介護保険料とは?納付期間や計算方法など基本を解説!

40歳を超えると公的な「介護保険」に加入することになります。それに伴い「介護保険料」を納めることになりますが、いったい納付は「いつから」始まり、「いくら」納めることになるのか、疑問に感じている方もいるでしょう。そこでこの記事では、介護保険料の基本について徹底的に解説します。介護保険料をいくら払うのか知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

介護保険料とは?納付期間や計算方法など基本を解説!
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「介護保険料」とは?


日本には、「介護保険制度」というものがあります。介護保険は老齢年金と同じく賦課制度で運用されており、そのときどきの対象世代から集めたお金で、高齢者の介護サービス費用をまかなう制度のことです。(ただし介護保険の運用財源は公費5割・保険料5割であり、全額が保険料で賄われているわけではありません)

40歳以上の方は、この介護保険制度へ加入することが義務付けられています。そして介護保険料とは、先述した「現役世代から集めるお金」のことです。会社員の場合、他の社会保険料(年金・健康保険など)と同じく給与から徴収されています。
なお、介護保険料は将来的な給付(介護サービス)を受けるための「対価」としての性質を持つため、あくまでも税金ではありません。そのため納税時の所得計算においては、対象年に支払った保険料全額を社会保険料控除として申告できることも覚えておきましょう。

介護保険料はいつまで支払う?

さて、介護保険料は40歳から支払い義務が生じるとして、何歳から何歳まで払うのか、疑問に感じている方もいるでしょう。実は40歳を迎えた後、介護保険料は一生支払われなければなりません。原則としては、たとえ介護が必要な状態になったとしても、無職になったとしても、介護保険料は納めなければならないのです。ただし条件を満たせば、納付を減免してもらうことも可能です。介護保険料の支払いが免除・減額されるケースについては記事後半で詳しく解説します。

 

介護保険料はいくら払うの?


介護保険料の納付額を知るためには、まず介護保険制度の「被保険者」の種類について知らなくてはなりません。介護保険制度では、年齢に応じて被保険者を次のように分類しています。

比較項目

第1号被保険者

第2号被保険者

対象者

65歳以上の方

(65歳になった月から保険料の徴収開始)

40歳以上65歳未満の医療保険加入者

(40歳になった月から徴収開始)

受給要件

要介護状態

要支援状態

要介護・要支援状態が、老化に起因する疾病(特定疾病)による場合のみ

保険料の決まり方

保険料基準額×所得などに応じた乗率

(市区町村が決定)

国民健康保険に加入している方:市区町村が決定

会社員の方:標準報酬月額・標準賞与額×介護保険料率

保険料の徴収方法

市町村・特別区が徴収

 (原則として年金からの天引き)

医療保険料と一体的に徴収

参考:厚生労働省|介護保険制度について

それぞれの被保険者ごとに、介護保険料の計算方法や平均額について見ていきましょう。

第1号被保険者の場合

65歳以上の「第1号被保険者」の納付額は、保険者(市区町村など)ごとに設定する「保険料基準額」に、所得区分ごとに設けられた特定の「乗率(倍率)」をかけて算出することが特徴です。乗率は下記の13段階に分けられています。

段階

乗率

主な対象者・収入条件例

第1段階

0.285※

生活保護受給者

世帯全員が市町村民税非課税の老齢福祉年金受給者

世帯全員が市町村民税非課税かつ本人の年金収入等が80万円以下(令和7年の見直し後は80.9万円)

第2段階

0.485※

世帯全員が非課税+本人の年金収入等80万円超~120万円以下

第3段階

0.685※

世帯全員が非課税+本人の年金収入等120万円超

第4段階

0.9

本人が市町村民税非課税(世帯に課税者がいる)かつ本人の年金収入等が年金収入等が80万円以下(令和7年の見直しは80.9万円)

第5段階

1.0

本人が市町村民税非課税(世帯に課税者がいる)かつ本人の年金収入等が年金収入等が80万円超(令和7年の見直し後は80.9万円超)

第6段階

1.2

市町村民税課税かつ合計所得金額が120万円以下

第7段階

1.3

市町村民税課税かつ合計所得金額が210万円以下

第8段階

1.5

市町村民税課税かつ合計所得金額が320万円以下

第9段階

1.7

市町村民税課税かつ合計所得金額が420万円以下

第10段階

1.9

市町村民税課税かつ合計所得金額が520万円以下

第11段階

2.1

市町村民税課税かつ合計所得金額が620万円以下

第12段階

2.3

市町村民税課税かつ合計所得金額が720万円以下

第13段階

2.4

市町村民税課税かつ合計所得金額が720万円超

参考:厚生労働省|介護保険料等における基準額の調整について(※は公費軽減後の最終乗率)

令和6年度から令和8年度の3年間の全国平均基準額は月額6,225円であるため、たとえば第4段階の方の介護保険料は月額6,225円×0.9=5602.5円と計算できます。

