老人ホームにおける食事とは?老人ホームが行う食事の工夫も解説!

老人ホームの生活において、食事は重要な選択肢の一つです。

高齢者は、加齢とともに咀嚼力(噛む力)が衰えたり、病気により嚥下機能(飲み込む機能)が低下することがあるため、老人ホームでは入居者がいつまでも口から美味しく食事を摂れるよう様々な工夫をしています。

この記事では、老人ホームが入居者にとって安心安全な食事を提供し、1日3食ある食事の時間が楽しみになるように、どのような工夫をしているのか解説します。ぜひ参考にしてみてください。


老人ホーム選びで食事の確認は不可欠

老人ホームを選ぶ上で、提供される食事内容や対応可能な食事形態の確認は重要です。

食事は高齢者にとって、栄養摂取以外にも生活の満足度を上げたり、認知機能の低下予防に役立つだけでなく、単調になりがちな生活に楽しみや彩りを与えてくれます。

味の好みやアレルギーの有無、咀嚼・嚥下能力(物を噛んだり飲み込む力)は人それぞれ異なるため、必要に応じて個別メニューの提供が必要な場合もあります。個別メニューによっては、別途費用がかかることもあるため、入居してから困らないよう、食事内容や対応可能な範囲、費用について必ず確認しましょう。

老人ホームの食事の役割

高齢者向けの食事は、「味が薄い」「量が少ない」というイメージを持っている方もいるでしょう。しかし老人ホームでは、バランスの整った食事が提供されています。ここでは、老人ホームにおける食事の役割を、3つの視点で見ていきましょう。

健康の維持・促進のため

老人ホームの食事には、健康を維持・促進する目的があります。栄養士あるいは管理栄養士が中心となり、高血圧や生活習慣病といった高齢者に多い疾患の悪化予防をはじめ、栄養バランスのとれた献立を作成します。

塩分制限や水分制限、タンパク、カリウム制限など、入居者の持病やその他アレルギーにも適切に対応できるため、安心です。

認知機能の衰えを防止するため

高齢になると、認知機能の低下を心配する方も多いでしょう。自宅では、ある程度自由に生活できますが、老人ホームの食事は1日3食決まった時間で提供されることがほとんどなので、食生活や生活リズムが整います。

また、厨房から聞こえる食事を準備する音、ご飯が炊けるにおい、目で見て楽しむ盛り付け、口に入れたときの味や食感など、五感が刺激されることで、認知機能の低下防止につながります。

コミュニケーション促進のため

コミュニケーションの促進も、食事の重要なポイントです。食事を通して入居者同士で会話をしたり、食事を配膳する職員とあいさつを交わすことも、大切なコミュニケーションです。

老人ホームでは、入居者同士の相性や身体状況で、ある程度食事の席を決めているため、職員が間に入りながらも自然と会話が生まれる工夫がなされています。お話しが苦手な方も、安心して過ごせるでしょう。

老人ホームの食事における工夫とは?

入居者に毎日の食事を楽しんでいただくために、老人ホームは様々な工夫をしています。ここでは、食事提供や調理面について解説します。

食事提供における工夫

食事提供では、単に決められた献立を職員が配膳するのではなく、その日の気分でメニューを選べるセレクト食を導入している老人ホームもあります。

メインの食材を肉と魚から選んだり、ご飯か麺類など、献立によって選ぶ楽しみがあります。入居者同士で何を食べるか話したり、注文を受ける職員ともコミュニケーションを取るきっかけになるでしょう。

また、メニューボードに食材の産地や生産者からのメッセージを掲示することもあります。お米の種類や食材の産地にこだわる高齢者は多く、安心して食事の時間を楽しんでもらうためにも作り手が見える工夫をしています。

目で見て楽しめるように、食器や盛り付けにもこだわります。献立により、使う食器を変えるため、配膳を待つ楽しみにもなります。

調理における工夫

老人ホームで生活する入居者の中には、通常の食事を食べられない方もいます。例えば、脳血管障害で嚥下機能が衰えた場合、噛む力や飲み込む力が弱くなるため気管に食べ物が入り、肺炎のリスクが高まります。

そのため、入居者一人ひとりの疾患や身体機能に応じた調理にすることで、安心して食事ができ、可能な限り口から食べることにもつながります。

・軟菜食:歯茎でつぶせる柔らかさで、噛む力が弱い方向けの食事。食材を柔らかく調理するため、圧力なべを使ったり、長時間かけて煮込む必要がある。

・きざみ食:通常食を一口以下の大きさに刻んであり、噛み砕く力が弱い方向けの食事。細かく刻みすぎないよう注意が必要。

・ミキサー食:噛む力は弱いが、飲み込むことができる方向けの食事。すべての食材をミキサーにかける必要があるため、手間がかかる。

・ソフト食:歯茎や舌でつぶすことができ、飲み込む力がある方向けの食事。ミキサー食をトロミ剤や片栗粉などで固める必要がある。

調理を工夫した食事については、老人ホームごとに異なるため確認しましょう。

老人ホームの食事のメニュー例

老人ホームの献立は、管理栄養士あるいは栄養士が1日の栄養バランスを考えて作成し、完食した時の摂取カロリーや塩分量なども記載されています。ここでは、通常の献立とイベント時の献立について見ていきましょう。

