アルツハイマー病とは?症状や対応のコツについて解説

アルツハイマー病は、日本で一番多い認知症ですが、記憶がなくなる以外の症状を知らない人も多いでしょう。記憶の障害だけでなく様々な症状があり、ひどくなると対応が困難になる場合もあります。今回は、アルツハイマー病について、わかりやすく紹介しています。アルツハイマー病の特徴や症状を理解すると、関わリ方や考え方が変わり、アルツハイマー病の予防にもつながるでしょう。ぜひ最後までご覧ください。

#認知症#病気
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

アルツハイマー病とは

最も多く診断されている認知症

認知症は様々な種類がありますが、その中でもアルツハイマー病は、最も認知度が高い認知症です。認知症と診断されている方の60~70%と言われています。そのため「認知症=アルツハイマー病」と認識している人も多いくらいです。

アルツハイマー病は、女性に多く発症する傾向で、比較的緩やかに進行するのが特徴です。

現在の治療方法では、治癒ができず徐々に症状は進行してしまいます。進行によって、記憶障害や見当識障害などの症状が悪化し、言葉のキャッチボールができない・自分で計画を立てて行動ができないなどの状態になります。

アルツハイマー病の症状

中核症状から、不安や混乱が起こる

症状には脳の細胞が原因として起こる中核症状と、環境などの影響から起こる行動心理症状(BPSD)があります。

中核症状

中核症状は認知症に起こる症状のひとつで、記憶障害や見当識障害などが起こります。中核症状が起こることで、不安や混乱などの精神状態が起こりやすく、不安定な状態になる場合が多いです。

一般的に知られている症状は、記憶障害です。特に、最近の記憶「短期記憶」が低下し、早期に忘れてしまうため、覚えられず同じことを何度も質問するなどの症状があります。

また、見当識障害の影響では、時間・季節・場所・人物などの把握が困難で、生活に支障が生じます。そのため、生活リズムが崩れて、夜間に覚醒し日中寝てしまう「昼夜逆転」や、真夏に重ね着をしてしまうなどのケースが起こる場合もあるでしょう。

ほかにも、食事が認識できない・食べ方がわからない・計画立てて行動できないなどの症状がみられます。

行動心理症状(BPSD)

中核症状に対して、周りの環境(介護者含む)が影響し、行動心理症状(BPSD)が現れます。

これらの症状が「認知症=大変」というイメージを作っています。そのため、行動心理症状につながらないような環境を作ることが大切です。

アルツハイマー病は上記のような症状がゆっくり進行していきます。予防や進行を遅らせるためには、早期発見が大切です。しかし、ゆっくり進行することから「ただの物忘れ」や「年相応」と考えられ、発見が遅れるケースもあります。

次に、アルツハイマー病と物忘れの違いについて見ていきましょう。

アルツハイマー病ともの忘れの違い

忘れたこと自体を忘れてしまうアルツハイマー病

アルツハイマー病の早期発見をするためには、もの忘れとの違いについて知っておかなくてはいけません。特に初期症状には、区別が困難な場合も多いです。アルツハイマー病の初期症状や具体例を以下にまとめました。

アルツハイマー病の場合、上記のような症状が起こります。症状の悪化によっては、行動心理症状につながる可能性もあるので注意しましょう。

もの忘れでは、上記のような症状まではつながりにくいので、線引はしやすいでしょう。また、もの忘れでは、忘れた内容を思い出せますが、アルツハイマー病の場合「忘れたこと自体を忘れている」、約束を忘れたのではなく「約束自体をしていない」などと主張するなど、そもそもの事象が記憶から消えてしまっているのです。

そのため、無理に思い出させようとしたり、問い詰めたりしても言い争いになるだけで解決は難しいでしょう。では、アルツハイマー病はなぜ起こってしまうのでしょうか?

