介護サービス情報公表システムとは?事業所選びから活用方法まで紹介

「介護サービス情報公表システムってどんなシステム?」「利用するメリットはあるの?」このような疑問はありませんか?

介護が必要な状況になった利用者にとって、信頼できる介護サービス事業所を選ぶことは大切なポイントです。しかし、調べ方や相談先が分からない方も多くいます。

介護サービス情報公表システムは、事業所のサービス内容をはじめ、料金や職員の体制など、さまざまな情報が記載されているシステムです。利用者や家族は、最適なサービスを探すときに活用できます。

本記事では、介護サービス情報公表システムの内容や制度、活用方法まで詳しく紹介します。さらに、システムの課題や注目されているポイントまで、網羅的に解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。

#生活#選び方#関連サービス#豆知識
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

介護サービス情報公表システムとは

介護サービス事業者がそれぞれ情報開示して作成される膨大な情報システム

介護サービス情報公表システムは、サービス内容や料金、職員の体制などが記載された情報システムです。介護サービス事業者に義務付けられた制度で、毎年更新されています。

【介護サービス情報公表システムの目的】

介護サービス情報公表システムは、介護サービスの品質と透明性を高めることを目的としています。この制度を利用すると、利用者や家族が、事業所の提供するサービスの内容を把握でき、適切な介護サービスを選択するために必要な情報を得られます。また、事業所側は、より良い情報提供ができるよう、サービスの質や体制の改善を図る意識が持てるため、利用者・家族、事業所とそれぞれにメリットがある制度です。

【年1回の報告義務】

対象となる介護サービス事業所は年1回、サービス内容や利用者の満足度などの情報を報告する義務があります。これには、サービスの提供方法・スタッフの資質・施設の設備・利用者の安全管理などの実施状況が含まれます。また、離職者数や資格保有者数などの公表も必要です。

【介護サービス情報公表までの流れ】

情報公表までは以下のような流れで行われています。

  1. 年に1度、各事業所に情報公表の提出について通知がある。

  2. 各事業所は、システムにログインし必要な情報を入力する。

  3. 行政機関へデータを送信する。

  4. 報告された情報は、行政機関でチェックされる。

  5. 特定の基準を満たした情報は介護サービス情報公表システムに掲載される。

行政機関のチェックが入るため、情報の正確性と信頼性が保証されています。

【対象の事業所】

情報公表制度は、居宅介護支援事業所・訪問介護事業所・デイサービスセンター・ショートステイ事業所・特別養護老人ホームなど、多くの介護サービス事業所が対象です。この制度により、介護サービスの質は透明性を保つことができます。また、事業所側は信頼性の高い情報を提供できるように、適正な運営に努める必要があります。

公表されている事業所情報

全26種類54サービスが公表されている

介護サービス情報公表システムでは、全26種類54のサービスが公表されています。例えば、居宅介護支援・デイサービス・短期入所サービス・特別養護老人ホーム・訪問介護・介護予防サービスなどがあります。

【掲載されている内容】

公表されている事業所情報には、以下のような内容が掲載されています。

項目

詳細

事業所概要

運営方針・設立日・サービスの提供地域・営業時間など

サービスの種類と内容

各事業所が提供するサービスの具体的な種類とそれぞれの内容の詳細

スタッフの資格と人数

在籍するスタッフの資格・経験年数・人数に関する情報

施設の設備

バリアフリーなどの設備に関する情報

利用者の満足度

利用者や家族からの評価・満足度に関する情報

利用料

サービスの料金に関する情報

品質向上の取り組み

サービスの費用・支払い方法・保険適用の可否などの情報

上記は掲載されている情報の一部です。情報公表システムには、これらの情報が詳細に記されているため、内容を確認して適正なサービスを選択することができます。

介護サービス情報公表システムを利用してできること

介護サービス情報公表システムを活用してサービスを選択

介護サービス情報公表システムは、以下のような利用方法があります。

【介護施設を探す】

介護サービス情報公表システムを利用することで、利用者や家族は地域別・目的別に希望の介護施設を検索できます。施設の種類・サービスの質・立地・設備など、さまざまな点から最適な施設を選ぶことができ、特に、特定の医療ニーズや生活スタイルに合った施設を見つける際に便利です。

