老人ホームの重要事項説明書とは?チェックポイントを分かりやすく解説!

ホームの重要事項説明書とは?

重要事項説明書とは、契約にあたって大切な事項を消費者(ここでは入居対象者のこと)に説明する「重要事項説明」の際に用いられる書類のことです。老人ホームだけでなく、不動産や保険などの契約の際にも広く利用されています。老人ホームの重要事項説明書は、有料老人ホームやケアハウス・サービス付き高齢者向け住宅など、種類を問わずあらゆる施設において作成が義務付けられています。
老人ホームの重要事項説明書には、施設の運営会社の情報や設備・提供サービス・人員体制・料金体系など、その施設に関するあらゆる情報が記載されています。契約書の中でも特に重要なポイントを分かりやすくまとめているものなので、しっかり確認することで契約内容や施設についての詳細を把握することができます。
老人ホームの重要事項説明書が大切な理由
老人ホームに入居する際は数十万〜数百万円もの費用が発生します。それにも関わらず契約内容が複雑なため、不安に感じる方もいるでしょう。退去に伴って入居一時金がどのくらい返還されるのか決められていないと、安心して初期費用を払うこともできません。また、口頭でのみサービス説明を受け、入居後に聞いていたサービスが受けられなかったとしたら、トラブルに発展してしまう可能性も高いです。
そこで「重要事項説明書」として、入居者やその家族があらかじめ知っておくべき事項について、書面にまとめられるようになりました。つまり老人ホームの重要事項説明書は、「入居者の保護」や「契約トラブルの防止」を目的としています。そのため老人ホームへ入居するときは、自らにとって不利になる事項がないか、サービス説明として聞いていた事項がしっかり書面で残されているか、重要事項説明書で確認することが大切なのです。
老人ホームの重要事項説明書のチェックポイント

有料老人ホームの重要事項説明書でチェックすべきポイントとしては、次の10項目が挙げられます。
● 事業主体の概要
● 事業所の概要
● 建物の概要
● 提供される介護・医療サービス内容
● 職員体制
● 利用料金
● 入居者の状況
● 苦情や事故に関する体制
● 入居希望者への事前の情報開示
● その他の特記事項
各項目で確認すべきポイントと、さらに別添資料でチェックすべきポイントについて、さらに詳しく見ていきましょう。
事業主体の概要
事業主体の概要欄には、その老人ホームを運営する法人について記載されています。法人の設立年月日や連絡先、ホームページアドレスなどが書かれているため、信頼できる運営元かどうか判断するために活用しましょう。
もし運営元企業の経営が傾くと、老人ホームの運営にも悪影響が生じる可能性が高いです。そのため、より安心できる老人ホームへ入居したい場合は、事業主体が営んでいる老人ホーム以外の事業もチェックするといいでしょう。
事業所の概要
事業所の概要欄には、その有料老人ホームの立地や種類(住宅型・介護付き・健康型)、ホームページアドレス、連絡先などが記載されています。介護付き有料老人ホームの場合、その施設を「介護保険事業者番号」に指定した自治体名、指定年月日、指定更新日が記載されていることもポイントです。
介護保険事業者と指定されていれば、介護保険サービスを老人ホームが直接提供でき、介護報酬は老人ホーム利用料に包括されて請求されます。自治体から適切な指定を受けている施設かどうか判断するために、必ず確認するようにしましょう。(なお、住宅型・健康型の有料老人ホームには介護保険事業者番号は付与されません)
また、事業所の概要欄には老人ホームの竣工日も記載されています。ここから逆算すれば、その施設が築浅かどうか判断することも可能です。
建物の概要
建物の概要欄には、次のような情報が記載されています。
● 土地の所有関係(借地の場合は賃貸種別や契約期間など)
● 老人ホームの建物の規模や構造(耐火構造なのかどうか含む)
● 居室の状況(面積・トイレや浴室の有無・個室なのか夫婦部屋なのかなど)
● 共用施設(トイレ・浴室・食堂などの状況)
