認知症の症状とは?正しい対応方法を徹底解説

「何回も同じことを言う」「すぐに物をなくす」「怒りっぽい」このようなことで、認知症について悩んでいませんか?認知症の症状は、いまだに理解できない部分も多く、現状治すことができない病気です。認知症の症状は様々あり、勘違いして理解している人も多くいます。

今回は、認知症の症状や対応方法を詳しく解説していきます。最後までみていただくことで、適切な認知症の対応ができますので、ぜひご覧ください。

#認知症#病気
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

認知症とは

認知症について理解が深まったのは比較的最近

認知症は、脳の病気や萎縮など、様々な原因によって、認知機能が低下していくことで現れる症状を指します。正確には、認知症という病名ではありません。以前には「痴呆(ちほう)」と呼ばれ、さらにさかのぼると「呆け(ボケ)」と呼ばれることもありました。近年でも「痴呆」と呼ぶ人もおられます。

しかし「痴呆」や「呆け」という呼称は、偏見のイメージが強く、2004年に「認知症」と呼ぶことが定められました。

認知症について理解が深まり始めたのは、2001年頃といえます。理由として、オーストラリア出身の「クリスティーン・ブライデン」がニュージーランドで行なわれた「第17回国際アルツハイマー病協会国際会議」で、はじめて認知症本人として講演をおこないました。

クリスティーン・ブライデンは、1995年に46歳の若さで、アルツハイマー病と診断されました。当時、彼女はオーストラリア政府の職に就き、3人の娘がいるシングルマザーでした。その後、現在の夫と再婚し、世界各国で講演や本の出版をおこなって、認知症の普及活動をしています。

4大認知症

アルツハイマー型認知症が最も多く認知されている

現在、認知症は大きく4つに分類されています。一番多いのは、脳の萎縮や変形から起こる「アルツハイマー型認知症」です。現在でも「認知症=アルツハイマー」と認識している人も多いくらいです。アルツハイマー型認知症は、女性に多く、進行が緩やかという特徴があります。そのため、単なる物忘れや年相応の物忘れと判断され、発見が遅れてしまうケースもあります。

次に多いのが「血管性認知症」です。脳梗塞や脳出血などの脳血管障害からはじまる認知症です。数年前までは、アルツハイマー型認知症と血管性認知症の2大認知症といわれており、比較的認知度の高い認知症といえます。発症は男性に多い傾向で、急に怒りだす・まだら認知(一部の記憶が残っている状態の記憶障害)と呼ばれる症状が特徴です。アルツハイマー型認知症と合併している人もいます。

3大認知症と呼ばれ、注目された「レビー小体型認知症」です。レビー小体型認知症は、初期症状に手足の痺れや見えないものが見える「幻視」、本来ない音や声が聞こえる「幻聴」といった症状が特徴です。難病のひとつパーキンソン病に似た症状が現れる認知症です。時間帯によって、ぼーっとするときや、活動的なときがあり、対応が困難な場合もあります。他の認知症に比べ、運動機能などに症状が出やすい認知症です。

最後に「前頭型側頭型認知症」があります。ピック病とも呼ばれる認知症で、4060代と若い時期に発症するケースが多いです。感情の抑制がつかず、行動障害や社会生活に反する行動をとるという特徴があります。以前の本人からは想像もつかない行動をとる場合もあります。特徴的な行動は、同じ時間に同じ行動を起こす「常同行動」や、万引きや一方的に話し続け、相手の話を聞かないなどの「反社会的行動」があげられます。

これらの認知症を総称して「4大認知症」と呼ばれているのです。また、このほかにも認知症はあり、その数およそ70種類以上ともいわれています。

認知症に見られる症状

症状は2つに分けて考える必要がある

認知症に見られる症状は、主に2つに分けられます。

  • 中核症状
  • 行動心理症状(BPSD

中核症状は認知症になると現れる症状で、主に記憶障害や見当識障害などがあげられます。対して行動心理症状は、中核症状に環境が影響し現れる症状です。

ここでいわれる環境とは、不適切なケア・関わる人・場所・音・臭いなど様々なものが当てはまります。

障害

症状例

記憶障害

記憶の一部やすべてを忘れてしまう

主に短期記憶といわれる新しいことが覚えられない

何度も同じことをいう・聞く

よく探し物をしている

同じものを買う

見当識障害

日にちや曜日がわからない

今いる場所がわからない

子どもなど知っている人を忘れてしまう

理解・判断力の低下

複数のことが同時におこなえない

会話の中で話が理解できない

悪質な勧誘に騙される

実行機能障害

計画を立てて行動できない

突発的なことに対処できない

失語

言葉がでない

意思とは違った言葉が出る(例:台所をトイレと言う)