通常の献立の例

老人ホームで提供される通常の献立例を見てみましょう。


献立例1

献立例2

ご飯・焼き鮭・納豆・味噌汁

ロールパン・スクランブルエッグ・サラダ・コーンスープ

スパゲッティミートソース・トマトサラダ・コンソメスープ

ご飯・麻婆豆腐・シュウマイ・卵スープ

ご飯・天ぷら・煮物・味噌汁

カレーライス・わかめスープ・ヨーグルト

このように、和食・洋食・中華とバラエティに富んでいます。通常の献立は、高齢者にとって食べ馴染みのあるものや、残す量の少ない人気のメニューを中心に考えられています。

「高齢者向けの食事だから、薄味で食べ応えがない物が出るのではないか」と考える人もいますが、味付けや調理方法を工夫することで、入居者の希望に応える献立となっています。

イベント時の献立の例

イベントは、老人ホームで生活する入居者にとって季節を感じる大切な行事です。イベント当日は、季節の食材を取り入れたり、行事内容にちなんだ特別な食事が提供されます。普段と違う食事を楽しみにする入居者は多く、ダイニングもにぎわいます。

例えば、1月であればおせち料理、4月はお花見弁当、8月は焼きそばやカキ氷といった屋台料理、12月にはチキンやケーキなどが提供されます。

季節の食材でいうと、秋には秋刀魚や栗ご飯、冬から春にかけては菜の花のお浸しなど、一年を通じて四季を代表する食材を取り入れています。

注意点として、イベント食は別途費用が発生したり、事前申し込みが必要な場合があります。金額はメニューにより異なるため、追加費用の有無を確認しておくと安心でしょう。

老人ホーム入居前の食事チェックポイント

最後に、老人ホームに入居する前に、食事の面で確認が必要な点を解説します。施設見学では、毎月の献立表をもらったり、事前に申し出ることで試食が可能な場合もあるため、相談してみると良いでしょう。

その1: 食事形態の種類

老人ホームで提供される食事形態には、入居者の咀嚼・嚥下能力に合わせて、いくつか種類があります。調理における工夫で説明した食事形態も含めて、一般的な食事形態を紹介します。

・常食(通常食)

・軟菜食

・きざみ食

・ミキサー食

・ソフト食

※常食(通常食)とは、一般的に制限がない食事のことを言います。

老人ホームにより、対応可能な食事形態は異なります。特に入院中で常食以外を食べていたり、自宅で制限食を食べている方の場合、老人ホームでどこまで対応可能か確認すると安心でしょう。

その2: 月間の献立内容

老人ホームの献立は、入居者の飽きがこないように和食・洋食・中華とバラエティに富んでいます。管理栄養士または栄養士によって、高齢者に必要な栄養バランスも管理されており、おやつが提供される老人ホームもあります。

中には、セレクト食と言って朝食をご飯かパンから選べたり、メイン料理を選択できる老人ホームもあり、決められた献立だけでなく入居者が選ぶ楽しみがあります。

その3: 献立名のわかりやすさ

献立名は、高齢者に馴染みのある名前であることが多いです。献立名を見てどのような料理か分からないと、食欲もわきづらく、見慣れない料理は食事が進まないことがあります。

話題の一つとして流行りのメニューを提供することもありますが、基本的には聞き馴染みのある献立名がつけられます。

その4: 朝食の有無

老人ホームの大半は、朝食が提供されます。ただ、高齢者の中には朝食を食べる習慣がない方もいるでしょう。老人ホームの朝食は、7時半〜8時には提供が始まることが一般的なため、朝ゆっくり過ごしたい方にとって懸念点の一つになります。

その場合は朝食を欠食することも可能で、食べなかった分の食費(食材費)は返金されます。老人ホームで提供される朝食を食べない代わりに、入居者自身で用意した軽食で済ませる方もいるため、自分に合った朝の過ごし方が可能か相談すると良いでしょう。

まとめ

今回は、老人ホームの食事について解説しました。いつまでも食べることを楽しむためには、入居者一人ひとりの身体状況や嚥下機能に応じて、安心して食べられる食事提供が欠かせません。

老人ホームごとに、季節行事にちなんだ行事食にも力を入れているため、毎月の献立を確認したり、施設見学で試食が可能か相談すると良いでしょう。この記事が、老人ホーム選びにおける食事の重要性の理解につながれば幸いです。


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