老人ホーム入居までの流れ 老人ホームの重要事項説明書とは

老人ホーム入居前に必ず確認しておくべきものは、「重要事項説明書」です。重要事項説明書と聞くと、分からないことや不安に思われる方も多いかと思いますそこでこの記事では、重要事項説明書の入手方法やタイミング、記載項目や確認すべきポイントなどを詳しく説明します。重要事項説明書を確認する際に、ぜひお役立てください。

#老人ホーム#介護保険施設#施設入居#手続き関係
この記事の監修

すぎもと ゆりこ

杉本 悠里子

有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。

老人ホームの重要事項説明書とは

重要事項説明書とは、契約にあたって大切な事項を消費者(ここでは入居対象者のこと)に説明する「重要事項説明」の際に用いられる書類のことです。老人ホームだけでなく、不動産や保険などの契約の際にも広く利用されています。老人ホームの重要事項説明書は、有料老人ホームやケアハウス・サービス付き高齢者向け住宅など、種類を問わずあらゆる施設において作成が義務付けられています。

老人ホームの重要事項説明書には、施設の運営会社の情報や設備・提供サービス・人員体制・料金体系など、その施設に関するあらゆる情報が記載されています。契約書の中でも特に重要なポイントを分かりやすくまとめているものなので、しっかり確認することで契約内容や施設についての詳細を把握することができます。

重要事項説明書の入手タイミング

重要事項説明書は、契約時に契約書と共に説明を受ける際に必要になります。しかし、いつでも入手できるものであり、重要事項説明書を読めば施設の概要やサービスなどを把握できるため、見学前に入手するのがおすすめです。見学前に入手し、不明点や確認したい事をまとめることで、見学時に質問することができます。

また、重要事項説明書は20ページ以上になるものが多いです。事前に入手して入念に確認することで、施設やサービスについて十分に理解したうえで契約に進むことができます。納得のいく老人ホーム選びのためには、重要事項説明書を活用することが大切です。

また、重要事項説明書は随時更新されます。そのため、最新版を手に入れるようにしましょう。

老人ホームの重要事項説明書の入手方法

重要事項説明書は、いつでも入手可能です。施設や自治体のホームページにPDFが上がっていることが多いので、ダウンロードすることができます。ホームページに掲載されていない場合は、施設に問い合わせをすることで郵送・メール送付などの対応をしてくれます。

老人ホームの重要事項説明書の項目

施設によって重要事項説明書に記載されている項目や順番は異なりますが、基本的には以下のような項目が記されています。

  • 記入年月日

  • 事業主体の概要

  • 事業所(施設)の概要

  • サービス内容

  • 職員体制

  • 利用料金

  • 入居者の概要

  • 苦情や事故等への対応

  • 入居希望者への事前の情報開示

  • 別添資料(2種類)

老人ホームの重要事項説明書で確認すべきポイント

老人ホームの重要事項説明書における各項目について、記載されている内容や確認すべきポイントを解説します。

記入年月日

重要事項説明書は定期的に更新されるため、最新の書類を利用する必要があります。そのため、記入年月日が1年以内で最新のものであるかを確認しましょう。

事業主体の概要

事業主体の概要とは、その施設を運営する事業者の情報のことです。事業者名や所在地、電話番号やホームページなどの基本情報や、その施設が他にどのような事業を運営しているのかを確認し、信頼できる事業者であるかを判断することができます。

また、別添資料には、その事業主体が同じ都道府県で展開する他の介護サービス事業が一覧で記載されています。介護サービス事業における実績を把握できるため、そちらも確認しておきましょう。

事業所(施設)の概要

事業所の概要には、運営会社ではなく老人ホーム自体の情報が記されています。施設の名称や所在地、管理者の氏名・職名、連絡先やアクセスなど、施設の基本情報がまとめられています。また、事業を開始した年月日や施設の類型(介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの施設の種類)も記載されています。

