老人ホームの身元保証人とは?頼めない場合の対処法も紹介
老人ホームに入居する際、契約時に「身元保証人」を求められることが一般的です。「身元保証人は誰にすればよいか」「そもそも身元保証人って?」などの疑問が出てくることでしょう。
この記事では身元保証人について役割や条件、身元保証人を頼めない場合の対処法などを解説します。身元保証人に関するよくある質問も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

身元保証人とは?

そもそも「身元保証人」とは、本人の身元や社会的な信用を保証し、何かあった場合は行動に対する責任を負う人のことを指します。たとえば賃貸契約や就職などのシーンで必要になることがあります。
老人ホームに入居する際も、大多数の施設が「身元保証人」を立てる必要があるとしています。老人ホームにおける身元保証人は、入居者の安全と健康を確保するためにさまざまな役割を持っており、重要視されているのです。
身元保証人の役割

老人ホームにおける身元保証人の役割は、次のように多岐にわたります。
- 緊急時の連絡窓口
- 治療方針の確認や判断、入院する際の手続き
- 家賃支払いなど金銭面の保証
- 入居者が亡くなった時の手続き・身柄引き取り
1: 緊急時の連絡窓口
身元保証人は入居者になにかあった場合の、緊急連絡ができる窓口の役割を担っています。
老人ホームの入居者は高齢ということもあり、持病を抱えている方も多いため、入居期間中に病気が進行したり急変したりする可能性は十分に考えられます。また運動機能の低下などが原因で、転倒によるケガといったリスクも常に抱えています。
そのため急変や事故、死亡時といった緊急の事態に備えて、24時間365日連絡できる緊急時の窓口を決めておく必要があります。緊急連絡先となった身元保証人は、たとえ夜中や遠方にお住まいだった場合でも、病気や事故で救急搬送されたなどの緊急時には病院に駆け付け、必要な対応を行わなければなりません。
2: 治療方針の確認や判断、入院する際の手続き
身元保証人は入居者本人に代わって治療方針の確認を行い、入院が必要なときはその手続きを行います。
入居者の高齢化に伴って、あるいは認知症が進行するなどで、判断能力が低下するリスクがあります。重要な判断が必要となる場合でも本人が意思決定ができずに、介護や医療の方針が決められないケースも少なくありません。このような事態に備えておくためにも、身元保証人を立てることが求められます。
ただし本人の判断能力の低下により意思決定が難しくなった場合でも、身元保証人による医療行為(手術や投薬など)の判断はできません。介護・医療ケアのスタッフによる検討により判断が下されますが、身元保証人も治療方針を検討するメンバーとしての役割があります。
3: 家賃支払いなど金銭面の保証

身元保証人は入居者の金銭面を保証し、支払いの滞納などがあった場合は債務を負う責任があります。
老人ホームへ入居後は、毎月の家賃や介護サービス、食事などの利用料が発生します。入居者が何らかの事情によって、家賃などの支払いができなくなってしまった場合、身元保証人が代わりに支払わなければなりません。
つまり身元保証人は金銭面の保証も必要となるため、支払い能力も求められます。老人ホームのなかには、身元保証人とは別に金銭面での保証として「連帯保証人」を求めるケースもあります。
4: 入居者が亡くなった時の手続き・身柄引き取り
老人ホームにて入居者が亡くなった場合、身元保証人が責任をもって遺体を引き取る必要があります。葬儀の手配はもちろん、死亡届の提出や火葬許可証の取得などが必要です。
また施設の退去手続きや、遺留品などの引き取りなどの対応も必要です。施設の利用料や医療費に未払いや居室の原状復帰が必要な場合などは、これらの清算手続きが発生する可能性もあります。
さらに遺留品の管理や遺産相続の手続きなども一般的には、身元保証人が行います。入居者の最期を尊重した対応が求められます。
身元保証人と身元引受人との違い

