要介護3はどんな状態?利用できる介護サービスや費用負担が少ない施設を紹介

「要介護3はどんな状態?」「要介護3で受けられるサービスは?」このような疑問はありませんか?

要介護3は要介護区分のなかでも、中重度と判断された認定です。要介護3の認定を受けた方には、認知症の診断を受けている方や車いすを利用している方も多くなる傾向です。

また、特別養護老人ホームの利用申し込みができるようになるため、施設利用を検討する方も増えます。今回は、要介護3の状態や利用できる介護サービスについて詳しく説明します。要介護3の認定を受けた方はぜひ参考にしてみてください。

#費用#要介護度#条件#生活#制度#豆知識
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

要介護3とは

要介護区分で中~重度の認定で常時介護が必要な状態

厚生労働省は、要介護3の状態について『要介護2の状態と比較して日常生活動作及び手段的日常生活動作の両方の観点からも著しく低下し、ほぼ全面的な介護が必要となる状態』と位置づけています。

具体的には以下のような状態です。

  • 立ち上がりは、手すりなどを使用しても自分では立ち上がれない

  • 歩行は自力では困難になり、基本的に車いすを利用しなければ移動できない

  • 口まで運べば食事できるが、自分で口元まで運ぶことができない

  • 身の回り(更衣・整容など)は、自分ではおこなえない

  • 理解力・判断力の低下があり、何をすればいいか判断できない

  • 認知症の症状が強くあり、徘徊や妄想などの周辺症状がある

このように、要介護3は身体機能が著しく低下しており、日常生活に支障が起きる行動や意思疎通の困難さがみられ、24時間介護が必要な状態です。

参照:厚生労働省「介護保険制度における要介護認定の仕組み」

【要介護3の認定基準】

要介護認定において「1日に必要な介護の時間が70分以上90分未満」に該当した方が要介護3の認定を受けます。要介護認定は居住区の地域包括支援センターや役所で申請し、認定調査や主治医の意見書を基に算出する仕組みです。

認定調査では、全74項目の基本調査と環境などの聞き取りや動作確認を行います。その後、コンピューターによる一次判定を行い、主治医の意見書・認定調査の特記事項などを加えて要介護度が決定します。

参照:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」

要介護認定基準時間を算出する際は、以下の点から判断されます。

直接生活介助

入浴・食事・排泄などの介護に必要な時間

間接生活介助

洗濯・掃除などの家事援助に必要な時間

問題行動関連介助

徘徊に対しての探索・不潔行為に対する後始末などに必要な時間

機能訓練関連行為

歩行訓練・日常生活訓練などの機能訓練などに必要な時間

医療関連行為

輸液管理・褥瘡処置などに必要な時間

参照:厚生労働省「用語の説明

上記の表に分類されている介護の時間を換算し、要介護認定基準時間を算出します。

【認知症の方が多い】

要介護3の方で介護が必要となった原因は以下の通りです。

1位:認知症27%

2位:脳血管疾患(脳卒中)24.1%

3位:骨折・転倒12.1%

要介護2の方でも認知症の方はいますが、要介護3になると理解力や意思疎通に困難になり、判断力や認知機能の低下が著しくなります。徘徊や暴言、物取られ妄想などの周辺症状も出てくることがあり、常に支援が必要な状態です。

日常生活動作などの身体的に支援が少ない方でも、認知症の進行や精神疾患がある場合には、要介護3の認定を受けることもあります。

参照:厚生労働省「要介護度別 介護が必要となった原因」

   厚生労働省「認知症高齢者の日常生活自立度」

要介護3の支給限度額

在宅サービスでは十分な介護サービスを利用できる

要介護3の区分支給限度額は、27,048単位です。1ヶ月間で27,048単位分の介護保険サービスを受けられることを意味します。

介護度別の区分支給限度額は以下の通りです。

介護区分

区分支給限度額

要支援1

5,032単位

要支援2

10,531単位

要介護1

16,765単位

要介護2

19,705単位

要介護3

27,048単位

要介護4

30,938単位

要介護5

36,217単位

要介護3の区分支給限度額を金額に換算すると以下の通りです。

要介護区分

介護負担割合

自己負担額

要介護3

1割負担

27,048円

2割負担
54,096円
3割負担
81,144円

区分支給限度額を超えてサービスを利用した場合は、超過分が全額自己負担となるため注意が必要です。

要介護3で受けられるサービス

特別養護老人ホームの利用申し込みが可能になる

要介護3で利用できる介護保険サービスは、以下の通りです。

サービスの種類

利用できるサービス

訪問型サービス

訪問介護(夜間対応型含む)

