年金受給の仕組みを解説!老後を安心して過ごすための基礎知識

「年金をもらうために手続きは必要?」「年金にはどんな種類があるの?」このような疑問はありませんか?

年金制度は国民の老後を守るために日本が導入している制度です。財源として被保険者は年金を納める必要があり、支払った期間や年金の種類によって、将来的にもらえる年金額が変わります。年金の制度は、年々多様化しており、わかりにくいと感じる方もいるでしょう。

今回は、年金の仕組みや受給方法、税金の仕組みについて解説します。ぜひ参考にしてみてください。

#お金#制度#豆知識
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

年金制度の仕組み

日本の年金制度は3階建ての構造で成り立つ

日本の年金制度は「3階建ての構造」で成り立っています。まず、1階・2階にあたる「公的年金」と3階部分の「私的年金」です。

公的年金

・1階:国民年金

20歳から60歳までの日本に居住するすべての人が加入する年金制度です。

年金制度の基盤となる部分で、「基礎年金」とも呼ばれます。自営業やフリーランスといった「第1号被保険者」と呼ばれる人々は、国民年金に加入します。

・2階:厚生年金

主に会社員や公務員などが加入する年金制度です。「第2号被保険者」と呼ばれる方は、自動的に1階の国民年金にも加入することになり、厚生年金の部分と合わせて受け取る年金額は増加します。

支給額は、加入期間だけではなく、勤務時代の収入にも左右されるため、現役時代に収入が多かった方は受給額も大きくなります。

また、公的年金は「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3つに分類されます。

【老齢年金】

65歳からの所得保障として提供される年金です。自営業者や会社員の扶養配偶者は「老齢基礎年金」、会社員や公務員は「老齢厚生年金」を受け取れます。

受給開始は基本的に65歳ですが、60歳から75歳の間で選択可能です。ただし、開始時期を前倒しすると受給額が減額、遅らせると増額となります。

【障害年金】

疾患や負傷が原因で障害を患った方が受給する年金です。国民年金加入者は「障害基礎年金」、厚生年金加入者は「障害厚生年金」を受け取れます。受給資格や額は障害の等級や年金への加入期間などによって異なります。

【遺族年金】

年金加入者が亡くなった場合、遺族が受け取る年金です。国民年金加入者の遺族は「遺族基礎年金」、厚生年金加入者は「遺族厚生年金」の遺族が受け取れます。受給資格は遺族の関係や年金の加入状況などにより決まります。

私的年金

・3階:任意の加入年金

私的年金とは、公的年金の上に付け加える年金で、企業や個人が自由に選んで加入できる年金制度です。企業年金・国民年金基金・個人年金保険・iDeCoなどの種類があります。

【企業年金の特徴】

企業年金は、各社が独自に提供するため会社によって内容や条件が異なります。主な形態として、「確定給付企業年金(DB)」や「企業型確定拠出年金(DC)」があり、外部の信託会社と連携して運用する年金です。

【国民年金基金の特徴】

国民年金基金は、自営業者やフリーランスなどの国民年金第1号被保険者が、基本的な国民年金を補完するために選択できる年金制度です。国の管轄で運用され、任意での加入が可能です。また、遺族への一時金支給も受け取れます。加入者の所得税は控除対象です。

【個人年金保険の特徴】

個人年金保険は、多くの保険会社が提供する私的年金制度です。加入者は、一括あるいは分割で保険料を支払い、指定した年齢に達した際に、契約に基づく年金を受け取ります。この制度では、年金受取の開始年齢や受給期間(5年・10年・終身など)を選択でき、将来の生活プランに合わせた計画が可能です。また、保険料は所得税の生命保険料控除の適用を受けることもできます。

【iDeCoのポイント】

iDeCoは個人型確定拠出年金のことです。個人が個別の金融商品を選びながら資金を積み立てます。60歳から始めて自ら選択・運用した金融商品に基づき、一時金または分割で受け取ることが可能です。年金の総額は、投資の成果によって変動します。多くの職種や立場の方が参加できる年金制度で、節税メリットが大きいことも魅力のひとつです。ただし、掛金の変更は年1回のみに制限されるため注意しましょう。参加を希望する場合は、iDeCo提供の金融機関で手続きが必要です。