失認

認識を間違う(例:足を骨折していても歩く)

失行

できていた行動ができない(例:服に足を通してはく)

次に、行動心理症状についてみていきましょう。

症状

行動例

不安・うつ症状

不安が強く落ち着かない

閉じこもりがちになる

暴言・暴力

怒りっぽくなり状況によっては攻撃的になる

焦燥感

(しょうそうかん)

焦りの気持ちがあり落ち着かない状況が続く

介護拒否

人の援助を受けつけない

睡眠障害

夜間でも覚醒し睡眠がとれない

日中に寝るようになる(昼夜逆転)

徘徊

常に歩き回る

物とられ妄想

自分のものを盗られたと騒ぐ

弄便(ろうべん)

便をまるめたり、壁や布団につける

異食

食べられないものを口にする

帰宅願望

帰りたいと訴え続ける

実際に住んでいる家でも起こることもある

幻視

実際にはないものが見える

幻聴

実際にはない音や声が聞こえる

これらは一例で、他にも様々な症状が現れるので、注意深く観察が必要です。

認知症の症状は環境の影響から起こる

関わるすべてのものが環境

行動心理症状は、前述した通り、環境によって引き起こされます。認知症の症状として問題視されるのは、主に行動心理症状です。中核症状では、それほど大きな問題にならないケースも多いですが、行動心理症状が現れると、他者とのトラブルや本人の健康被害が心配されます。

そのため、過去には行動心理症状を「問題行動」と呼んでいました。しかし、認知症の理解が深まるにつれ、問題行動は他者の主観であり、本人は問題を起こしたい訳ではないと理解されるようになりました。

その後「(中核症状に対しての)周辺症状」と呼ばれるようになり、現在では「行動心理症状(BPSD)」と呼ばれるようになりました。

環境の影響から現れるといわれる行動心理症状ですが、その環境には様々なものがあります。

例えば、場所・音・臭い・家族・介護者・地域住民・お店の店員など、関わるすべてのものが該当します。この「環境」を理解しておくことが、認知症を理解する近道になるかもしれません。理解して関わらないと、認知症の人がストレスや混乱を感じ、行動心理症状が現れ、さらに対応が困難になるという悪循環が生じます。

認知症の症状と対応方法

基本的な対応を忘れないように気を付ける

認知症の症状は人それぞれで、対応するのは大変な場合も多いでしょう。具体的な対応方法は大きく2つに分けられます。

  • 基本的な対応
  • 症状別の対応

基本的な対応とは、認知症の症状に対して理解・傾聴・共感を行いながら接していきます。次に症状別の対応は、ひとつひとつの症状に対して具体的な対応を考えることです。

認知症に対して、あまり知識がない人は、後者を考えがちですが、大事なのは前者の基本的な対応です。具体的な対応を考えるにも、認知症を理解していないと、不適切な対応になる場合も多く、本人を混乱させてしまう場合があります。

認知症を発症して一番困っているのは、発症した本人です。そのことを忘れず、寄り添う対応が、何よりも大切になります。基本的な対応をしっかり行えば、行動心理症状につながらず、周囲も安心して対応していくことができます。

認知症の症状に対しての理解

困っているのは認知症を発症した本人

認知症の対応は難しいと考える人は多いです。まずは、冒頭から紹介している「4大認知症」を理解しましょう。それぞれの症状が違うので対応方法は変わります。大前提として認知症で困っているのは「本人」です。

家族や介護する側も困っている場合が多いですが、記憶が無くなる・周りの理解がないなどの状況が続くのは、とてもしんどいと考えられます。あなたも、鍵や財布などの貴重品を落としたり、なくしたりした経験はありませんか?

そのとき、家族・友人・警察など、一緒に探してくれそうな人たちが、誰も探してくれなかったらどうでしょうか?とてもツラい思いをするのではないでしょうか?そのような状況が、日々続いていると考えると、理解しやすいかもしれません。

介護する人は、誰も認知症になったことがないので、理解できないのは、しかたのないことかもしれません。しかし、わからないからといって、不適切な関わりを続けることは、悪影響しかありません。また、嘘をついたり、軽くあしらったりしても結果は一緒で、あとでより大きな問題となって返ってくることもあります。

現在、認知症は治る病気ではありません。そのため、末永く付き合っていくことになります。不適切な対応を続けても逆効果になる場合があるので、根底にある中核症状や環境を理解して付き合っていくことが大切です。