老人ホームによっては「身元保証人」が必要な場合と「身元引受人」が必要な場合があり、混同される方もいることでしょう。厳密にいうと、双方の役割には異なる部分があります。
● 身元保証人
身元保証人はすでに述べたとおり、本人の身元や社会的な信用を保証し、何かあった場合は行動に対する責任を負う人のことを指します。そのため、債務や賠償の責任を負う人という意味合いで用いられます。金銭的な保証を問われる内容に関しては「連帯保証人」としているケースもあります。
● 身元引受人
身元引受人は、入居者が亡くなったときの手続きや身柄の引き取り、入居者に変わる意思決定などが主な役割と考えるケースが多いです。
ただし身元保証人と身元引受人は、それぞれの明確な決まりがあったり区別されたりするわけではありません。施設によっては同様の意味で用いられるケースもあります。
身元保証人の条件
老人ホームに入居する際、身元保証人が必要となることが一般的です。しかし、誰でも身元保証人になれるわけではなく、いくつかの条件を満たす必要があります。
「責任を負うことができるかどうか」で審査される
身元保証人は入居者に代わって支払いをしたり意思決定をしたり、大きな責任のある立場です。そのため責任を負うことができるかどうかが審査されます。明確な基準が定められているわけではありませんが、以下の3つの条件が求められることがほとんどです。
● 資産・収入を証明できる
債務履行のために、資産・収入の証明書の提示が求められることがあります。
● 入居者の家族・親族である
原則、家族や親族であることが求められるケースが多いですが、施設によってはその他の条件を満たせば家族・親族でなくても認められる場合があります。
● 高齢でない
たとえ家族・親族であっても高齢である場合、将来的に役割や責任を果たせなくなる可能性があるため、認められないケースがあります。
身元保証人は途中で変更することもできる
身元保証人は入居後でも変更ができます。たとえば身元保証人の資産・収入の状況が変わり、債務や責任が負えなくなってしまったケースや死亡してしまったケースなど、変更を余技なくされる場合です。
その場合は、新たな身元保証人に対して、条件を満たしているか再度審査されることになります。施設側に事情を説明して、必要な手続きをとりましょう。
身元保証人を頼めない場合の対処法

老人ホーム入居時に身元保証人が見つからない、頼めない場合には、次のような対策が可能です。
保証人不要の老人ホームを探す
老人ホームに入居する際に身元保証人が必要とされることが一般的ですが、近年では保証人不要の老人ホームも増えてきています。これらの施設は、身元保証人を立てることが難しい方にとって非常に助かる選択肢となります。
保証人不要の老人ホームを探す際には、まずインターネットでの検索や地域の福祉相談窓口を活用することが有効です。多くの老人ホームが自社のウェブサイトで入居条件を公開しているため、事前に確認することができます。また、地域の福祉相談窓口では、保証人不要の施設に関する情報を提供してくれることが多いです。
さらに、老人ホームの見学や説明会に参加することもおすすめです。実際に施設を訪れることで、スタッフに直接質問をすることができ、保証人不要の具体的な条件や手続きを詳しく知ることができます。
成年後見制度が利用できる老人ホームを選ぶ

身元保証人が見つからない場合、成年後見制度を利用できる老人ホームを選ぶことも一つの方法です。成年後見制度は、判断能力が不十分な高齢者や障害者を保護し、生活や財産管理を支援するための制度です。
成年後見制度には、家庭裁判所が選任する後見人が入居者の生活全般をサポートする「法定後見」と、本人があらかじめ信頼できる人を選んでおく「任意後見」の2種類があります。法定後見では、後見人が入居者の財産管理や医療・介護サービスの契約などを代行します。一方、任意後見では、本人が元気なうちに後見人を選び、将来の支援を依頼することができます。
成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所への申立てが必要です。申立てには時間がかかることもあるため、早めの準備が重要です。また、成年後見制度を利用できる老人ホームを選ぶ際には、施設側が制度に対応しているかどうかを確認することが大切です。
成年後見制度の注意点
成年後見制度の注意点として挙げられるのが、任意後見制度は、認知機能の低下がみられると利用できない点です。本人の判断能力が低下する前に後見人を選んで依頼する必要があるため、すでに認知機能が低下している場合は、法定後見制度を利用するほかありません。
また成年後見人は一般的に、本人の代わりに契約や手続きを行うのが本来の役割であるため、債務の保証まで行うことはなく、緊急時に駆けつけるという役割はありません。成年後見人は身元保証人の役割すべてを果たせるわけではないと判断され、やはり身元保証人を別に求める老人ホームもあるため確認が必要です。
保証会社を利用する
老人ホームに入居する際に身元保証人を見つけるのが難しい場合、保証会社を利用するという選択肢があります。保証会社は、入居者が支払うべき家賃やその他の費用を保証するサービスを提供しています。これにより、老人ホーム側も安心して入居を受け入れることができます。
保証会社を利用する際には、まず老人ホームがそのようなサービスを受け入れているか確認することが重要です。すべての老人ホームが保証会社との契約を認めているわけではないため、事前に問い合わせておくことが必要です。
また、保証会社を利用するためには一定の手数料が発生することが一般的です。手数料の金額や支払い方法についても事前に確認し、納得した上で契約を進めることが大切です。
保証会社を選ぶ際の注意点
保証会社によって提供しているサービスやプランは異なります。プランによっては、手続きや債務保証だけでなく、亡くなった後のサポートまでしてくれる保証会社もあります。
主な保証内容は、以下が挙げられます。
保証内容 | 詳細 |
身元保証人・身元引受人の受託 | ● 老人ホームの入退去や入退院の手続き ● 老人ホームの利用料や治療費の保証 ● 死亡時の身柄引受 |
金銭・財産管理 | ● 年金やその他の収入、財産の管理 |
亡くなった後の手続き・整理 | ● 遺族への連絡・葬儀・納骨 ● 役所手続き ● 遺品整理 |
保証内容が手厚くなるほど費用は高額になるため、しっかりと確認して不要な保証は契約しないように注意しましょう。
家賃債務保証制度を活用する

