若年性認知症の特徴について解説!診断されたときの相談先も紹介

「若年性認知症ってどうなるの?」「若年性認知症は治るの?」と疑問をお持ちではないでしょうか?若年性認知症は若い世代で発症する認知症です。若年性認知症になると仕事の継続ができなくなり、生活が困窮するケースも少なくありません。

今回は、若年性認知症の特徴について紹介します。最後までみていただくと、相談窓口や就労先まで紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

#認知症#病気
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

若年性認知症とは

有病者は約4万人

認知症は高齢者が発症するケースが多いです。しかし若い世代にも認知症は起こります。仕事をしている場合も多く、収入面で支障をきたす方も少なくありません。高齢者の認知症とは違い、力や体力がある分、対応が困難になりやすいです。

また、若さの影響もあり認知症を疑わず診察を受けないこともあります。診察を受けた場合でも、更年期障害やうつ病など、他の病気と間違われるケースもあります。そのため、確定診断を受けるまでに時間を要する場合もあるでしょう。

厚生労働省の調べによると、現在約4万人の若年性認知症の方がおられると発表されています。男女別でみると、女性よりも男性に多い傾向で、発症時期は50歳前後といわれています。

若年性認知症の原因

様々な原因は考えられるがハッキリしていない

若年性認知症は高齢者の認知症同様、原因が特定されていません。要因としては様々なものがあげられており、一部遺伝的要因も指摘されています。

認知症を引き起こす要因としては、以下のものがあげられます。

要因
詳細

生活習慣の乱れ

生活習慣が乱れることで、生活習慣病を誘発する。

生活習慣病(主に、高血圧や糖尿病)から認知症を誘発する。

事故

交通事故などで頭部への衝撃により認知症を誘発する。

事故を期に高次脳機能障害を発生する場合もある。

持病

脳血管障害が起こると認知症のリスクが高くなる。

糖尿病は脳に老廃物が溜まりやすい。

高血圧は脳血管障害の要因。

遺伝

遺伝子が若年性アルツハイマーの発症に影響するといわれている。

身内に若年性アルツハイマー患者がいる場合は発症リスクが高い。

他者交流の減少

脳を刺激する要素が少なくなることで脳が老化する。

うつ病

閉じこもりがちになり生活習慣病を誘発する。

アルコール・喫煙

過度な飲酒や喫煙は若年性アルツハイマーを誘発する。

アルコールは脳の萎縮リスクが指摘されている。

ストレス

ストレスが高いと様々な病気に繋がる。

ストレスを受ける血圧の上昇がある。

他者との交流を控えるようになるなどの間接的な影響。

しかし、どれも確実な理由ではなく、あくまでも関連するリスクがあると考えられています。

血管性認知症の場合は、脳梗塞・脳出血などが原因で発症する場合があります。脳血管が障害され引き起こされるため、原因を治療すれば、症状の改善や治癒が期待できます。

脳の障害には、脳梗塞や脳出血のほか、血管が細くなることで現れる場合もあるので、普段からの体調管理には注意が必要です。

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若年性認知症の症状

高齢者が発症する認知症と同じ症状が起こる

認知症を発症すると、記憶障害・見当識障害・実行機能障害などの基本的な症状が現れます。これらの症状を中核症状と呼びます。

中核症状の詳細をみていきましょう。

症状
詳細

記憶障害

記憶が抜け落ちる。新しいことが覚えられない。

見当識障害

時間・季節・場所・人物がわからなくなる。

実行機能障害

計画を立てて行動ができなくなる。

複数の作業が同時にできなくなる。

失行

わかっていても行動を起こせない。

失認

正しくものを認識できない。

理解・判断力の低下

言われていることが認識できない。

判断ができず決定が出せない。

認知症の代表的な症状はもの忘れで、最近のことを記憶できないことや大事な契約を忘れるなど、仕事に大きな影響が出るケースもあるでしょう。また、約束を忘れるだけでなく、約束していたこと自体を忘れてしまうため、思い出せないことで大きなトラブルにつながることもあるでしょう。