認知症の人の立場に立って考える

他者に迷惑をかけたくない

元々、問題行動と言われていた認知症の症状ですが、問題と感じるのは周囲の人であり、本人は問題と感じてはいません。

混乱しながらも自分の見えている世界の中で必死に適応しようと行動しているのです。しかし、周りからは理解されず問題のある行動とみられてしまいます。

例えば徘徊について考えると「トイレの場所が分からない」ここがどこかわからない」帰る場所を探している」このような不安な気持ちで生活をされているのです。ただ、トイレや出口を探しているだけと考えられます。

周りから見ると、意味もなくただ歩き回っているだけに見えてしまい、徘徊と呼ばれるようになりました。このような、すれ違いが日々起きているとすれば、認知症の人はとても生きづらい環境にいるといえるでしょう。

「なにか探してますか?」とひとこと声をかけてあげるだけで、安心感を感じてもらえるかもしれません。

認知症に最初に気づくのは

気づいたときには認知症は進行している

では、認知症になった時一番最初に気付くのは誰でしょうか?

「配偶者」「子ども」「親戚友人」とさまざまなケースもありますが、多くは認知症を発症した本人と言われています。

例えば、物忘れが増えた、わからないことが増えた、できていたことができなくなった、このような症状が現れたとき、誰もが不安になると思います。

あなたなら、このようなときどうするでしょうか?多くの人は、家族や友人に気づかれないよう隠すのではないでしょうか。そのため、家族でも気づかないうちに、認知症が進行してしまい、家族が気付いたときには「認知症の症状を隠せない状況」つまり認知症がある程度進行した状態と言えます。

家族からすると「どうして話してくれなかったのか」と悲観する人もいますが、自分だったらどのような気持ちで過ごすだろうと、想像してみると良いでしょう。

認知症の人の心理状態を知って対応を変える

心理ステップを理解して適切な対応を

病気には受け入れるまでの心理ステップがあります。大きく分けると以下の通りです。

  • 否定
  • 混乱
  • あきらめ
  • 需要

「否定」は、病気を知ったときに起こり「なぜ自分が」「そんなはずはない」など発症したこと自体を否定する時期です。

「混乱」は、病気を認識し「どうなってもいい」と自暴自棄になる人もいるので注意しましょう。また、生活上での困りごとをすべて病気のせいにしてしまい、正しい判断ができなくなる場合もあります。

その後「悩んでいてもどうにもならない」と「あきらめ」次の行動をとりはじめるでしょう。

最後に、自分の病気を「受容」して向き合い、少しでもよくなるように考えだします。

このように、発症から受容までに段階があることを理解しておくとよいでしょう。また、受容してから混乱に戻ったり、否定と混乱を行ききしたりする人もいます。

現在の心理ステップによって、対応の方法が変わってくることを理解しておくとよいでしょう。どのステップでも、受容や共感するという基本的な対応は大切だと言えます。

認知症の対応に困ったら専門家に相談しよう

専門職を頼るのもひとつの方法

認知症の対応というのは、非常に難しくご家族だけで解決するには、困難な場合があります。抱え込むよりも他者に相談していくと良いでしょう。頑張りすぎた結果、介護する側が身体を壊すケースも珍しくありません。

身内が認知症だと、恥ずかしいと考える人もおられるかもしれませんが、認知症は決して恥ずかしいことではありません。現在は高齢者の5人に1人が認知症といわれています。診断を受けていないだけで、認知症になっている人もいるため、実際はもっと多いことが予測できます。

認知症の症状では、地域包括支援センター・ケアマネジャー・介護施設相談員などに相談してみるとよいでしょう。様々な困難なケースの相談や体験をしてきた、事業所・職種なので、きっとよりよい方向に導いてくれるでしょう。また、地域で開催している「認知症カフェ」などに参加し、困りごとの相談をするのも効果的です。

まとめ

認知症の症状は、認知症の種類や、その人の性格・生きてきた環境など様々な要素から形成されていきます。そのため、症状の出方も様々で、対応するのは困難に感じる場合もあるでしょう。

認知症の特徴や対応方法を理解し、適切なケアをおこなう必要がありますが、認知症本人のタイミングや心理ステップの段階などに配慮しなければいけません。

認知症の症状に悩んでいるのであれば、専門家に相談し助言してもらうと良いでしょう。認知症の方が安心できる環境を作らなければ、お互いが疲弊してしまいます。

認知症の人は、周囲に気づかって生きていると思われます。しかし、様々な機能の低下からうまくいかない状態です。このことを理解し、寄り添って環境を整えていくことが認知症の対応方法といえるでしょう。

参考:徘徊防止システムLYKAON|Enazeal株式会社


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