介護現場におけるアニマルセラピーの効果とは?高齢者にもたらす活力と癒し

「高齢者にアニマルセラピーは必要?」「どんな効果が期待できるの?」このような疑問はありませんか?

介護現場におけるアニマルセラピーは、高齢者の心と身体に、癒しと生きる活力を与える効果的な方法です。動物とのふれあいを通じて、他者との関わりが増え、社会性の向上も期待できます。また、動物との関わりは言葉を必要としないため、病気や障がいにより、言語コミュニケーションが困難な方でも参加可能です。

本記事では、アニマルセラピーの効果・実施方法・注意点について紹介します。介護におけるアニマルセラピーの影響について理解できるため、ぜひ参考にしてみてください。

#生活#豆知識
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

介護におけるアニマルセラピーの効果とは?

動物とのふれあいを通じて、癒しと活力を与える

アニマルセラピーは、高齢者に癒しと活力を与える効果的な手段です。動物とのふれあいを通じて、高齢者の健康をサポートできることから、ひとつのケア方法として考えられています。アニマルセラピーで期待できる効果について、ひとつずつ見ていきましょう。

【アニマルセラピーがもたらす主な効果】

・癒し

動物は無条件の愛らしさで高齢者に癒しを与え、心の安らぎを感じられます。例えば、猫の優しい鳴き声や犬の温かい毛並みに触れることで、心穏やかに落ち着いた時間を過ごせるでしょう。

また、動物との交流はストレスレベルを下げる効果が期待できます。特に緊張やストレス、プレッシャーを多く感じる高齢者にとって、動物とのふれあいは心身のリラックスにつながります。

・コミュニケーションの促進

動物は、言葉を使わないコミュニケーションの相手として理想的です。高齢者は動物との関わりを通じて、非言語コミュニケーションを養うことができます。また、失語症や認知症によって言語コミュニケーションが困難な方でもふれあうことができ、周囲の人との会話のきっかけにもなるため、社交的な交流につながります。

・活力の向上

動物とのふれあいは、高齢者の新たな活力にもなります。動物に接する時間は精神的な支えとなり、前向きな気持ちを引き出す効果が期待できます。愛らしい動物たちを見ているだけでも、「自分も頑張ろう」「また会いたい」など、生きる目的になる方も少なくありません。また、動物とふれあうことで身体を動かす機会が増え、身体機能の維持や改善につながります。

アニマルセラピーには3つのタイプがある

目的に応じて取り入れるアニマルセラピーを選ぶことが重要

アニマルセラピーには、3つのタイプがあり、それぞれ異なる目的と方法で実施されています。高齢者のニーズや介護現場の目的に応じて柔軟に活用され、心身の健康維持や生活の質の向上を目指します。高齢者のニーズや状態に合わせて、最適な方法を選ぶことが重要です。

【動物介在活動(Animal Assisted Activities, AAA)】

動物介在活動(AAA)は、高齢者のQOL(Quality of Life:生活の質)向上を目的としています。特別な目的を設定せず、動物との自然なふれあいが中心です。動物と楽しい時間を過ごすことにより、高齢者の心理的な満足感を高めることを目指しています。犬や猫などとの対話や遊びを通じ、リラックスした雰囲気を作り出し、日常生活に活気や変化を求める高齢者や、社会的な交流の機会が少ない方に適しています。

【動物介在療法(Animal Assisted Therapy, AAT)】

動物介在療法(AAT)は、医師や看護師などの医療従事者が関わり、特定の治療を目的に実施される療法です。リハビリテーション・認知症ケア・緩和ケアなどの医療的な介入の一環として行われます。例えば、身体機能の向上を目指す運動療法や、認知症患者の感情的なサポートを目的とした活動などがあり、専門のトレーニングを受けた動物を使用し、個々の高齢者ニーズに合わせた活動を計画して実施します。特定の医療的ニーズを持つ高齢者や、症状の改善を目指す方に有効な療法です。

【動物介在教育(Animal Assisted Education, AAE)】

動物介在教育(AAE)は、動物を通じて道徳観や人格的成長、学習意欲の向上を図ります。主に子どもを対象に行われますが、高齢者にも適用可能です。教育的な学びと動物のふれあいを組み合わせ、参加者は知識とスキルを身につけると同時に、感情的な絆を育むことを目指します。高齢者に対しては、記憶力や認知機能の刺激、社会的交流の促進などの目的で利用されることがあります。