このように、日本の年金制度は公的・私的な保障を組み合わせて、多様な生計のニーズに対応しています。

年金の役割

年金がもらえることで生活が安定する

年金制度は、主に高齢者における生活の安定を図る目的で導入されています。働くことが難しくなったときでも、一定の所得を保障されることで、生計を立てる手助けになります。現代では平均寿命が伸びており、退職後の生活期間も長くなるケースが多いため貯蓄だけで補うことは難しいと感じる方も多いでしょう。特に高齢者は医療費や介護費などの出費が増えるため、生計を維持することに不安を感じる方もいます。そのため、年金は長寿に対してのリスクを緩和する役割を担っています。

また、高齢者が一定の所得を得ることで、消費が維持され、経済全体の安定に繋がることも期待されます。社会全体で、所得格差の緩和や社会の公平性を高める効果もあるでしょう。将来的に一定の所得が得られることを前提として、老後の生活設計や投資、資産運用の計画を立てることが出来ます。

年金受給の資格

年金を受給するためには様々な条件がある

年金を受給するには受給資格を得る必要があります。各年金の受給資格は以下の通りです。

【老齢基礎年金】(国民・厚生年金)

老齢基礎年金の受給要件は以下の通りです。

  • 保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した資格期間が10年(120ヶ月)以上ある

  • 原則として65歳から受給可能

資格期間とは以下の通りです。

  1. 国民年金の保険料を納めた期間や免除された期間

  2. サラリーマンの期間

  3. 厚生年金保険や共済組合などの加入していた期間

  4. 年金制度に加入していなくても資格期間に加えられる期間

参照:日本年金機構「老齢年金」

【障害年金】

障害年金の受給要件は以下の通りです。

  • 障害の原因となる病気やけがの初めての診察日が以下の期間に含まれること。

  1. 国民年金の加入している期間

  2. 20歳未満、または日本在住で60歳以上65歳未満の期間で年金制度への加入がない時期

  • 障害の程度が、障害認定日(20歳を迎える場合は、その日)に、障害等級表で1級または2級として認定されること。

  • 初診日の1日前までに、初診日の2ヶ月前までの国民年金の加入期間中、保険料を納めた期間と保険料を支払わなくてよい期間の合計が3分の2以上であること。

例外として、初診日が令和8年4月1日より前の場合、65歳未満なら、初診日の2ヶ月前までの1年間に保険料の未納がないことが条件となります。さらに、20歳未満で年金制度に未加入の期間に初診日がある場合、保険料の納付条件は求められません。

参照:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」

【遺族年金】

遺族年金の受給要件は以下の通りです。

  • 死亡した方が厚生年金保険の被保険者だった場合

  • 死亡原因が厚生年金の被保険期間中の病気やけがで、その初診日から5年以内に死亡した場合

  • 1級または2級の障害厚生(共済)年金を受け取っていた方が死亡した場合

  • 老齢厚生年金の受給権を有していた方が死亡した場合

  • 老齢厚生年金の受給資格があった方が死亡した場合

1と2には追加要件があり、死亡の前日までに納めた保険料の期間(保険料が免除された期間を含む)が、国民年金の加入期間の3分の2以上でなければなりません。ただし、令和8年3月末までに死亡し、かつ65歳未満の場合は、死亡した前月までの直近1年間で保険料の未納がないことが条件となります。

4と5の条件には、保険料を納めた期間、保険料免除期間、及びその他の期間を合わせて25年以上であることが必要です。

年金受給額の計算方法

支払期間や年金の種類によりそれぞれ受給額が異なる

年金の受給額は、年金を納めた期間や種類によって以下のように異なります。

【国民年金】

20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)を通して、保険料の納付があれば、満額の月額6万6250円(年間では79.5万円)を受け取れます。保険料の未納月や免除を受けた月があると、その期間に応じて少なくなります。40年間の納付期間を満たしていない60歳以上の方は、任意で保険料を納め続けることも選択可能です。

