認知症サポーターとは?地域で求められる役割やオレンジリングの意味と取得方法について紹介
「認知症サポーターって何?」「サポーターになると何かするの?」こんな疑問はありませんか?
認知症は、過去に「痴呆」と呼ばれていた症状です。言葉の偏見やイメージ改善のため、2004年に改名されました。翌年には、地域で認知症を理解し支えることを目標に「認知症サポーター制度」が設けられました。
しかし、今でも認知症に対する偏見は決して少なくありません。認知症の方がいる家族も、周囲の目を気にして相談できずに悩む事もあるでしょう。
今回は、認知症サポーターの役割やサポーターになる方法などについて紹介します。この記事を読むことで、認知症の理解も深まるため、ぜひ参考にしてください。

認知症サポーターとは
2005年に始まった認知症の理解者を育成するプロジェクト
認知症サポーターとは、「認知症サポーター養成講座」を受講して、認知症について正しい知識を持った応援者のことです。
認知症サポーターになったからといって、認知症の人に何かをしないといけないということはありません。
認知症サポーター養成講座では、地域に住む認知症の人を見守り・サポートする人を増やすというコンセプトのもと、サポーターを養成しています。全国100万人のサポーターを養成することをコンセプトにしてきました。(2009年に達成)「認知症になっても安心して暮らせるまちづくり」が最大のコンセプトです。
認知症サポーターのロゴやマスコットには、オレンジ色やロバが使われています。サポーターをキャラバン(隊商)とみたて、ロバはそれを引く隊長として考えられています。
『認知症になっても安心して暮らせるまちづくり』への道のりの先頭を歩き、急がず一歩一歩着実に進むという意味が込められています。
オレンジは、日本の作品である赤絵磁器(あかえじき)が由来とされています。世界で有名になった赤絵磁器のように、日本初の認知症サポーターが世界中で認められるようにとの思いを込めて、オレンジ色が認知症支援のシンボルカラーとなっています。
全国にいる認知症サポーターの人数は、令和4年12月31日時点で「14,307,790人」です。以下の表は、過去5年間における認知症サポーターの増加数をまとめています。
年 | サポーターの増加数 |
2018年(平成30年) | 1,281,381人 |
2019年(令和元年) | 1,191,657人 |
2020年(令和2年) | 533,517人 |
2021年(令和3年) | 625,348人 |
2022年(令和4年) | 498,974人 |
参照:特定非営利活動法人地域共生政策自治体連携機構「認知症サポーターの人数」
令和2年より、急激に減少しているのは、コロナウイルス蔓延による影響です。
認知症サポーターに求められる役割
誰もが暮らしやすいまちの実現を目指す
認知症サポーターでは、以下の役割が期待されています。
認知症に対して偏見なく正しく理解する
認知症の人や家族を見守る
近隣の認知症の人や家族に対してできることを実践する
地域でできる活動を探し結びつきをつくる
地域の発展を担うリーダーとなる
【認知症に対して偏見なく正しく理解する】
認知症の方やその家族は症状に対しての偏見や誤解を持っていることが多いです。そこで、サポーターは認知症について理解し、認知症の人を見守り、家族に対して正しい知識を広める役割もあります。
【認知症の人や家族を見守る】
認知症の人やその家族は、私生活の中で買い物や通院などの外出失敗がきっかけで外に出ることが億劫になることがあります。
しかし、認知症サポーターが優しく見守ることで、認知症の方やご家族は外出時にストレスを感じにくく、外出などの制限もなくなります。
【近隣の認知症の人や家族に対してできることを実践する】
まちには、多くの認知症の人が生活しています。認知症サポーターがまちにたくさんいるだけでも、認知症の人や家族にとっては、安心につながります。
困っていることがあれば、一緒に目的地まで歩いたり、声をかけるだけでも十分なサポートです。特別な技術などは必要なく、正しい知識をもって接することがサポーターの役割になります。
【地域でできる活動を探し結びつきをつくる】
地域に住む認知症の人に対しての取り組みに、協力することもサポーターの役割です。地域の福祉事業が支援することに、認知症サポーターが加われば、大きな助けとなるでしょう。
認知症に対する正しい知識を持った人が地域に増えることで、地域ぐるみで助け合いのできる環境が生まれます。
【地域の発展を担うリーダーとなる】
認知症サポーターが地域の中心となって、積極的に情報発信や支援を行うことで、認知症になっても生活しやすい社会を作っていくことができます。
