老人ホームの身元引受人とは?役割や責任、いない場合の対処法を解説します
老人ホームへ入居する際に、大半の施設で身元引受人が求められます。身元引受人を立てることは、高齢者の生活において考えられるさまざまな状況に対して、施設側が責任を負えない場合や緊急事態などに備えておくために必要不可欠です。
しかし「身元引受人を依頼できる人がいない」と悩む方は少なくありません。この記事では身元引受人の役割や責任、頼める人がいない場合の対処法について解説します。

老人ホームにおける身元引受人とは?

身元引受人とは、本人に何らかの事態が発生したとき、責任をもって身柄の引き受けや手続きを行う方のことをいいます。
老人ホームに入居する方は高齢化に伴って、認知機能や判断力が低下することもあります。また持病を抱えているケースも多く、病状が急変するリスクなども考えられます。そのため身元引受人は、本人に代わって重要な判断や手続きを行ったり、万が一の緊急時の連絡窓口になったりと多くの役割があります。
身元引受人と保証人との違い
老人ホームによっては身元引受人を求めるケースと、保証人を求めるケースがあります。保証人との違いについて解説します。
保証人とは
保証人の中にも「身元保証人」と「連帯保証人」があり、責任の範囲や法律的な立場、役割には違いがあります。
● 身元保証人
本人に代わって治療方針の確認や意思決定、手続きなどを行います。また入居者が施設内で器物破損や誰かに怪我を負わせたなどのトラブルがあった場合にも、責任を持って対応にあたらなければなりません。
● 連帯保証人
連帯保証人は、支払い滞納や損害が発生したときに、金銭的な保証がとわれることになります。
● 身元引受人
入居者が亡くなった場合、身柄や荷物の引き取りを行います。
保証人(身元保証人・連帯保証人)と身元引受人の責任範囲や役割は、上記にように違いがありますが、施設によってはこれらの名称をはっきりと分けずに、すべての役割を担う人を総称して「身元引受人」や「保証人」としているケースがあります。
身元引受人と保証人は兼任できない施設もある
老人ホームによっては、身元引受人とは別に保証人を求める場合があり、両者を兼任できないケースもあります。
両方を別に立てなければならない施設は、入居者の安全や権利を守る役割の「身元引受人」と、支払いや損害などに対する金銭的な責任を負う「保証人(連帯保証人)」に分けて明確化しています。この場合、身元引受人は家族や親族など血縁関係があること、保証人は資産や収入の証明ができることが条件となるケースが多いです。
身元引受人を依頼できる人がいないと悩む方にとっては、保証人を別に立てなければならない状況だと、悩みはより一層増してしまうでしょう。しかし身元引受人や保証人を立てられない場合でも、いくつかの対処法があります。この記事内で詳しく解説していきます。
老人ホームの身元引受人の役割

老人ホームの身元引受人の役割は上記で一部ふれましたが、ここで詳しく紹介します。身元引受人の役割は、大きく分けて以下の5つがあります。
● 本人に代わって意思決定をする
● 本人の代わりに手続きを行う
● 身柄の引き受けをする
● 緊急時の連絡先になる
● 金銭的な連帯保証を負う場合もある
これらの役割について、身元引受人が責任を持って行動をとらなければなりません。
本人に代わって意思決定をする
身元引受人は、本人の意思を尊重しながら、医療や介護に関するさまざまな決定を代行しなければなりません。入居者の高齢化に伴って、認知機能や判断力が低下することもあり、重要な判断が求められるシーンで、本人が意思決定できないという事態が考えられるからです。
治療方針の選択や介護サービスのケアプランなど、本人の心身の状態や希望を考慮し、適切な判断を下すことが求められます。
本人の代わりに手続きを行う
身元引受人は、本人に代わってさまざまな手続きを行う必要があります。認知機能や判断能力の低下はもちろん、身体の状態によっても手続き自体が難しいケースもあります。
老人ホームへの入居時だけでなく、医療機関での手続きや介護保険の申請など、その後の生活においてさまざまな手続きや対応が発生します。身元引受人はこれらの手続きを代行、あるいはサポートする役割があり、書類の準備や関係機関との連絡、煩雑な手続きをスムーズに進めなければなりません。
身柄の引き受けをする
入居者が退去する場合、身元引受人が身柄を引き受ける必要があります。退去手続きや荷物の引き取り、費用の精算、退去後の生活環境を整えるなど、本人の状況に応じた適切な対応が求められます。
また万が一入居者が亡くなった場合も同様です。身元引受人が責任を持って遺体を引き受けるとともに、葬儀の手配や死亡届の提出などの対応も必要になるでしょう。遺留品の管理や遺産相続の手続きなども必要になるかもしれません。
緊急時の連絡先になる
身元引受人は、入居者になにかあった場合に緊急連絡できる窓口の役割もあります。高齢者の場合、持病を抱えている方も多いため、病気が急変する可能性は十分に考えられます。また運動機能の低下による転倒や転落といった事故リスクも低くはありません。急変や事故などの緊急事態に備えて、24時間365日連絡ができる窓口が必要であり、迅速な対応が求められるのです。
また老人ホーム内での生活において、入居者同士のトラブルや器物破損といった問題が起こる可能性もあります。このような事態が発生した場合にも、身元引受人が解決に向けて対応を図ることが求められます。
金銭的な連帯保証を負う場合もある
老人ホームでの生活では、月額利用料や医療費などの支払いが発生します。入居者本人が経済的な事情で支払いが困難になった場合、代わりに支払う責任も求められることがあります。
金銭的な保証をするためには、経済力も問われることになるため、施設によって役割を明確化しているケースもあります。金銭的な連帯保証まで身元引受人が請け負うケースもあれば、身元引受人とは別に「保証人」や「連帯保証人」として別に立てるケースもあります。
老人ホームの身元引受人の条件
老人ホームの身元引受人となるための条件は法律で定められておらず、とくに明確な決まりがあるわけではありません。しかし身元引受人の役割や責任は大きく、これらを果たせる人かどうかが問われます。そのため、以下のような条件を設ける施設が多く見受けられます。
● 家族や親族であること
身元引受人は原則、血縁関係者であることを条件にするケースが多いです。本人に代わって意思決定や手続きなどを、スムーズに対応できるようにするためです。ただしその他の条件を満たすことで、友人や知人でもなれる場合があります。
● 一定額の資産や収入を証明できる
金銭的な保証をする役割があるため、経済状況の確認が行われます。
● 高齢でないこと
身元引受人が高齢者の場合、認められないケースがあります。あまりに高齢だと、将来的に役割や責任を果たせなくなるリスクが考えられるからです。
老人ホーム入居に身元引受人は絶対必要?

