介護療養型医療施設(介護療養病床)とは|2024年3月末で廃止予定。転換後の介護医療院との違いも解説!
「介護療養型医療施設ってどんなサービス?」「もうすぐで廃止されるってほんと?」こんな疑問はありませんか?
介護療養型医療施設は、病院と介護施設の中間施設として、介護・医療のサービスを同時に提供できるサービスです。2000年に介護保険が施行された時から開始したサービスで、20年以上運営してきました。しかし、入居する方の状況や職員不足などの影響から、サービスの全面廃止が決定しています。
今回は、介護療養型医療施設のサービス内容や費用について紹介します。また、他の施設との違いやサービス終了後の代わりとなる介護医療院についても詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
とぐち まさき
渡口 将生
介護療養型医療施設とは
介護と医療のサービスを同時に受けられる施設
介護療養型医療施設とは、長期療養が必要な方が利用する介護施設です。介護療養型医療施設では、日常的な介護の支援や医療的ケア・リハビリテーションを提供しています。特別養護老人ホームや介護老人保健施設と同じ、介護保険施設のひとつです。
介護療養型医療施設の入居基準は、原則65歳以上の要介護1〜5の認定を受け、継続的な医療的ケアの必要性が高い方が対象となります。要支援の認定を受けている方は対象外です。
医療的ケアが必要な方は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設では対応できないケースが多いことから、介護療養型医療施設が受け皿となる場合があります。そのため、病院と介護施設の中間的な施設と考えられています。
主なサービス内容は、常駐する医師の診療や看護師からの医療的ケア・日常的な介護支援・リハビリテーションなどがあり、これらのサービスを介護サービス計画書に基づき提供しています。
介護と医療の両方を提供できることが大きな特徴の施設です。
介護療養型医療施設の廃止について
介護療養型医療施設は2024年3月末でサービスが終了する
介護療養型医療施設は2024年3月末をもってサービスを廃止することが決まっています。介護療養型医療施設は、1993年の医療法改定から療養型病床が導入され、2000年に施行された介護保険法により誕生しました。
一時は、2006年に行われた医療構造改革の発表から、2011年末にサービスを終了すると言われていましたが、介護老人保健施設などへのスムーズな移行ができず、2024年3月まで延長されました。
2016年以降は介護療養型医療施設を新しく設立せず、2018年4月より創設された介護医療院が代わりになる施設として新設されています。2024年3月のサービス終了にともない、介護医療院の新たな施設の設立や動向に注目が集まっています。
介護医療院とは、これまで「療養型病院と介護療養型医療施設の棲み分け」ができていなかったことから、改めて制度を構築し誕生した施設です。医療ニーズの高い方と低い方が混同していることが問題となっていました。また、介護や看護職員の不足なども課題となり、再構築が必要と考えられています。
介護医療院では、医療ニーズの高い方が入居するⅠ型と、Ⅰ型に比べ病状の安定した方が利用するⅡ型に分け、対象者を選定して入居をすすめています。
介護療養型医療施設の人員体制やサービス内容
医師や看護師などの医療職の配置が手厚い施設
ここでは、介護療養型医療施設の人員体制をみていきましょう。
介護療養型医療施設では、入居者100人に対して常勤の医師3名の配置が定められています。また、介護・看護職員をそれぞれ17名以上、常勤のケアマネジャーを配置することが義務付けられており、介護施設というより医療機関に近い施設です。
医療職員が充実しているため、経管栄養や酸素吸入、胃ろうなどの一般的な介護施設では対応が困難になりやすい方も利用できるという特徴があります。他にも、リハビリ職員の配置がありますが、施設によって配置人数が異なります。
サービス内容は、日常的に必要な介護支援や医療的ケアが受けることができます。一般的な介護施設で行うようなレクリエーションや行事に力を入れている施設は少なく、掃除や洗濯などの生活援助に関するサービスもあまり実施されていません。
また、介護療養型医療施設の居室は1人あたり床面積は6.4㎡となっています。比較的近いサービスである、介護老人保健施設の居室は8.0㎡のため、介護療養型医療施設は狭いと感じる方もいるでしょう。
介護療養型医療施設の費用
比較的安価な料金形態だが医療加算によって増えることもある
介護療養型医療施設は、他の介護施設などと比較しても必要な費用は安価です。入居一時金や敷金は必要なく、所得に応じた減免制度もあります。
費用目安は税金を支払っている課税世帯で11〜15万円ほどです。非課税世帯の場合、介護保険料金の上限額が下がり、7〜10万円程度になる方もいます。非課税の減免を受ける場合は、介護保険負担限度額認定証の発行が必要です。
費用の内訳は次の通りです。
※介護保険負担割合1割、課税世帯の場合
多床室 | 従来型個室 | ユニット型個室 | |
---|---|---|---|
要介護1 | 20,580円/月 | 17,790円/月 | 21,180円/月 |
要介護2 | 23,430円/月 | 20,550円/月 | 24,030円/月 |
要介護3 | 29,460円/月 | 26,670円/月 | 30,060円/月 |
要介護4 | 32,100円/月 | 29,220円/月 | 32,700円/月 |
要介護5 | 34,380円/月 | 31,560円/月 | 34,980円/月 |
食費 | 43,350円/月(1,445円/日) | ||
居住費 | 11,310円/月 (377円/日) | 50,040円/月 (1,668円/日) | 60,180円/月 (2,006円/日) |
