老後資金はいくらあれば安心?年金や老後のお金の増やし方を解説

少子高齢化で年金制度の破綻が懸念される昨今、老後に必要なお金や年金について、不安を抱いている方は多いと思います。定年後の充実した生活のためには、年金制度について理解し、十分な老後資金を用意することが大切です。この記事では、定年後に必要とされる費用や年金の種類と受給額、老後資金を増やす方法について詳しく解説します。


#費用#お金#豆知識
この記事の監修

すぎもと ゆりこ

杉本 悠里子

有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。

老後資金とは?

定年を迎えて退職すると、基本的には収入がなくなり、退職金や貯蓄・年金などで生活することになります。そうしたお金を「老後資金」と呼び、生活費や趣味・娯楽にかかる費用、医療費など、あらゆる場面でかかる費用を老後資金で賄うことになります。


老後のお金はいくらあれば安心?

老後に必要なお金を明確に断言することは難しいですが、1世帯あたりの消費支出の平均データが参考になります。総務省の家計調査報告によると、二人以上の世帯の1世帯あたり消費支出の平均は、1ヶ月あたりで以下の通りです。

  • 40〜49歳:313,691円
  • 50〜59歳:341,916円
  • 60〜69歳:288,312円
  • 70歳以上:226,383円

出典:家計調査報告(家計収支編)2021年(令和3年)平均結果の概要(総務省統計局)

このように、退職後でも退職前の約8割弱の消費支出があり、平均的には月20万円〜30万円はかかることが分かります。また、金融庁金融審議会の報告書では、『高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となっている。』とされています。

出典:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(金融庁)

退職後の暮らしには、生活費や趣味にかかる費用に加え、介護費用や医療費などで意外とお金がかかります。老人ホームに入居する場合、初期費用や月額費用も必要となります。退職後の収入は基本的には年金のみです。そのため、充実した生活を送るためには、老後の暮らしに備えて早いうちから貯蓄しておくことが大切です。

出典:令和4年4月分からの年金額等について(日本年金機構)

国民年金(老齢基礎年金)

国民年金により支払われる年金、つまり老齢基礎年金の場合、20歳から60歳までの480ヶ月分を全て支払っていれば、満額受け取ることができます。満額は年度によって変動があり、日本年金機構によると、2022年度は月額64,816円となっています。

出典:令和4年4月分からの年金額等について(日本年金機構)

厚生年金(老齢厚生年金)年金の種類と特徴

国が管理・運用している「公的年金」と、企業や個人が任意で加入する「私的年金があり、それぞれに種類があります。まずは、年金の種類と特徴を理解することが大切です。

公的年金

公的年金には、主に20歳以上60歳未満の全ての国民が加入する「国民年金」と、会社員や公務員が加入する「厚生年金」の2種類があります。会社員や公務員は、国民年金と併せて厚生年金に加入します。

公的年金は「2階建ての年金」と呼ばれます。国民年金から受け取る年金のことを「老齢基礎年金」、厚生年金から受け取る年金のことを「老齢厚生年金」と言い、厚生年金に加入している方は2つの年金を受け取ることができます。

自営業や専業主婦の方は、国民年金の加入のみとなるため、厚生年金に加入している方に比べて受給額が少なくなります。そのため、年金受給額に不安を抱いている方は、2階部分となる「付加年金」や「国民年金基金」などの制度を利用することが有効です。

その他の公的年金

公的年金には、その他にも「障害年金」「遺族年金」があり、それぞれ納付要件や期間など条件が定められています。

障害年金は、病気や怪我などで障害を負った場合、障害の程度や配偶者の有無などに応じて支給される年金のことです。遺族年金は、国民年金や厚生年金の被保険者、あるいは被保険者であった方が亡くなった場合、その方に生計を維持されていた遺族に支払われる年金のことです。

いずれも国民年金と厚生年金から支払われ、それぞれ支給要件があります。

私的年金

私的年金は、個人で任意に加入し、積み立てていく年金のことです。私的年金には「企業年金」「個人型確定拠出年金(iDeCo)」「国民年金基金」「個人年金保険」などがあります。

企業年金

企業年金は、企業が福利厚生の一環として従業員のために導入する年金制度のことです。

民間の運営管理機関に委託して運営し、高齢期になると内容に基づいて給付を受けることができます。

企業年金には「企業型確定拠出年金(DC)」「厚生年金基金」「確定給付企業年金(DB)」の3種類があります。利用する制度は企業によって異なります。

個人型確定拠出年金(iDeCo)

「個人型確定拠出年金(iDeCo)」は、私的年金制度の1つで、任意に加入することができます。加入することで、公的年金に加えて年金の給付を受けられます。iDeCoでは、預貯金や投資信託、保険商品など、運営管理機関が提示する運用商品の中から加入者が自由に選択し、老後資金を積み立てていきます。

iDecoは、年金受給額が増えるだけでなく、掛金が全額所得控除の対象となります。また、運用益も非課税になります。管理にあたり手数料がかかることや、原則途中解約できず60歳までお金を引き出せないこと、運用実績に応じて受給額が変わることなど注意も必要ですが、税制上メリットが大きい手段と言えます。

国民年金基金

「国民年金基金」は、国民年金基金や、個人事業主の方やフリーランスの方など、厚生年金の対象外である方が任意に加入できる制度のことです。掛金は全額所得控除の対象となり、老齢基礎年金だけでは不安という方には便利な制度です。

個人年金保険

「個人年金保険」は、個人が任意で加入するもので、民間の保険会社などが取り扱う年金商品です。年金保険料を支払い、契約時に定めた年齢に達したら受給することができます。期間や金額を自由に選択でき、保険料は要件を満たせば所得控除の対象となります。


年金はいくらもらえる?

