相続に対する疑問を解決!相続対策はいつから?生前贈与とどちらがお得?

相続というと、ご自身が亡くなってから周りが考えるものというイメージがあります。しかし、実は早いうちから考えることには多くのメリットがあります。今回は、相続対策をいつから考えるべきか、生前贈与との違いやどちらがお得かなど、ご自身の相続について気になることを徹底解説します。

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この記事の監修

すぎもと ゆりこ

杉本 悠里子

有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。

相続対策はいつから考えるべき?

ご自身の相続対策はまだ先の話、と考えている方も多いです。しかし、相続対策はできるだけ早いうちから考える必要があります。ここでは、相続対策を早くから進める必要性について解説します。


生前にできる相続対策がある

生前にできる相続対策には、以下の3つがあります。

  • 遺産分割対策

  • 納税資金の準備

  • 相続税の節税


遺産分割対策

遺産分割とは、ご本人が亡くなった後、親族で遺産を分割することです。民法では法定相続人や法定相続分・遺留分などが定められていますが、トラブルを防止するために遺書を作成しておくことも有効です。遺書の内容は、不利なものでない限り、民法で定められている内容よりも優遇されます。

また、財産を分配しやすい状態にしたり、地方の土地や老朽化した不動産など、相続人の負担になるような財産を整理したりすることも有効です。このように、遺産分割の際にトラブルが起こらないよう、そして相続人に負担をかけないよう、前もって対策をしておきましょう。

納税資金の準備

相続税は、原則として相続開始後10ヶ月以内に現金一括で納付することが義務付けられています。相続税の課税対象となるのは、財産を受け継ぐ相続人です。納税資金を準備することで、相続人の負担を軽減できます。不動産を売却して現金化したり、生命保険を活用したりすることが有効です。

相続税の節税

相続税を節税するために、ご本人自らできることもあります。後で詳しく紹介する生前贈与や配偶者控除の利用、養子縁組で相続人を増やすといった方法が考えられます。


亡くなる前3年以内に行われた生前贈与は相続税の対象となる

相続税の節税方法としてよく用いられる生前贈与ですが、亡くなる前3年以内に行った場合、「生前贈与加算」として相続財産に加算されてしまいます。そのため、生前贈与をはじめとした相続対策は、早いうちから検討し、計画的に行う必要があります。


認知症を発症すると相続対策が行えない

認知症を発症すると、ご本人の意思能力が不十分であると判断され、以下のようにさまざまな相続対策が無効となります。

  • 遺言書の作成

  • 生前贈与

  • 生命保険の加入・請求

  • 不動産の売却

  • 口座への振り込み・引き出し・解約

また、法定後見制度では基本的に相続対策が行えない点に注意が必要です。法定後見制度とは、判断能力が低下した方を保護するために、家族が裁判所に申し立て、裁判所が後見人を任命する制度です。後見人は、ご本人に代わってさまざまな法律行為を行います。しかし、この制度はご本人の財産保護を目的としているため、ご本人ではない相続人の利益を守るための相続対策には使用できません。

認知症を患うなどして意思能力が不十分とみなされてしまうと、相続対策は行えません。そのため、ご本人の意向を確認できるうちに相続について検討する必要があります。


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相続と生前贈与の違い

財産を親族に渡す方法として、相続以外に生前贈与があります。相続はご本人が亡くなった後に手続きをするものですが、生前贈与はご本人が存命のうちに財産を引き渡します。生前贈与では、贈与する相手を自由に選ぶことができるという特徴があります。また、相続では相続人に相続税が発生しますが、生前贈与では贈与相手に贈与税が発生します。


生前贈与の方法

生前贈与は、ただ財産を受け渡すだけでは生前贈与とはみなされません。以下のような流れで進めましょう。

  1. 生前贈与で渡す財産の内容と、贈与相手を決定する
  2. 贈与相手と協議し、合意を得る
  3. 贈与契約書を作成・押印する
  4. 贈与を行う

相続と生前贈与はどちらがお得?

