2024年3月、介護療養型医療施設が廃止!その理由や転換先も紹介!

医療ケアと介護サービスの両方を必要とする高齢者のために、介護保険制度では「介護療養型医療施設」という場所を用意していました。多くの方が利用していた介護療養型医療施設ですが、さまざまな理由から2024年3月に廃止されたことをご存知でしょうか。

この記事では介護療養型医療施設とはどのような施設で、なぜ廃止されるに至ったのか紹介します。介護療養型医療施設の転換先として創設された「介護医療院」についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

2024年3月、介護療養型医療施設が廃止!その理由や転換先も紹介!
#老人ホーム#介護保険施設#選び方

介護療養型医療施設とは?


介護療養型医療施設とは、「医療」と「介護」の両方を受けられる高齢者向け施設です。医療ケアは通常、公的健康保険によって負担が軽減されます。75歳以上の後期高齢者は1割の自己負担で医療ケアを受けられますが、それ以外の方は原則として3割を自己負担しなければなりません。しかし40歳〜74歳で要介護状態となり、さらに医療ケアも必要となった場合、介護と医療の両方の費用が必要となり、経済的負担が大きくなってしまいます。
しかし介護療養型医療施設は、あくまでも公的介護保険制度の枠組みで設置された施設です。そのため介護保険給付の中で、「医療」と「介護」の両方を受けられます。結果として要介護者の経済的負担を大きく減らせることが、介護療養型医療施設の特徴でした。ただし先述したとおり、介護療養型医療施設は2024年3月末に廃止され、新たに入居することはできません。

介護療養型医療施設は、2024年3月に廃止

さて、介護療養型医療施設はなぜ廃止されたのでしょうか。その理由を紐解くためには、介護療養型医療施設の成り立ちについて知る必要があります。介護療養型医療施設の原型は、平成5年(1993年)の医療法改正により創設された「療養型病床群」です。これは一般病院における長期入院患者の増加に対応するために、長期にわたって療養が必要な患者を入院させるための療養環境を有する施設のことです。
その後、平成12年(2000年)に介護保険法が施行されると、療養型病床群の一部については介護保険法に基づき、長期にわたって療養を必要とする要介護者向けの施設として「介護療養型医療施設(介護療養病床)」として位置づけられます。
一方、平成13年(2001年)には医療法が改正され、療養型病床群と老人病院(特例許可老人病院)を再編した「療養病床(医療型療養病床)」に一本化されました。こちらはあくまでも医療法に基づく施設であるため、医療保険(健康保険)が適用されます。

これにより、介護療養型医療施設と医療型療養病床は異なる法律を根拠としていますが、どちらも提供サービスは似通っています。さらに厚生労働省が実態調査をしたところ、両施設ともに医療の必要性が「高い患者」と「低い患者」が同じくらい混在しており、入居者の状況に大きな差が見られませんでした。さらに入居期間が想定以上に長期にわたり、医療費・介護保障費を圧迫していることも問題視されるようになります。

 

一般的な介護保険施設に入所する方の中にも、病態によっては容体急変のリスクを抱える方がいることも事実です。しかし従来の介護保険サービスの中には、そのような医療ニーズに応える施設はありませんでした。このような状況を改善するため両施設を再編することが決まり、介護療養型医療施設は2024年3月に廃止されたのです。そして転換先として、新たに「介護医療院」が創設されました。

参考:厚生労働省|介護療養病床の経緯について

 

転換先として創設された「介護医療院」とは


介護療養型医療施設の転換先として創設された「介護医療院」とは、どのような施設なのでしょうか。特徴や施設分類について詳しく見ていきましょう。

介護医療院の特徴

介護医療院とは、端的にいえば要介護高齢者の長期療養・生活のための施設です。看護・医学的管理のもとで介護・機能訓練・医療・日常支援を提供し、要介護高齢者の生活をサポートすることを目的としています。

介護療養型医療施設の転換施設であるものの、単に同じサービスを提供するのではなく、医療ニーズに応えながら生活を支援する点が特徴です。そのため介護医療院では、介護療養型医療施設ではあまり重視されていなかったイベント行事やレクリエーションなども開催されています。また、入居者の心身状態にあわせて施設内で生活を続けられるよう、終末期医療(ターミナルケア)や看取り介護に対応している点も特徴です。

介護医療院は2つの分類に分けられる

さて、一口に介護医療院といっても、主な入居対象者によって次の2種類に分類されます。

分類
Ⅰ型
Ⅱ型
主な入居対象
重篤な身体疾患を有する者 身体合併症を有する認知症高齢者 など (介護療養病床療養機能強化型AB相当)
Ⅰ型と比べて容態が比較的安定した者
施設の人員基準
介護療養病床相当
老人保健施設相当以上
医師
入居者48名に対し1人 (施設で3人以上)
入居者100名につき1人 (施設で1人以上)
リハビリ専門職
適当数
薬剤師
入居者150名につき1人
入居者300名につき1人
看護職員
入居者6名につき1人
介護職員
入居者5名につき1人
入居者6名につき1人
栄養士または管理栄養士
入居者定員100名以上で1人
介護支援専門員
入居者100名につき1人 (施設で1人以上)
診療放射線技師
適当数
調理員・事務員など
適当数

参考:厚生労働省|介護医療院とは?

