老人ホームでの暮らしとは?1日の流れや過ごし方を詳しく解説
老人ホームへの入居を検討する際、気になるのは老人ホームでの過ごし方です。はじめてのことなので、老人ホームでの暮らしについてイメージするのは難しいと思います。今回は、老人ホームでの1日の流れや食事・献立、過ごしやすい工夫やイベント・行事についてご紹介します。この記事を読めば、老人ホームでの暮らしがイメージできるようになるはずです。入居を検討するうえで、ぜひ参考にしてください。

目 次
老人ホームでの暮らしは現実には楽しいのか?
老人ホームでの暮らしは果たして本当に楽しいのか、不安に思われている方は多いと思います。もちろん感じ方は入居者さま次第ですが、結論、過ごしやすい工夫が多くなされている施設が多いです。
「老人ホームに入ったら、決められたスケジュールで毎日同じような単調な生活をしないといけない」と勘違いされている方は多いです。もちろん大まかなタイムスケジュールが決まっているところは多いですが、日ごとに変わるイベントやレクリエーション、食事などが豊富に用意されており、毎日違った楽しみを見つけやすいのです。
タイムスケジュールで知る老人ホームでの1日の流れ
多くの老人ホームでは、入居者に共通のタイムスケジュールがあります。食事やレクリエーション、自由時間などが設定されており、基本はそのスケジュールに沿って生活を送ります。なお、サービス付き高齢者向け住宅のように自立が前提の施設では、スケジュールは用意されておらず、1日を自由に過ごせる場合がほとんどです。
タイムスケジュールは施設によってさまざまですが、以下では一例をご紹介します。
老人ホームのタイムスケジュール(一例)
7:00 起床・モーニングケア(朝の身支度の介助)
起床時刻が決まっている施設もあれば、自由な施設もあります。また、入居者それぞれの生活習慣に合わせて、決まった時刻にスタッフが声をかけてくれるところもあります。洗顔や着替えなど、朝の身支度を介助する「モーニングケア」は、スタッフがそれぞれの居室を訪れて行います。介護スタッフが介助する場合もあります。朝に日課としてラジオ体操をしたり、読書をして過ごしたりと、入居者それぞれが自分のスタイルで朝の時間を過ごします。
8:00 朝食
共有スペースで朝食を食べます。主食をパンとご飯から選べる施設もあります。
9:00 健康チェック
看護師が毎朝健康チェックを行い、体温や血圧・脈拍に異常がないか、体調は悪くないか、睡眠は十分にとれたか、などをしっかり確認します。
10:00 入浴
健康チェックで問題がなかった入居者から入浴します。必要に応じて入浴介助が行われます。介助が必要ない方でも、入浴時に転倒や脱水症状などが起こらないよう、スタッフが安全確認を行う場合がほとんどです。入浴時間を午後にとっている施設もあります。また、居室に浴室が備え付けられている場合、ある程度好きなタイミングで入浴できるという施設もあります。
11:00 リハビリ・嚥下体操
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といった専門家によるリハビリを受けられるところや、独自のプログラムを用意しているところなどさまざまです。
また、昼食前に嚥下体操を行う施設が多いです。嚥下体操とは、顔や首の筋肉をほぐしたり鍛えたりすることで、食べ始めの誤嚥を防ぐ運動です。
12:00 昼食
食堂でみんなでお昼ご飯を食べます。老人ホームでは栄養士が食事の管理を行っており、栄養バランスに配慮した食事をとることができます。最近では食事にこだわっている施設が多く、和食・洋食から選べたり、食器や盛り付けが工夫された食事を楽しめたりします。
普通のご飯が食べられない場合は、食べやすいようペースト状にしたものや、減塩食・糖尿病食など、入居者の体調に合わせて食事を調節してくれるので安心です。
13:00 レクリエーション・イベント
レクリエーションやイベントでは、お散歩や楽しいゲーム・アクティビティなどを通じて脳や体を動かします。リハビリにもなり、他の入居者とコミュニケーションをとることができる大切な機会です。ここで新たな趣味を見つける方もいらっしゃいます。なお、レクリエーションやイベントはあくまでも任意参加である場合がほとんどです。
15:00 おやつ
おやつタイムを楽しみにされる入居者の方は多いです。季節やイベントに応じたおやつを出してくれる施設もあり、入居者にとっては楽しく至福のリラックスタイムとなります。
16:00 自由時間
テレビを見たり読書をしたり、他の入居者とおしゃべりに花を咲かせたりと、思い思いの時間を過ごします。施設によっては自由時間に外出できるところもあります。
18:00 夕食
昼食と同様に、食堂でみんなで夕食を楽しみます。季節のイベントに合わせた行事食が提供されるところもあります。
