老人ホームの利用料に消費税はかかる?介護サービス利用料と消費税の関係

老人ホームやそのほかの介護サービスを利用する際、消費税はかかるのか、気になっている方もいらっしゃるでしょう。公的な介護施設や介護保険対象サービスの利用料は、基本的には非課税です。ただし、消費税が課税される老人ホームや一部サービスも存在します。

今回は、老人ホームや介護サービスの利用料に消費税はかかるかについて、消費税非課税となる介護サービスや消費税が課税されるサービスなどを解説します。金額が大きくなれば、その分消費税も無視できない金額になります。介護サービスの利用料と消費税の関係については、必ず理解しておきましょう。


#老人ホーム#費用#お金
この記事の監修

すぎもと ゆりこ

杉本 悠里子

有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。

老人ホームの利用料に消費税はかかる?

老人ホームの入居や食事にかかる費用など、老人ホームで提供されるサービスの多くが、基本的には消費税の課税対象外です。

消費税法では、課税対象になる取引であっても、一定の条件下で非課税となる、と定められています。この条件とは、社会政策的に課税は適当でないと判断されるものであり、社会保険医療の給付や学校教育などが該当します。

老人ホームの利用料や介護サービスの利用料は、一定の条件下に該当するため、消費税は非課税です。

しかし、介護サービスに関する費用のすべてが消費税非課税というわけではありません。たとえば、民間の有料老人ホームを利用する際にかかる費用は、消費税の課税対象となります。このように、一部の費用には消費税が課税されるため、注意が必要です。


消費税非課税となる介護サービス費用

具体的に、以下のような費用は消費税の課税対象外となります。

<施設系サービス>

  • 特別養護老人ホーム

  • 介護老人保健施設

  • グループホーム

  • 介護医療院

<居宅サービス>

  • 訪問介護

  • 訪問入浴介護

  • 訪問看護

  • 訪問リハビリテーション

  • 居宅療養管理指導

<通所サービス>

  • 通所介護

  • 通所リハビリテーション

  • 短期入所生活介護・短期入所療養介護

  • 特定施設入居者生活介護

参考:国税庁「第7節 社会福祉事業等関係」

上記のとおり、特別養護老人ホームやグループホームといった公的介護施設については、居住費用や食事代などが非課税となります。ただし、介護付き有料老人ホームや住宅が有料老人ホームなど、民間の介護施設において発生する様々な費用については、消費税の課税対象となるため注意が必要です。

また、食事代やおむつ代など、介護保険サービスと同時に提供されるサービスにかかる費用についても、消費税は課税されません。


消費税課税対象となる介護サービス費用

前述のとおり、民間の老人ホームにかかる費用は消費税課税対象となります。

さらに、以下のような費用については、消費税課税対象となるため理解しておきましょう。

  • 福祉用具の貸与・購入にかかる費用

  • 住宅のバリアフリー改修にかかる費用

  • 事業区域外の事業所を利用する際の交通費・送迎費用

  • 介護保険外サービスにかかる費用

  • 利用者が希望した特別な食事・居室にかかる費用

  • 訪問入浴介護の浴槽水

介護保険の対象となるサービスでも、消費税が課税されるものがあるため、注意しましょう。ここでは、それぞれの費用について解説します。

福祉用具の貸与・購入にかかる費用

車椅子や介護用ベッドなど、介護に必要な福祉用具の貸与や購入にかかる費用は、基本的には消費税の課税対象となります。こうした費用は、要介護者に直接実施する介護サービスとは異なり、要介護者以外が使用する可能性が否定できないためです。

特にレンタルの場合、レンタル代を支払うたびに消費税が課税される点には注意が必要です。消費税についても考慮したうえで、予算を考えましょう。

ただし、例外的に、身体障害者用物品の貸与や販売にかかる費用は、非課税となります。

住宅のバリアフリー改修にかかる費用

手すりの設置や段差解消といった住宅のバリアフリー改修にかかる費用も、介護保険の対象となる一方で、消費税の課税対象です。バリアフリーリフォームを検討する際は、消費税についても考慮しましょう。

費用負担をなるべく抑えてバリアフリー改修を行いたい場合は、自治体が運営する補助金を利用したり、減税制度を利用したりすることが有効です。

事業区域外の事業所を利用する際の交通費・送迎費用

介護保険サービスでは、事業者のサービス提供区域が定められています。事業区域外の事業所を利用する際、介護サービスの利用にかかる費用は非課税です。しかし、事業所に向かうための交通費や送迎費用は、全額自己負担となり、消費税も課税されます。

遠方の事業所が提供する介護サービスを利用したい場合は、移動にかかる費用が高額になる可能性があるため、注意が必要です。

介護保険外サービスにかかる費用

以下のようなサービスは、介護保険の適用範囲外であり、介護保険の対象外であると同時に消費税も課税されます。

  • 家事支援サービス

  • 認知症の方の見守りサービス

  • 健康支援サービス

食事や掃除、洗濯、買い物といった日常生活を支援するサービスや、外出時の付き添い、手続き代行といったサービスは、介護保険の適用範囲を超え、消費税の課税対象です。

また、認知症の方の生活状況や徘徊を見守るサービスについても、介護保険対象外であり、消費税が課税されます。

さらに、体操や簡単なスポーツを通して健康を支援するサービスについても、日常生活を送るうえで必要以上のサービスであるとみなされます。

利用者が希望した特別な食事・居室にかかる費用

特別な食事や居室、嗜好品など、日常生活を送るうえで不可欠な費用ではなく、利用者の好みによるものについては、介護保険の対象外となり、消費税も課税されます。この場合、介護保険の範囲内のサービスを利用した場合との差額が、課税対象となります。