【介護サービスを検索する】

介護サービス情報公表システムには、介護サービスの包括的な情報も掲載されています。利用者の具体的なニーズに合わせたサービスの種類・提供方法・対応可能な介護度などで検索し、適切なサービス事業所を見つけることが可能です。

【地域の福祉サービスを探す】

介護サービス情報公表システムは、特定の地域に特化した福祉サービスの情報も提供しています。これにより、利用者や家族は自分の居住地域、または関心のある地域の福祉サービスに関する情報を簡単に調べることができます。居住地域の福祉サービスを理解しておくと、様々なサービスを組み合わせて利用でき、いざという時に役立つでしょう。

介護サービス情報公表システムで注目されている内容

料金や職員の体制は注目されている

介護サービス情報公表システムに掲載されている情報の中でも、よく閲覧されている情報は以下の通りです。

【サービス利用時の自己負担額】

介護サービス情報公表システムでは、サービスの利用に伴う自己負担額が詳細に記載されています。サービスの種類や内容に応じた費用や保険適用の範囲、追加料金などが記載されており、利用者や家族の経済的な不安を解消するために役立つでしょう。自己負担額の公表は、多くの利用者や家族にとって、重要なポイントのひとつです。

【ケアの詳細やサービス内容】

公表される情報には、提供されるケアやサービス内容が詳しく記載されています。これには、日常生活の支援・医療連携・リハビリテーションなどが含まれます。これらの情報は、利用者や家族の課題や支障になっている問題を解決できるサービスの選択に役立つでしょう。

【職員の資格や経験】

職員の資格や経験に関する情報も、介護サービス情報公表システムで注目されている項目です。ここには、介護を担当するスタッフの資格や経験年数などが記載されているため、サービス提供スタッフの専門性や信頼性を評価でき、安心してサービスを受けることができるでしょう。

【新型コロナ感染対策】

新型コロナウイルス感染症の流行から、利用者や家族の感染症に対する関心は高まっています。そのため、介護サービス情報公表システムでは、感染対策に関する情報も注目されるポイントのひとつです。施設や事業所のサービス提供方法や、衛生管理・感染予防対策・職員や利用者への健康管理などが含まれます。これらの情報は、利用者や家族が安全なサービスを選択するための重要な基準となっています。

介護サービス情報公表システムの活用例

施設やサービスを探す以外の活用方法

介護サービス情報公表システムは、施設やサービス検索以外にも活用されています。

【医療機関が退院先や居宅介護支援事業所を検索する】

医療機関は、患者が退院する際に適切な退院先を見つけるために、このシステムを活用することがあります。特に慢性疾患がある患者が自宅に戻る場合、適切な居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)を見つけることが重要です。医療機関は、患者や家族に最適な介護サービスにつなげるために、システム内の情報を参照し、患者の健康状態や必要な介護のレベルに合わせて適切なサービスを探します。

【ハローワークの窓口や仕事と介護の両立相談時に利用する】

ハローワークの窓口では、就職活動中の方に向けて、仕事と介護の両立に関するアドバイスが行われています。介護サービス情報公表システムの活用により、介護を必要とする家族を持つ人へ、自分の地域内で提供されている介護サービスを簡単に把握し、紹介できます。これにより、仕事と介護で疲弊しきってしまう前に、効果的なバランスを見つけることが可能です。また、介護業界で働くことを希望する人たちにとっても、このシステムは求職の際の重要な情報源となります。

【職場探しに活用する】

介護業界で働きたいと考える人にとって、介護情報公表システムは職場探しに利用できます。このシステムには、各事業所の詳細な情報が記載されているため、求職者はそれを参考にして、自分の専門性や興味に合った職場を見つけられるでしょう。また、事業所のサービスや職員の働きやすさに関する情報も含まれているため、より適切な職場選びが可能です。求人情報ではないため、給料などの情報はありませんが、働いているスタッフの経験年数や離職人数が確認できることは、求職者にとって大きなメリットとなるでしょう。

介護サービス情報公表制度の課題

介護サービス情報公表制度には様々な課題がある

介護サービス情報公表制度による情報公表システムは、様々な内容が記載されており便利な一方で、課題もあります。

【認知度の低さ】

最も大きな課題として、介護サービス情報公表システムの認知度の低さが挙げられます。多くの利用者や家族が、制度やシステムの存在や利用方法を十分に理解していないため、うまく活用できていないのが現状です。認知度を高めるためには、より積極的な広報活動やシステムの充実が求められます。