20:00 就寝・ナイトケア
就寝時刻は自由ですが、消灯時刻が定められている施設もあります。就寝時は、入居者に異常がないかスタッフが見守り巡回を行ってくれるので安心です。就寝後も、必要に応じてスタッフが排泄介助や2時間に1回程度体位交換(寝返り)を行います。

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老人ホームの暮らし
老人ホームでの過ごし方①食事・献立
食事は、1日の中でも大きな楽しみになります。老人ホームによって食事の内容は異なりますが、ここでは一般的にどのような食事が提供されるのか解説いたします。
老人ホームでは、栄養士が食事を管理しています。そのため、栄養バランスがきちんと考えられた食事が提供されるのです。また、利用者の体調に応じて大きく以下の3つの食事が提供されます。
- 普通食
- 介護食
- 治療食
普通食
普通食とは、一般に提供される定食やプレートなどの食事のことです。最近では、和食や洋食、中華などのバラエティ豊かなメニューの中から好きなものを選べる施設が増えています。季節のものを取り入れたり、食器や盛り付けにこだわったりと、利用者が食事を楽しめるよう工夫を施している場合が多いです。
介護食
介護食とは、入居者の噛む力や嚥下能力に合わせて食感や食べやすさを調整した食事のことです。
以下、代表的な介護食の種類です。
- ミキサー食:ミキサーですりつぶすことで、食べやすい液状にしたもの
- きざみ食:ペースト状にすることで、あまり噛まなくても食べられるようにしたもの
- とろみ食:片栗粉や葛粉などでとろみをつけ、飲み込みやすくしたもの
- ソフト食:やわらかく調理することで、あまり噛まなくても食べやすいようにしたもの
- ゼリー食:ペースト状にしたものにゼラチンや寒天などを加えてゼリー化することで、滑らかに喉を通り、なるべく美味しく食べられるよう工夫されたもの
治療食
治療食とは、持病や体調に合わせて工夫された食事のことです。塩分を控えめにした「減塩食」、食物繊維を豊富に含み脂質を減らした「糖尿病食」、アレルギーに対応した「アレルギー食」などが該当します。
治療食でも他の入居者と同じように食事を楽しめるよう、工夫している施設が多いです。

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老人ホームの食事・献立の内容
老人ホームでの過ごし方②イベント・レクリエーション
最近では、レクリエーションに力を入れている施設が増えています。レクリエーションやイベントを楽しみにされている方も多いです。単調になりがちな老人ホームでの生活にアクセントを加え、生活を楽しくする工夫と言えます。
老人ホームで行われる季節のイベント
普段のレクリエーションにプラスして、季節ごとにイベントを開催している施設が多いです。イベントによって、四季の移り変わりを楽しむことができます。施設全体を飾り付け、雰囲気から盛り上げてくれるところも多いです。
ここでは、実際のイベントの様子が伝わるよう、代表的なイベントについて詳しくご説明いたします。
毎月イベントを実施
1月:お正月、初詣、鏡開き、七草粥
年の初めは、日本らしさを楽しめるイベントが豊富です。近くの神社やお寺を参拝したり、カルタや福笑いなどお正月らしい遊びを楽しみます。また、1月7日の人日の節句には七草粥を提供する施設も多いです。
2月:節分、バレンタイン
節分では、スタッフが鬼の格好をし、入居者に豆を投げて楽しんでもらうところが多いです。みんなで恵方巻きを作って楽しむ施設もあります。また、バレンタインに合わせてみんなでお菓子作りをするところもあります。
3月:ひな祭り
ひな祭りでは、スタッフと入居者で飾り付けをするところが多いです。折り紙や画用紙、紙コップなどを使って雛人形を手作りします。手先を動かすのでリハビリにもなり、飾り付けで施設の雰囲気も華やぎます。
4月:お花見
桜が綺麗な時期に、みんなでお花見に出かけます。美しい桜を見ながらご飯を食べ、おしゃべりを楽しむお花見は、普段あまり外に出る機会がない入居者の方から非常に喜ばれるイベントです。
5月:運動会
初夏の過ごしやすい気候に、運動会を実施する施設が多いです。運動会では、ストレス発散や身体機能の維持・向上、他の入居者との活発なコミュニケーションが見込まれます。
【老人ホームの運動会で人気の種目】
運動会といっても、本格的に競技を行うことはなく、あくまでも安全と楽しさ第一で行われます。以下では、老人ホームにおける運動会で人気の種目をご紹介します。
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玉入れ