第2号被保険者の場合

40歳以上65歳未満の「第2号被保険者」の介護保険料の計算方法は、加入している医療保険によって異なります。国民健康保険に加入している場合、次の4つの項目を各自治体の判断で組み合わせて算出されることが特徴です。

所得割

世帯加入者の前年の所得に応じて算出

均等割

世帯加入者の被保険者数に応じて算出

平均割

一世帯ごとに算出

資産割

世帯加入者の固定資産税額に応じて算出

これら全てを組み合わせる自治体もあれば、所得割・均等割・平均割の3つ、もしくは所得割・均等割の2つのみを組み合わせる自治体もあり、納付額は一概に決まるわけではありません。

 

 

一方、協会けんぽなどに加入している会社員などの場合、給与にかかる介護保険料は「標準報酬月額×介護保険料率」で、賞与にかかる介護保険料は「標準賞与額×介護保険料率」で決まります。介護保険料率は加入組合によって異なりますが、協会けんぽの場合は現時点で「1.60%」です。たとえば標準報酬月額が40万円なら、40万円×1.6%=6,400円が毎月の介護保険料となり、このうち半額を会社が、残りの半額を被保険者が負担します。

 

 

介護保険料の納付方法


さて、介護保険料の納付方法(徴収方法)は一つだけではありません。

●    特別徴収

●    普通徴収

それぞれの納付方法について、違いを見ていきましょう。

特別徴収

特別徴収とは、いわゆる「天引き」のことです。たとえば会社員の場合、給与・賞与から会社が介護保険料を差し引き、全社員分をまとめて納付してくれます。また、公的年金を受給している高齢者も、原則として年金からの天引きで介護保険料を納めます。

普通徴収

普通徴収とは、保険加入者が自ら保険料を納める方法のことです。たとえば個人事業主など国民健康保険に加入している方の場合、国民健康保険料と合わせて介護保険料を納付します。また、受給している年金額が18万円以下の場合、月あたりの支給額が極めて少ないため特別徴収に対応してもらえません。そのため普通徴収方式で保険料を納めます。また、年金の繰下げ受給を選択している方の納付方式も普通徴収です。

介護保険料を滞納した場合のリスク


介護保険料を滞納した場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。納付期限を超過した年月ごとに、詳しく見ていきましょう。

納付期限を過ぎて1年未満の場合

介護保険料の納付期限を過ぎると、20日以内に督促状が発行されます。この場合、本来納めるべき介護保険料だけでなく、延滞金・督促手数料も併せた額が請求されるため、これが一つ目のリスクといえるでしょう。
なお、延滞金・督促料の額は保険者(市区町村)によって異なります。延滞金については、基本的に納付期限翌日から1か月までは年利4.3〜14.6%の日割り、1か月以上は年利14.6%の日割りとされるケースが多いです。督促量は1回70〜100円と少額ですが、期限までにしっかり納めるようにしましょう。

納付期限を過ぎて1年以上経過した場合

すでに要介護・要支援認定を受けており、1〜3割の自己負担で介護保険サービスを受けている場合、納付期限を過ぎて1年以上経過すると全額を自己負担しなければなりません。これまで1割負担で介護保険サービスを受けていた方の場合、これまでの10倍のサービス料を負担するということです。
ただしこの段階では、後から申請しさえすれば、給付が制限されている9〜7割が返還されます。「一度全額を自己負担しなければならない」ということが、1年〜1年半未満にわたって保険料納付を滞納している方へのペナルティだということです。

納付期限を過ぎて1年半以上経過した場合

介護保険料を1年半以上滞納してしまうと、介護保険給付が「一時差し止め」となります。介護保険サービス料を全額自己負担し、後から申請したとしても、滞納している介護保険料が納付されるまで給付は受けられません。これまで申請すれば払い戻されていた部分については、介護保険料の未納分として強制的に徴収されるためです。

納付期限を過ぎて2年以上経過した場合

納付期限を過ぎて2年以上経過すると「時効」となり、未納分の保険料を支払うことができません。そして未納期間に応じて、自己負担割合が3割(一定以上の所得のある方は4割)へ引き上げられます。また、1か月の介護保険サービス費が高額な場合に使える「高額介護サービス費制度」の利用もペナルティとして停止されます。

介護保険料の支払いが免除されるケース

介護保険料を納付しないとさまざまなペナルティを受けることになりますが、次のような場合、正当に支払いが免除されます。

●    生活保護を受けている場合

●    介護保険適用除外施設に入所・入院している場合

●    専業主婦を含めた被扶養者の場合

●    海外居住者の場合

●    短期滞在の外国人の場合

それぞれどのようなケースなのか、詳しく見ていきましょう。

生活保護を受けている場合

40歳以上64歳以下で生活保護を受給している場合、公的医療保険を脱退するため、医療保険料と一体的に徴収される介護保険料についても支払う必要がなくなります。また、65歳以上で生活保護を受給している方も、公的介護保険料は生活保護の「生活扶助」として支払われるため、自己負担はありません。

介護保険適用除外施設に入所・入院している場合

次のような施設は「介護保険適用除外施設」と定められています。

●    指定障がい者支援施設(生活介護・施設入所支援の支給決定を受けて入所している身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者に限る)