● 防災設備(自動火災報知設備・スプリンクラー消防設備・緊急通報装置など)
入居者の安全面につながる事項も含まれるため、気になる事項があれば施設側に確認してみてください。
提供される介護・医療サービス内容
提供される介護・医療サービス内容については、記載内容が多岐にわたることが特徴です。まず特定施設入居者生活介護を提供している施設(介護付き有料老人ホーム)の場合は、加算の対象となるサービス体制の有無が記載されています。たとえば「夜間看護体制加算」や「看取り介護加算」があるのかどうかチェックすれば、どのような介護体制なのか判断できるでしょう。
また、有料老人ホームの種別を問わず、次のような事項についても記載されています。
● 医療連携の内容
● 入居後の住み替えについて
● 入居条件と解約条件
それぞれチェックすべきポイントは次のとおりです。
医療連携の内容
医療連携の内容としてまず確認すべきなのは、どのような医療支援がなされているかです。「救急車の手配」「入退院の付き添い」「通院介助」などが代表的な支援内容ですが、施設によって対応範囲は異なります。たとえば病院への付き添い・介助には対応していない施設へ入居するとしたら、家族がサポートしなければなりません。また、提携している医療機関や歯科医療機関の名称・住所・協力内容なども記載されているため、確認しておくと安心でしょう。
入居後の住み替えについて
入居後に居室を住み替える措置が取られている施設の場合、どのような基準で住み替えが行われるかも記載されています。記載内容の例は次のとおりです。
● 適切な介護サービスを提供するために居室を変更する可能性がある旨
● 居室変更時の手続き内容(一定の観察期間を設ける・医師の意見を聴く・入居者や身元引受人の意見を聴く、など)
● 追加費用が発生する条件(入居者側の希望で住み替える場合には追加費用がかかるなど)
これら条件は小さな文字で記載されていることもあるため、見落とさないよう注意してください。
入居条件と解約条件
重要事項説明書には入居に関する要件として、「入居条件」と「解約条件」も細かく記載されています。入居条件については、要支援・要介護の方を受け入れているかどうかを確認しましょう。また、解約条件については細かくさまざまな要素が記載されているため、必ずチェックしてください。一般的には次のような項目が退去要件として記載されています。
● 虚偽の書類や情報を提供した場合
● 月額利用料などの支払いを滞納し、督促にも関わらず支払わないとき
● 入居契約書・管理規定に繰り返し違反した場合
● 施設の通常の介護方法では対応が困難な場合
● 日常的または頻繁に身体拘束が必要な場合
● 職員等に対し不適切な行為をした場合
職員体制
職員体制の項目には、老人ホーム運営に関わるスタッフにまつわる情報が事細かに記載されています。主な記載内容は次のとおりです。
● 職種別の職員数
● 資格保有の介護職員の人数
● 資格保有の機能訓練指導員の人数
● 夜間の職員数
● 特定施設入居者生活介護等の提供体制
● 職員の状況
それぞれのチェックポイントについて解説します。
職種別の職員数
この項目を見ると、介護職員や看護職員、機能訓練指導員、生活相談員などの人数を把握できます。ここには常勤・非常勤の人数のみならず、「常勤換算人数」が記載されていることがポイントです。常勤換算人数とは職員の採用区分(正社員やパートなど)を区別せず、各職員の合計勤務時間から算出した”平均職員数”のことを指します。常勤換算人数が多ければ多いほど実際に勤務しているスタッフ数が多いため、手厚いサービスが期待できるでしょう。
資格保有の介護職員の人数
資格を有している介護職員の人数欄には、次の資格を持っているスタッフの数が記載されています。
● 社会福祉士
● 介護福祉士
● 実務者研修の修了者
● 初任者研修の修了者
● 介護支援専門員
特に要介護状態の方が入居する場合は、介護の専門家である社会福祉士がどのくらい在籍しているかをチェックしましょう。
資格保有の機能訓練指導員の人数