アニマルセラピーの実施方法

アニマルセラピーの適した動物を選び安全に実施する

アニマルセラピーは様々な実施方法があり、目的や対象者によって異なります。アニマルセラピーの一般的な実施方法と留意点について確認しましょう。

【アニマルセラピーの実施方法】

・個別またはグループで行う

アニマルセラピーは、対象者に合わせて個別またはグループで実施します。また、実施する場所によっては、内容や規模が限られてしまうため、少人数でしか行えない場合もあるでしょう。実施場所・参加者・動物の数などから適切な規模や内容を判断しましょう。

・目的や目標を設定する

介護現場での動物介在療法では、介護者やアニマルセラピーの専門家が中心となり、対象者の目標に合わせたプログラムを実施します。プログラム終了後には、掲げた目標に対して評価を行い、今後のケアや活動の計画に活かします。

・動物の選定

アニマルセラピーに用いるのは、適切なトレーニングを実施した安全な動物に限ります。これは、高齢者に対する安全と、動物たちの安全と負担への配慮です。アニマルセラピーには犬や猫はもちろん、鳥やウサギなど様々な動物が選ばれます。高齢者の健康状態や好みに応じて、最適な動物を選ぶことが重要です。アニマルセラピーに選ばれやすい動物は、以下の通りです。

動物

特徴と注意点

穏やかな性格と優しい接し方は、ストレスや不安の軽減に役立つが、鋭い爪には注意が必要。また、猫の特性上、必要以上に構うことで、ストレスになる可能性がある。

アニマルセラピーで最も一般的な動物。訓練しやすく、人間との良好な関係を築きやすい特徴がある。特に、セラピードッグとして訓練された犬は、様々な健康状態や年齢の人々に対しても従順に関わり癒しを提供。ペットとしても人気があるため、簡単に実施できるが、噛みつきなどには注意が必要。

小動物

ウサギやハムスターなどは、小さな体と扱いやすさから、高齢者に人気。すばやく動くことから、見失わないように注意が必要。

美しい鳴き声は、リラクゼーションや気分の向上に効果的。排泄のトレーニングが難しいため、衛生面への配慮が必要。

長寿の象徴として知られる亀も、アニマルセラピーとして使用可能。ミズガメは基本的に眺めて楽しむ種類で、リクガメは直接触れることも可能。ただし、爬虫類が苦手な方も多いため注意が必要。

優雅に泳ぐ魚は、見ているだけで心を落ち着かせる効果が期待できる。餌をあげることが日課につながる。

【衛生面の管理】

動物を扱う際は、衛生面に注意を払う必要があります。動物に触れた後は、手洗いを徹底し、清潔を保ちましょう。また、アレルギーの有無は特に注意が必要です。アレルギー症状が発症すると生命にかかわる場合があるため、必ず事前に確認しましょう。

【専門家のサポート】

アニマルセラピーは、ただ動物とふれあうだけではなく、高齢者の健康を総合的にサポートするケアのため、安全面には特に注意が必要です。必要に応じて、専門家やサポーターを依頼し、安全に配慮して実施しましょう。正しいアニマルセラピーの実践を介護現場に取り入れることで、高齢者の生活の質向上に大きく影響することが期待できます。

在宅で行うアニマルセラピー

ペットを通じて生きる喜びを感じられる

在宅でのアニマルセラピーは、ペットとのふれあいを通じて行われます。ペットを飼うことで日常的に安定した癒し効果を得られるでしょう。

【実施方法と効果】

自宅で飼える動物の種類(犬・猫・小動物など)は、個人の好みや生活環境、世話のしやすさから選ぶと良いでしょう。ペットとの日常的なふれあいや世話を通じて、感情の安定や社会的な交流が増えます。また、ペットの散歩や交流で身体を動かすため、健康維持にも繋がります。

【注意点】

ペットの健康状態を適切に管理し、定期的な検診を行うことが重要です。また、ペットにとって安全で快適な生活環境を整える必要があり、世話が世話が多いペットは控えると良いでしょう。