訪問入浴介護の浴槽水

訪問入浴介護においては、利用者の自宅の水道を利用するのが基本です。しかし、利用者が炭酸温泉を希望した場合など、訪問入浴介護事業者が特別に浴槽水を用意するケースでは、浴槽水には消費税が課税されます。


有料老人ホームによっては、食事に軽減税率が適用される

有料老人ホームでとる食事にかかる消費税は、基本的には10%です。しかし、一定の条件を満たした施設については、軽減税率である8%の消費税が課税されます。

軽減税率が適用されるのは、老人福祉法29条1項による届出が行われている介護施設です。介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームのほか、サービス付き高齢者向け住宅も該当します。

さらに、「1食あたり640円(税抜)以下 かつ 1日3食累計が1,920円(税抜)以下」という限度額の条件をクリアしなければなりません。累計を求める計算では、原則時系列順に加算していきます。

たとえば、1日3食がそれぞれ500円(税抜)である場合、1食あたりの限度額と3食合計の限度額を両方クリアしているため、軽減税率が適用されます。そのため、1食は540円(税込)となります。

一方、朝食と昼食が500円(税抜)、夕食が900円(税抜)の場合は、夕食が1食あたりの限度額を超えているため、夕食のみ10%の消費税が課税されます。

なお、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療院、軽費老人ホーム、グループホームといった施設では、食事にかかる費用は課税されません。

書面で軽減税率の対象を指定している場合もある

ただし、食事のうち軽減税率の対象となるものを事前に書面で明記している場合は、対象となる食事の累計額が軽減税率の対象となり、それ以外には10%の消費税が適用されます。

たとえば、書面で「朝食・昼食・夕食を軽減税率の対象とする」と定めている場合、限度額の条件を満たしていれば、3食が軽減税率の対象となります。しかし、おやつの金額が640円(税抜)以下であっても、おやつは標準税率10%となります。この場合、累計額の計算ではおやつは含まれません。


介護サービス事業者は仕入れ消費税控除を受けられない

仕入れ消費税控除とは、課税事業者が納めるべき消費税を計算する際に、売上にかかる消費税から仕入れにかかった消費税を差し引いて計算することによって、消費税の二重課税を防ぐための制度です。たとえば、100円で仕入れた商品(税率10%)を200円で販売する場合、仕入時にすでに消費税を支払っているため、売上200円にかかる消費税20円ををそのまま納めてしまうと、二重で納税することになります。そのため、差額の10円を納めればよい、という仕組みです。

仕入れ消費税控除は多くの事業者に適用されますが、介護サービス事業者は仕入れ消費税控除を受けられません。なぜなら、介護サービスは原則消費税が非課税であるためです。しかし、食材の仕入れ費や水道光熱費など、サービスを提供するためにかかる費用については、消費税の課税対象となります。そのため、介護サービス事業者は、仕入れ消費税控除が適用されれば控除される消費税をすべて負担しています。

介護サービスの利用と消費税に関するよくある質問

最後に、介護サービスの利用と消費税に関するよくある質問と、その回答を3つご紹介します。

  • 介護サービスの自己負担分に消費税は課税される?

  • 介護保険適用外のサービスに消費税は課税される?

  • 消費税は介護保険の給付範囲内?

介護サービスの自己負担分に消費税は課税される?

介護保険では、所得の割合に応じて、自己負担額1〜3割で一定の介護サービスを利用できます。この自己負担額に、消費税は課税されるのでしょうか。

自己負担額についても、消費税は課税されません。つまり、本来利用料が3,000円かかる介護サービスを自己負担1割で利用した場合、自己負担額300円分についても、消費税は課税されません。

介護保険適用外のサービスに消費税は課税される?

支給限度額を超えて介護サービスを利用する場合や、そもそも介護保険適用外のサービスを利用する場合、全額利用者の自己負担となります。このとき、消費税は課税されるのでしょうか。介護保険適用外のサービスのうち、おむつ代や食費、理美容代といった日常生活に関わる費用については、消費税非課税となります。

一方、特別な食事・居室にかかる費用や嗜好品といった、日常生活を送るうえで不可欠な費用ではなく、利用者の好みによるものについては、消費税が課税されます。

消費税は介護保険の給付範囲内?

介護サービスの利用にかかる消費税は、介護保険の給付範囲内となるのでしょうか。

前述のとおり、介護サービスの内容によって、消費税の課税・非課税は異なります。そのため、消費税は介護保険の給付範囲内には入りません。


まとめ

今回は、老人ホームや介護サービスの利用にかかる消費税について解説しました。公的な介護施設や介護保険サービスの利用については、基本的には消費税はかかりません。ただし、民間の老人ホームや一部の介護保険サービス、介護保険対象外のサービスのうち、生活に必ずしも必要ではない費用などは、消費税が課税されるため注意しましょう。わかりにくい部分については、担当のケアマネージャーに確認してみるのが安心です。

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