まだ元気なのに介護保険料の支払い?最新の介護保険料と利用できるサービス内容、利用の仕方を解説!

「なぜ介護保険料を支払うの?」「40歳から支払いが始まるのは早くない?」このように感じたことはありませんか?

介護保険制度において、40歳から(一部除く)介護保険料の支払いが始まります。介護保険料を支払うことで、介護保険サービスを1〜3割の自己負担で利用できるしくみです。

今回は介護保険料について詳しく紹介します。また、受けられるサービスや介護保険料のしくみについても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

#施設サービス#在宅サービス#お金#制度
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

介護保険料とは

40歳以上の健康保険加入者と65歳以上は支払いの義務がある

介護保険料は40歳(健康保険加入者)から支払いが始まり、生涯納付義務があります。介護保険料は3年に1度改定され、年々増加傾向にあります。令和3年改定時では全国平均額は6,014円です。介護保険料の値上がりについては、少子高齢化や介護保険サービスの報酬の増加が原因と言えるでしょう。

また、地域により価格差があり、介護保険料が低いところでは3,000円程度、高いところで9,000円程度と約3倍の違いがあります。介護保険料は、40歳以上65歳未満と65歳以上で異なります。40歳以上65歳未満の場合は、加入している医療保険によって納付する介護保険料が変動するため、確認していきましょう。

【40歳以上65歳未満】

40歳以上65歳未満の介護保険料は、健康保険の種類により、大きく2つの違いがあります。

  • 会社の健康保険加入者

  • 国民健康保険加入者

会社の健康保険加入者は、標準報酬月額(毎年4〜6月の平均給与額を標準報酬月額表に当てはめて算出)により、納付する介護保険料が決まります。収入が多いと、その分、納付する介護保険料が上がる仕組みです。標準報酬月額表は、都道府県や加入している健康保険組合によって異なるため、収入が同じでも地域や会社が違うと差が出ます。

また、会社員は会社側で介護保険料を折半してもらえるため、納付する料金は個人事業の方と比べると少ない傾向です。家族の扶養に入っている場合は、保険料を納める必要はありません。

自営業などで、国民健康保険に加入している方は、所得に応じて介護保険料が異なります。また、世帯の被保険者数などに合わせて市区町村の定めた介護保険料が決定します。

【65歳以上】

65歳以上になると、健康保険加入の有無に関わらず介護保険料の納付が義務付けられます。介護保険料は前年度の所得から計算し、各市区町村の定めた基準額に当てはめて計算します。

介護保険料のしくみ

市区町村によって介護保険料は異なる

介護保険料は介護保険サービスの介護給付費に補填され、利用する人の負担を軽減できるしくみです。介護給付費は、国・都道府県・市区町村・介護保険料によって、まかなわれています。 

介護保険料は、住まいの市区町村により金額が異なります。理由として、介護保険を利用する人の数や、介護サービスで給付される金額が異なるためです。そのため、介護サービスの需要が多い地域では介護保険料が高く設定される傾向にあります。

また、介護保険料は収入が多いほど納付額が高くなるしくみとなっており、納付額は、所得に応じて6~16段階まで設けられています。

東京都北区の介護保険料と所得の段階は以下の通りです。

所得段階

該当する方(条件)

年額

第1段階

世帯全員

住民税

非課税

生活保護を受給者

老齢福祉年金受給者

本人の前年の課税年金収入額と

 合計所得金額の合計が80万円以下

36,700円

第2段階


本人の前年の課税年金収入額と

 合計所得金額の合計が120万円以下

48,400円

第3段階

第1段階および第2段階以外

52,800円

第4段階

本人の住民税非課税


世帯員住民税課税

本人の前年の課税年金収入額と

 合計所得金額の合計が80万円以下

63,100円

第5段階

第4段階以外の方

73,400円

第6段階

本人住民税課税

前年の合計所得金額が、

 125万円以下

88,000円

第7段階

前年の合計所得金額125万円~200万円

99,000円

第8段階

前年の合計所得金額125万円~200万円

117,400円

第9段階

前年の合計所得金額300~500万円

124,700円

第10段階

前年の合計所得金額500~800万円

146,700円

第11段階

前年の合計所得金額800~1,100万円

161,400円

第12段階

前年の合計所得金額1,100~1,500万円

183,400円

第13段階

前年の合計所得金額1,500~2,000万円

205,400円

第14段階

前年の合計所得金額2,500~3,000万円

227,400円

第15段階

前年の合計所得金額2,500~3,000万円

242,100円

第16段階

前年の合計所得金額3,000万円~

256,800円

参考URL:https://www.city.kita.tokyo.jp/kaigo/kurashi/hoken/kaigo/genmen/osamekata.html

課税年金収入額とは、国民年金・厚生年金など課税対象となる年金収入額で、障害年金・遺族年金・老齢年金は含みません。住所地の介護保険料が知りたい場合は、市区町村のホームページで確認すると良いでしょう。