バケツのような背の低い容器を床に置き、その周りから柔らかい玉を投げ入れます。多くの玉を入れられたチームが勝ちです。座りながらできるので、車椅子の方でも関係なく楽しめます。
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綱引き
紙を綱に見立てて、安全に楽しめる競技です。1対1で行い、紙がちぎれないよう引っ張り合います。
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借り物競走
お題にあった物を探し、1番早く持ってくることができた人が勝ちになります。活発なコミュニケーションが生まれやすく、一丸となって盛り上がれる人気の種目です。
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ボウリング
ペットボトルなど軽くて倒れても危なくないものをピンに見立て、ボールを転がして倒した数で競います。団体戦で行うことで、一体感が生まれみんなで楽しむことができます。
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ダンス
勝ち負けがなく、全員で楽しめるプログラムも大切です。曲に合わせて全員で軽く踊ることで、楽しみながら体を動かすことができます。
7月:七夕
雛祭りと同様に、飾り付けを楽しむところが多いです。笹を用意して、願い事を書いた短冊を飾ります。
8月:夏祭り
ヨーヨーや的当てなど、縁日気分が味わえるレクリエーションを企画するところは多いです。
中には、食事で屋台メニューを提供し、お祭り気分を盛り上げてくれるところもあります。
9月:敬老の日
敬老の日に合わせて、近隣の小学生が施設に遊びに来たり、お手紙を書いてプレゼントしてくれる場合もあります。入居者にとっては、小さい子と触れ合える貴重な機会になります。
10月:紅葉狩り・ハロウィン
秋は絶好の行楽シーズンです。お花見と同様、紅葉狩りは人気のイベントです。また、ハロウィンではみんなで仮装を楽しんだり、かぼちゃを使った料理やお菓子を楽しめます。
12月:クリスマス
季節のイベントの中でもメインとなるのがクリスマスです。クリスマスに向けてツリーの飾り付けをしたり、スタッフがサンタのコスプレをしたり、みんなでクリスマスソングを歌ったりと、施設全体でクリスマスを楽しみます。スタッフが入居者に簡単なプレゼントを渡すところや、夕食やおやつに少し豪華なご飯やケーキが出るところもあります。
【クリスマス会で人気の出し物】
クリスマス会では、みんなでクリスマスの雰囲気を楽しめる出し物が人気です。
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ハンドベル
スタッフがハンドベルでクリスマスソングを披露するところもあれば、入居者も参加して一緒に演奏するところもあります。音の鳴らし方がシンプルで誰にでも演奏でき、一体感が生まれます。
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合唱
「ジングルベル」や「赤鼻のトナカイ」のような、誰もが知っている定番のクリスマスソングをみんなで歌うのも人気です。合唱でクリスマス気分を盛り上げることができます。また、合唱には、ストレス緩和や発声による筋肉の運動、脳の活性化などの効果があります。
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ビンゴ大会
老若男女楽しめるビンゴ大会は、クリスマス会で定番の出し物です。マス目を減らし、気軽に楽しめるよう工夫しているところが多いです。優勝者への景品をクリスマスプレゼントにすることで、プレゼントを狙って盛り上がります。
イベントを盛り上げる老人ホームの行事食
老人ホームでは、季節感を味わいイベントへの楽しみを増幅させる「行事食」を提供していることが多いです。例えば、1月7日の七草粥、節分の恵方巻き、夏の屋台料理、クリスマスのケーキなどです。イベントとともに食事を楽しむことで、QOL(生活の質)の向上にもつながります。
ボランティア活動への参加に積極的な施設も
老人ホームの中には、イベントの一環としてボランティア活動を積極的に行っている施設もあります。森林や海辺でゴミ拾いをしたり、手縫いの雑巾を作ったりと、比較的簡単にできるボランティアに参加することは、入居者にもメリットが多いです。
まず、手や体を動かすことで身体機能の維持・向上や脳の活性化につながります。そして、ボランティア活動を通じて人に感謝されることで、自身が社会に貢献しているという実感を得られたり、生きがいを感じることができます。
老人ホームでの過ごし方③リハビリ
老人ホームで行われるイベントやレクリエーションなどは、身体機能の維持・向上のためのリハビリも兼ねています。しかし、多くの老人ホームでは、冒頭でご紹介したスケジュールのようにリハビリの時間を設定しています。