施設・設備等の状況

事業所の概要で特に重要なのは、施設・設備等の状況です。ここには、敷地や建物の面積、階数、自社所有か否か、構造は耐火建築物であるかなど、施設に関する情報が記されています。特に、安心して生活するためには耐火建築物であることを確認しましょう。

さらに、居室の面積や浴室の有無、食堂や共用スペースなどの設備の詳細や、消防設備や緊急呼出装置の有無なども記載されています。この項目を確認することで、施設や設備については十分に把握することができるため、特に注意してチェックしましょう。

サービス内容

サービスの内容も、重点的に確認すべき事項です。施設が提供するサービスや医療連携体制などを把握することができます。分量が多いですが、その分重要なポイントが多く含まれているのでしっかり確認しましょう。

全体方針

全体方針には、施設の運営方針やサービスの特徴がまとめられています。また、介護や生活支援サービスは職員が実施するのか、外部サービスに委託して提供しているのかも確認可能です。

介護サービス

介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームなど、介護サービスを提供する施設が記載する項目です。施設で提供される介護サービスを具体的に把握することができます。

医療機関との連携・協力体制

連携・協力している医療機関の名称や所在地、診療項目や連携・協力内容が記載されています。訪問診療や緊急時対応はどこが行うのか、自己負担額などを把握することができるため、目を通しておきましょう。

対応可能な医療ケア

入居者が持病を患っている場合は、特に対応可能な医療ケアの一覧についても確認が必要です。持病があり、それに伴い医療行為を必要とする場合、施設がそれに対応している必要があります。介護職員と看護師・医師では、扱える医療行為が異なるためです。

例えば、体温や血圧の測定、カテーテルの準備などは介護職員が行えますが、インスリン注射やカテーテルの交換などは看護師が担当します。また、診察や処方箋の交付、人工透析などは医師が行える医療行為です。

このように、施設が対応できる医療ケアについても確認しておきましょう。

入居後の居室住み替えについて

入居後に、介護状況の変化などさまざまな事情で居室を住み替える場合もあります。この項目には、住み替えの判断基準や住み替え先となる居室について記されています。また、その際に追加費用が発生するか、入居一時金の償却は調整されるのかなど、金額に関わる説明も記載されています。万が一に備え、確認しておきましょう。

入居に関する要件

入居に関する要件は、契約に直接的に関わってくる部分であるため、特に確認が必要です。入居条件や身元引受人の条件や、体験入居の期間、費用についても記されています。見学前に重要事項説明書を入手する場合は、体験入居の詳細を確認しましょう。

また、事業所からの契約解除の要件も記されています。施設から解約を求める場合には、入居者側が重大な契約違反を犯した時や、社会通念上・金銭的に契約の継続が難しい場合などが該当します。施設によっては「要介護になったことを理由に契約の解除を要求されることはない」などの但し書きがあり、安心して契約できるよう、契約解除要件も確認しておきましょう。

職員体制

職員体制には、施設の運営に携わる職員の人数と職種、勤務形態などが記されています。また、有資格者の人数や採用時期、介護業務の経験年数や退職者数についても記載されています。職員体制は、サービスの質を左右する重要な事項です。職員体制を確認することで、十分な人員体制のもと手厚いサービスが受けられるか、どのような資格・経験を持った職員がいるかなどを把握しましょう。

介護職員の人数

入居者の方が要介護認定を受けている場合は、介護職員の人数を重視しましょう。介護福祉士・実務者研修の修了者・初任者研修の修了者などの人数がそれぞれ記されています。特に介護福祉士の人数が多ければ、それだけ万全の体制で手厚い介護サービスが受けられると判断できます。

機能訓練指導員の人数

機能訓練指導員とは、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、看護師などの資格を持った職員のことです。リハビリテーションを担当するのは主に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士です。これらの資格を持った指導員が多ければ、それだけ充実したリハビリテーション体制であることが読み取れます。

また、看護師の人数や常勤か非常勤かについても確認しましょう。特に、夜間にも医療行為が必要な入居者の場合は、24時間看護師が常駐している施設を選ぶ必要があります。

夜勤体制

夜間の職員数や、夜間に最も人手が少なくなる時間帯の職員数である「最少時人数」について記載されています。要介護度が高い方や、夜間にも医療行為を必要とする方の場合は、24時間安心して生活できるよう夜勤体制を確認しましょう。