3.介護保険料の支払い方法

介護保険料の支払いにはスマホ決済が使える

介護保険料の支払いには、大きく分けて「給料や年金からの天引き」と「自分で支払う」2つの方法があります。

40歳以上65歳未満の会社員の場合、介護保険料は毎月の給料から天引きされます。40歳の誕生日を迎える月から開始しますが、1日生まれの人は誕生日前月から徴収が始まるため、注意しましょう。理由として、40歳を迎える誕生日の前日が起算日となるためです。例えば、7月1日生まれの方は、6月30日から起算となり、6月から徴収が始まるしくみになります。

自営業の場合は、口座振替や、銀行・コンビニなどで納付書を持参して、国民健康保険料とともに支払います。支払い時にはスマホ決済も可能です。

65歳になると第1号被保険者となるため、支払い方法が変わります。年金の受給額により、年金から天引きされる特別徴収と、口座振替や銀行・コンビニで支払う普通徴収の2つに分かれます。年金から天引きの場合は、自動的に切り替わるため、特別な手続きは必要ありません。年間の年金受給額が18万円以下の方は普通徴収になるため、支払いには注意が必要です。また、年金受給は2ヶ月に1回のため、介護保険料は2ヶ月分天引きされます。

最近では自治体により、スマホ決済が可能です。利用できる決済は自治体により様々で、東京都北区の場合はPayPay (電子マネー)・LINE Pay (電子マネー)・モバイルレジ(ネットバンキング、クレジットカード)があります。

他の自治体では以下の対応が可能です。

東京都(一例)

決算可能なツール

渋谷区

au PAY・d払い・J-Coin・LINE Pay・PayB・PayPay・銀行Pay・FamiPay

黒田区

LINE Pay・PayPay・d払い・auPay・J-CoinPay

中野区

PayPay・LINE Pay・LINE Pay・d払い・J-coin Pay

新宿区千代田区板橋区荒川区中野区大田区

PayPay、LINE Pay、auPAY、d払い、J-Coin Pay

目黒区

Pay-easy

足立区

LINE Pay・PayPay

練馬区

モバイルレジ・モバイルレジクレジット・LINE Pay ・PayPay・au PAY・d払い

上記のように支払い方法が異なるため、お住まいの自治体に確認すると良いでしょう。スマホ決済では、アプリを起動し、バーコードを読み取り、決済へと進みます。領収書などの発行はされないため、2重払いに注意が必要です。

支払った介護保険料は、社会保険料控除の対象になるため、忘れずに確定申告すると良いでしょう。

4.生活保護受給者の介護保険料

65歳以上の生活保護受給者は介護保険料の支払い義務がある

40歳以上65歳未満の生活保護受給者の場合、介護保険料の支払いはありません。正確には、生活保護受給者は医療保険を脱退する必要があり、介護保険料を納める第2号被保険者になれないため支払えないのです。

しかし、65歳以上の場合は、生活保護受給者も第1号被保険者となるため、支払義務はありますが、生活保護費の生活扶助費でまかなわれます。

40歳以上65歳未満の生活保護受給者は実質、無保険状態となりますが、介護が必要になった場合(特定疾病の発症で要介護認定を受けた場合)は、生活保護費で介護サービス費用がまかなわれるため、安心して利用できます。

5.保険料の支払いを滞納したら?

介護保険が利用できずペナルティがある

介護保険料には支払い期間があります。期間内に支払いできない場合は様々なペナルティがあるため、注意が必要です。ペナルティについては、以下の表で確認しておくと良いでしょう。

未払いの期間

対応

1年未満

督促状が届きます。延滞金や督促手数料をあわせて請求されます。

1年以上1年半未満

介護保険サービス利用時に全額(10割)支払いになります。滞納した分の支払いをして、申請するとサービス利用料の7〜9割が払い戻されます。

1年半以上経過2年未満

介護保険サービス利用時に全額(10割)支払いになります。滞納した分の支払いをしても、利用料は帰ってきません。

2年以上

2年経過すると後払いができず、未納となります。自己負担割合が3〜4割の請求になり、高額介護サービス費制度の利用ができなくなるため注意が必要です。

介護保険料の滞納が長期に渡る場合は、財産の差し押さえが行われた事例もあります。2019年度では、2万人を超える方が差し押さえの処分を受けています。

厚生労働省:介護保険最新情報Vol.1017

また、収入が大きく減少したり、災害に遭った場合などは、支払いが軽減や免除、または期限を延長することができます。、介護保険料が支払いできない事情を市区町村の窓口で相談してみると良いでしょう。

申請方法は市区町村ごとに異なるため、必要となる書類の確認が必要です。収入の減少が理由の場合は、証明できる書類が必要となるため、根拠となるものは手元においておくと良いでしょう。

介護保険料は給与や年金から天引きされる場合が多く、基本的に払い忘れのないしくみが設けられています。しかし、年金が年額18万円以下や自営業で国民健康保険を支払う方は、払い忘れがないように注意してください。

6.利用できる介護保険サービス

介護保険サービスは様々なものが利用できる

介護保険サービスを利用したサービスは様々なものがあります。サービスの種類は、在宅サービス・施設サービス・地域密着型サービスの3つに分けられます。それぞれで利用できるサービスをみていきましょう。