また、認知症サポーターの活動は、認知症だけではなく、多くの人が生きやすい社会や地域づくりを担い、リーダーの一人として活躍することが期待されています。
認知症サポーター誕生の背景
医療や介護職員の人材不足が原因
認知症サポーターの養成を始めた背景には、認知症高齢者の増加と、介護従事者の不足があります。高齢者の人口は増え続ける一方で、2025年には、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると予測されています。
今後の社会を、介護従事者や認知症家族だけでサポートしていくのは難しいと考えられ、地域住民や企業へ認知症サポーターの呼びかけが行われてきました。
2005年に創設された「認知症サポーターキャラバン」は、認知症への偏見をなくし、サポートできる人を増やすため、「認知症を知り、地域をつくる運動」の一環として考えられています。
2015年には、新オレンジプランが創設され、さらに認知症サポーターの養成が促進されるようになりました。新オレンジプランとは、認知症との共存や予防をさらに強化していく方針です。
それに伴い、認知症サポーターは以下のような様々な活動を行っています。
オレンジカフェの開催や参加
認知症の方の見守り
認知症やその家族の話を傾聴する
「認知症サポーター養成講座」の開催協力
認知症やその家族を対象とするサロン等の開催や参加
SOSネットワークへの登録
介護予防教室への協力
認知症サポーターがいる店舗等の登録
福祉施設などの行事協力や参加
認知症の方への外出支援
キッズサポーター(小中高生)による認知症の人との交流会
また、地域の警察・消防・金融機関・スーパーマーケット・コンビニをはじめとする商店や目標交通機関など、生活に密着した業種の人たちが多数、認知症サポーターとなっている地域もあります。
認知症サポーターが活躍するお店などでは、認知症が疑われるお客さまと接する際に、適切な対応が可能です。地域全体で見守りや早期発見・対応に貢献しています。
現在、サポーターの年齢層や性別は以下の通りです。
女性(人) | 男性(人) | |
70代以上 | 1,898,696 | 839,790 |
60代 | 1,422,183 | 706,763 |
50代 | 1,038,247 | 579,266 |
40代 | 874,068 | 537,654 |
30代 | 607,580 | 467,784 |
20代 | 729,903 | 512,401 |
10代以下 | 2,005,901 | 1,850,597 |
男女比 | 61% | 39% |
参照:特定非営利活動法人地域共生政策自治体連携機構「サポーターの性別・年代別構成」
全年齢で女性の方が多い傾向ですが、男女ともに、10代〜70代以上と幅広い年齢層の方が活躍されていることがわかります。
認知症サポーターになる方法
認知症サポーターは定期的に開催する講義に参加するだけ
認知症サポーターになるには、自治体や企業・職域団体が実施する「認知症サポーター養成講座」(90分)の受講が必要です。受講するための要件はなく、約90分の講座を受講することで誰でも認知症サポーターになることが可能です。※受講費用は原則無料です。
個人で受講する場合には、開催日時などを各自治体のHPや自治体事務局の連絡先を確認するとよいでしょう。
認知症サポーター養成講座は、基本的な内容が定められているため、全国どこで受けても大丈夫です。※講師や地域によって若干の差があります。
基本的なカリキュラムは、認知症サポーターキャラバンの説明・認知症の理解から始まり、認知症サポーターについての解説があります。認知症を理解するための基本的な症状や接し方、認知症の人や家族の気持ちについても学びます。
全部で90分間のカリキュラムとなっており、全課程を修了することで、認知症サポーターになることができます。受講に必要な資格や条件はなく、誰でも受講可能です。
参考:特定非営利活動法人地域共生政策自治体連携機構「基本カリキュラム」
受講修了後は、認知症サポーターカードやオレンジリングが渡され、このリングが認知症サポーターの証となります。令和2年度までは、全国一律でオレンジリングが配布されていましたが、令和3年4月以降は、原則として認知症サポーターカードの配布となりました。カードは原則、講座の実施主体者が作成しますが、従来通りオレンジリングを配布する場合もあります。
また、2019年から始まった「チームオレンジ」という活動もあります。チームオレンジは認知症サポーターからさらに一歩前進した活動で、認知症の早期から関わり、進行予防や引きこもり解消などの活動を行うチームです。主に、認知症の人や家族の困りごとと認知症サポーターをつなげる役割があります。