【インターネットに慣れていない層が多い】

制度の情報はインターネット上で提供されているため、インターネットを利用しない高齢者や家族は、アクセスしにくいという問題があります。特に高齢の利用者にとって、スマホやパソコンの操作ができず、インターネットの使用が難しい場合も多く、情報公表システムを利用できない状況も多いです。

【「よくわからなかった」という意見】

制度の情報やサイト内部の構造が複雑で、わかりにくいという意見も少なくありません。利用者や家族にとって、提供される情報が専門的すぎる、または多すぎるため、必要な情報を効率的に得ることが難しいと感じる方もいます。

【事故などの事例が少ない】

介護サービスにおける事故や、トラブルの事例が公表されることは多くありません。そのため、利用者が事業所の安全性や問題点を正確に評価することが難しい状況です。事故やトラブルの事例を積極的に公開することで、利用者や家族がより納得した選択をすることに繋がります。

出典:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所「令和3年度老人保健健康増進等事業介護サービス情報の公表制度の効率的・効果的な活用方策に関する調査研究事業報告書 」

介護サービスについて直接相談したい場合の相談先

わからないことは介護の専門家に相談

必要な介護サービスや内容がわからないときは、介護の専門家に相談すると良いでしょう。相談先は、ケアマネジャーをはじめ、医療ソーシャルワーカーや市区町村の窓口など様々です。自身で調べることも大切ですが、直接確認することで、より詳細な内容を理解することができます。介護・医療の専門家や機関が提供する情報を通じて、適切な介護サービスを選択しましょう。

【ケアマネジャー】

ケアマネジャーは、介護サービスに関する最も身近な相談窓口のひとつです。利用者のニーズに合わせたケアプランを作成し、適切なサービスを提案します。また、サービスの調整や管理も行い、利用者がスムーズに必要なサポートを受けられるよう支援しています。ケアマネジャーは、居宅介護支援事業所と施設ケアマネジャーに分かれており、それぞれ担当する範囲が異なるのが特徴です。

【医療ソーシャルワーカー】

医療ソーシャルワーカーも、介護に関する相談を受ける重要な役割を担います。入退院時の支援を行い、在宅サービスや介護施設との連絡調整を行います。スムーズに介護サービスにつなげる役割があるため、退院後の在宅生活が不安な場合は相談してみると良いでしょう。

【地域包括支援センター】

地域包括支援センターは、地域社会に根差した総合的な支援を提供する施設です。ここでは、高齢者や障害を持つ人々の生活支援・健康管理・介護サービスの相談ができます。地域包括支援センターは、地域のさまざまなサービスと連携し、個々のニーズに合わせた包括的なサポートを行います。また、保健福祉に関しての相談も可能です。

【市区町村の窓口】

市区町村の窓口も、介護サービスに関する相談ができる重要な場所です。各地域の市区町村は、介護保険制度や地域の福祉サービスに関する情報を提供し、利用者や家族が適切なサービスを受けられるよう支援します。また、介護保険の申請や手続きに関する案内も行います。

まとめ

まとめ

今回は、介護サービス情報公表システムについて紹介しました。介護サービス情報公表システムは、介護サービス事業者に義務付けられた制度で、毎年運営情報を行政機関に提出しています。提出した情報は、行政機関のチェックが行われ、情報公表システムに登録されます。このシステムを活用することで、利用者や家族は、サービス内容・料金・職員の体制などを比較検討し、自身のニーズに合わせた事業所を見つけることが可能です。

介護サービスに関する詳しい情報提供が行われている一方で、課題もあります。システム自体の認知度やインターネットの利用に不慣れな層が多いため、今後の認知活動による周知の拡大が求められます。

介護サービスを探したい、利用を検討している事業所のことを詳しく知りたい時は、ケアマネジャー・医療ソーシャルワーカー・地域包括支援センター・市区町村の窓口などに直接相談することも大切です。介護サービス情報公表システムと合わせて、サービス内容を確認すると良いでしょう。

介護サービス情報公表システムを上手に活用し、最適な介護サービス選びにつながれば幸いです。

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