【在宅サービス】

サービス名

内容

訪問介護

利用者の自宅を訪問して、入浴・排泄・食事などの身体介護や、掃除・調理・買物などの生活支援を提供します。要介護認定を受けた人が利用できます。

訪問入浴

利用者の自宅を訪問し、入浴介助を行います。介護職と看護師の3名体制で訪問します。移動可能な浴槽を持ち込むため、浴室がない家でも利用可能。要介護・要支援の認定を受けている人が利用できます。

訪問看護

看護師が利用者の自宅を訪問し、処置や薬の管理などを行います。必要に応じて入浴や排泄介助も行います。要介護や要支援の認定を受けた人が利用できます。

訪問リハビリ

理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)などが利用者の自宅を訪問し、医師の指示のもとリハビリを実施します。要介護や要支援の認定を受けた人が利用できます。

通所介護

(デイサービス)

デイサービスセンターなどに通い、食事や入浴、レクリエーションなどを受けるサービスです。要介護認定を受けた人が利用できます。

通所リハビリ

(デイケア)

介護老人保健施設などに通い、リハビリテーションを受けるサービスです。個別リハビリや集団リハビリに加え、マシンを使ったリハビリを行える事業所もあります。要介護や要支援の認定を受けている方が対象です。

ショートステイ

特別養護老人ホームや介護老人保健施設などで、宿泊ができるサービスです。要介護や要支援の認定を受けた方が利用できます。

福祉用具貸与

車椅子や介護用ベッドなどのレンタルができるサービスです。貸与は要介護や要支援の認定を受けた方が利用できますが、商品の中には、介護度によって貸与できない場合もあります。

福祉用具の購入

毎年4月1日〜翌年3月末日までの1年間で10万円(税込)を上限に、1〜3割の費用負担で購入可能です。要介護の認定を受けた方が利用できます。

住宅改修

住宅に手すりを設置する・浴室の段差解消などを行う際に、20万円(税込)まで1〜3割の費用負担で利用できます。20万円に達するまで、数回に分けて使うことができますが、20万円を超えた分は自費となります。

ケアマネジャー

利用者一人ひとりに担当ケアマネジャーがつき、介護保険サービスを利用するためのサービス計画を作成します。

続いて、施設サービスをみていきましょう。

【施設サービス】

サービス名

内容

特別養護老人ホーム

(特養)

自宅での介護が難しく、長期にわたって入所したい方が利用します。終身まで利用できることから「終の棲家」と呼ばれます。

介護老人保健施設

(老健)

病院から退院後、リハビリテーションを目的に入所する方が多いです。長期間の利用には向かず、在宅復帰を目的としている施設も多いです。

介護医療院・介護療養型医療施設

病院と介護施設の中間施設で、介護と医療を一体的に提供する施設です。介護療養型医療施設は令和5年3月でサービスの終了が決まっており、今後は介護医療院に転換予定です。

続いて地域密着型サービスについてみていきましょう。

【地域密着型サービス】

サービス名

内容

定期巡回・随時対応型訪問看護介護

1日に複数回の訪問と適宜サービスが必要な方が利用します。定期的に介護職や看護師が訪問し、安否確認を行います。24時間体制で随時対応できるサービスです。要介護の認定を受けた方が利用できます。

地域密着型通所介護

18名以下で運営する小規模型のデイサービスです。要支援の方は利用できません。

療養通所介護

(療養型デイサービス)

医療的ケアが必要な難病・認知症・脳血管疾患後遺症などの方やがん末期患者を対象としたデイサービスです。要介護の認定を受けた方が利用できます。

(看護)小規模多機能型居宅介護

(看護)小規模多機能型居宅介護は、通いを中心に泊まりや訪問を組み合わせたサービスです。1ヶ月定額のサービスで、状況に合わせて利用頻度やサービスの組み替えが可能です。

看護小規模多機能型居宅介護では、看護師が常駐しているため、医療的ケアが必要な方でも利用可能です。要介護の方であれば利用できます。

認知症対応型通所介護

(認知症対応型デイサービス)

認知症と診断された方のみを対象にしたデイサービスです。

認知症対応型共同生活介護

(グループホーム)

認知症の診断を受けた方が利用できる施設です。1つのユニットが9名以下と定めがあり、最大2ユニット18名が上限となっています。要支援2以上の方から利用できます。

介護保険で利用できるサービスは、こちらの記事「介護保険のサービス内容」で詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

7.まとめ

介護保険料は65歳以上と、40歳以上64歳未満の方で健康保険加入者は支払いの義務があります。自営で国民年金保険に加入している方も支払いが必要です。天引きでの納付ではない場合は、支払い忘れに十分に気を付けてください。

支払いが滞ると様々なペナルティを受ける可能性があるため、注意が必要です。保険料や段階については各市区町村の決まりがあるため、確認しておくと良いでしょう。

今回の記事が介護保険料の理解につながれば幸いです。

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