【厚生年金】

厚生年金の受給金額は、給与や賞与に基づいて支払った保険料によって決まります。保険料は、給与に基づく標準報酬月額と賞与を基に計算されます。給与額が高いと、毎月の保険料も増加しますが、それに応じて将来受け取る老齢厚生年金の額も大きくなります。厚生年金の保険料は、労働者と企業がそれぞれ半分ずつ負担します。

年金受給の手続き方法

年金受給は自動的に始まるわけではない

年金を受け取るには請求手続きが必要です。老齢年金の受給権が発生すると、受給開始の3ヶ月前に年金請求書が送付されます。この請求書には、加入履歴が掲載されているため、間違いや不足がないかを確認しましょう。

年金請求書の記入後、受給開始日(受給できる年齢になる誕生日)の前日以降に必要書類(送付されてきた書類)を添えて提出します。受給権が発生してから5年以上経過すると、その期間の年金請求が時効となるため、忘れずに手続きをしましょう。

年金請求の提出後、約1〜2ヶ月で「年金証書・年金決定通知書」が届きます。さらに1~2ヶ月後に年金支払いの通知が届き、受け取りがスタートします。年金は、受給資格を得た翌月から支給され、通常は偶数月の15日に先月及び前々月の分が振込まれるシステムです。

※15日が土日祝日の場合、直前の平日に振り込まれます。

年金にかかる税金を計算する方法

公的年金には税金がかかる

公的年金には、老齢年金・遺族年金・障害年金と3つの種類がありますが、その内、老齢年金のみが課税対象となります。遺族年金や障害年金は非課税扱いです。老齢年金は受給する全額すべてが課税されるわけではなく、特定の計算式に基づいて税額が算定されます。

課税額は、『公的年金などの収入金額の合計額×割合-控除額』で計算できます。

※公的年金などとは、以下のものが該当します。

  • 老齢基礎年金

  • 老齢厚生年金

  • 確定給付企業年金

  • 企業型確定拠出年金

  • 個人型確定拠出年金(iDeCo) など

収入などの要件(一例)は以下の通りです。

雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下
65歳未満
600,000円以下
0円
600,001~1,299,999円まで
100%
600,000円
1,300,000~4,099,999円まで
75%
275,000円
4,100,000~7,699,999円まで
85%
685,000円
7,700,000~9,999,999円まで
95%
1,455,000円
10,000,000円以上
100%
1,955,000円
65歳以上
100,000円以下
0円
1,100,001~3,299,999円まで
100%
1,100,000円
3,300,000~4,099,999円
75%
275,000円
4,100,000~7,699,999円
85%
685,000円
7,700,000~9,999,999円まで
95%
1,455,000円
10,000,000円以上
100%
1,955,000円

参照:国税庁「No.1600公的年金等の課税関係」

上記の計算式から税金を確認してみてください。

年金受給しながら働く

年金を受給しながら働く人は増加傾向

日本の年金制度は、老後の安定した生活をサポートするための手段として設計されています。原則として、65歳以降から受給が開始されますが、繰上げ制度を適用することで60歳からの受給も可能です。

近年、日本社会で働く高齢者の数が増加していることから、年金受給しながら仕事をすることが一般的になってきました。しかし、国民年金と厚生年金の受給条件や取り扱いが異なるため、注意が必要です。

まず、国民年金は20歳から60歳未満までの間、定額で納付する制度です。老後に納付期間に応じて支給されるため、就労状況や収入に関係なく全額を受給することが出来ます。

一方、厚生年金は会社員や公務員としてのキャリアを有する人が受給資格を持つ年金です。この年金は、国民年金の上に追加で支給されるもので、年金制度の2階部分として位置づけられています。そのため、一定の収入条件を満たすことが全額受給の条件とされています。この条件を満たさない場合、受給金額の減少や場合によっては支給停止となる可能性もあります。