例えば、大きな犬なら散歩が必要で、魚は水槽の水を交換する必要があります。これらの世話は、高齢者には困難な場合も多く、環境が整っていない状態での生活は、動物たちのストレスになります。ペット選びの際は、どこまでの世話ができるかを考えて選びましょう

また、寿命が短い動物は、お別れの時に精神状態が不安定になり、うつなどを引き起こす可能性があるため、注意が必要です。近年では、ペットと一緒に暮らせる有料老人ホームもあるため、一緒に生活を続ける場合は検討すると良いでしょう。

施設で行うアニマルセラピー

在宅では困難な動物たちとふれあえる

施設で行われるアニマルセラピーは、訓練されたセラピーアニマルを使用して行われます。レクリエーションやイベントの一環として行われることがほとんどで、在宅療法では導入が難しい大型犬や、希少な動物が招かれることも期待できるでしょう。

【実施方法と効果】

施設内でのセラピーは、介護スタッフや医療従事者、アニマルセラピーの専門家と連携して行います。特定の効果や目的に基づいて計画され、個々の利用者のニーズに合わせて実施されます。施設で行う場合、犬や猫だけでなく、鳥やウサギなど、さまざまな種類の動物が利用されることがあり、人生で初めての体験(ふれあい)ができるかもしれません。

【注意点】

動物を介した感染症のリスクを減らすために、適切な衛生管理が行われますが、アレルギーやケガなどのリスクはあります。動物に対して、嫌悪感を持ち拒絶する高齢者もいるため、それぞれの趣向やニーズに合わせて実施する必要があります。

アニマルセラピーの注意点

安全に実施して効果的なアニマルセラピーを実施

アニマルセラピーは多くのメリットがありますが、安全かつ効果的なセラピーを提供するためには、いくつかの重要な注意点があります。ひとつずつ確認していきましょう。

【無理強いしない】

アルセラピーは、参加者が自発的に楽しむことが重要です。動物に対する恐怖心や不安がある場合は、参加を強制しません。

無理に参加しても高齢者本人が楽しめないだけではなく、一緒に参加される方や、動物にもストレスを与える可能性があります。一緒に参加する場合は、本人の表情や心理を観察して、無理のないよう気を付けましょう。

【アレルギーや衛生面に注意】

高齢者や動物の健康状態に留意し、アレルギーや免疫機能の低下などのリスクに注意が必要です。アニマルセラピーに参加する前に、アレルギーの有無を確認しておくと良いでしょう。

また、感染症のリスクを予防するために、動物との接触後は、適切な手洗いや消毒を行うなど、衛生面の管理にも注意が必要です。動物の健康状態や清潔さも重要なため、定期的な健康チェックをおこないましょう。

【万が一に備える】

アニマルセラピー中に予期せぬ事態が発生する可能性に備え、緊急時の準備や対策をしておくことが大切です。かみつきや引っかきなど、動物による怪我のリスクを最小限に抑えられるように、専門家の指導を仰ぐと良いでしょう。

また、動物に対してのトラウマや恐怖症、思い出したくない過去のフラッシュバックなど、精神的なリスクも事前に把握して、適切な対応を行うことが重要です。

まとめ

まとめ

介護現場でのアニマルセラピーは、高齢者の健康をサポートし、生活の質を向上させる効果的な手法です。動物との自然なふれあいは、高齢者の癒しと活力になるでしょう。

動物は、無条件の愛らしさで心の安らぎを提供し、ストレスレベルを下げる効果が期待できる他、非言語コミュニケーションを通じて、社交的な交流を図れます。特に、言語コミュニケーションが困難な高齢者にとって効果的な方法と言えるでしょう。

アニマルセラピーには複数のタイプが存在し、動物介在活動(AAA)・動物介在療法(AAT)・動物介在教育(AAE)があり、それぞれ異なる目的と方法で実施されます。高齢者のニーズや状態に合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。実施にあたっては、動物の選定や衛生面の管理、専門家のサポートなどに配慮しましょう。

アニマルセラピーは、安全に実施することで、高齢者・動物にとっても快適な経験や体験になります。今回の記事を参考に、ぜひアニマルセラピーを実施してみてください。

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