認知症サポーターは、ステップアップ研修を受けることで、チームオレンジに参加可能です。
他にも、キャラバンメイトとしての活動もできる場合があります。
認知症キャラバン・メイトとは
認知症サポーターを養成する団体
認知症サポーター養成講座の開催や講師をする人を指します。また、住民へのアドバイスや指導も役割のひとつです。
キャラバンメイトになるには、自治体や企業が実施する、キャラバン・メイト養成講座を受講する必要があります。受講対象者、年間10回程度を目安に(最低実施数3回)「認知症サポーター養成講座」をボランティアの立場で行える人です。
また、企業や組織が適当な人物と認めた人が対象となります。主な職種や資格は以下の通りです。
認知症介護指導者養成研修修了者
認知症介護実践リーダー研修(認知症介護実務者研修専門課程)修了者
介護相談員
認知症の人を対象とする家族の会
上記に準ずると自治体等が認めた者
研修にかかる受講料は無料です。※費用は原則として主催者自治体や団体が負担します。
認知症サポーターのこれから
若い世代にも訴求して社会を支える活動を目指す
認知症サポーター養成講座が開始された当初、認知症サポーターの目標人数は800万人でした。しかし、現在は1,400万人を超えています。2020年度以降はコロナ禍の影響から、受講生の減少もみられましたが、オンライン教材の活用などを行って、開講数を増やしています。
2015年に制定された「新オレンジプラン」では、認知症サポーターの数を増やすだけではなく、認知症高齢者に対して、やさしい街づくりを進めることに重点をおいています。定期的に講義を復習する場を設け、認知症サポーター同士の交流や討論、さらに高度な講義も準備していく方向です。
また、認知症の人や高齢者を理解する教育を行うことを目的に、小・中学校での認知症サポーター養成講座の開講を検討しています。大人だけではなく、子どもたちにも認知症の理解を図る計画です。
そのため、今後もさらにサポーターは増員し、認知症に理解のある、優しいまちづくりの実現を目指しています。
認知症サポーター以外の認知症関連の資格
実務経験がなくても取得できる資格もある
ここでは、認知症に関連する資格は以下の通りです。
資格名 | 特徴 | 受験資格 |
認知症介助士 | 認知症を理解し、効果的な接し方を学ぶための資格です。職場だけでなく、地域社会でも役立ちます。受験には4通りの方法があり、認知症介助士の学びをより深めるセミナーと試験がセットになった「認知症介助士セミナー」やオンラインによる受験が可能です。好きな場所や時間で受験できます。 | 誰でも受験可能 自宅で受験可能 |
認知症ライフパートナー | 認知症の人を取り巻く様々な状況への気づきや、コミュニケーションスキル、アクティビティケアの方法を習得します。試験は全国12の都道府県で実施され、級ごとに会場が異なります。インターネットでの受験はありません。 | 3級・2級は なし。 1級へは 2級合格者のみ 受験可能。 |
認知症ケア指導管理士 (初級) | 認知症についてより深く理解し、認知症の人やそのご家族に期待されるケアのあり方について学ぶことができる資格です。認知症本人の尊厳を守り、安心して生活を送れる環境を提供することを目的に創設されました。試験は全国9都道府県で実施されます。 | 誰でも受験可能 ※学生の場合、大学生・専門学校生・高校生が対象 |
認知症ケア准専門士 | 認知症の人を支援する人財確保と定着を目的とした資格です。認知症の問題に取り組む環境を整えることで、質の高い人材育成と社会全体へ参加と関わりを働きかけます。現在、全国6の都道府県で開催されていますが、オンライン受験も可能です。 | 試験実施年の3月末時点で満18歳以上の人。 過去10年間で認知症ケアの実務経験が3年以上の人。 自宅で受験可能 |
まとめ
今回は認知症サポーターについて紹介しました。認知症サポーターの資格は、「資格を取るため」だけではなく、身近にいる認知症の方やその家族への見方や考え方、接し方を理解することができます。 認知症は誰もがなり得るものです。あなたのご家族、身近な人も認知症になる可能性があり、身近な問題といえるでしょう。特別な技術がなくても、認知症を正しく理解し偏見を持つことなく接することが大切です。
認知症の人やその家族にとって、理解を得られる人の存在は何よりの安心感につながります。また、認知症サポーター養成講座を受け、認知症について考える人たちとの繋がりを持つことで、不安や悩みを共有することが可能です。
今回の記事で、認知症サポーターの理解や活動内容が伝われば幸いです。
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。