資格を有している機能訓練指導員の人数には、次の資格を持っているスタッフの数が記載されています。
● 看護師または准看護師
● 理学療法士
● 作業療法士
● 言語聴覚士
● 柔道整復士
● あん摩マッサージ指圧師
● はり師
● きゅう師
医療ケアを必要とする場合は、看護師または准看護師の人数を確認しましょう。リハビリテーションを受けたい場合は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の在籍状況を確認してみてください。
夜間の職員数
重要事項説明書には、夜勤勤務を行う看護職員・介護職員の人数も記載されています。平均人数はもちろん、休憩者などを除く最少時人数もチェックできることがポイントです。24時間体制のサポートが必要な場合、なるべく夜間帯の勤務者が多い施設を選ぶといいでしょう。
特定施設入居者生活介護等の提供体制
特定施設入居者生活介護等の提供体制欄では、契約上の職員配置比率だけではなく、実際の配置比率をチェックできます。実際の配置比率については、記入日時点での利用者数に対し、常勤換算職員数が何人いるのかが記載されていることがポイントです。もし複数の施設を比べており、なるべくきめ細かなサービスを受けたいと考えている場合は、この実際の配置比率を比較してみるといいでしょう。
職員の状況
職員の状況欄では、前年度1年間の採用者数や退職者数を確認できます。もし採用者数に比べて退職者数が不自然に多い場合、組織体制が崩れている可能性があるため注意しなければなりません。また、ここでは業務に従事した経験年数に応じた職員人数をチェックすることも可能です。経験年数は「1年未満」「1年以上3年未満」「3年以上5年未満」「5年以上10年未満」「10年以上」に区分されており、介護職員・看護職員など職種ごとに人数を確認できます。
利用料金
利用料金の項目には、次のような内容が記載されています。
● 利用料金の支払い方法
● 利用料金プラン
● 利用料金の算定根拠
● 特定施設入居者生活介護に関する利用料金の算定根拠
● 前払金の受領
いずれも契約内容を理解するためには欠かせない要素であるため、しっかりと確認しておきましょう。
利用料金の支払い方法
利用料金の支払い方法の項目には、次のような要素が記載されています。
● 居住の権利形態
● 利用料金の支払い方式(全額前払い方式なのか、月払い方式なのか、など)
● 年齢に応じた金額設定の有無
● 要介護状態に応じた金額設定の有無
● 入院等による不在時における利用料金の取扱い(不在期間に応じた減額設定など)
● 利用料金の改定基準
施設のパンフレットなどで紹介されている内容と、重要事項説明書で規定されている内容が合致しているかチェックしてみてください。
利用料金プラン
有料老人ホームの料金は、入居者の状況によって異なります。基本的には要介護度が高ければ費用も高くなりますし、豪華な居室に入った場合も相場より高くなるでしょう。そこで契約者の参考となるよう、重要事項説明書には代表的な料金プラン例が掲載されています。月額費用のうち、介護保険の対象となるサービス・ならないサービスについて記載されていることもポイントです。とくに全額自己負担となる食費や管理費にいくらかかるのか、しっかり把握しておきましょう。なお、施設の種類ごとの料金相場は次のとおりです。
比較項目 | 入居一時金 | 月額費用 |
介護付き有料老人ホーム | 0~630万円 | 15~35.1万円 |
住宅型有料老人ホーム | 0~46万円 | 13.4~31.5万円 |
健康型有料老人ホーム | 0~1億円 | 10~40万円 |
紹介されている利用料金プランがこの相場の範囲内に収まっているかもチェックしてみてください。
利用料金の算定根拠
利用料金の算定根拠欄には、上述した利用料金プランにおける敷金・家賃・食費などの根拠が記載されています。たとえば家賃なら居室面積の金額、管理費なら人件費などの金額、食費なら朝昼晩それぞれの金額が根拠となっていることが多いでしょう。この算定根拠を比べれば、どの老人ホームが割安なのか判断することも可能です。
