【必見】認知症に効果のある薬とは?効果や副作用について詳しく紹介

「認知症に効く薬はどんなものがあるの?」「薬を飲むと認知症は治る?」このような疑問はありませんか?

認知症は発症すると記憶障害や見当識障害が現れ、本人や一緒に住む家族の生活に支障が起こることがあります。近年、認知症に対する薬の研究も進み、いくつか使用されるようになりました。

今回は、認知症の薬の効果や注意点について紹介します。認知症に悩んでいる方や薬に不安がある方の参考になりますので、ぜひ参考にしてください。

#認知症#病気
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

認知症のお薬について

現状、認知症を根治する薬はない

認知症は、神経細胞の減少により、脳の神経機能が徐々に低下していく病気です。残念ながら、神経細胞を再生させたり、細胞の破壊を食い止めたりする薬はまだ開発されておらず、現在も研究が進められています。

現在、認知症の薬として処方されているものは、脳を刺激し意欲や活気を回復させる、神経活動をコントロールするためや、興奮・混乱などの症状を抑える鎮静作用の目的で使用されています。

意欲の低下と興奮や混乱などの症状が入り混じって現れる方が多く、いくつかの認知症治療薬を調整しながら、少しずつ精神状態の安定を図るのが一般的です。現在、アルツハイマー型認知症に使う薬が4種類、レヴィー小体型認知症に使う薬が1種類認可されており、多くの認知症の方が服用しています。

認知症による主な症状

物忘れと認知症は異なる

認知症とは、加齢にともなう物忘れとは異なり、何らかの原因で脳細胞が死滅し、認知能力が低下した状態のことを指します。記憶障害や見当識障害などが起こり、日常生活に支障をきたします。また、認知症の種類によっては、意欲の低下・不安・徘徊・幻視・錯覚などの症状が現れ、日常生活が困難になる方も多いです。

認知症と加齢にともなう物忘れとの違いは、以下の通りです。


物忘れ

認知症

脳の損傷

ない

萎縮・変形・死滅

進行性

ない

ある

忘れた自覚

約束したような気がする

(断片的な記憶が残る)

約束などなかったかのように覚えていない

事象の記憶

何を食べたか忘れる

食事を食べたことすら忘れる

日常生活の支障

ない

ある

ヒントがあれば

思い出せる

思い出せない

物忘れが「覚えていない」「あるいは記憶の断片しか覚えていない」ことに対し、認知症はあたかも「何もなかったか」のように、覚えていない状態です。そのため、認知症の進行にともなって、日常生活上の支援も必要となります。

また、認知症の場合は記憶障害や見当識障害などの中核症状の他に、BPSD(行動・心理症状)が現れる場合があります。すべての認知症の方に現れるものではありませんが、中核症状に対してのケアや、生活環境が不適切な場合に現れる症状です。

BPSDには、主に以下の症状があります。

BPSD

症状

徘徊・多動

ソワソワと落ち着かず、歩き回っている状態

興奮・暴力

些細なことをきっかけに興奮されたり、暴力を振るう状態

不安・混乱

焦燥感があり常に焦っており、物事の整理ができない状態

無反応・拒否

物事に対して無反応。また、支援について拒否

認知症の症状から、BPSDが発症すると、対応が困難になるケースも多いため、中核症状のうちに適切な対応を心掛ける必要があります。

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認知症の薬を使用する目的

認知症の薬は根治目的ではない

認知症治療薬の目的は以下の2点です。

  • 認知症の進行を遅らせる

  • 精神安定を図る

認知症治療薬の使用目的は、認知症そのものを改善・根治するものではなく、記憶・思考・判断・行動・日常生活機能の改善を目的として使用されます。また、うつ病・不安神経症・興奮状態など、認知症に伴う合併症の発症リスクを軽減することも期待できます。これらの症状を抑えることができれば、現在の身体機能や生活の質を維持することができるでしょう。

しかし、認知症治療薬は、副作用や他の薬との相互作用があるため、服用方法は医師の指示を守り、飲み忘れなどがないように注意してください。また、薬によって現れる症状は、記録(メモ)に残し、対応困難な状況や状態の変化があれば、すぐに医師へ相談するようにしましょう。

