提供する施設ではないということです。
適切な介護事業者・医療機関・行政機関などとの橋渡しを担っている機関であるため、紹介された事業者などとの契約は、高齢者本人や家族が進めなければなりません。とくに介護施設・老人ホームについてはさまざまな選択肢が存在するため、地域包括支援センターに頼るだけではなく、自分で探すことも検討してみてください。
なお、老人ホームを効率的に探したい場合は、「老人ホーム紹介センター」を活用するといいでしょう。老人ホーム紹介センターは「老人ホームを探している人」と「入居者の募集を行っている老人ホーム」をつなぐサービスを提供しています。「ネット型」と「対面型」の2形態が存在しますが、多くの選択肢の中から希望に合う施設を探したい場合は、掲載情報の多い「ネット型」の利用がおすすめです。
スマートシニア」も数多くの老人ホームを紹介しているため、ぜひ一度検索してみてください。施設の種別・エリア・提供サービス・費用などの項目を設定し、条件に合う施設だけをピックアップできるため、自分に最適な施設を効率的に見つけることができます。

 

まとめ

地域包括支援センターはすべての市町村に設置されており、高齢者にまつわる悩み事について包括的にサポートしてくれます。自身や親が高齢になり、心身状態に衰えを感じて困っている場合は、ぜひ一度お近くの地域包括支援センターに相談してみてください。それぞれの方の状況にあわせて、どのような支援制度が使えるのか、どのような高齢者施設を利用すべきなのか、丁寧にアドバイスしてもらえます。
ただし、地域包括支援センターそのものが介護など直接的なサポートを実施しているわけではありません。直接的なサポートを受けたい場合は、地域包括支援センターからのアドバイスをもとに、自分で老人ホームと契約する必要があります。一口に老人ホームといっても、提供サービスや費用はさまざまなので、ぜひ「スマートシニア」で条件を絞って検索してみてください。

 


この記事の監修

すぎもと ゆりこ

杉本 悠里子

有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。

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