特定施設入居者生活介護に関する利用料金の算定根拠
介護付き有料老人ホームでは介護保険の対象となる「特定施設入居者生活介護」サービスが提供されますが、この自己負担額の算定根拠も重要事項説明書で確認できます。とくに人員配置が手厚い有料老人ホームの場合、上乗せサービスの有無が記載されているため、必ず確認しておきましょう。(人員配置が手厚い施設ほど安心感がありますが、それだけ費用が上乗せされることも事実です)
前払金の受領
入居時の前払金(入居一時金)を設定している有料老人ホームの場合、その算定根拠や想定居住期間(償却年月数)・償却開始日・初期償却率なども重要事項説明書に記載されています。短期で退去した場合の返還金の算定方法や、前払い金の保全先についても記載されているため、必ず確認しておきましょう。
入居者の状況
重要事項説明書には、実際の入居者の状況についても記載されています。チェックすべき主なポイントは次のとおりです。
● 入居者人数
● 入居者属性
● 退去者の状況
入居者人数
重要事項説明書には、記入日時点における入居者の性別・年齢別・要介護度別・入居期間別の人数が記載されています。とくに要介護度別の人数を見れば、その施設がどのような高齢者を主たる対象としているのか一目で分かるでしょう。
また、入居期間別の人数を見ることで、その施設が住みやすいのかどうか判断することも可能です。たとえば開所から年月が経っているにも関わらず、入居から6か月〜1年未満の人数が多い場合、短期での退去が相次いでいるのかもしれません。もし気になる点があれば、施設側に率直に確認してみてください。
入居者属性
入居者属性の項目では、平均年齢や入居率を確認できます。この入居率とは、入居者数の合計を入居定員数で割って得られる割合のことです。入居者の数には、一時的に不在となっている方も含まれます。入居率が高ければ、それだけ人気が高く、経営状況も安定していると考えられるでしょう。反対に入居率が低い施設には入りやすいですが、入居者が集まらないマイナス要素が存在している可能性も否めません。入居率が低い状態が続くと老人ホームの経営が傾く可能性もあるため注意してください。
退去者の状況
重要事項説明書では、前年度における退去者の状況もチェックできます。医療機関への長期入院・死亡による退去も含まれるため、退去者が多いからといって直ちに問題視する必要はありません。ただし他施設への転居が多い場合、念のため理由を確認しておいたほうがいいでしょう。入居者側の申し出による生前解約の理由も、重要事項説明書で確認できます。
苦情や事故に関する体制
重要事項説明書には、有料老人ホームに対する苦情があった場合や、施設内で事故が発生した場合の対処体制についても記載されています。具体的な記載項目は次のとおりです。
● 利用者からの苦情に対応する窓口等の状況
● 賠償すべき事項が発生したときの対応
● 第三者による評価の実施状況等
それぞれチェックすべきポイントについて詳しく見ていきましょう。
利用者からの苦情に対応する窓口等の状況
利用者からの苦情に対応する窓口等の状況欄には、苦情窓口の名称や電話番号、対応時間について記載されています。入居者本人はもちろん、万が一の状況に備えて家族も苦情窓口を把握しておくといいでしょう。
賠償すべき事項が発生したときの対応
サービスの提供により賠償すべき事故が発生したときの対応欄には、損害賠償責任保険の加入状況や、事故対応、その予防のための指針について記載されています。安心して生活できる施設であるのか判断するためにも、必ず確認しておきましょう。
第三者による評価の実施状況等
もし第三者による評価が実施されている場合、重要事項説明書にその内容が記載されています。利用者アンケート調査や意見箱に寄せられた意見なども記載されるため、施設の内情を知る手がかりにしてもいいでしょう。
入居希望者への事前の情報開示
入居希望者への事前の情報開示欄には、次の各資料の開示状況が記載されています。
● 入居契約書の雛形
● 管理規定