年金を受給しながら働く方に対しては在職老齢年金の対象になります。

【在職老齢年金の適用条件】

65歳以降、あるいは60歳以上で繰上げ制度を利用して年金を受給しつつ勤務する場合に適用される制度です。

対象は、厚生年金保険加入が必須の会社員や公務員で、年金と賃金の合計が47万円を超えた場合、超過分の半額が年金から差し引かれます。以前、60歳から65歳未満の人には収入が28万円以上の場合に制限がかかっていましたが、年金受給しながら働く方の増加により、2022年4月の改定から60代全体で47万円が基準額となりました。

【在職定時改定による年金額の見直し】

2022年4月から新たな制度「在職定時改定」が始まりました。2021年度まで、65歳以降に厚生年金に加入していた人は、退職時や70歳になった時にのみ年金額が再計算されていました。しかし、改定により、65歳以降でも厚生年金に加入し続けている人は、毎年10月に年金額が自動的に見直されるようになりました。

これにより、退職前から収入の変動が年金額に反映されるため、厚生年金受給者の生計を立てやすくなりました。

対象となるのは65歳以上、70歳未満の受給者です。年金と仕事を両立させる際の制度は、時代とともに変わりつつあります。高齢期に働くことを選択する場合、受給している年金の種類や条件を把握しておくことが重要なポイントです。

【在職老齢年金の受給額】

在職老齢年金の受給額は以下の通りです。

年金受給条件

計算方法

基本月額 + 総報酬月額相当額が48万円以下のとき

全額支給

基本月額 + 総報酬月額相当額が48万円を超えるとき

基本月額 - (基本月額 + 総報酬月額相当額 - 48万円) ÷ 2

【2022年3月以前に65歳未満の方】

年金受給条件

計算方法

基本月額 + 総報酬月額相当額が28万円以下のとき

全額支給

総報酬月額相当額が47万円以下、基本月額が28万円以下のとき

基本月額 - (総報酬月額相当額 + 基本月額 - 28万円) ÷ 2

総報酬月額相当額が47万円以下、基本月額が28万円超のとき

基本月額 - 総報酬月額相当額 ÷ 2

総報酬月額相当額が47万円超、基本月額が28万円以下のとき

基本月額 - { (47万円 + 基本月額 - 28万円) ÷ 2 + (総報酬月額相当額 - 47万円) }

総報酬月額相当額が47万円超、基本月額が28万円超のとき

基本月額 - { 47万円 ÷ 2 + (総報酬月額相当額 - 47万円) }

このように、収入に合わせた計算がおこなわれて、計算方法に基づいて、受給者の年金額が調整されます。

参照:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法

年金が抱える課題と将来性

少子高齢化の日本では年金制度が破綻するリスクがある

年金制度は、高齢者の生計を支えるための重要な制度です。しかし、年金制度は様々な課題に直面しており、その将来性は議論の対象となっています。

【年金が抱える課題】

日本では平均寿命が延長したことにより、高齢者の人口が増加しています。その結果、現役世代と高齢者の人口バランスが崩れ、年金受給者1人あたりの現役世代の人数が減少傾向にあります。年金の受給者数が増加する一方で、支払い能力を持つ現役世代の数は減少しているため、年金制度の資金繰りが厳しくなると考えられています。また、就労形態も多様化していたり、「将来、年金をもらえないのではないか」と考えて年金の未納も増えていることから、財源の不安定化が懸念されています。

まとめ

まとめ

今回は、年金の仕組みや受給方法について紹介しました。

年金は高齢者の生計を立てるためにも重要な制度です。しかし、少子高齢化が進み、年金受給年齢が引き上げられていることからも、将来を不安視する方は多いでしょう。

年金制度は一見複雑に感じるかもしれませんが、正しい情報を得ることで仕組みを理解し、適切な備えをすることもできます。今回の記事を参考に、ぜひ年金について理解を深めてください。

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