Ⅰ型のほうが医療ニーズが高い高齢者の入居を想定しているため、人員配置基準が厳しく定められていることが特徴です。なお、上記のⅠ型・Ⅱ型とは別に、医療機関と生活施設機能(有料老人ホームのような機能)が併設された「医療機関併設型介護医療院」という枠組みもあります。医療機関併設型介護医療院についても、医師・リハビリ専門職・薬剤師・看護職員・介護職員・栄養士または管理栄養士・介護支援専門員の人員配置基準は通常の介護医療院と同様です。

ただし診療放射線技師については、併設施設と職員を兼務することで適正なサービスを確保できる場合には、配置しなくても差し支えないとされています。また、調理員・事務員などは、併設施設との職員兼務だけでなく、業務委託によって適正なサービスを確保できる場合にも、配置しなくていいとされていることが特徴です。

介護医療院の施設基準

介護医療院は人員配置基準だけではなく、施設基準も厳しく定められています。たとえば介護医療院は医療を内包した施設系サービスであるため、生活施設としての機能も重視されていることが特徴です。そのため入居者一人あたりの面積は老人保健施設相当以上(8.0m² 以上)で、なおかつプライバシーに配慮した環境として整備しなければなりません。多床室の場合も家具やパーテーションで間仕切りが設置されるため、病院よりプライベート空間を確保できるでしょう。その他の施設基準については下記のとおりです。

 

施設の種別

基準

療養室

●    一の療養室の定員は、4人以下

●    入所者一人あたりの床面積は8㎡以上

●    地階に設けてはならない

●    出入口は一つ以上、避難上有効な空地・廊下・広間に直接面して設ける

●    入所者のプライバシーの確保に配慮した療養床を備える

●    入所者の身の回り品を保管することができる設備を備える

●    ナース・コールを設ける

診察室

次に掲げる施設を用意しなければならない

●    医師が診察する施設

●    臨床検査施設(喀痰・血液・尿・糞便などについて、通常の臨床検査を行うことができる施設)

●    調剤施設

ただし臨床検査施設については、検体検査を外部委託する場合は設ける必要がありません

 

処置室

次に掲げる施設を用意しなければならない

●    入所者に適切に処置できる広さのある施設

●    診察用のエックス線装置

これら施設は、診察室との兼用も可

機能訓練室

●    面積は内法による測定で40㎡以上

●    必要な器械・器具を備える

(併設型小規模介護医療院については、必要な器械・器具がある場合には、機能訓練のために十分な広さがあれば可)

談話室

入所者同士や入所者とその家族が談話を楽しめる広さ

食堂

内法による測定で、入所者1人当たり1㎡以上の面積

浴室

身体の不自由な者が入浴するのに適したもの

一般浴槽のほか、入浴介助が必要な者の入浴に適した特別浴槽も必要

レクリエーション・ルーム

レクリエーションを行うために十分な広さ・必要な設備を整える

洗面所

身体の不自由な者が利用するのに適したもの

便所

身体の不自由な者が利用するのに適したもの

参考:厚生労働省|介護医療院とは?

なお、介護医療院のさらに詳しい情報については下記の記事でも紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。

 

​ 

手厚い医療・介護サービスが必要な方におすすめの施設

介護医療院は手厚い医療・介護サービスが必要な場合におすすめの施設ですが、入居するためには入所判定を通過しなければなりません。病院の医療ソーシャルワーカーなどの協力を受けながら入居準備を進めることになりますが、希望したからといって必ずしも入居できるとは限らないのです。もし手厚い医療・介護サービスを必要としているにも関わらず、介護医療院へ入居できなかった場合には、次のいずれかの施設も選択肢に含めてみてください。

●   介護付き有料老人ホーム

●   グループホーム

それぞれの施設の特徴について、詳しく紹介します。

介護付き有料老人ホーム:医療機関との連携が充実

有料老人ホームにはいくつかの種類がありますが、その中で行政から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている施設を介護付き有料老人ホームと呼びます。介護スタッフが24時間常駐しているため、手厚い介護サービスを受けられることが特徴です。
介護医療院のように医師が常駐しているわけではありませんが、要介護者が30人までの施設なら1名以上の看護職員、要介護者が30名を超える場合は50名ごとに1人の看護職員の配置が義務付けられているため、点滴・インスリン注射など一定の医療ケアを受けられます。また、多くの介護付き有料老人ホームは近隣の医療機関と連携しているため、緊急の場合には医療機関の指示のもと、適切に対応してもらえることもポイントです。介護付き有料老人ホームは民間施設で、比較的施設数が多いため、介護医療院よりスムーズに入居しやすい点もメリットだといえるでしょう。

 


グループホーム:介護職員が常駐

グループホームは認知症の高齢者を対象とした施設です。介護職員が常駐しており、食事・入浴・排泄などの介護サービスを受けることもできますが、入居者が自分でできることは自分で行うことで、認知症の進行を緩やかにする効果が期待できます。
医療スタッフの常駐は義務付けられていないものの、看護師が在籍している施設もゼロではありません。もし認知症の症状が目立つ場合には、グループホームへの入居も検討してみてください。

 

まとめ

介護療養型医療施設は2024年3月に廃止され、「医療」と「介護」の両方を必要とする方のニーズは、今後「介護医療院」が担っていくことになります。介護医療院では介護・看護・医療・日常支援サービスが提供されるため、容態急変のリスクを抱えた要介護者も安心して生活できることが特徴です。終末期医療(ターミナルケア)や看取り介護にも対応しているため、病状に不安のある方はぜひ介護医療院への入居を検討してみてください。

ただし介護医療院は公的施設であるため、入居するためには判定を通過しなければならず、必ずしも希望通りに利用できるとは限りません。もし介護医療院へ入居できなかった場合には、介護付き有料老人ホームやグループホームなど民間施設の利用を検討する必要があります。スマートシニアではエリア・費用などの条件を絞って高齢者向け施設を検索できるため、ぜひ活用してみてください。

 


この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

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