老人ホームの契約方式③終身建物賃貸借方式とは|メリットや相続についても解説
老人ホームの契約方式には、利用権方式・建物賃貸借方式・終身建物賃貸借方式の3つがあります。今回は、終身建物賃貸借方式について解説します。終身建物賃貸借方式の特徴やメリット、建物賃貸借方式との違いや相続についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。

終身建物賃貸借方式とは|老人ホームの契約方式の1つ
老人ホームの契約方式には、以下の3つがあります。
利用権方式
建物賃貸借方式
終身建物賃貸借方式
終身建物賃貸借方式は、「賃貸借方式」の1つです。居住部分とサービスが別々になった契約形態のため、介護サービスや生活支援サービスなど、居住以外のサービスを受ける場合は、別途契約が必要になります。
終身建物賃貸借方式は、終身利用が可能で、契約者が亡くなった時点で契約が終了します。しかし、契約者ご本人が亡くなっても、条件を満たす同居者が1ヶ月以内に申し出て月額利用料を払うことで、継続して居住できます。
終身建物賃貸借方式の特徴
終身建物賃貸借方式には以下の3つの特徴があります。
都道府県から許可を得た施設のみが採用できる
利用可能年齢は60歳以上
終身利用が可能で、原則契約者が亡くなった時点で終了する
ここでは、それぞれの特徴について詳しく解説します。
都道府県から許可を得た施設のみが採用できる
終身建物賃貸借方式を採用できるのは、国土交通省による「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」の認可を受け、都道府県から許可を得た施設のみです。具体的には、以下のような規定を満たす必要があります。
終身建物賃貸借を実施している
床面積の基準を満たしている
バリアフリー構造である
事業者が許可を得るためには、事業認可申請書に加え、間取り図や施設の位置、規模・賃貸の条件などを記載した必要書類の提出が必要です。
利用可能年齢は60歳以上
終身建物賃貸借方式は、60歳以上が利用できる契約方式です。なお、夫婦で入居する場合、どちらかが60歳以上であれば、もう一方が60歳未満でも契約できます。
終身利用が可能で、原則契約者が亡くなった時点で終了する
終身建物賃貸借方式は、その名のとおり終身利用が可能です。そのため、契約更新料や更新手続きは不要です。そして、契約者が亡くなった後は原則契約が終了します。そのため、基本的には相続権は発生しません。ただし、契約者ご本人が亡くなっても、同居者が1ヶ月以内に申し出ることで継続して居住できます。
建物賃貸借方式との違い
建物賃貸借方式は、終身建物賃貸借方式と同様に「賃貸借方式」の1つです。建物賃貸借方式と終身建物賃貸借方式には、以下のような違いがあります。
特に、終身建物賃貸借方式と違って終身利用ができない点と、居住権が相続される点がポイントです。
終身建物賃貸借方式 | 建物賃貸借方式 | |
---|---|---|
根拠となる法律 | 高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法) | 借地借家法 |
契約の更新 | なし(終身利用可能) | 正当な事由がない限り更新 |
契約の期限 | 賃借人の死亡まで | 当事者間の定めた期間(1年以上)、または定めなし |
契約の中途解約の可否 | 場合によって可能 | 期間の定めがある場合は不可 |
居住権の相続 | なし | あり |
終身建物賃貸借方式のメリット
終身建物賃貸借方式には、以下の3つのメリットがあります。
終身利用が可能
都道府県から許可を得ている施設なので安心して利用できる
中途契約できる場合がある
終身建物賃貸借方式は、建物賃貸借方式と異なり終身利用が可能です。契約することで、生涯にわたって同じ場所に住み続けることができるのは大きなメリットです。
また、終身建物賃貸借方式はどの施設も採用できる契約方式というわけではありません。床面積やバリアフリーなどの基準をクリアしており、都道府県に認められた施設のみが採用できます。そのため、入居者にとっては安心して居住できます。
また、建物賃貸借方式では、期間の定めがある場合は、原則として中途解約ができません。しかし、終身建物賃貸借方式の場合は、以下の条件に該当すると中途解約ができます。
療養や老人ホーム等への入所等により、居住することが困難となったとき
親族と同居するため、居住する必要がなくなったとき
賃貸人に改善命令違反があったとき
6ヶ月以前の解約の申入れ
なお、6ヶ月以前の解約の申入れ以外は、申込後1ヶ月を経過することで終了します。
申し込んだ直後に事情が変わって入居できなくなった時も、中途解約ができるのは大きなメリットです。
終身建物賃貸借方式における相続
前述のとおり、終身建物賃貸借方式では、契約者の死亡により契約が終了するのが原則です。そのため、基本的には居住権は相続されません。ただし、以下の同居者については、申し出ることで継続居住ができます。
同居していた配偶者
同居していた60歳以上の親族
死亡を知ってから1ヶ月以内に事業者に申し出る必要があります。申し出を行うことで、同居人の終身利用が可能です。
まとめ
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有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。