相続と生前贈与の基礎知識〜相続人や手続き・相続税や贈与税を解説〜

施設への入居をきっかけに、財産の相続や贈与を検討する方も多いです。財産を引き渡す方法として、遺産相続と生前贈与があります。どちらも複雑な手続きを要するため、計画的に準備を進めることが大切です。

また、相続人や相続割合など、相続・贈与にあたって知っておくべき知識も多く存在します。この記事では、相続と生前贈与の基礎知識について詳しく解説します。相続や贈与の準備を進める第一歩として、ぜひ参考にしてください。

この記事の監修

すぎもと ゆりこ

杉本 悠里子

有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。

相続とは


相続とは、亡くなった方が所有していた財産や権利・義務を特定の人が引き継ぐことです。亡くなった方のことを被相続人、財産や権利義務を引き継ぐ人のことを相続人と呼びます。

その方が亡くなった日が相続開始日となります。


法定相続人とは

法定相続人とは、「被相続人の財産を引き継ぐことができる」と民法で定められている人のことです。法定相続人には、配偶者と血族相続人があります。血族相続人とは、子どもや父母、兄弟姉妹などのことで、血族相続人については相続される順位が民法で定められています。


第1順位

直系卑属。子ども、その代襲相続人。

第2順位

直系尊属。父母や祖父母など。

第3順位

傍系血族。兄弟姉妹、代襲相続人。


第1順位は、直系卑属です。直系卑属とは、被相続人の直系の下の世代のことで、被相続人の子どもとその代襲相続人(孫やひ孫など、子どもに代わる相続人のこと)が該当します。

第2順位は、直系尊属です。直系尊属とは、被相続人の直系の上の世代のことで、被相続人の親や祖父母、曽祖父母などが該当します。

第3順位は、傍系血族です。傍系血族とは、被相続人と同じ祖先から分かれた血族のことで、兄弟姉妹や甥・姪、伯父・伯母などが該当します。


相続財産とは

相続財産とは、被相続人から相続人に引き継がれる財産のことです。相続財産には、以下の2つがあります。

積極財産:金銭的価値がある財産のこと。現預金や固定資産、債券など。

消極財産:借金や買掛金などの負債、地代・家賃の支払い債務、未払いの税金など。

また、被相続人の一身に専属する権利や相続人が固有に取得する権利などは、相続財産には該当しません。例えば、身元保証人としての地位や国家資格、親権などの権利や、生命保険・死亡退職金などの権利は、相続の対象になりません。


相続割合とは

相続割合とは、遺産を引き継ぐ割合のことです。相続割合の決め方は民法で定められており、以下の3つの方法があります。

  • 法定相続分

  • 遺言

  • 遺産分割協議

法定相続分

法定相続分とは、法定相続人が取得する相続割合のことで、民法で以下の通りに定められています。

配偶者

配偶者以外

配偶者

子ども

父母

兄弟姉妹

いる

いない

1

-

-

-

子どもがいる

1/2

1/2

-

-

父母がいる

2/3

-

1/3

-

兄弟姉妹がいる

3/4

-

-

1/4

いない

子どもがいる

-

1

-

-

父母がいる

-

-

1

-

兄弟姉妹がいる

-

-

-

1

出典:国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分

法定相続人の順位によって割合は異なり、順位が高いほど割合は大きくなります。また、同じ順位の相続人が複数いる場合は、その人数で均等に分割します。

遺言

遺言書がある場合は、遺言書の内容に従って相続割合が決定されます。被相続人が指定した相続割合は、法定相続分よりも優先されます。しかし、遺言で定められた相続割合があまりにも不平等な場合は、「遺留分」が認められます。


遺留分とは、特定の相続人に最低限保証されている相続割合のことです。基本的には、法定相続分の半分に定められています。


  • 配偶者と子ども:1/4ずつです。子どもの遺留分は、子どもの人数でさらに分割されます。

  • 配偶者と親:配偶者は1/3、父母は1/6です。両親2人の場合は、1/12ずつ分割されます。

  • 配偶者と兄弟姉妹:配偶者のみ1/2、兄弟姉妹には遺留分は認められていません。


遺言書で決められた相続割合が遺留分を侵害する場合、遺留分相当額を返還請求できます。

遺言分割協議

遺言書が存在しない場合は、相続人の間で協議して相続割合を決定します。相続人の間で合意が得られるのであれば、法定相続分や遺留分に縛られず自由に決めることが可能です。