●    生活介護を行う障がい者支援施設(市町村による措置決定を受けて入所している身体障がい者・知的障がい者に限る)

●    「児童福祉法」に規定する医療型障がい児入所施設

●    「児童福祉法」に規定する内閣総理大臣が指定する医療機関

●    「独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法」の規定による施設

●    「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」に規定する国立ハンセン病療養所

●    「生活保護法」に規定する救護施設

●    「労働者災害補償保険法」に規定する労働者災害特別介護施設

●    「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」に規定する療養介護を行う病院

これら施設へ入居する際に、各市区町村へ「介護保険適用除外等該当届」を提出していれば、保険料を納める必要はありません。

専業主婦を含めた被扶養者の場合

専業主婦を含め、公的医療保険の「40歳以上64歳以下の被扶養者」となっている方も、介護保険料を納める必要はありません。(ただし被保険者が39歳以下もしくは65歳以上の場合や、被扶養者が40歳以上64歳以下の場合などは、被保険者が被扶養者の公的介護保険料を負担しなければならないこともあります)

海外居住者の場合

海外居住者(国内に住所がない方)も、介護保険料を支払う必要はありません。ただし正式に支払い免除措置を受けるためには、海外転居時に健康保険組合などへ「介護保険適用除外等該当・非該当届」を提出する必要があります。会社員の場合、この書類は事業主が提出するものであるため、たとえば海外赴任する場合などは念のため会社へ確認してみてください。

短期滞在の外国人の場合

日本に3か月以上滞在する外国人は、介護保険料を納める必要があります。しかし3か月未満の短期滞在外国人は、介護保険料を納める必要はありません。

 

 

介護保険料の支払いが減額されるケース

介護保険料の支払いが免除はされないものの、減額されるケースもあります。

●    災害による被害があった場合

●    収入が少なく生活が困難な場合

●    収入が大幅に減った場合

それぞれのケースについて、具体的に見ていきましょう。

災害による被害があった場合

災害によって甚大な被害を受けた場合、本来の介護保険料の25%〜100%が減額されることがあります。(100%減額は実質的な納付免除です)減額される金額や、基準となる被害の程度は市区町村によって異なるため、お住まいの自治体のホームページなどで確認してみてください。なお、大規模な災害の場合は、厚生労働省から各保険者(自治体)へ減免措置の要請・財政支援が打ち出されることもあります。

収入が少なく生活が困難な場合

そもそも収入が少なく生活が困窮していると認められる場合も、介護保険料の一部が減免されます。減免される条件は市区町村によって異なることもありますが、次のような条件が一般的です。

●    市民税課税者に扶養されていない・市民税課税者と生計を一にしていない

●    世帯員全員の年間収入見込額の合計額が、一定額を超えていない(基準額は世帯人数により変動)

●    世帯員全員の現金・預貯金などの合計額が150万円以下

介護保険料を納付すると生活が苦しいという場合には、各自治体の減免条件を確認してみてください。

収入が大幅に減った場合

「第1号被保険者」もしくは「第1号被保険者の属する世帯の主たる生計維持者」が死亡・長期入院し、収入が著しく減ってしまった場合には、その世帯の所得状況によって介護保険料が減免されます。減免される額は自治体によって異なりますが、50〜100%程度とされているケースが多いです。このようなやむを得ない事情で収入が大幅に減ってしまった場合は、早めに自治体へ相談しましょう。

介護保険料の支払いに困った時は?

介護保険料の支払いに困った場合、まずはここまで紹介した減免措置を手続きしましょう。督促状が届いたにも関わらず未納状態が続くと、記事前半で紹介したようなペナルティの対象となってしまいます。しかし正式な減免措置を手続きしておけば、ペナルティを受けることはありません。万が一介護が必要になった場合も、少ない自己負担額でサービスを受けられます。各自治体ごとに減免の条件は異なるため、介護保険料を支払うと生活できない場合には、一度自治体の窓口へ相談してみてください。

まとめ

40歳になると、亡くなるまで一生涯にわたって介護保険料を納付する必要があります。65歳以上の第1号被保険者は「保険料基準額×所得などに応じた乗率」で求められた額を、亡くなるまで支払わなければなりません。40歳以上65歳未満の第2号被保険者の場合、会社員は「標準報酬月額・標準賞与額×介護保険料率」で求められた額、自営業者は各市区町村が定めた額が納付額です。
厚生労働省の資料「令和6年度 介護納付金の算定について」によると、第1号保険料の1人あたり月平均納付額は、平成12~14年度には2,911円であったものの、令和3~5年度には6,014円になっています。第2号保険料の1人あたり月平均納付額も平成12〜14年度には2,075〜3,008円でしたが、令和6年度には6,276円と3倍程度になる見込みです。今後も介護保険料の増額が進むと、支払いが難しくなることがあるかもしれません。そのような場合は滞納する前に、正式な減免措置の対象となるかどうか確認するようにしてみてください。

 


この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

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