アルツハイマー病の原因と予防方法

健康を意識することがアルツハイマー病の予防につながる

アルツハイマー病の原因は残念ながら解明されていません。医療の進歩や研究によって、脳の萎縮や変形があるといった症状は発見されています。
また、年齢や遺伝的な要因もあるといわれています。しかし、根治治療するには至っていないのが現状です。

アルツハイマー病予防には多くの情報があります。その中でも、生活習慣に関する予防方法が効果的と考えられます。生活習慣を見直すと、予防や改善されたというデータもありますので、効果は期待できるでしょう。取り組みは以下の通りです。

 適度な運動

週に3日以上のウォーキングや、毎日の体操などをおこない、脳に刺激を与えます。身体を動かすことで、筋力低下や閉じこもりの予防ができます。また、外出する機会をもてば、他者との関わりが生まれるため、身だしなみを整える習慣や会話を行うことも増えるでしょう。

最近では、脳と身体を同時に動かす運動で、認知症予防に効果的な「コグニサイズ」も注目を集めています。体操やマシンを使って、計算問題やゲームなどを行なう「コグニダンス」「コグニバイク」などと呼ばれるものもあります。室内でできるのも特徴のひとつです。

また、日光にあたるというのは、セロトニンというホルモン分泌を促進し、うつ状態の改善や予防が期待できます。毎日を健康的に過ごすことで、アルツハイマー病の予防につながるでしょう。

健康的な食事

食事のバランスを整えることも重要です。必要なカロリーコントロールや食物繊維の摂取で排便の促進や健康状態の維持も期待できます。

高齢になると、入れ歯の方も多く、固いものを敬遠しがちですが、咀嚼(噛む)は、認知症予防に効果的と言われています。咀嚼を行うには、できるだけ自分の歯が良いと考えられるので、間接的に「口腔ケア」も必要となるでしょう。口腔ケアを行なえば、肺炎予防につながり、入院する機会を減らせます。

他者との関わり

閉じこもりになりがちな高齢者ですが、できるだけ他者と関わることが大切です。デイサービスの利用や、地域の活動に参加することも大きな効果が期待できます。

環境の変化

アルツハイマー病は引っ越しや同居家族の変更などの、環境の変化に弱いといわれています。独居なので「子どもの家に呼び寄せる」「一緒に住む」「施設への入所」など、環境が変わると不安を増大させてしまうので、注意が必要です。

ご本人が望む暮らしの実現

ご本人が無理なく続けられる予防対策の実現が大切です。運動や他者交流が効果的でも、ご本人がストレスを感じているようであれば、改善が必要になるでしょう。お酒やタバコなど、健康に良くないといわれるものでも、適度な量であれば、必要なケースもあるかもしれません。


このように、ご本人が楽しみながら健康的に生活できることが、アルツハイマー病の予防になるといえます。また、アルツハイマー病の予防対策は結果が見えにくいものです。そのため、効果を感じながら行なえないので、気持ちの継続がしづらいという一面があります。どんなに良い予防法があっても、ご本人によっては逆効果になる場合があることは覚えておくと良いでしょう。

また、筋力低下を予防すると、転倒や骨折などの事故も予防できるでしょう。健康的な生活を維持できないと、入院のリスクも高くなります。入院することで、筋力低下や脳への刺激が減ってしまいます。そのため、アルツハイマー病につながってしまう可能性が高くなってしまうので注意が必要です。

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 アルツハイマー病の治療について

 治療困難な症状で付き合い方が大切

 アルツハイマー病は前述の通り、根治治療はできません。うまく付き合っていきながら、症状の進行を予防する必要があります。最近では、脳内に不足している物質がわかってきていることから、薬やサプリメントで補っていくことも可能となりました。

薬による予防や改善には、副作用に注意が必要です。副作用として、ふらつきや思考の鈍麻(感覚がにぶくなること)などが出るものもあるので、内服後に変わりはないか確認が必要です。転倒や骨折などが起こると、身体機能や精神状態の低下が考えられます。

薬を使わない方法としては、環境を整えることが重要です。事故に繋がりにくい環境や本人を理解し、寄り添う必要があります。アルツハイマー病に理解がない人では、本人の気持ちを汲めずに、言い争いになったり、放置したりしてしまうかもしれません。

その結果、不安や混乱が増えてしまい、アルツハイマー病の発症を後押ししたり、進行速度を加速させたりしてしまいます。閉じこもりによる孤独感や不安状態の継続は、アルツハイマー病の天敵ともいえるので注意が必要です。

 アルツハイマー病の診断について

診断を受けて適切な治療を受ける

アルツハイマー病を確定するには、専門機関で検査し医師に診断してもらう必要があります。診断してもらうことで、薬の処方や、介護サービスの導入へとつなげられます。初期症状で紹介した症状がみられる場合には、できるだけ早く専門医に相談すると良いでしょう。