若年性認知症の行動・心理症状(BPSD)

若さがあり高齢者よりも対応が困難になる場合もある

中核症状に対して適切な対応をおこなわないと行動・心理症状(BPSD)を引き起こす場合があります。行動心理症状は一般的に対応が難しいと感じられる症状です。代表的な症状には以下のような症状があります。

症状
詳細

妄想や幻覚

大切な物をしまい込んでしまってわからなくなる。

泥棒に入られたと妄想する。実際に見えないものが見える。

不安・焦燥・抑うつ

記憶の消失による不安から焦りが出る。

イライラする。涙もろくなる。

徘徊

ものを探し続ける。外に出られる場所を探し続ける。

傍から見ると目的もなく動き回っているように見える。

不潔行為

汚れた衣類を隠す。排泄場所がわからずその場で排泄する。汚れ物を触る。

これらの症状は対応が困難と感じるケースも多いです。また、若年性認知症の場合は身体機能が高齢者に比べ高いため、対応がより困難になる場合があります。

無理に静止や説得をせずに、気持ちを理解するように務め、焦りや混乱を和らげる対応が望ましいです。

若年性と高齢者の認知症はどう違うの?

若いということで高齢者介護とは大きく違うとまどいがある

一番の特徴は、発症する若さにあります。平均50歳前後で発症するといわれており、子どもたちがまだ、学生というケースも多いでしょう。そのため、メインで介護する人はパートナーの妻や夫に負担が集中してしまいます。

また、50歳前後の方の親は70代~80代で、介護が必要になっている場合もあり、複数の方を介護する状況もあるでしょう。逆に子どもが若年性認知症になった場合、自身が高齢者となっている場合が多く、支援をしたくてもできない状況が考えられます。

その他に若年性認知症になると影響がある事例は以下の通りです。

経済的な影響

50歳前後となると、やっと育児を終え、これからは自分たちのために時間やお金を使えると考え出す人も多いのではないでしょうか。仕事も役割や責任のあるポジションに就いている場合もあるので、経済的にも精神的にもツラく感じます。収入の減少・ローンや子どもの学費などの支払いなどもあるでしょう。

精神的な影響

若年性認知症は、まだまだ一般的ではなく稀な症状として考えられます。そのため、診断を受けた際は、本人・家族ともに大きな戸惑いや混乱が起こるでしょう。現実を受け止めきれず、自暴自棄になってしまう方もおられます。

生活の影響

最近では、利用可能なサービスも増えつつありますが、高齢者に比べるとまだまだ足りないといえます。若年性認知症の患者がそもそも少ないため、自宅付近で探しても見つからない場合が多いです。高齢者施設などのサービスを利用できますが、年齢層の違いがあり、慣れるまでには長期間の利用が必要になるかもしれません。

高齢者の認知症と現れる症状に大きな違いはありませんが、若さがある分、行動が速く、力強いといった特徴があります。

若年性認知症は早期発見と治療が大切

診断に時間がかかり対応が遅れることもある

若年性認知症は、仕事や家事など、充実した生活の中で起こるケースも少なくありません。「忙しいから」「更年期だから」「仕事疲れかな」と思い過ごすことも多いです。また、病院にいかない場合やほかの病気を疑って受診する科を間違う場合があります。

そのため、受診に至る時点で対応が遅れてしまう場合や、受診しても診断まで時間がかかってしまうケースがあるでしょう。以下のような症状がある場合は注意が必要です。

  • 最近忘れっぽい

  • 同じものを買ってしまった

  • 仕事でミスが増える

  • やる気が出ない

  • 倦怠感が続く

これらの症状がある場合は、早めに受診したほうが良いでしょう。早めに診断を受け、治療を始めると認知症の進行を遅らせることが可能となります。

若年性認知症がわかったら確認すること

家族の介護力を確認して無理のない範囲で支援

若年性認知症の診断を受けたら、まずは、家族(支援者)の状況を確認していきましょう。若年性認知症は、長期的に支援が必要になるので、余裕をもって対応していくことが大切です。以下の内容を確認してみましょう。