● 事業収支計画書
● 財務諸表の要旨
● 財務諸表の原本
これらのうち、とくに収支に関わる資料は入念に確認しておくといいでしょう。もし収支が安定しない有料老人ホームと契約してしまうと、入居後に運営元が倒産してしまう可能性があるためです。
その他
重要事項説明書のその他の欄には、次のような事項が掲載されています。
● 運営懇談会の有無(代替措置情報を含む)
● 提携ホームへの移行有無
● 有料老人ホーム設置時の老人福祉法第29条第1項に規定する届出の有無(届出がない場合、その有料老人ホームは行政との連携体制が不十分な可能性がある)
● 高齢者の居住の安定確保に関する法律第5条第1項に規定するサービス付き高齢者向け住宅の登録
● 有料老人ホーム設置運営指導指針「5.規模及び構造設備」に合致しない事項の有無
● 有料老人ホーム設置運営指導指針の不適合事項の有無
法律や運営指針に関わる内容が多いですが、問題がないかしっかり確認しておきましょう。
別添資料
重要事項説明書には、下記の別添資料も存在します。
● 別に実施する介護サービス一覧表
● 個別選択による介護サービス一覧表
一つ目の「別に実施する介護サービス一覧表」には、その事業者が当該老人ホームが所在する都道府県で提供している介護サービスが記されています。たとえば住宅型有料老人ホームは施設としては介護サービスを提供していません。そのため介護が必要な場合、居宅サービス事業者と別途契約する必要があります。もし有料老人ホームの運営元が居宅サービス事業も提供していれば、各種手続きがスムーズに進むでしょう。
二つ目の「個別選択による介護サービス一覧表」には、特定施設入居者生活介護費において実施するサービス(利用者は一部負担)と、個別の利用料で実施するサービス(利用者が全額負担)の提供有無が記載されています。もし全額負担で特別に受けたいサービスがある場合には目を通しておきましょう。
老人ホームの重要事項説明書の入手方法

重要事項説明書は、老人ホームのホームページなどで一般公開されています。もし入居を検討している施設のホームページで見つけられなければ、施設に直接連絡してみてください。入居を検討している旨を伝えれば、メールや郵送などで提供してもらえます。いずれにしても無料で手に入るため、必ず候補先の老人ホームすべてから入手し、しっかりと比較検討するようにしましょう。
老人ホームの重要事項説明書を入手するタイミング
契約の直前になって重要事項説明書を渡されても、その内容に納得できるとは限りません。また、どの施設と契約を結ぶか判断するためには、それぞれの施設の重要事項説明書を読む必要があります。そのため老人ホームの重要事項説明書を入手するタイミングとしては、入居先の施設を検討し始めた段階が最適だといえるでしょう。
いくつか候補をピックアップしたら、それぞれの施設から重要事項説明書を取り寄せてみてください。施設見学のタイミングで施設担当者に依頼すれば、その場で手渡してくれるでしょう。いずれにしても、契約締結前に余裕を持って取り寄せることが重要です。
老人ホームの重要事項説明書の注意点
老人ホームの重要事項説明書にまつわる注意点としては、次のようなポイントが挙げられます。
● 最終更新日を確認する
● 契約前に余裕を持って入手しておく
● 書類だけでなく見学・体験入居で実情を確かめる
● 口頭説明された内容と書類内容を照らし合わせる
まず、老人ホームの重要事項説明書は定期的に更新されるものです。そのため、その時点で最新の重要事項説明書を入手するようにしましょう。また、重要事項説明書の内容は多岐にわたり、すべて読むには時間がかかります。しっかりと内容を理解し、他の施設を比較するためにも、契約前に余裕を持って入手しておくことが重要です。
また、実際の施設の雰囲気を確かめるためにも、書類だけでなく見学・体験入居も必ず実施しましょう。後々のトラブルを防ぐためには、「見学時などに口頭で説明された内容」と「重要事項説明書に記載されている内容」が合致しているか確認することも大切です。
入居目的や身体状況にあわせたおすすめの介護施設