認知症の治療薬

認知症の治療薬にも副作用がある

現在、認知症の薬として使用されることが多いお薬は以下の通りです。それぞれの特徴や副作用を知っておくと、使用後の変化にも柔軟に対応できるでしょう。

薬名

期待する効果

副作用

アリセプト

アルツハイマー型認知症などによる記憶障害・見当識障害などの症状に効果がある。

発疹・食欲不振・下痢などの副作用や心不全や胃潰瘍などの重い症状が出る場合があるため注意が必要です。

レミニール

軽度から中等度のアルツハイマー型認知症の進行を抑制する。

副作用としては、尿路感染・食欲不振・嘔吐・下痢などがあります。

失神などの重大な症状がでる可能性もあります。

イクセロンパッチ

リバスタッチパッチ

軽度から中等度のアルツハイマー型認知症の進行を抑制する。

貼り薬のため、皮膚のかぶれや痒みが出る特徴があり、副作用には貧血や嘔吐などがあります。

心筋梗塞などの疾病を持っている方は注意すべき治療薬と考えられています。

メマリー

アルツハイマー型認知症の神経細胞障害や記憶、学習能力の障害を抑える。

副作用として頻尿・頭痛・めまい・不眠・血糖値が上昇などの症状がある。

抑肝散

(よくかんさん)

アルツハイマー病による幻覚妄想・抑うつ・心理症状などの抑制が期待できます。

副作用には、食欲不振・胃部不快感・悪心・下痢などがあります。

酸棗仁湯

(さんそうにんとう)

神経を鎮めて、寝つきを良くする効果がある。体力が低下し、心身が疲労していて眠れない人に効果的な薬です。

副作用には、食欲不振・胃部不快感・悪心・腹痛・下痢などがあります。

一般的に、認知症の治療には西洋医学で用いられる薬がよく使用されますが、最近では認知症治療において漢方薬の効果も期待され、効果の研究も進んでいます。

認知症を悪化させる可能性のある薬

薬の効果によって認知症を悪化させてしまう可能性がある

薬の中には、認知機能の低下やせん妄を引き起こす副作用があるものがあります。以下の薬を処方されている方は注意が必要です。

  • 三環系抗うつ薬

  • パーキンソン病治療薬

  • オキシブチニン

  • ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬

  • ヒスタミンh2受容体拮抗薬 (第一世代)

  • ヒスタミンh3受容体拮抗薬

認知症の症状が現れた際には、服薬状況を確認し、副作用の可能性も検討することが重要です。特に複数のクリニックや病院などで診療を受け、処方を受けている方は注意しましょう。薬の飲み合わせや症状悪化を防ぐためにも、お薬手帳を持参することが大切です。現在、スマートフォンアプリなどでも管理ができるようになりました。自分に合った方法で、お薬の管理・把握をしましょう。

認知症の治療中に薬をやめる理由

状況によって認知症の薬を中止することもある

認知症の治療で薬をやめることもあります。理由は以下の通りです。

  • 多数の薬を服用している

  • 副作用に耐えられない

  • 基礎疾患の症状が悪化している

認知症治療のために複数の薬を服用している高齢者の方は、処方された薬によって体に負担がかかり、副作用が出る可能性があります。さらに、薬を体内で処理するための身体能力や機能が低下することも考慮する必要があります。体調が悪いときは、認知症治療薬を中止するケースもあります。

また、多数の薬を使用していなくても、認知症の薬の影響で、大きく副作用が出る方もいます。また、持病(基礎疾患)の影響から、副作用が出ることもあるため、処方されたお薬で体調に異変があった場合は早急に医師へ相談しましょう。

これらの状態によって、薬を中断する場合もあります。他にも、飲み込みができず薬の服用が難しい場合も、中断になることがあります。ただし、独自の判断で中断や中止をしないようにしてください。

薬を使わない治療法

コミュニケーションを中心とした認知症ケア

認知症の治療にはお薬以外にも方法があります。ひとつずつ見ていきましょう。

回想法

昔の物や音楽に触れ、過去の話を引き出すコミュニケーション療法です。個人やグループで取り組み、人生を見直したり、他者と共有したりすることで自己肯定感を高め、精神を落ち着かせる効果が期待できます。

リハビリテーション

理学療法や作業療法などのリハビリテーションを行い、できることを増やすことで、日常生活の活性化と自己肯定感を高められます。また、リハビリテーションを行うことで脳の活性化が図れるため、認知症の進行予防を期待できるでしょう。

音楽療法・園芸療法

音楽を使うことで、懐かしさを感じたり、リズムに合わせて体操したりと、様々な活動ができます。他にも、歌う・演奏するなど、個人・集団問わず脳の活性化が期待できます。

園芸は、土や植物などの自然に触れることで、身体・精神共に活性化できるでしょう。草木を育てることで成長が待ち遠しくなり、生き甲斐に繋がるかもしれません。また、手指をはじめ、身体を使うことが増えるため、身体機能の維持にも効果的です。どちらの方法も自宅などで気軽に始められる特徴があります。

リアリティ・オリエンテーション(RO)

リアリティ・オリエンテーションとは、1968年にアメリカで提唱され、認知が広がった療法です。「今日は何月何日?」「今の季節は?」「ここはどこ?」など、見当識障害に対して効果的な質問を繰り返すことで、現実の認識を深め、認知症の進行を遅らせる効果が期待できます。対人関係や協調性への効果もあると考えられています。