相続と生前贈与は、贈与相手や贈与する遺産によって、どちらを選ぶべきかが異なります。そのため、必ずしもどちらがお得、と言い切れるものではありません。しかし、一般的には相続税対策として生前贈与が有効とされます。生前贈与は、上手に活用することで、相続のみを行う場合よりもメリットが大きいです。しかし、生前贈与には同時にデメリットや注意点も存在します。ここでは、生前贈与のメリット・デメリットを解説します。


生前贈与のメリット
・相続税の対象となる財産を減らすことができる

生前贈与では、基本的には「暦年課税」という課税方法が使用されます。暦年課税とは、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された額に対して課税される方法で、年間110万円までは基礎控除が認められています。

つまり、年間110万円以内の贈与であれば、贈与相手に税負担をかけずに財産を受け渡せるのです。例えば、被相続人が現金を500万円持っている場合、生前贈与を行わず全額相続にすると、500万円に対して相続税が発生します。しかし、生前贈与であらかじめ110万円を贈与すると、110万円は贈与税非課税となり、残りの390万円に対して相続税が課税されるのです。

このように、生前贈与を計画的に行い活用することで、相続税の対象となる財産を減らし、相続人への税負担を減らすことができます。

・贈与相手や遺産を自由に選びやすい

生前贈与では、ご本人が贈与相手や生前贈与の対象とする財産を自由に決めることができます。そして、贈与相手の合意を得られた段階で、生前贈与が成立します。

相続の場合、法定相続人や優先順位・相続割合などが民法で定められています。遺言書で贈与相手や割合などは指定できますが、遺言書をもとに相続を行う場合は、基本的には家庭裁判所による遺言書の検認手続きが必要です。また、遺言書で決められた相続割合が遺留分(法定相続人が最低限保証されている相続財産)を侵害する場合、被相続人は遺留分相当額を返還請求できる、などの制限もあります。

このように、相続に比べると生前贈与は贈与相手や遺産・割合などを自由に決めやすいというメリットがあります。


生前贈与のデメリット

生前贈与には以下のようなデメリットがあります。

  • 死亡前3年以内の贈与は相続とみなされる
  • 税務署に認められないケースがある
  • 定期贈与は贈与税課税対象となる

死亡前3年以内の贈与は相続とみなされる

前述のとおり、死亡前3年以内に贈与を行った場合、この贈与は「生前贈与加算」として相続財産に加算されます。そのため、生前贈与を行う場合は何年も前から計画的に実施する必要があります。

税務署に認められないケースがある

生前贈与では、贈与相手の同意が必要です。そのため、贈与契約書を作成するなどして、双方の合意のもと生前贈与が成立していることを立証する必要があります。金銭贈与契約書・不動産贈与契約書・株式贈与契約書など、贈与する財産の種類によって贈与契約書を作成しましょう。

また、贈与の方法により、税務署に生前贈与と認められないケースもあります。以下の3つは生前贈与と認められず、相続税の課税対象となる場合があるので注意が必要です。

  • 現金の手渡し
  • 名義預金の使用
  • へそくり
現金の手渡し

相続にあたって税務調査が行われますが、被相続人の預金通帳に多額の使途不明金が確認された場合、その現金について詳しく調査されます。この時、生前贈与と説明しても、手渡しでは証拠が残らないため否認されてしまいます。否認されると、相続税の対象となるため注意が必要です。現金を贈与する場合は、手渡しではなく証拠が残る銀行振り込みで行いましょう。​

名義預金の使用

名義預金とは、ご本人が子どもや孫など贈与相手名義の口座で預金を行うことです。形式的には贈与相手名義の口座でも、実際の所有者はご本人であるとみなされる場合、口座に振り込んでも生前贈与とはみなされません。生前贈与を行う場合は、名義預金ではなく、贈与相手が自由に使える口座に預金する必要があります。

へそくり

配偶者からもらったお金をへそくりとして貯金している場合、生前贈与の対象にはなりません。民法では「夫婦別産制」といい、夫婦の一方が得た財産は、その一方が単独で有するものとされます。そのため、配偶者が働いて得た財産をへそくりとして貯めても、配偶者の財産であるとみなされます。つまり、へそくりで貯めたお金は、配偶者が亡くなった後相続税の対象となるので注意が必要です。夫婦間であっても、生前贈与を行う場合は必ず贈与契約書を作成しましょう。


定期贈与は贈与税課税対象となる

生前贈与は年間110万円以内であれば贈与税が課税されませんが、毎年一定額を贈与する場合は定期贈与とみなされ、贈与税課税対象となるので注意が必要です。例えば、相続税対策で5年間毎年110万円ずつ贈与する、という取り決めをした場合、合計550万円を5年にわたって贈与するとみなされ、550万円に対して贈与税が発生します。

定期贈与とみなされないためには、贈与の度に贈与契約書を作成することが大切です。また、毎年一定額を贈与しないように工夫する必要があります。


まとめ

今回は、相続対策はいつから考えるべきか、相続と生前贈与はどちらがお得かなど、ご自身の相続について気になる点を解説しました。ご本人の希望や意思を残せるうちに相続について話し合うことが、相続人の負担を減らすことにつながります。相続対策では考えるべきことが多いので、計画的に進めることが大切です。この記事をきっかけに、ご自身の相続について考えてみてはいかがでしょうか。


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