厚生年金により支払われる年金、つまり老齢厚生年金の場合、納付期間や給与・賞与によって受給額が異なります。

日本年金機構によると、『平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準』の場合、2022年度の夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額は、月額219,593円となっています。

出典:令和4年4月分からの年金額等について(日本年金機構)


年金だけで老人ホームの費用は払えるか?

施設の種類
初期費用
月額費用

特別養護老人ホーム

0円

5〜15万円

養護老人ホーム

0円

0〜14万円

介護老人保健施設

0円

8〜14万円

介護医療院

0円

7〜14万円

軽費老人ホーム(ケアハウス)

数十万円〜数百万円

10〜30万円

介護付き有料老人ホーム

0〜数億円

15〜35万円

住宅型有料老人ホーム

0〜数億円

15〜35万円

健康型有料老人ホーム

0〜数百万円

10〜40万円

サービス付き高齢者向け住宅

0〜数十万円

10〜30万円

グループホーム

0〜数十万円

10〜20万円

シニア向け分譲マンション

数千万円〜数億円

10〜30万円

老人ホームの入居にかかる費用は施設によって異なりますが、相場は上の表の通りです。

ご自身の年金で、有料老人ホームで生活をしている方もいらっしゃいます。しかし、決して安くはないため、首都圏を避けるなど費用を抑える工夫が必要です。また、公的施設の利用を検討するのもおすすめです。住宅型有料老人ホームや介護付き有料老人ホームなど民間企業が運営している民間施設は、公的施設に比べて費用が高くなる傾向にあります。年金だけで費用を払いたい場合、公的施設の利用を検討しましょう。

ただし、前述の通り国民年金は厚生年金に比べてもらえる額が少ないため、国民年金だけで老人ホームの費用を払うのはかなり難しいと言えます。まずは年金がいくらもらえるのかを把握し、早いうちから資金計画を立て、老人ホーム探しを始めることが大切です。


老後資金を増やす方法

ここでは、老後資金対策をご紹介します。老後資金を増やすには、大きく3つの手段があります。

  • 公的年金を増やす

  • 資産を増やす

  • ライフスタイルを見直す

公的年金を増やす

公的年金は、老後の暮らしにおいて重要な収入です。

未納期間を確認し、追納できるものは支払いを済ませる

未納期間がある場合、その分年金受給額が減ってしまいます。年金の支払い状況は「ねんきんポータル」を使うことでオンラインで簡単に確認できるので、ぜひ未納期間がないか確認してみてください。未納期間があった場合、2年以内(免除を受けている場合は10年以内)であれば追納が可能です。

厚生年金に70歳まで加入する

多くの方が60歳で定年退職を迎え、厚生年金を脱退します。厚生年金は70歳まで加入することができるため、受給額を増やしたい場合は、できるだけ長く働いて厚生年金加入期間を増やすという手段もあります。

年金の受給開始を繰り下げる

公的年金は、受給タイミングの繰り上げ・繰り下げが可能です。原則は65歳から受給開始ですが、60歳〜64歳に繰り上げたり、65歳〜75歳に繰り下げることができます。繰り下げることで、年金受給額がアップします。2022年4月から75歳までの繰下げが可能になり、受給額を最大で84%アップさせられるようになりました。

勤労収入で生活する期間を伸ばし、受給開始を繰り下げることも1つの手段となります。

資産を増やす

公的年金以外にも、資産を増やすことで、老後資金を増やすことができます。資産運用は早いうちから検討・開始することが大切です。

個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入する

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、前述の通り私的年金制度の1つで、加入することで、公的年金に加えて年金の給付を受けられます。iDeCoは任意に加入することができ、運営管理機関が提示する様々な商品の中から、自由に選んで積み立てることができます。

iDeCoは、年金受給額が増えるだけでなく、掛金が全額所得控除の対象となり、運用益も非課税になるなど、税制上メリットが大きい制度です。2022年5月から65歳まで積み立て可能になりました。iDeCoは、運営管理機関によって加入や口座維持にかかる手数料、運用商品が異なります。加入を検討する際は、複数社比較検討することがおすすめです。

つみたてNISA(積立NISA)を利用する

つみたてNISAは、iDeCoのように資金の積み立てができる制度です。iDeCoと同様に税制上のメリットを受けることもできます。運用商品は投資信託のみですが、加入や口座維持にかかる手数料が必要なく、投資初心者の方にも運用しやすい制度となっています。

つみたてNISAには年齢の上限がなく、最長20年間投資することができます。こちらもiDeCoと併せて検討してみてください。

参考: 保険特化Q&Aサービス|ほけん知恵袋

ライフスタイルを見直す

ここまで、年金受給額や資産を増やす方法をお伝えしましたが、老後資産を増やすためには不要な生活費を削ることも有効です。早いうちに家計を見直し、支出の無駄を減らすよう工夫することが大切です。まずは、車のような固定資産や通信費・生命保険など、固定費の見直しから始めることがおすすめです。

また、定年後は物価の安い地方に移住して生活費を安く抑えるという方法もあります。就業地に縛られず、好きな場所で暮らすことは定年後の醍醐味です。都会の喧騒から離れ、自然豊かな場所でゆったり暮らすこともおすすめです。

まとめ

この記事では、定年後にかかるお金や年金の種類、老後資金を増やす方法について説明しました。定年後の暮らしには何かとお金がかかります。まずは年金について理解し、私的年金制度の利用や資産運用など、老後資金を増やす取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。また、老人ホームへの入居を検討される場合は、早めに資金計画を立て、老人ホーム選びを進めることが大切です。この記事が、定年後の豊かな暮らしを考えるきっかけとなれば幸いです。

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