チェック項目
チェック内容

介護者

(パートナーが負担することが多い)

他の介護者はいるか

介護力はあるか

介護の知識はあるか

若年性認知症の理解はできているか

仕事の有無

他に介護を必要とする人がいるか

その他の介護者

介護力はあるか

介護の知識はあるか

若年性認知症の理解はできているか

仕事の有無

他に介護を必要とする人がいるか

介護者の家族

学校や扶養家族の有無

介護に対しての共通の理解

健康状態

介護する側は健康か

病気や通院はあるか

経済状態

収支を把握できているか

介護にいくらまで使用できるのか

介護力や関心

現在の介護力について

介護に関しての関心

介護を相談できる場所を知っているか

本人との関係性

本人との関係性は良好か
※好きだから介護できるという訳ではない

以上の内容を確認して、介護する側の状況を把握していくと良いでしょう。

相談先の確保

若年性認知症は発症時期が早いため、前述したように経済的にも精神的にも大きな影響があります。悩みも多く将来に不安を感じることも多いでしょう。いきなり若年性認知症と告げられて途方に暮れているかもしれません。

そんなときは「地域包括支援センター」に相談してみると良いでしょう。地域包括支援センターは「地域包括ケアシステム」の導入により、地域に設置されている介護の相談窓口です。他にも以下のような窓口があります。

  • 市区町村の窓口

  • 若年性認知症コールセンター

  • 地域・医療機関のソーシャルワーカー

  • 若年性認知症支援コーディネーター

自治体によっては窓口の名前が違う場合もあるので、注意しましょう。

地域包括ケアシステムとは、地域の約30分圏内に介護施設・病院などの「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」を一体的に提供するシステムを指します。介護や若年性認知症についても相談できます。

また、他の認知症をサポートする活動もあるので、参加してみると良いでしょう。他の若年性認知症家族と交流や情報交換ができる可能性があります。

若年性認知症へのサポート体制

様々なサポート体制を利用する

若年性認知症をサポートする制度にはさまざまなものがあります。まずは制度によるサポートを紹介します。

障害に関する制度

給付金や手当を受け取ることが可能です。本人の状態や自治体によって利用できるものとできないものがあるので、詳しくはお住まいの自治体に確認すると良いでしょう。

支援制度の一例は以下の通りです。

  • 自立支援医療

  • 障害手当

  • 身体障害者手帳

  • 精神障害者福祉保険手帳

  • 障害年金 など

前述の地域包括支援センターや、その他の窓口に相談すると手続き方法などを教えてもらえます。

就労サポート

若年性認知症の方は、現役で就労している方も多くいます。症状の進行により、休職や退職となる人もおられます。しかし、仕事がなくなれば、経済的な問題も生まれます。認知症になると、すべてのことができなくなる訳ではないので、時短勤務や配置換えなどの対応で、継続就労ができると安心でしょう。しかし、すべての企業で柔軟な対応ができないのも現実です。

残された能力や就労したいという気持ちを支援する事業所として、就労継続支援事業所(A型・B型)があります。就労困難な病気や精神障害のある方が就労しているため、共通点を見いだせるかもしれません。

元の職場を離れないといけない状況になっても、就労の意欲があるのであれば、就労継続支援事業所は受け皿の一つとなるでしょう。お金も大切ですが、役割を持って生活できることは、アイデンティティの確立にも重要なので、一度検討してみてはいかがでしょうか。