訪問看護

訪問入浴

訪問リハビリ

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

居宅療養管理指導

通所型サービス

通所介護(デイサービス)

通所リハビリ(デイケア)

地域密着型通所介護(デイサービス)

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)

療養通所介護

短期入所型サービス

短期入所生活介護(ショートステイ)

短期入所療養介護(療養型ショートステイ)

公的施設サービス

特別養護老人ホーム

地域密着型特別養護老人ホーム

介護老人保健施設

軽費老人ホーム

養護老人ホーム

介護療養型医療院

介護療養院

民間施設サービス

有料老人ホーム

サービス付き高齢者住宅

認知症対応型共同生活介護

複合型サービス

小規模多機能型居宅介護

看護小規模多機能型居宅介護

その他

福祉用具貸与

特定福祉用具販売

住宅改修

【要介護3でレンタルできる福祉用具】

自立した日常生活を営むことができるように11品目をレンタルできます。

  • 車いす(付属品含む)

  • 特殊寝台(付属品含む) 

  • 床ずれ防止用具

  • 体位変換器

  • 手すり

  • スロープ 

  • 歩行器

  • 歩行補助つえ

  • 認知症老人徘徊感知機器

  • 移動用リフト(つり具の部分を除く)

  • 自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引するもの)

福祉用具貸与の費用は、介護保険の自己負担割合(1〜3割)で利用できます。

【特定福祉用具販売】

排泄と入浴時に使用する福祉用具で、直接肌に触れるためレンタルに向かない5品目を特定福祉用具として購入できます。

  • 腰掛便座

  • 自動排泄処理装置の交換可能部

  • 排泄予測支援機器

  • 簡易浴槽、移動用リフトつり具の部分

  • 入浴補助用具(入浴用いす・浴槽用手すり・入浴台・入浴内すのこ・浴槽内すのこ・入浴用介助ベルト)

特定福祉用具販売は、1年間(4月から翌年3月まで)で購入金額10万円が上限です。購入した代金を全額支払ったのちに、申請を行うことで自己負担割合(1~3割)分の返金を受けられます。(償還払い)

【住宅改修】

手すりの設置・段差の解消など、日常生活に支障がある部分に対して介護保険を使用して改修するサービスです。住宅改修は要介護度に関わらず20万円まで利用できます。要介護度が3段階以上あがったときや引越しした場合には、再度利用可能です。また、上限20万円までであれば、複数回に分けて利用することもできます。

参照:厚生労働省福祉用具・住宅改修」

【特別養護老人ホームへの入居が可能】

要介護3になると特別養護老人ホームの入居申し込みが可能になります。特別養護老人ホームは、介護保険法に基づく公的施設で、介護が必要な高齢者が自分らしく安心して生活できるよう、24時間体制で介護サービスを提供する施設です。要介護3以上の高齢者が利用し、介護・医療的ケア・生活支援・レクリエーションなどのサービスを利用しながら生活しています。

また、従来型やユニット型などのタイプがあり、生活スタイルや状態に合わせて、申し込み時に選択可能です。特別養護老人ホームは、終身にわたり利用できるため「終の棲家」と呼ばれています。ただし、医療体制は日中のみのため、常時医療的ケアが必要になる方の利用は困難です。

要介護2や要介護4との違い

他の介護度との違い

要介護3は要介護区分において、中重度として考えられています。ここからは前後の要介護度との違いについて見ていきましょう。

【要介護2との違い】

要介護2は、日常生活動作や理解力や判断力に低下がみられ、部分的に見守りや支援が必要な状態です。歩行時に杖や歩行器などの支えがないと歩けない、排泄時に着衣の上げ下げができないため支援が必要など、日常生活に支障がある状態を指します。また、理解力や判断力などが低下している場合も多く、服薬管理・金銭管理も必要になることもあります。

