介護の経済的負担を軽減!介護サービスを利用する前に知っておきたい減免制度

「介護にかかる費用負担を軽減したい」「負担を減らす方法はあるの?」このような悩みはありませんか?

介護には、介護保険サービス以外にも様々な費用が必要になります。そのため、経済的に苦しくなることを懸念して必要な介護保険サービスを利用せず、家族だけで無理をするケースも少なくありません。

今回は、介護に必要な費用や自己負担額を減らす減免制度について解説します。これから介護を始める方も知っておくと役に立つため、ぜひ参考にしてください。

#お金#制度#手続き関係#豆知識
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

介護の費用にはいくら必要?

介護費用以外にも様々な費用が必要

公益財団法人生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査(速報版)」によると、介護を導入する際にかかる一時的な費用が740,000円、月々の介護費用が83,000円と公表されました。

一時的な費用には、生活環境を整えるために自宅内外を改修する費用や必要な介護用品の購入、有料老人ホームなどの施設へ入所する際にかかる入居一時金などが該当します。

月々必要な費用は、食費・光熱費・家賃・介護保険サービス費・おむつやゴム手袋などの消耗品費・医療費・移動費(介護タクシーなど)などがあります。

自分自身や家族に介護が必要になった際には、担当のケアマネジャーと相談して必要な介護の希望や支払いができる費用を伝えておくことが大切です。

参照:公益財団法人 生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」

介護費用を安くする方法

介護には様々な控除や減免措置がある

介護にかかる費用には、控除や減免の制度が多くありますが、基本的に申請が必要です。ここでは、主な制度やサービスについて説明します。

【医療費控除】

その年の1月1日から12月31日までの間に自分または生計を共にする配偶者、その他に親族のために医療費を支払った際に受けられる控除です。支払った医療費が一定額を超えた場合、その額をもとに計算される金額の所得控除を受けることができます。

参照:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」

【医療費控除の対象になるもの】

控除

内容

医師または歯科医師への診療費

あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師による施術費。

治療または療養に必要な医薬品の購入費(風邪薬や頭痛薬・イチジク浣腸など)

医師等による診療等を受けるための通院費。医師等の送迎費。

病院・診療所・介護施設入所にかかる費用

医師等による診療や治療を受けるために直接必要な、義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯、眼鏡などの購入費用。

傷病により6ヶ月程度寝たきりで医師による治療を受けており、おむつが必要と認められた場合おむつ費用(おむつ使用証明が必要)

介護保険など制度で提供された施設居宅サービスの自己負担額。

介護福祉士などによる喀痰吸引・経管栄養の費用

入院時の部屋代や食事代の費用。

この他にも対象となる費用があります。詳しくは、下記参照より確認することができます。当てはまる控除がないか、ぜひ確認してみてください。

参照:「国税庁」医療費控除の対象となるもの

【医療費控除の金額】

実際に手元に戻ってくる還付金の金額は『医療費控除額×所得税率』で計算されます。

まず、医療費控除額を算出します。

・その年の総所得金額などが200万円以上の方

<計算方法>

実際に支払った「1年間の医療費の合計金額-保険金などで補填される金額(※)-10万円

・その年の総所得金額などが200万円以下の方

実際に支払った「1年間の医療費の合計金額-保険金などで補填される金額-総所得金額×5%」

どちらの場合も上限額は200万円までです。

※生命保険などで支払われる入院給付金や健康保険などで支払われる高額療養費などが該当

次に、所得税率を計算します。

「総所得(年収入―給料所得控除)-各所得控除=課税所得」

ここで計算された課税所得を基に速算表で所得税率を確認すると控除額がわかります。

所得税率を確認後、「医療費控除額×所得税率」の計算で手元に還付される金額がわかります。

参照:国税庁「令和4年分の年末調整のための算出所得税額の速算表」

【医療費控除の手続き方法】

確定申告の際に、居住している所轄の税務署で医療費控除に関する書類を揃え、必要事項を記載して提出します。所轄の税務所に足を運ばなくても、自宅のパソコンやスマートフォンから「e-Tax」を利用して申告ができます。