老人ホームへの入居には、原則として身元引受人を必要とするケースが多いです。実際に身元引受人を求める老人ホームの割合は、全体の9割以上に及びます。理由はすでに紹介したように、施設側では対応できない事態が起こる可能性が高く、身元引受人が代わって対応することでリスク回避をするためです。
しかし反対の見方をすると、身元引受人がいなくても入居できるケースは一定数あるということです。そのため老人ホームへの入居を諦める必要はありません。
参考:総務省「高齢者の身元保証に関する調査(行政相談契機)」
必要な場合は何人必要?
身元引受人が必要な場合、基本的には1人立てればよいとする施設がほとんどです。しかし施設によっては、意思決定や手続き、トラブル時の対応、身柄の引き受けに関しては「身元引受人」を、経済的な責任に関しては「連帯保証人」を、それぞれ1人ずつ立てなければならないケースもあります。
施設によって必要とする人数は異なるため、入居を希望する際は、身元引受人や保証人の有無、それぞれの条件を確認しておかなければなりません。
身元引受人は途中で変更ができる
老人ホーム入居時に申告した身元引受人は、入居途中に変更することも可能です。たとえば身元引受人が病気になってしまった、経済状況が変わってしまったなどで、役割を果たすことが難しくなることもあるでしょう。このように何らかの事情で身元引受人の変更が必要な場合は、施設側に速やかに報告して新たな身元引受人を立てます。その際は、入居時と同じように身元引受人に関する書類などを提出し、再度契約し直さなければなりません。
身元引受人がいない場合の対処法

身元引受人がいなくても、老人ホームに入居できるケースはあります。ここでは身元引受人がいない場合の対処法について解説します。
身元引受人不要の老人ホームを探す
まずは、身元引受人が不要な老人ホームを探すことが、1つの対処法です。老人ホームのなかには、身元引受人がいなくても入居できる施設は一定数存在します。
総務省が行った調査によると、身元を保証できない場合でも、調査対象の施設全体(病院も含む)の「3.5%」が、保証金の預託などを条件に「入居・入院させる」としています。また身元保証が必要になる場面に応じて、個別対応を図るとした施設は「60.3%」に及び、多くの施設において、身よりがなくても入居者(患者)の状況にあわせて対応する方針であることがわかります。
参考:総務省「高齢者の身元保証に関する調査(行政相談契機)」
そのため、身元引受人が不要な施設をまずは探してみましょう。また必要な場合でも施設によっては、代替の条件をクリアすれば入居できる可能性もあります。
なお、身元引受人が不要な施設、または相談可能な施設は、以下のページから検索可能のため、こちらもあわせてご覧ください。
成年後見制度を利用する
身元引受人がいない場合、成年後見制度を利用すれば入居できる施設もあります。成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などによって、判断能力が不十分な方の保護や支援をするための制度です。成年後見人は法的に権限が与えられ、本人の意思を尊重しながら契約や手続きなどをサポートします。
成年後見制度は「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つの制度があり、以下の点が異なります。
● 法定後見制度:家庭裁判所が後見人を選出する
● 任意後見制度:本人が後見人を選出する
成年後見人は、友人や弁護士、社会福祉士、司法書士などを選出でき、身元引受人が行うような手続きや預貯金を使った契約などの行為や管理が行えます。ただし治療方針の決定までは行えないため、施設側との相談が必要となります。
なお、任意後見制度は本人が元気なうちに、将来に備えて代理で法律行為を行う「任意後見人」を選出しなければなりません。すでに認知機能の低下などが見られる場合は、利用できない点に注意が必要です。
保証会社を利用する
保証会社を利用することも、身元引受人がいないときの対処法です。保証会社は民間企業などが運営しており、身元保証人の役割や財産管理を行うなど、さまざまなサービス内容が用意されています。
ただしサービスの利用内容によって料金が変わるため、不要なサービスまで契約して高額にならないように注意が必要です。必要なサービスは何か、利用料金はどれくらいかかるかを入居希望先の施設へ確認して選択することが大切です。
まとめ
老人ホームでは高齢者が生活するうえでのリスク回避のため、入居時に身元引受人を求めるケースが多いです。高齢化に伴って老人ホームへの入居を考える人も増加している一方で、核家族化や未婚率の増加などの変化から、身元引受人を依頼できないというケースも増えてきています。
身元引受人がいなくても対応してくれる施設もあり、その他にも対処法はありますが、それでも入居できるかどうか不安に感じる方もいることでしょう。その場合は、老人ホーム探しのプロに相談することがおすすめです。
「スマートシニア」は介護・福祉の国家資格を持ったコンシェルジュが、老人ホーム探しをサポートします。相談受付から施設探しなど、すべて無料で対応しますので、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
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