要介護2と比較すると、要介護3のほうが自力で日常生活動作ができないことが多く、常時介護が必要になっている状態と言えます。また、認知症の人も増え周辺症状が現れる方が多い傾向です。

【要介護4との違い】

要介護4は、日常生活動作や理解力、判断力が低下し意思疎通が困難な方も増えます。また、日常生活動作においても、立ち上がりや歩行、座位の保持も難しい状態な方も多く、移動・移乗・食事・入浴・排泄には介助が必要になることがほとんどです。認知症も進行していることが多いため、24時間の大半の時間に支援が必要となります。要介護4と比較すると、要介護3は介助を必要する場面や支援に必要な時間が少なく、自身でできることが多い傾向です。

要介護3でも特養に入居できない場合もある

特養は人気があり入居待機が珍しくない

特別養護老人ホームは、要介護3になれば申し込みができます。しかし、費用面が比較的安価で長期にわたり利用できることから、入所希望している人は多い傾向です。施設によっては、待機期間(申し込みから入所まで)が半年~数年かかる方もいます。

入居待機になった場合は、以下の介護サービスも検討すると良いでしょう。

【民間施設の利用】

特別養護老人ホームの待機期間の間、民間の施設を利用して入所待ちする人もいます。例えば以下の通りです。

・介護付き有料老人ホーム

65歳以上の人が対象で、24時間体制で介護サービスを提供する施設です。施設職員が常駐しているため安心して利用できるでしょう。ただし、入居一時金が必要な施設や、利用料金が高額になる場合もあるため、注意が必要です。

・サービス付き高齢者向け住宅

60歳以上の人が対象の住宅で、全体がバリアフリー設計となっています。安否確認・生活相談などのサービスを提供しています。敷金として家賃の2〜3ヶ月程度必要な場合が多く、家賃の他に介護サービス費などが必要です。

【公的施設の利用】

公的施設とは、特別養護老人ホームや介護老人保険施設などを指します。これらの施設に短期間入居して、日常生活の支援や機能訓練、医療的ケアを受け生活するショートステイが利用できます。入居待機になり自宅生活できない場合は、ショートステイを利用して在宅で過ごす日程を減らすと良いでしょう。

また、ショートステイを長期間利用することも可能ですが、介護保険法の定めにより、以下の2点が禁止されています。

・連続30日の利用制限

ショートステイは、30日間まで連続して利用できます。しかし、連続して31日以上利用する場合には、利用料金が全額自己負担になるため注意が必要です。

・おおむね半数を超える利用

要介護認定期間において、半数以上のショートステイ利用は原則禁止されています。認定期間が1年間の場合は、半年以内の利用に抑える必要があるということです。つまり、一時的に利用日数が多い分には問題ありません。ただし、市区町村によりルールが異なる場合もあるため、所在地管轄の役所や担当のケアマネジャーに相談すると良いでしょう。

要介護3の方に必要な介護費用

在宅介護と施設利用で費用は大きく異なる

平成30年度、生命保険に関する全国実態調査では、要介護3の方を在宅介護した場合、1ヶ月に介護費用として、87,000円が必要と公表されています。要介護1の方と比べると42,000円程高くなるという結果でした。

次に、施設利用した場合と在宅介護をした場合の費用を比較します。

【施設入居する場合】

施設利用で必要になる費用は以下の通りです。

  • 介護サービス費

  • 居住費(ベッド代・家賃)

  • 食費

  • 医療費

  • 日用品(消耗品)費

上記5点は、多くの施設で必要になります。


ユニット型特養

従来型特養

居室タイプ

ユニット型個室

従来型個室

多床室
介護サービス費
(要介護3)
23,790円
(793円/日)
21,360円
(712円/日)
食費
43,350円
(1,445円/日)
おやつ費
施設によって異なる
居室費
60,180円
(2,006円/日)
35,130円
(1,668円/日)
25,650円
(855円/日)
医療費
個人で異なる
消耗品費
施設によって異なる