家賃債務保証制度とは、賃貸住宅に入居する際に「高齢者住宅財団」が家賃債務を保証し、入居をサポートしてくれる制度です。
家賃債務保証制度の対象者は、以下のとおりです。
【家賃債務保証制度の対象者】
高齢者世帯 | 60歳以上の方、または要介護・要支援認定を受けている60歳未満の方 |
障害者世帯 | 次に該当する方が入居する世帯 ● 身体障害:1~6級 ● 精神障害:1~3級 ● 知的障害:精神障害に準ずる |
子育て世帯 | 18歳以下の扶養義務のある子が同居する世帯 |
外国人世帯 | ● 在留カード ● 特別永住者証明書 ● 在留カードまたは特別永住者証明書とみなされる外国人登録証明書 |
住居退去者世帯 | 解雇などにより住居から退去を余儀なくされた世帯 ※賃料を支払える収入がある場合のみ |
なお、保証の対象は以下のとおりです。
【保証の対象】
保証の対象 | 限度額 |
滞納家賃 | 月額家賃12か月分の相当額 |
原状回復費・訴訟費用 | 月額家賃9か月分の相当額 |
高齢者住宅財団と老人ホームが基本約定などを締結していれば、この制度を利用して入居できる可能性があります。ただし保険料は月額家賃の35%(2年間の保証の場合)で、契約時に一括で支払う必要があるため、まとまった資金を準備しておく必要があります。
参考:一般財団法人高齢者住宅財団「家賃債務保証制度のご案内」
老人ホームの身元保証人に関するよくある質問
老人ホーム入居時に必要となる身元保証人についてよくある質問を2つ紹介します。
身元保証人が亡くなった場合は?
身元保証人がもしも亡くなった場合は、新たな身元保証人を立てなえればなりません。亡くなった場合に限らず、身元保証人の役割を果たすことが難しい場合も同様です。その場合、施設が求める必要な書類を提出し、改めて手続きし直す必要があります。
身元保証人は無職でもなれるの?
老人ホームの身元保証人は、無職の場合だと難しい場合もあります。入居者の金銭的な保証をしなければならず、それを支払える一定の収入が必要だからです。
ただし無職であっても、資産や預貯金が十分にあることを証明できれば、保証人になれる可能性はあります。
まとめ
老人ホームにおける身元保証人は、入居者の急変や死亡などの緊急事態の対応や、手続きなどの代行、家賃や治療費などの保証といったさまざま役割があります。これらの役割と責任を果たせる人にお願いする必要があります。
高齢化社会に伴って老人ホームの入居を考える人が増える一方で、核家族化や未婚率の増加などにより、身元保証人を立てられない、頼める人がいない方が少なくないのも実状です。
身元保証人を頼める人がいない場合はいくつかの対処法はあるものの、不安に思っている方はプロに相談することをおすすめします。
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