職員の状況

職員の状況では、有資格者の人数や採用時期、介護業務の経験年数や退職者数についても記載されています。

採用時期や介護業務の経験年数を見れば、その施設で働く職員の介護経験やスキルの豊かさがわかります。また、退職者数が多い場合は、労働環境に何らかの問題があると考えられます。十分な職員体制で質の高いサービスを受けるために、職員体制の項目についてはしっかり確認しておきましょう。

利用料金

老人ホームを利用する際には、決して安いとは言えない費用がかかります。納得して費用を支払うために、利用料金の項目は注意して確認しましょう。項目を確認することはもちろんですが、費用の内訳について理解することも大切です。

費用の内訳を理解する

有料老人ホームにかかる費用には、入居時費用と月額費用があります。利用料金を確認するには、まずは費用の内訳について理解することが大切です。

入居時費用

入居時費用とは契約時にまとめて支払うもので、「入居一時金」(数年分の月額家賃の前払い額)、「敷金」などにあたります。老人ホームによっては月額費用が高い代わりに入居一時金がかからないところもあります。

月額費用

月額費用とは、居住費や食費などを合算して月々支払うものです。納得して費用を支払うためには、月額費用の内訳を理解する必要があります。

月額費用は、老人ホームの種類によって異なりますが、介護サービス費と生活費の2種類に分かれます。

介護サービス費

介護サービス費は、介護付き有料老人ホームの場合に発生するものです。介護サービスに対して発生する基本料である「施設介護サービス費」と、サービス内容や人員配置に応じて追加で発生する「サービス加算」に分類され、どちらも介護保険が適用されます。

また、介護サービス費は介護サービスに対して発生するため、要介護度によって金額が変わります。要介護度が高くなればなるほど費用も大きくなります。基本的に自己負担額は1割ですが、所得に応じて2割、3割と変わるので、まずはご自身の自己負担割合を確認しましょう。

生活費

生活費には、以下のような費用が含まれます。

  • 居住費

  • 食費

  • 管理費

  • 日常生活費

  • 上乗せ介護費

  • 介護保険対象外のサービス費

  • 医療費

それぞれの費用は施設によってさまざまですが、特に違いがあるのは居住費です。居住費は家賃のようなもので、居室のタイプや立地によって10万円〜50万円以上とかなり幅があります。

また、介護付き有料老人ホームの場合に理解しておきたいのが「上乗せ介護費」です。上乗せ介護費は、人員配置基準よりも多く看護・介護職員を配置している場合に徴収できる費用のことで、介護サービス費のサービス加算とは別になります。

支払い方法

料金の支払い方法や入居費用など、費用に関する基本情報が記されています。また、契約方式についても記されているので確認が必要です。契約方式には以下の3つがあります。

  • 利用権方式

  • 建物賃貸借方式

  • 終身建物賃貸借方式

利用権方式

利用権方式とは、居室や共用スペースなどの居住部分を利用するための料金と、サービスを利用するための料金が一体となった契約形態のことで、入居者が亡くなるまで居住部分とサービスを利用できる権利を保持できる契約方式です。入居者が亡くなった時点で契約が終了します。有料老人ホームで多く採用されている契約方式です。

建物賃貸借方式・終身建物賃貸借方式

建物賃貸借方式は、借地借家法という法律で整備されており、居住部分とサービスが別々になった契約形態のことです。月額費用を払うことで、入居者が亡くなっても居住権が継続します。終身建物賃貸借方式は、建物賃貸借方式のうち入居者が亡くなった時点で契約が終了する契約方式のことです。

