脳血管性認知症ってどんな病気?症状の特徴や治療法まで紹介

「脳血管性認知症ってどんな認知症?」「アルツハイマー型認知症との違いは?」とお悩みではないでしょうか。脳血管性認知症は、アルツハイマー型認知症の次に多いといわれる認知症で、脳の障害を期に発症します。他の認知症とは違った特徴があり、対応が困難になる場合もあります。

今回は「脳血管性認知症」について紹介します。症状や対応・予防についても理解ができ、適切な対応が行えるようになるでしょう。ぜひ最後までご覧ください。

#認知症#病気
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

脳血管性認知症とは

アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症

脳血管性認知症は、4大認知症のひとつです。過去にはアルツハイマー型認知症と2大認知症と呼ばれていました。脳血管に何かしらの障害を受けることで、認知症状が現れる認知症です。

脳梗塞や脳出血などが原因となる場合も多く、脳が障害される場所によって現れる症状が異なります。また、原因となる病気は高齢者だけでなく、若い人にもリスクのある病気です。脳血管性認知症ではなく、高次脳機能障害と診断される場合も少なくありません。

症状としては、記憶障害や見当識障害が発生することに加え、歩行障害や手足のシビレ、感情のコントロールができないなどの症状が特徴です。また、60歳〜70歳台の男性が発症する割合が多く、女性に比べると2倍以上高いことも特徴のひとつです。

脳血管性認知症は原因となる病気の治療を行えば、症状の緩和や改善ができる可能性のある認知症です。

脳血管性認知症の症状

感情のコントロールができずに怒ったり泣いたりすることがある

脳血管性認知症の主な症状は、他の認知症と同じように中核症状が現れます。中核症状には以下のような症状があります。

症状

詳細

記憶障害

記憶が抜け落ちてしまう

見当識障害

時間・場所・人がわからなくなる

実行機能障害

計画を立てて物事を実行できなくなる

失行

行動をわかっているが行なえない

失認

物が認識できない

判断力の低下

言われていることが理解できない

これらの中核症状が初期症状としてみられます。しかし、脳血管性認知症には他にも様々な症状があります。

まだら認知症

まだら認知症とは、脳の障害部分と、正常部位に偏りが生まれることから発生する認知症です。保たれる能力と低下した能力に差ができることが特徴で「朝動けていたのに夕方には動きが悪い」「忘れてしまっていたことを時間経過で思い出す」といった症状があります。そのため、年相応のもの忘れと感じて診断が遅れてしまう場合もあるでしょう。

感情のコントロールができない

前述したまだら認知症は、脳が正常に働いている時間帯には本人も自覚している場合があり、できないことへのツラさや不甲斐なさを強く感じてしまいます。

そのため、感情的になりやすいといった特徴があり、以下のような症状として現れる場合があります。

  • 喜怒哀楽の変化が激しい
  • 急に怒り出す
  • 泣く(感情失禁)
  • 夜間せん妄(夜になると別人のような言動・意識レベルの低下)

このような症状が引き起こされるため、対応が困難になる場合もあるでしょう。

また、脳の障害部位によっては、以下のような症状がみられます。

  • 麻痺
  • 感覚障害
  • 歩行困難
  • 言語障害
  • 排泄障害
  • 嚥下障害

このように、認知症状以外にも身体的な障害が併発する可能性の高い認知症といえるでしょう。

脳血管性認知症の進行は、比較的ゆっくりといわれていますが、急激に進行してしまう場合もあります。脳梗塞を繰り返すと、その度に症状が悪化してしまう可能性があるので注意が必要です。早期に脳血管性認知症の原因となる疾患の治癒ができるかがポイントといえます。

脳血管性認知症とせん妄の違いについて

環境により一時的に現れる認知症状に似た症状

せん妄は精神障害の一種です。高齢者に出やすい障害で、薬の副作用や混乱によって引き起こす場合があります。特に、脳血管障害は自身の感情をコントロールしにくく、混乱が生じやすい状態なので、比較的せん妄症状が現れやすい傾向にあります。

せん妄の症状は、時間や場所の認識ができない・注意力の欠如・思考能力の低下などの症状があり、認知症と似た症状が現れます。短期間のみの発症や、病院にいる間のみに現れるというケースがほとんどです。薬の影響で現れる場合も多いので、内服のコントロールによって抑えられる場合もあります。