相続の3パターン

相続には以下の3つのパターンがあります。

  • 単純承認:相続を承認し、全ての財産・権利義務を引き継ぐ

  • 限定承認:債務のうち、正味遺産額を超過した分の支払い責任を負わない

  • 相続放棄:全ての財産・権利義務を引き継がない


限定承認か相続放棄を選択する場合は、相続開始日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し込む必要があります。


相続発生後にやるべきこと


相続発生後に行うことを、一覧にしました。

<相続発生直後>

  • 死亡診断書をもらう

  • 死亡届の提出・火葬許可の申請

  • 埋葬許可証をもらう

  • (ご本人が会社に所属している場合)退職手続き


<相続発生後14日以内>

  • 世帯主変更届の提出

  • 健康保険・介護保険資格喪失届の提出


<葬儀後>

  • 電気・ガス・水道など各種契約の名義変更・解約

  • クレジットカードの解約

  • 運転免許証やパスポートなど各種証明書の返納

  • 年金受給の停止

  • 住民税や固定資産税の請求先変更・未払い分の納付


<相続の関連事項>

  • 相続人の把握

  • 相続財産の確認

  • 遺言書の検認手続き

  • (限定承認・相続破棄の場合は)3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立て


以下では、相続に関連して行うことについて解説します。


相続人の把握

相続人に該当する人が何人いるのかを、事前に把握します。その際は、被相続人および被相続人の両親の、出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取り寄せて確認する必要があります。確認を怠ると、手続き中に想定外の相続人の存在が発覚する場合もあります。その人をのぞいて相続の手続きを行うことはできないため、注意が必要です。


相続財産の確認

前述のとおり、相続財産には固定資産や現預金のようなわかりやすい財産のほかにも、債務や税金の未払い分など、調べなければ分からないものもあります。そのような相続財産が見つかった場合、手続きをやり直す必要があります。相続税の申告にも影響が出るため、相続財産の確認と正確な把握が必要です。


遺言書の検認手続き

遺言書が存在する場合は、その内容に基づいて相続内容を決定します。被相続人が遺言書があることを家族に話していないケースもあるため、遺言書の有無を確認しましょう。

また、遺言書が見つかった場合は、家庭裁判所で検認手続きを行います。遺言書としての要件を満たしているか、偽造されたものではないかなどを確認し、認められたものを遺言書として使用することができます。


検認は、場合により1ヶ月以上かかることがあります。相続手続きをスムーズに進めるため、遺言書が見つかったらすぐに検認の手続きを行いましょう。


なお、以下の場合は検認が不要になります。

  • 遺言書が公正証書である。

  • 被相続人が遺言書を作成した後、法務局で保管していた。

相続税とは


遺産を相続した場合、相続人に対して相続税が発生します。相続税は、遺産総額(積極財産から消極財産を引いた差額)に対して発生し、基礎控除額も定められています。つまり、遺産総額が基礎控除の範囲内だった場合は、課税対象外となります。


相続税の基礎控除額

相続税の基礎控除額は、以下の計算式で算出されます。

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)=基礎控除額


例えば、遺産総額が1億円、法定相続人が2人の場合、基礎控除額は4,200万円となります。

つまり、課税対象となる遺産総額は1億円-4,200万円=5,800万円です。


計算時の注意点

相続税を計算する際は、以下の2点に注意しましょう。

葬式費用は遺産総額から引く

生命保険金の非課税枠を計算する

葬式費用は遺産総額から引く

遺産総額を計算する際は、積極財産から消極財産を引きます。この時、葬儀に関連して発生する費用も、遺産から引くことができます。具体的には、通夜や告別式・葬式の前後に発生する費用で必要だと認められるもの、戒名料、弔問客の車代、手伝いの方への謝礼などが該当します。墓石の購入費用や香典返しなどは対象にならないので注意が必要です。