しかし、ご本人が受診を拒否されるケースは少なくありません。強引に受診を勧めることや、連れて行くことはご本人にとっては大きなストレスにつながるでしょう。ストレスを感じることで、アルツハイマー病の進行や行動心理症状につながる場合もあります。

自宅でも簡易に評価ができる「長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)・ミニメンタル・ステート検査(MMSE)といった検査方法があります。しかし、あくまでも簡易的なものなので、これらのスケールを用いてから、受診を促すと良いかもしれません。

アルツハイマー病のケア

症状を理解すれば、行動心理症状を予防できる

現段階では、アルツハイマー病を治す方法がありません。そのため、末永く付き合っていくためには、アルツハイマー病に対してのケアが最も重要と考えられます。

アルツハイマー病の中核症状を理解して、安心して過ごせる環境を整える必要があります。まずは、話を聞くことからはじめていきましょう。アルツハイマー病の進行度合いによっては、話のツジツマが合わないことや理解できないこともあるかもしれません。

その場合でも、話を聞くというだけで、ご本人は「話を聞いてもらえる」という安心感につながります。安心できずに不安や混乱を生じると、行動心理症状につながり、さらに対応が困難になってしまうかもしれません。

行動心理症状につながるのは、環境の問題です。関わるものすべてが環境になるので、接し方を含め、周囲の環境を整えていくことに努めましょう。

 アルツハイマー病の対応のコツ

固定概念を取り除き柔軟な対応が必要

アルツハイマー病の対応で大切なのは「柔軟な思考」です。「こうあるべき」「普通は〇〇」といった思考では、アルツハイマー病の対応は困難になります。アルツハイマー病の人は、周りには理解できない行動をとる場合があります。

しかし、その行動は「適応行動」です。記憶障害や実行機能障害などにより、適切に判断できなくなることがアルツハイマー病の特徴といえます。アルツハイマー病の人は決して周囲に迷惑をかけたいわけではなく、反対に迷惑をかけないように行動した結果、うまくできずに周囲がびっくりする行動になってしまう場合がほとんどです。

「適応しようとした結果うまくできなかった」という背景を理解できれば、柔軟な対応や考え方ができてくるかもしれません。

ご本人はもちろん、自身のメンタルも安定する場合もあるので、柔軟な対応や考え方が重要になります。

 若年性アルツハイマー病

原因は血管性認知症が多くアルツハイマー病も高い発症率

64歳以下で発症するアルツハイマー病を若年性と呼びます。18〜39歳の成人期と40~64歳の初老期に分けられますが、総称したものが若年性です。若くて発症する方は稀ですが、実際、日本には約4万人の方がいると言われています。

年齢が若い分、仕事や家族に影響が大きく、経済的負担を感じる場面も多いでしょう。若年性の場合は、アルツハイマー病よりも、脳へつながる血管への障害から起こる血管性認知症が割合として多いです。次に多いのが、アルツハイマー病となります。

血管性認知症の場合は、原因となる病気の治療を行なえば、症状は改善されますが、アルツハイマー病の場合は前述の通り、症状の軽減は図れても、治癒はできません。

まとめ

アルツハイマー病は、現状治すことのできない認知症です。しかし、症状の進行を遅らせることは可能と考えられています。単なるもの忘れと考えず、初期に見られる中核症状を見落とさないように観察していきましょう。

中核症状を理解し、早い段階での処置や対応を行えば、行動心理症状につながることは少なくなるでしょう。

そのためには、アルツハイマー病の特徴を理解し、柔軟な思考や対応を行えるかどうかが大きなポイントです。まずは、話をしっかりと聞き、安心してもらえるような対応を心がけましょう。

アルツハイマー病は、記憶が欠落していきますが、すべての記憶が消えてしまう訳ではありません。特に、嫌なことに関しては気持ちとともに、しばらく残る場合もあります。「どうせ忘れるから」と考え、不適切な対応をしていると活気も下がり、行動心理症状に繋がる場合があるので注意が必要です。

今回の記事を参考に、アルツハイマー病を理解して、安心できる環境を整えていくお役に立たれば幸いです。​

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