老人ホームで受けられるリハビリには大きく2種類あります。
- 専門家が行うリハビリ
- 生活リハビリ
老人ホームの中には、理学療法士や作業療法士・言語聴覚士を常駐させ、リハビリ体制を強化しているところも多いです。
理学療法士によるリハビリ
理学療法士によるリハビリは、運動機能の回復を目的に行われます。歩行訓練や筋力トレーニングといった運動療法と、マッサージや温熱治療で痛みを和らげる物理療法があります。運動機能を回復させることで、日常動作が自分でできるよう導きます。
作業療法士によるリハビリ
作業療法士によるリハビリは、日常動作を自分で行えるようにしたり、今の運動機能でできることを広げたりするために行われます。日常動作を通じた訓練や、レクリエーションなどを通じて心理面・身体面をケアします。
言語聴覚士によるリハビリ
言語聴覚士によるリハビリは、言語機能や嚥下機能など、口唇や舌に関わる機能の回復を目的に行われます。具体的には、コミュニケーション訓練や嚥下反射を促す「アイスマッサージ」などの嚥下訓練を行います。
生活リハビリ
食事や入浴、トイレなどの日常生活が自立して行えるよう訓練することで、寝たきりの予防や生活能力の維持を図るのが生活リハビリです。生活リハビリでは、スタッフが介助をしすぎず、ある程度入居者にやってもらうことで自立を促します。
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老人ホームでの生活を寂しいと思わせない工夫
老人ホームでの生活を楽しめるかどうかはご入居者さま本人次第ですが、ご家族にできる工夫ももちろんあります。ここでは、老人ホームでの生活を寂しいと思わせない工夫をご紹介します。
定期的に面会の機会を設ける
親しみのあるご家族と離れて入居している方にとって、ご家族との面会は何よりも嬉しい時間になります。施設が家から遠い場合は難しいかもしれませんが、積極的に面会の機会を持つようにするのがおすすめです。
最近は新型コロナウイルス感染防止のため、なかなか対面で会うことができない場合が多いです。しかし、代わりにオンライン面会に対応しているところも多いので、遠くに離れている場合でも定期的にコミュニケーションが取れます。
イベントやレクリエーションに積極的に参加する
イベントやレクリエーションは任意参加の場合がほとんどですが、積極的に参加するのがおすすめです。変わり映えのある生活は良い刺激になりますし、他の入居者と仲良くなることができれば老人ホームでの生活が一気に楽しくなります。
しかし、中には知らない人とコミュニケーションをとるのが苦手という方もいらっしゃいます。その場合は、イベントへの参加がかえってストレスになってしまいますので、無理に参加を促さないようにしましょう。
訪問理美容サービスや館内美容院を利用する
多くの老人ホームでは、要介護認定を受けており外出が難しい方を対象に、理容師や美容師が訪問して髪の毛をカットしてくれる「訪問理美容サービス」を実施しています。また、施設によっては館内に美容院を設置しているところもあります。
髪の毛を切ったりヘアスタイルを変えたりすることで、リフレッシュできます。特に女性の方にとっては「いつまでも綺麗でいたい」という心を持つことは心身の健康のためにも大切です。
サークル活動に参加する
多くの老人ホームで採用されているのがサークル活動です。サークル活動では、趣味の合う入居者同士で集まり、大学のサークルのようにその趣味を楽しむことができます。サークル活動に参加することで、趣味を通じて交友関係が広がり、ご自身の趣味を続けて生き生きとした生活を送ることができます。
老人ホームでの暮らしを体験できる体験入居
多くの老人ホームでは、見学だけでなく、実際にその施設での暮らしを短期間体験できる「体験入居」を実施しています。老人ホームでの生活は、選ぶ施設の雰囲気や設備などによってさまざまです。体験入居は、初期費用なしで実際の老人ホームでの生活を体験でき、重要な判断材料になります。目星をつけたら体験入居を利用してみてください。
まとめ
今回は、老人ホームでの暮らしにイメージを持っていただけるよう、タイムスケジュールや食事・イベント・リハビリの内容を説明いたしました。ご家族と離れたところに住むというのは不安が大きいことですが、老人ホームには楽しく過ごせるような、たくさんの工夫が詰まっています。スケジュールやイベントは施設によってさまざまなので、気になるところや重視したいポイントはぜひ見学の際に質問してみてください。この記事が、入居を検討されている方の不安を和らげることとなれば幸いです。
有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。