建物賃貸借方式や終身建物賃貸借方式は、月額費用を払うことで居住権が継続するため、想定入居期間に基づく入居一時金の前払いが不要という特徴があります。

料金プランや算定根拠

料金プランの項目では、入居時費用や月額費用、月額費用の内訳などを確認することができます。また、その算定根拠を確認することで、納得して費用を支払うことができます。

入居一時金の返還制度

前述の通り、「入居一時金は想定入居期間分の家賃の前払い」という位置付けです。そのため、入居一時金を必要とする施設については、指定の居住期間より前に退去した場合、残りの金額が返還されるという仕組みになっています。返還制度の詳細は施設によって変わりますので、この項目については特にチェックしましょう。

ここでは、返還制度を理解するために押さえておきたい用語を説明します。

入居一時金の償却期間と初期償却

老人ホームの中には、契約時に初期費用として入居一時金を支払う必要がある施設があります。入居一時金は、「想定入居期間分の家賃の前払い」という位置付けの費用のことです。指定の居住期間より前に退去した場合、残りの入居期間分の金額が返還されるという仕組みになっています。この想定入居期間は施設によって異なるので、契約時に確認しましょう。

また、入居一時金の償却でもう1つ重要なのが「初期償却」です。初期償却とは、入居一時金から引かれる一定額のことで、退去時に返還されません。初期償却は施設によって異なります。入居金の10〜30%と定めているところが多いですが、契約時に必ず確認しましょう。

上乗せ介護費の有無

上乗せ介護費とは、基準よりも多く看護・介護職員を配置している場合に徴収できる費用のことです。上乗せ介護費の有無は施設によって異なるので、契約時に確認しましょう。

クーリングオフ(短期解約特例)に関する記載

入居一時金の支払いにはクーリングオフ(短期解約特例)が適用されるため、90日以内に解約した場合、施設には一時金の返還義務があります。法律で義務付けられているとはいえ、クーリングオフについてきちんと契約書に書かれているかを確認しましょう。

入居者の概要

入居者の概要では、その施設に入居している人数や性別・年齢・要介護度などの内訳がまとめられています。また、施設の定員に対する入居者の数である入居率も確認できます。入居者の属性データを見れば入居者の受け入れ傾向を把握することができます。

前年度における退去者の状況

特に確認すべきなのは、前年度における退去者の状況についての記載です。老人ホームを退去する理由には、入居者が亡くなったこと以外にも、自宅に戻ったり他の施設に移ったりなど、さまざまな理由があります。どのような理由で老人ホームを退去したのかについてまとめられているので、確認しておきましょう。

苦情や事故等への対応

苦情や事故等への対応に関する項目には、万が一問題が起こった際の対応方法や窓口が記されています。また、損害賠償責任保険加入の有無や、事故が発生しないための予防の取り組みについても記載されています。問題発生時の対応が適切であることを確認できれば、安心して入居することができます。万が一の事態に備え、必ず確認しておきましょう。

入居希望者への事前の情報開示

契約書や施設の管理規定、財務諸表など、施設に関する情報を事前に入居希望者へ開示するか否かや、開示方法などが記されている項目です。特に、安心して契約するためには、施設が倒産・廃業する可能性がないかを確認することが大切です。そのため、財務状況が開示されることを確認しましょう。

別添資料

別添資料には2種類あります。1つ目は、その施設を運営する事業主体が、同じ都道府県で運営している他の介護サービス事業を記した一覧表です。事業者が他にどのようなサービスを運営しているかを把握することができます。

2つ目は、有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅が提供するサービスの一覧となります。介護付き有料老人ホームと一部サービス付き高齢者向け住宅については、介護サービスや生活支援サービスなど、入居後に提供するサービスの内容について入居者に明示する必要があるからです。各項目について、「◯・×」や「あり・なし」などでわかりやすく記載されています。

まとめ

今回は、老人ホーム入居前に確認すべき重要事項説明書についてご説明しました。重要事項説明書を丁寧に読むことで、その施設やサービスについて把握することができます。事前に入手し、時間をかけて確認しましょう。また、説明書で分からない点がありましたら、遠慮なく施設に問い合わせてください。重要事項説明書を活用することで、安心・納得の老人ホーム選びが可能です。重要事項説明書を手に入れる際は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

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