参照:国税庁「医療費控除を受ける方へ」

【扶養控除】

・扶養控除の対象者

納税者に所得税法上の控除対象扶養親族(その年の12月31日の時点で16歳以上)となる人が対象です。扶養親族とは、その年の12月31日の時点で下記の要件すべてに該当する方が対象となります。

①配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)または、都道府県知事から養育を委託された児童(里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。

②納税者と生計を同じ(一つの家計)にしていること。

③年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給料所得のみの場合は給料収入が103万以下である)

④青色申告者の事業専従者としてその年を通じて1度も給料の支払いを受けていないこと。

白色申告者の事業専従者ではないこと。

・扶養控除の金額

控除額は、扶養親族の年齢や同居の有無によって金額が異なります。

区分

控除額

一般の控除対象扶養親族

38万円

特定扶養親族

(控除対象扶養親族のうちその年の12月31日の時点で19歳以上23歳未満の人)

63万円


老人扶養親族

(控除対象扶養親族のうちその年の12月31日の時点で70歳以上の人)

同居老親等以外
48万円
同居老親等
58万円

老人扶養親族は2つの条件に分かれます。同居老親等とは、老人扶養親族のうち自身や配偶者の直系尊属(父・母・祖父母など)と、常に同居していることをいいます。

例えば、老人ホームなどに入所している場合は、同居ではないため、同居老親等以外に該当します。

・扶養控除の手続き方法

給料所得者であれば、年末調整時に必要事項を記入し提出します。「給料所得者の扶養控除等(異動)申告書」が会社より配布されるため、期限までに提出しましょう。

それ以外の方は、医療費控除と同様に確定申告の際に所轄納税事務所に書類に必要事項を記入し提出が必要です。

参照:国税庁「扶養控除」

【障害者控除】

納税者自身が、同一生計型配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に該当している方は障害者控除の対象者になります。また、下記の条件のいずれかに該当していなくてはなりません。

  1. 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にある方(特別障害者)

  2. 児童相談所・知的障害者更生相談所・精神保健センター・精神保健指定医の判断により知的障害者と判断された方(重度の知的障害者と判断された方は特別障害者)

  3. 精神保健および精神保健障害福祉に関する法律の規定により精神障害者保険福祉手帳の交付を受けている方(障害等級が1級の人は特別障害者)

  4. 身体障害者福祉法お規定により交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害があると記載されている方(障害の程度が1級または2級の記載がある方は特別障害者)

  5. 精神または身体に障害がある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が1・2・4に掲げる人に準ずるとして市町村長や福祉事務所長の認定を受けている方(特別障害者に準ずると知町村長・特別区区長・福祉事務所長の認定を受けている人は特別障害者)

  6. 戦傷病者特別援護法の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている方(障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症の方は特別障害者)

  7. 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定により厚生労働省の認定を受けている方(特別障害者)

  8. その年の12月31日の時点で引き続き6ヶ月以上にわたって身体の障害により寝たきり状態で、複雑な介護を必要とする方(特別障害者)

・障害者控除の金額

障害者控除は以下のように区分によって控除額が決まります。

区分

控除額

障害者

27万円

特別障害者

40万円

同居特別障害者

75万円

同居特別障害者とは、特別障害者である同一生計の配偶者または扶養親族です。納税者自身・配偶者・その納税者と家計を同じくしている親族のいずれかと同居している方のことを指します。

・障害者控除の手続き方法

扶養控除と同様に、給料所得者であれば年末調整時の『給料所得者の扶養控除等(異動)申告書』に必要事項を記載し提出します。それ以外の方は、確定申告の時に所轄の納税事務所に申告が必要です。

参照:国税庁「障害者控除」

介護保険負担限度額認定

公的施設を利用する際に減免される制度

介護保険施設を利用する際に下記の要件を満たし、申請手続きをすることで、介護サービス費・食費・居住費の自己負担額を軽減することができます。

【利用者負担段階区分】

負担限度額は以下の4つの区分に分かれます。

区分


要件/預貯金の合計など
単身
夫婦
第一段階
老齢福祉年金受給者・生活保護受給者
第二段階
本人の合計所得金額と課税年金及び非課税年金の収入額の合計が年間80万円以下の方
650万円以下
1,650万円以下
第三段階(1)
本人の合計所得金額と課税年金収入額と非課税年金収入額の合計が年額80万円を超え120万円以下
550万円以下
1,550万円以下
第三段階(2)
世帯全員が市区町村民税非課税かつ、本人の合計所得金額と課税年金収入額と非課税年金収入額の合計が年額120万円超
500万円以下
1,500万円以下