重要事項説明書を読んだだけでは、入居者にとって最適な施設を選ぶことはできません。高齢者向けの施設といってもいくつか種類があるため、それぞれの特徴をふまえた上で入居先を選ぶことが重要です。入居目的や身体状況ごとに、いくつかおすすめの介護施設を紹介します。
● 介護サービスが必要な場合は「介護付き有料老人ホーム」
● 認知症ケアが必要な場合は「グループホーム」
● 見守りサービスを受けたい場合は「サ高住」
● 自由な生活を送りたい場合は「住宅型有料老人ホーム」
それぞれ詳しく見ていきましょう。
介護サービスが必要な場合は「介護付き有料老人ホーム」
有料老人ホームのうち、行政から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている施設は介護付き有料老人ホームに分類されます。要介護度の高い高齢者も受け入れられる介護施設で、24時間体制の介護サービスを提供していることが特徴です。もし自立した生活が難しく、特別養護老人ホームなど公的介護施設の空きも見つからない場合には、介護付き有料老人ホームへの入所を検討してみてください。
なお、介護付き有料老人ホームの中には介護だけではなく、一定の医療ケア(点滴・インスリン注射など)を提供している施設もあります。医療ケアを受けるためには看護師が配置されている施設を選ぶ必要があるため、重要事項説明書で在籍状況を確認してみてください。
認知症ケアが必要な場合は「グループホーム」
特別な配慮が必要な認知症の方は、一般的な有料老人ホームなどでは受け入れてもらえないこともあります。しかし認知症が進行している場合、自宅での生活も難しいでしょう。そのような場合は、認知症患者に特化した施設である「グループホーム」への入所を検討してみてください。
グループホームは認知症の高齢者が集団生活をする施設です。主な入居条件としては次の4点が挙げられます。
● 65歳以上の高齢者で、要支援2または要介護1以上
● 認知症と診断されている
● 施設のある自治体に住民票がある
● 集団生活ができる
自分でできることは自分でするという生活スタイルが認知症の進行を緩やかにするとして注目されており、老人ホーム以外の選択肢として非常におすすめです。
見守りサービスを受けたい場合は「サ高住」
介護が必要なほど心身に衰えはないものの、万が一のことを考えると自宅での暮らしに不安があるという場合には、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」への入居を検討してみてください。サ高住は介護施設ではなく、あくまでも高齢者向けの賃貸住宅であるため、施設から介護サービスを受けることはできません。しかし施設内はバリアフリーが徹底されており、夫婦で暮らすことも可能です。また、安否確認(見守り)サービスと生活相談サービスを受けられるため、自宅よりも安心して暮らせることが特徴です。
自由な生活を送りたい場合は「住宅型有料老人ホーム」
サ高住と同じく、自立した高齢者を対象とした老人ホームが「住宅型有料老人ホーム」です。比較的自由に生活を送れますが、必要に応じてレクリエーションやイベントに参加できることは大きなメリットといえるでしょう。施設に居住する権利と合わせて、掃除・洗濯・食事などのサービスを利用する権利を契約するため、サ高住よりもサービス内容が充実していることも特徴です。
まとめ
老人ホームの重要事項説明書には、事業主体・事業所・施設の概要をはじめ、提供サービスの内容・職員体制・利用料金・利用者の状況など、施設を選ぶ際に欠かせない情報が網羅的に記載されています。ホームページからダウンロードすることも可能ですし、施設へ連絡すればメールや郵便で送ってもらえるため、必ず契約前に余裕を持って取得するようにしましょう。
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有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。