その他費用 | 15,000円(洗濯代・消耗品・水道代・光熱費など) |
※1単位=1円で計算
※加算などは個別に変わるため入れていません。
出典:厚生労働省「介護サービスコード表」
介護療養型医療施設は、部屋のタイプにより費用は大きく異なります。また、施設ごとにに加算状況が異なるため、費用は変動します。
介護療養型医療施設は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設とは違い、水道・光熱費が必要です。その他、理美容代や日常で使用する消耗品も必要になるため、注意すると良いでしょう。
ただし、尿とりパットやオムツに関しては、施設負担となるため利用にあたって請求される心配はありません。
介護療養型医療施設のメリット・デメリット
介護施設では対応困難な状態でも利用ができる
介護療養型医療施設の最大のメリットは、介護と医療を両方受けられることでしょう。他の介護施設では対応が困難な胃ろうや酸素療法、吸引などが必要であっても、医療職の配置が手厚く、医師が常駐している介護療養型医療施設であれば対応ができます。
また、医療的ケアを受けることができる介護療養型医療施設ですが、介護施設と比べても費用が特別高いわけではありません。
デメリットは、他の介護施設に比べて、余暇活動やレクリエーションの実施が少ないことです。掃除や洗濯などの生活支援が最低限の場合もあるため、受けられるサービスの内容は入居前には確認しておくと良いでしょう。
その他のメリットやデメリットは次の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
介護と医療が一緒に受けられる 一時金が不要で費用も安価 医療職が充実しており医療的ケアが受けられる 状態が悪化した場合も一般病棟へ移れる リハビリが受けられる 介護度が高くても入居可できる | 終身利用は決まっていない 医療加算によっては費用が高くなる場合がある 多床室の場合は個人のスペースが狭い レクリエーションや行事が少ない 生活支援はほとんど受けられない |
介護療養型医療施設は、介護と医療が一緒に提供されますが、基本的に医療的ケアがメインとなるでしょう。元々、介護施設には入居できない状態の方が対象となるため、病状が重篤化している方も多いです。
状態が悪化して、一時的に一般病棟に移る可能性もありますが、介護療養型医療施設は一般病棟を併設している場合が多いため、すぐに病棟移動できる可能性が高いこともメリットと言えるでしょう。
また、終身利用を目的としていないため、病状が改善した場合は、退去先を探す必要があります。その場合は、介護施設や在宅への移動が必要となるため、介護療養型医療施設の相談員やケアマネジャーと相談しておくと良いでしょう。
介護療養型医療施設と他の介護施設との違い
介護保険施設や有料老人ホームの特徴を理解する
ここでは、他の施設との違いを見ていきましょう。
特別養護老人ホーム | 介護老人保健施設 | 介護療養型医療施設 | 有料老人ホーム | |
---|---|---|---|---|
目的 | 日常生活の支援 | リハビリ | 療養 | 日常生活の支援 |
費用 | 安め | 安め | 安め | 高め |
入居一時金 | なし | なし | なし | あり ※ない場合もある |
医療的ケア | 夜間帯は弱い | 24時間対応している施設が多い | 24時間対応 | 施設による |
リハビリ | なし | あり | あり | 施設による |
利用期間 | 長期 (終身まで利用可能なところもある) | 3~6ヶ月 (長期で利用できる場合もある) | 3~6ヶ月 (病状などにより転院の可能性がある) | 長期 (介助量が多くなると利用できなくなる場合がある) |
入所条件 | 要介護3以上 | 要介護1以上 | 要介護1以上で継続的な医療処置が必要な方 | 施設によって異なる |
特別養護老人ホームとの違い
特別養護老人ホームは、要介護3以上の認定を受けた方が入所できる施設です。看取りケアを導入し、終身まで利用できる場合もあります。日常生活の支援が主なサービスで、介護職員がメインの施設です。
看護師の配置はありますが夜間帯に不在の施設も多く、夜に医療的ケアが必要な方は利用できない場合が多くあります。
介護老人保健施設との違い
介護老人保健施設は、要介護1〜5の方が入所可能な施設です。24時間看護職員が配置されている施設が多く、介護施設の中でも医療的ケアを受けやすい施設と言えます。また、医師が管理者をしているため、急な体調変化にも迅速に診察を受けることができます。
しかし、あくまでも介護施設のため、検査や処置には限りがあります。基本的にリハビリをメインとし、在宅復帰を目的に運営しています。
有料老人ホームとの違い
有料老人ホームは、運営会社や施設ごとに特色がありますが、食事や排泄などの身体介護と掃除や洗濯などの生活支援が主なサービスです。看護職員の配置が手厚く医療特化型の施設もありますが、数は多くありません。
しかし、介護療養型医療施設と比べて自由度が高く、レクリエーションや余暇活動に力を入れている施設が多くあります。
まとめ
介護療養型医療施設は2024年3月末で廃止が決定しています。今後は介護医療院が介護療養型医療施設の代わりとして考えられています。その介護医療院は2018年4月より創設されていますが、施設数が少ないことから移行がスムーズに行われず、サービス終了が延長となりました。
介護医療院では、介護療養型医療施設で課題となっていた療養病院との棲み分けがポイントとなり、より医療ニーズの高い方を中心に入居を進めていきます。
これから介護療養型医療施設の入所を検討している方は、介護医療院へ移行が進んでいることを念頭に置き、必要な医療的ケアや介護を受けられるか確認して施設探しを進めてください。
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。