※1単位=10円 加算は含まない

ユニット型特養は、従来型特養に比べて介護サービス費や居室費が割高に設定されています。また、個室を利用した場合、別途「特別室料」としてプラス数千円(日)加算される施設もあるため注意が必要です。

個人の収入や預金額によっても異なりますが、特別養護老人ホームを利用する場合は、ひと月10〜15万円程度必要となります。

【在宅で介護する場合】

在宅で介護する場合は以下の費用が必要です。

  • 介護サービス費

  • 介護用品購入

  • 家賃

  • 光熱費

  • 食費

  • 日用品費

  • 医療費

自宅の環境にもよりますが、段差の解消や手すりの設置など、住宅改修が必要な場合もあります。特に要介護3以上になると車いすを使用する方も多いため、段差の解消は重要なポイントです。生命保険文化センターの調査によると、要介護3の介護費用(住宅改修費も含む)は93万円必要というデータが報告されています。

要介護3(自己負担割合1割)の在宅介護サービス例は以下の通りです。

  • ショートステイ利用(特別養護老人ホーム従来型個室):15日間 

  • デイサービス(通常規模7~8時間):週5日

  • 訪問看護(30分以上60分未満):週2日

  • 訪問介護(身体30~60分):週2日(1日3回)

利用する介護事業所

1回(1日)

利用単位

1ヶ月の

利用回数

合計単位

1ヶ月の合計金額

特別養護老人ホーム 

737

15日

11,055

11,055円

デイサービス

655

10回

6,550

6,550円

訪問看護

821

4回

3,284

3,284円

訪問介護

436

12回

5,232

5,232円

合計

-

-

26,121

26,121円

※1単位=10円 加算は含まない

参照:厚生労働省「介護報酬の算定構造」

介護サービス費以外にも様々な費用が必要ですが、施設利用と在宅介護を比べると、在宅で介護する方が費用面は抑えられるケースがほとんどです。

参照:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(P165図表Ⅱ-64介護費用)

費用負担が少ない介護施設

比較的安価に利用できる介護施設

介護施設は目的に合わせた多くの種類があります。なかでも比較的安価に利用できる施設を紹介します。

(要介護3 自己負担割合1割の場合)

施設の種類

介護サービス費

居室費

食費

その他かかる費用例

特別養護老人ホーム

(従来型/多床室)

21,360円
25,650円
43,350円
事業所加算
日常生活費
医療費 など
介護老人保健施設
(従来型多床室)
25,080円
11,310円
事業所加算
日常生活費 など
介護医療院
(1型 強化型A相当多床室)
34,320円
11,310円
事業所加算
日常生活費 など
住宅型有料老人ホーム
27,048円
(利用した介護サービス費分)
施設によって異なる
施設によって異なる
管理費
水光熱費
医療費
入居一時金 など
サービス付き高齢者向け住宅
※1単位=10円 加算は含まない

参照:介護医療院・介護療養型医療施設 の報酬・基準について

住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、自宅として考えられています。介護費用はサービスを受けた分だけ必要になるため、自立に近い方は介護サービス費を抑えることが出来ます。反対に介護の必要性が高い方は介護費用は高くなるため注意が必要です。また、状態によっては対応が困難となり入居できないケースもあります。

まとめ

まとめ

今回は、要介護3の状態や利用できる介護サービスについて紹介しました。

要介護3は、要介護区分のなかで中重度と判定された方が受ける認定です。日常生活動作の低下や認知症の進行などにより、多くの場面で介助を要する状態と言えます。そのため、介護施設の利用を検討する方も増える傾向です。

また、要介護3からは特別養護老人ホームの利用申し込みが可能になります。しかし、特別養護老人ホームは人気が高く入居待機になることが多いため、ショートステイやその他の施設を検討するのも良いでしょう。

施設を探す


カテゴリー

公式SNSアカウント更新中!

老人ホーム選びや介護に役立つ 情報をお届けします!