若年性認知症の方への対応

本人を尊重しながらサポートする

若年性認知症の対応には、高齢者と違い困難な場合があります。認知症の進行スピードが早いといわれることもあり、どんどん悪化していくかもしれません。ひとつひとつの対応に注目して対策を検討していきましょう。

症状に対しての対応

認知症の代表的な症状である記憶障害に対しては、付箋・メモ・張り紙などを活用すると良いでしょう。まだまだ自分でできることが多いので、自分でできるような工夫を行うことが必要です。例えば以下のような対策をしてみてはいかがでしょうか。

  • 大きなカレンダーを目のつく位置に貼って予定を書く

  • 引き出しなどに何を片付けたかを書いて貼る

  • 薬は小分けにして日付や飲む時間をわかりやすくする

これらの対応をすると、本人も思い出しながら適応できます。しかし、認知症の状態が進むとメモや張り紙の意味が理解できなくなってしまいます。

高齢者と違い若年性認知症の方は、外出する機会も多いです。しかし、外出先から帰って来られない場合も考えられます。そんな場合は、スマホなどのGPSを活用すると良いでしょう。以下のような方法を試してみてはいかがでしょうか。

  • 外出先から帰ってこられなくなる場合は追跡できるようにする

  • スマホを失くす可能性がある場合は靴や服にGPSを装着する

  • 名前・住所・連絡先をカバンや財布などに入れておく

GPS自体を外してしまうと追跡できなくなってしまうので、外せない・見つからない工夫が必要です。

本人を尊重する

若年性認知症の場合は、不安や混乱など精神的に落ち着かない状況があります。できないことが増えることへの恐怖心も強くあるでしょう。本人はなんでもできると行動に移そうとしてヒヤヒヤする場面もあるかもしれません。

しかし、そんなときは、否定せずに見守る姿勢が大切です。また、説得や無理強いなど、本人が間違っているという印象を与えてしまうと、落ち込んだり興奮して怒ってしまうかもしれません。

感情的になると血圧の上昇や閉じこもりにつながることも考えられ、他の病気を誘発する可能性を高めてしまいます。できる限り、自尊心を傷つけない対応を心がけましょう。

若年性認知症の予防と治療

高齢者の認知症同様に根治治療はできません。しかし、進行の予防や認知機能を改善する方法としては、生活習慣を見直すことが大切です。

生活習慣の乱れは、睡眠障害や栄養状態の悪化などが起こり、他の病気を引き起こす場合もあります。例えば、うつ病や糖尿病などです。これらの病気になると、認知症の併発リスクも高くなってしまいます。

適度な運動を行えば、脳へ刺激を与えることができ、筋力低下も予防できるためとても効果的です。また、人との関わりが増えれば、脳が活性化するため、リハビリスタッフとの関わりも重要な要素となるでしょう。

若年性認知症の対策としては、薬やリハビリテーションを利用して症状を予防していくことが大切です。薬を使用する際は、医師の指示に従い用法用量を必ず守りましょう。

まとめ


まとめ

認知症は若い世代でも現れるものです。高齢者だけがかかるという固定概念があると若年性認知症の発見を遅らせてしまう場合があるので注意しましょう。

若年性認知症は高齢者の認知症状と同じ症状が現れます。年齢が若いことで、行動が速く、力強いなどの違いがあり、対応が困難になる場合もあります。また、経済的に困窮してしまう場合も多くあるので不安が大きくなるでしょう。

少しでも、気になる症状などがあれば、できるだけ早く病院に受診して相談すると良いでしょう。認知症には早期発見・早期対応が大切です。

一度、症状が出てしまうと完全に治せませんが、症状を遅らせることは可能です。そのためにも、生活習慣を見直し、健康的な生活を継続していきましょう。ストレスや生活習慣病を予防し、症状が安定すれば、記憶障害はあっても大きなトラブルなく過ごすことも可能です。

誰もが認知症になる可能性があるので、これを期に生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。今回紹介した内容で、若年性認知症の理解に繋がると幸いです。

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