認知症は発症時期がわからず徐々に進行するものです。せん妄は認知症と似た症状がありますが、一時的にみられる症状となります。認知症の症状と似ていることから、一時的なせん妄でも認知症と判断されてしまう場合もあります。

脳血管性認知症の原因

事故をきっかけに脳血管性認知症になる方も

脳血管性認知症は、脳の障害によって引き起こされる認知症です。主な原因として、脳の血管がつまってしまう「脳梗塞」や、脳血管からの出血による「脳出血」などが考えられます。

転倒や交通事故などで頭部を打撲した場合、そのときは何もなくても徐々に脳内で出血が起こる場合もあるので、注意が必要です。脳の障害が起こると、神経細胞も影響を受け、正常に行動や理解・判断できなくなってしまうのです。

ほかの認知症に比べ、発症の原因がハッキリしていることから、予防や対策がしやすい認知症といえます。しかし、高齢になると気づかないレベルでの脳梗塞を繰り返す方もおり、わからない間に発症し、徐々に進行してしまう可能性も高いです。

要望や対策方法は日々進歩しており、発症数が減少してきてはいますが、アルツハイマー型認知症の次に多い認知症なので注意が必要です。また、アルツハイマー型認知症でも脳血管性認知症を発症する場合もあります。この場合は「混合型認知症」と呼びます。

脳血管性認知症の治療

症状に合わせた薬やリハビリテーションが重要

脳血管性認知症には、原因となる脳血管障害へのアプローチが重要です。主に薬物療法やリハビリによる機能維持や、回復を目的とした治療方法があります。

薬物療法

脳血管性認知症の治療には、脳血管障害の再発予防と認知症状への対処療法があります。脳が障害される部位によって異なる症状のため、症状に合わせた薬を使用していきます。

症状だけでなく、脳血管障害の原因となる高血圧や糖尿病などの疾患に対してのコントロールも必要となるでしょう。これらの症状を抑えることができれば、脳血管障害の再発予防ができるため、結果として脳血管性認知症の悪化を予防できると考えられるでしょう。

現れる症状の中には、うつ症状や意欲低下もみられます。そのため、抗うつ剤や脳循環代謝改善剤を使用するケースもあります。また、血流を良くする薬を使う場合もあるので、転倒や怪我には注意が必要です。転倒や怪我を予防するには、次で紹介するリハビリテーションで予防していくと良いでしょう。

一番大切なことは医師の指示を守ることです。内服薬を独自で調整すると、体調不良を招いたり、症状の悪化につながったりする場合もあります。担当のドクターに相談してみると良いでしょう。

リハビリテーション

リハビリテーションを行うと、脳の活性化につながり、同時に運動機能の低下予防が期待できます。脳血管障害に様々な症状が現れるため、症状に合わせたリハビリテーションが必要となってくるのです。

理学療法や作業療法による運動機能低下へのアプローチや、場合によっては言語聴覚士によるリハビリテーションも重要となるでしょう。

脳血管性認知症に対してのリハビリテーションは、長期的な計画で考えていくことが大切です。リハビリテーションに過度なストレスを感じる方もいるので、個々に合った柔軟な対応が必要となります。対応や判断が難しい場合は医師や相談員などの専門家に協力を依頼するのもひとつの手段です。

リハビリテーションを行うには、医師の指示を受ける必要があります。日頃の様子やできることできないことなど、できる限り明確に伝えるようにしましょう。

脳血管性認知症の診断基準

アルツハイマー型認知症との区別が難しい

脳の障害を確認するためには、頭部CTやMRIを利用して診断します。特に前頭葉・側頭葉・後頭葉・海馬などは、認知機能に重要な役割があるので、これらの部位に梗塞や出血が見つかると脳血管性認知症と診断できるでしょう。しかし、脳血管性認知症は、アルツハイマー型認知症との区別が難しいといわれています。

脳血管性認知症も後期になるとアルツハイマー型認知症と同じような症状が現れます。また、混合する場合もあるので、後期になればなるほど判断は難しくなるでしょう。

高齢者の場合、自覚がないまま小さな脳梗塞が発生している場合があります。頭部打撲や大きな認知症状があれば、脳の画像診断を行いますが、せん妄やまだら認知症が進行している場合、一時的な症状のため見落す場合もあるので注意が必要です。

徐々に進行し、気づいたときには脳血管性認知症はすでに進行してしまっている場合もあります。その頃には、アルツハイマー型認知症と同じ症状が出ている場合も多いです。前述したように、対処方法は変わってきますので、できるだけ早い対処が求められます。

脳血管性認知症は治る?