生命保険金の非課税枠を計算する

被相続人が亡くなったことで支払われる生命保険金は、相続財産には該当しないものの、「みなし財産」として相続税の課税対象になります。生命保険金の受取人が相続人である場合は、非課税枠が認められています。


非課税枠は以下の計算式で算出されます。

500万円×法定相続人の数=生命保険金の非課税限度額


例えば、法定相続人が3人いる場合は、1,500万円までが非課税となり、それを超過する分について課税対象となります。


生前贈与とは


財産を親族に渡す方法として、相続以外に生前贈与があります。相続はご本人が亡くなった後に手続きをするものですが、生前贈与ではご本人が存命のうちに財産を引き渡します。生前贈与では、贈与する相手を自由に選ぶことができるという特徴があります。


生前贈与のやり方

生前贈与は、ご本人自ら行うことができます。以下のような流れで進めましょう。

  1. 生前贈与で渡す財産の内容と、贈与相手を決定する

  2. 贈与相手と協議し、合意を得る

  3. 贈与契約書を作成・押印する

  4. 贈与を行う

生前贈与で渡す財産の内容と、贈与相手を決定する

生前贈与の対象とする財産と贈与相手を決めます。多くの方は、相続税対策として生前贈与を行います。しかし、生前贈与の内容によって、相続税よりも高い贈与税が発生する可能性があります。そのため、生前贈与の内容を決める際は、税理士に相談しながら進めるのが有効です。

贈与相手と協議し、合意を得る

贈与相手の合意を得ることで、生前贈与が成立します。贈与する財産や贈与方法、贈与時期などを話し合い、決定しましょう。

贈与契約書を作成・押印する

贈与契約書を作成・押印し保持しておくことで、生前贈与の存在と内容を証明することができます。ご本人の意向と贈与相手との正確なやりとりを残しておくことでトラブルを防ぎ、税務調査時に暦年贈与の存在を証明できるため、作成しておきましょう。


贈与契約書は、パソコンで作成しても、手書きでも問題ありません。しかし、弁護士に作成を依頼することが確実です。金銭贈与契約書・不動産贈与契約書・株式贈与契約書など、贈与する財産の種類によって契約書を作成しましょう。


贈与税とは


生前贈与の場合、贈与相手に対して贈与税が発生します。贈与税には以下の2種類の課税方法があります。

  • 暦年課税

  • 相続時精算課税

暦年課税

暦年課税は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された額に対して課税される方法です。生前贈与の場合、基本的にはこの課税方法になります。年間110万円までは基礎控除が認められており、それを超えると課税対象となります。そのため、110万円以内の贈与であれば、贈与相手に税負担をかけずに財産を引き渡すことができます。


相続時精算課税

相続時精算課税は、60歳以上の親・祖父母から20歳以上の子・孫に贈与する場合にのみ選択できる課税方法です。申告書を提出することで、特別控除額が2,500万円に拡大されます。贈与者が亡くなった後、贈与価額と相続財産価額の合計額に対して相続税が発生し、相続税として一括して納税する仕組みです。また、相続時精算課税は、控除額内であれば何回でも利用でき、残額を次回以降に繰り越すことができます。

相続時精算課税は、一度選択した場合撤回できません。暦年贈与との併用はできないため、注意が必要です。また、この方法を選択することで「小規模宅地等の特例」も利用できなくなります。小規模宅地等の特例とは、居住用などの宅地を相続する際に、一定の要件を満たしている場合、評価額を減額して税金算定根拠とできる制度です。宅地を相続する場合は、どちらを利用する方がメリットが大きいかを慎重に検討する必要があります。

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まとめ

今回は、ご本人の財産を受け継ぐ相続と生前贈与について、知っておきたい基礎知識を解説しました。特に相続は、相続人や相続割合などが複雑に定められており、手続きに時間がかかります。また、生前贈与を行う際は、相続の場合とどちらがメリットが大きいかを慎重に比較検討する必要があります。スムーズに手続きを行うためには、計画的に進める必要があります。この記事が、相続・贈与についてお話し合いをするきっかけになれば幸いです。

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