バリデーション療法

バリデーションとは、認知症高齢者の言動を理解して受け入れるコミュニケーション手法です。1963年に米国のソーシャルワーカー、ナオミ・ファイル氏が考案し、2003年に日本で初めてバリデーション研修所(VIT)認定講座が開催されました。認知症の方が持つマイナスな感情(怒り・悲しみ・不安など)に向き合い、理解・共感することで、精神面を安定させる効果が期待できます。

パーソン・センタード・ケア

認知症の方を一人の「人」として尊重し、その人の立場に立って考え、ケアを行おうとする認知症ケアの一つの考え方です。過去には、認知症の方に対して、「認知症」という部分だけが強調され、「"認知症”でおかしな行動をする人」というイメージがありました。しかし、認知症の理解が進み「個人」を理解する考え方の「パーソン・センタード・ケア」が、広がっています。個人の趣向や交友関係なども含め、細かく情報収集し最適なケアを探していくケア方法です。

ユマニチュード

ユマニチュードは、フランスの体育専門家であるイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティが開発した認知症のコミュニケーション技法です。ユマニチュードの特徴は、人がとる当たり前の行動である、「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの柱からケアを見直し、5つのステップを通じて信頼関係を構築します。

認知症に関する疑問

それぞれの疑問を解消しておきましょう

ここからは、「認知症の薬について」よくある疑問を紹介します。

・認知症は何科を受診すれば良いですか?

認知症は、精神科・脳神経内科・脳神経外科・物忘れ外来などで診療を受けられます。それぞれ特徴の異なるアプローチで診断や治療を行っています。

・薬はどのくらい効きますか?

残念なことに、現在使われている薬では、認知症の進行を完全にやめることはできません。継続して服用したとしても、徐々に悪化してしまいます。また、認知機能の低下や行動障害を劇的に改善するほどの効果はないと言われています。しかし、脳の神経細胞を活性化させ、思考や記憶能力を維持する効果は期待できるでしょう。その結果、生活の質を維持することに繋がります。

・副作用が怖いのですがどうすれば良いですか?

認知症の治療薬は、一般的に大きな副作用はほとんどないと考えられています。しかし、稀に体質と合わない方もいます。服用開始時に吐き気などの消化器系の症状や徐脈、精神症状などの副作用が起こるケースもありますが、服用を中止すれば元に戻ることがほとんどです。万が一、副作用が出た場合は、別の薬が処方されることもあるため、医師に相談すると良いでしょう。

・薬を飲んでいたら安心できますか?

認知症は、治療よりも療養が重要です。薬はあくまで補助的なものとして考え、日常生活や環境を整えることが優先になります。具体的な問題点を挙げ、ひとつずつ解決し、不安を和らげることが安心につながるでしょう。

・薬は必ず飲まないといけませんか?

認知症の治療薬は必ずいるものではありません。認知症の薬は、大きな効果を期待できるものではないため、本人や家族の判断で服用しないことも可能です。ただし、適度な効果は実証されているため、医師の指示があり、副作用などの特別な問題がなければ服用しておくと良いでしょう。

・薬をやめるとどうなりますか?

認知症は、薬による管理よりもリハビリテーションが重要な疾患です。そのため、薬物療法は二次的な手段として使用されます。薬を止めたからといって、急激に認知症が進むということは考えにくいです。しかし、進行性の疾患のため、薬を使用していない場合は、着実に進んで行くでしょう。ただし、周囲の環境とコミュニケーション方法を見直す方が大きな効果や改善を期待できます。

・脳トレはやった方がいいですか?

計算ドリルや頭の体操は、脳の刺激につながり、効果があると考えられている。しかし、本人が好きでもないことを無理にさせることはよくありません。好きでもないことを強要してしまうと、ストレスがかかりBPSDにつながることもあるでしょう。

参照:和歌山県立医科大学附属病院認知症疾患医療センター「認知症のお薬について」

まとめ

現在、認知症は完全に治すことができない病気です。近年の研究によって、認知症の進行を抑える薬ができ、一般的にも使用されるようになってきました。

しかし、認知症の薬にも副作用があります。飲み方を間違えると、認知症の悪化や生活リズムの乱れにつながるため、医師の診療の元、用法用量を正しく守って服用しましょう。もし副作用が出た場合は、独断で薬を中止せず、必ず医師と相談して飲み方を検討してください。

認知症の治療で使用する薬は、あくまでも二次的な利用と考えられています。薬だけではなく、周囲の環境とコミュニケーション方法を見直すことが、認知症の症状を軽減するためには重要です。

この記事が、認知症の薬の理解につながれば幸いです。

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