脳血管性認知症は完全に治癒することは難しいと考えられています。脳の障害は再発するリスクも高く、繰り返して起こす方も少なくありません。また、脳血管障害が起こると、細胞の死滅が起こり、一度死滅した細胞は復活しないのです。このことから、完全に治癒するとはいえません。

しかし、障害を受けた脳細胞の機能を、隣の健康な脳細胞が補うことがあり、認知症状を緩和して機能を補うともいわれています。

脳血管性認知症の予防法

気づかないことが多い高血圧の予防が重要

脳血管性認知症の原因は、脳血管障害です。脳血管障害を予防することで脳血管性認知症を予防できると考えられています。一般的に考えられるのは「高血圧」です。高血圧は、身近な疾患ではありますが「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれ、自覚症状がなく経過する人も少なくありません。普段測定する機会も少なく、健康診断や病院でたまに測定する程度では、見つからない場合もあるでしょう。

脳血管性認知症を含め、原因となる脳血管障害を予防するためには、毎日の血圧測定(時間ごとの管理)が大切です。できるだけ同じ時間・同じ状況下で測定し記録していくと効果的です。

また「隠れ高血圧」も注目を集めています。ストレス過多の現代人では、職場や接する人といった特定の条件下のみに血圧が上昇する問題があります。例えば職場でストレスを抱えている場合は、1日のうち、10時間近く高血圧を維持している可能性もあるでしょう。

自宅で毎日、血圧測定を行っていても発見できない場合が多いため「仮面高血圧」と呼ばれることもあります。また、喫煙や飲酒も高血圧の要因となるので、注意が必要です。

ストレスを強く感じている場合やぼーっとする時間があるなど、少しでも違和感を感じたときはできるだけ早く病院に行って診断を受けるようにすると良いでしょう。

脳血管性認知症への対応・ケア

基本的には他の認知症と同じ

認知症対応に重要なケアは「環境の整備」です。まずは、本人が生活しやすい環境を整えることから始めると良いでしょう。特に、血管性認知症は身体的な症状もみられるため、段差の解消や福祉用具の活用を行って、転倒予防を考えていきます。前述の通り、転倒してしまうと脳への衝撃による症状の悪化や、血流を良くする薬の作用で出血量が増えるなどの影響があります。

また、関わる人たちも環境の一部です。感情のコントロールが難しくなるため、関わる人達が脳血管性認知症に理解がないと、本人はツラい日常を送らないといけません。その結果、うつ病やその他の精神疾患が併発してしまい、対応がより複雑になってしまう場合もあるでしょう。まず、安心できる環境で症状の安定を図ることに努めましょう。

次に、症状の改善を図っていきます。脳血管性認知症の場合、原因となる病気の再発予防が効果的です。規則正しい生活を心がけ、食事や運動の見直しが大切になります。今まで行ってきた生活習慣を可視化すると、より具体的に改善方法を見いだせます。

食事は、血圧が上がるもの(塩分・油もの等)を控えることが大切です。バランスの良い食事を意識して、健康管理に努めましょう。また、日頃から運動を取り入れ、筋力低下を予防することで転倒などの事故を軽減できるでしょう。

日中に運動を行うと、脳の活性化や夜間の睡眠促進効果が期待でき、認知症状のひとつ「昼夜逆転」を予防できます。また、日の光を浴びることで、セロトニン(幸せホルモン)の分泌を促進し、自律神経の乱れを整える効果も期待できます。

脳血管性認知症の対応をするには、まだら認知症や感情のコントロールが難しいことを知っておく必要があります。現れる症状や感情の波に左右されてしまうと、お互いストレスを高めてしまいます。症状を理解し、柔軟な対応ができれば、症状が安定し穏やかに過ごせる場合も多いです。

まとめ

アルツハイマー型認知症の次に多いといわれる脳血管性認知症ですが、原因となる病気の予防や対処を行うと、症状を抑えられる場合があります。感情のコントロールができない特徴があり、対応を困難に感じる場合がありますが、状況に合わせて柔軟に対応する必要があります。

適切な対応を行うことで、症状の緩和や改善が図れる認知症です。特徴を理解し、長期的な対策を検討していくと良いでしょう。特に高血圧には注意して、ストレスの軽減や普段から食事や運動などの生活習慣を見直していきましょう。

今回の記事が、脳血管性認知症の理解につながると幸いです。

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