上記に該当しない方は、課税世帯のため第4段階となります。

また、世帯分離している場合でも配偶者の所得は合算され、世帯全体が非課税でなければ限度額認定証の交付を受けることはできません。

預貯金とは以下のものの合計を指します。

  • 預貯金(普通・定期)

  • 有価証券(株式・国債・地方債・社債など)

  • 金・銀などの貴金属

  • 投資信託

  • 現金

  • 負債(借入金・住宅ローンなど)

【食費と居住費の費用負担額】

・食費

区分

入所

ショートステイ

第一段階

300円

300円

第二段階

390円

600円

第三段階(1)

650円

1,000円

第三段階(2)

1,360円

1,300円

第四段階

1,445円

1,445円

・居住費

区分

ユニット型個室

ユニット型個室的多床室

従来型個室

多床室

第一段階

820円

490円

490円

0円

第二段階

820円

490円

490円

370円

第三段階(1)

1,310円

1,310円

1,310円

370円

第三段階(2)

1,310円

1,310円

1,310円

370円

第四段階

2,006円

1,668円

1,668円

377円

・介護保険負担限度額認定証を利用できるサービス

介護保険施設で入所サービス・短期入所サービスを利用する際に、限度額認定証を提示することで上記のような助成を受けることができます。

利用できる介護保険施設は以下の通りです。

  • 介護老人福祉施設(特養)

  • 介護老人保健施設(老健)

  • 介護医療院

  • 介護療養型医療施設

有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホームなどの施設は、限度額認定証の助成を受けることができません。

高額介護(予防)サービス費

1ヶ月に支払う介護保険サービスの自己負担額上限が定められている

1ヶ月に支払った自己負担額の合計が、所得に応じて定められた負担限度額を超えた場合、その差額が返還されます。

区分

対象者

負担上限(月)

第一段階

生活保護を受給しているなど

15,000円(個人)

第二段階

市町村民税世帯非課税で公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下

24,600円(世帯)

15,000円(個人)

第三段階

市町村民税世帯非課税で第1段階及び第2段階に該当しない方

24,600円(世帯)

第四段階

①市区町村民税課税世帯~課税所得380万円(年収約770万円)未満

②課税所得380万円(年収約770万円)~690万円(年収約1,160万円)未満

③課税所得690万円(年収約1,160万円)以上

①44,400円(世帯)

②93,000円(世帯)

③140,100円(世帯)


高額介護サービス費は、介護サービス費が自己負担限度額を超えたとき、その分を返金する制度です。自己負担限度額を超えると、お住まいの自治体から「支給申請書」が届きます。振込口座などの必要事項を記入し、申請が通ると「支給決定通知書」が届き、指定した口座に振込されます。返金には数ヶ月程度かかる場合があるため、振込がない場合は自治体に確認すると良いでしょう。

また、事前に申請しておくと上限額までの支払いとなるため、振込の手続きなどは扶養になります。

高額医療合算介護(予防)サービス費

医療費と介護サービス費を合算して算出する助成制度

高額医療合算介護(予防)サービス費は、高額介護合算療養費制度とも言います。各医療保険を利用した費用と介護保険サービス費の負担額を合算した金額が、定められた金額を超えた場合に差額分の支給を受けられる制度です。

高額医療合算介護サービス費の対象となる要件は以下の通りです。

  • 各医療保険における医療保険と介護保険の両方で自己負担した費用がある

  • 1年間の医療保険と介護保険の自己負担額の合算が所得区分ごとの限度額を超えている

対象期間は医療保険・介護保険とも毎年8月1日〜翌年7月31日の1年間になります。

所得区分ごとの上限額は以下の通りです。

【世帯の負担限度額(年)】

・70歳以上の方・後期高齢者医療保険の方

所得区分

支払額の合計

課税所得690万円未満

212万円

課税所得380万円以上690万円未満

141万円

課税所得145万円以上380万円未満

67万円

一般世帯

56万円

市町村民税非課税世帯

31万円

3のうち所得が一定以下の世帯

31万円

・70歳未満の人

所得区分

支払額の合計

所得額901万円超

212万円

所得額600万超901万円以下

141万円

所得額210万超600万円以下

67万円

所得額210万以下

60万円

市町村民税非課税世帯

34万円

社会福祉法人等による利用者負担軽減制度

社会福祉法人などが提供するサービスには負担を軽減する制度がある

社会福祉法人や関連する組織が実施する介護サービスには、所得が低く生計が困難な方や生活保護を受けている方のための利用者負担軽減制度があります。

低所得者は、通常の利用者負担の4分の1(利用者負担段階第1段階の方は2分の1)が軽減されます。また、生活保護を受けている方は、特定の施設の個室居住費が全額免除されます。

【利用できるサービス】

  • 訪問介護

  • 通所介護(地域密接型を含む)

  • 短期滞在型生活介護(介護予防サービス含む)

  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護

  • 夜間対応型訪問介護

  • 認知症対応型通所介護(介護予防サービス含む)

  • 小規模多機能型居宅介護(介護予防サービス含む)

  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

  • 看護小規模多機能型居宅介護

  • 介護福祉施設サービス

  • 介護予防型訪問サービス(介護予防・日常生活支援総合事業)

  • 介護予防型通所サービス(介護予防・日常生活支援総合事業)

  • 短時間型通所サービス(介護予防・日常生活支援総合事業)

【特例】介護保険料の減免及び軽減

特別な条件が当てはまる場合には介護保険料が軽減される

介護保険は高齢者が安心して介護サービスを受けるための制度です。介護保険料の支払いは40歳以上の方の義務ですが、特定の条件下で介護保険料の減免や軽減が行われています。具体的には以下の通りです。

【災害減免】

大規模な自然災害などにより、家屋や財産を失った場合、一定期間の介護保険料が軽減または免除されることがあります。

例:損害の程度が床上浸水または10分の1以上のとき

【所得激減減免】

失業や病気、家族の死亡により所得が大幅に減少した場合、状況に応じて保険料の軽減や免除が行われます。

例:事情により、1年後の予想所得が、前年の所得と比較して半分以下になり、保険料の段階が低下する場合など。

【生活困窮者減免】

継続的に経済的な困難に直面している方のための制度で、所得や資産が一定の基準を下回る場合に、介護保険料が軽減されることがあります。ただし以下のような要件があります。

  • 住居以外に土地や建物を所有していない

  • 世帯の預貯金などが単身世帯で350万円以下である

  • 市町村税が課税されている親族の扶養控除対象者ではない

  • 市町村税が課税されている者と同居していない

【制度的無年金者減免】

公的年金を受給する資格がない、いわゆる「無年金者」の場合で、年齢や健康状態に関わらず介護保険料の減免が適用されることがあります。

例:外国籍高齢者等福祉給付金を受給している場合

【法第63条適用者減免】

介護保険法第63条に基づき、特定の条件を満たす者に対しての保険料の減免措置がとられます。

例:刑務所などで受刑中

具体的な条件や対象者は地域や状況により異なるため、詳細は各自治体に問い合わせてみると良いでしょう。

まとめ

まとめ

今回は、介護の経済的負担を軽減する減免制度について紹介しました。

介護保険は、急増する高齢者が安定した介護サービスを利用するためにできた制度です。しかし、介護保険を利用する際は、一部の自己負担金が必要で、様々な事情によって支払いが困難な方もいるでしょう。

支払ができなくなる前に、助成制度を利用して支払いを軽減することが大切です。制度により要件や種類が異なる場合があるため、お住まいの管轄役場にある介護保険窓口や生活支援窓口に相談すると良いでしょう。

今回の記事が介護保険の節税や助成サービスの参考になれば幸いです。

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