介護保険料を滞納したらどうなる?支払いできないときの対処方法を解説

「介護保険料を支払えないときはどうなるの?」「差し押さえなどの厳しい罰則もある?」このような疑問はありませんか?

介護保険料は、私たちが高齢になったときに必要な介護サービスを受けるための資金源です。しかし、経済的な困窮や情報不足によって支払いが滞るケースも少なくありません。

今回は、介護保険料のしくみや滞納になったときの対処法について解説します。ぜひ参考にしてみてください。

#条件#制度#手続き関係#豆知識
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

介護保険料とは?

高齢者や障がい者が介護保険サービスを平等に利用するための資金源

介護保険料とは、日本の介護保険制度を支えるために、被保険者から徴収する費用のことを指します。この制度は、高齢者や障がいを持つ人々が必要な介護サービスを受けられるよう、日本の高齢化社会を背景に2000年に導入されました。介護保険料の対象者は次のとおりです。

【第一号被保険者】

65歳以上のすべての高齢者が該当します。65歳を超えると、自動的に介護保険料が公的年金から天引きされます。

【第二号被保険者】

40歳から64歳までの医療保険加入者が該当します。第二号被保険者は、将来的な介護サービスの予備軍として、介護保険料の支払いが始まります。40歳になると給料から天引きされて支払いが始まるケースがほとんどですが、自営業などの方は自身で直接支払う必要があります。

介護保険料は、所得や地域によって異なります。介護サービスのニーズや財政状況に応じて保険料率が決まるため、具体的な金額を知りたい場合は、所在地の市区町村にある介護保険担当窓口に問い合わせると良いでしょう。

介護保険料を滞納したらどうなる?

滞納期間に応じた延滞金以外にも罰則がある

介護保険料を滞納した場合は、次のような処分や制限があります。

【滞納処分】

介護保険料の納付期限から20日を過ぎると、市区町村から督促状が届きます。督促には100円ほどの手数料と期限を過ぎたことによる延滞金が加算されます。

対応しない場合には、電話や訪問などによって支払いを促されます。その後も支払いがない場合、預金や財産が差し押さえられることもあるため、注意が必要です。

近年、差し押さえ処分に発展するケースは少なくありません。令和3年時点で滞納処分を実施した自治体は646(全体の41.1%)で、17,592人の方が差し押さえ決定となっています。令和2年では、660(全体の42%)の自治体で滞納処分が実施され、21,624人の方が差し押さえ決定となりました。

滞納する人の数は年々増加傾向にあります。

参考:厚生労働省「令和3年度介護保険事務調査の集計結果について」

【給付制限】

保険料を滞納した期間に応じて、介護サービス利用時に制限がかかります。制限がかかると介護保険の自己負担額の増加や各減免制度を利用できない場合があるため、注意が必要です。

滞納期間別に3つの罰則がある

滞納期間に合わせた具体的な罰則

介護保険料が滞納になった場合は、滞納期間に合わせて様々な罰則が発生します。罰則は次の通りです。

【1年未満の滞納】

最初の数ヶ月間は、延滞金が発生します。延滞金は、滞納月数や滞納金額に応じて算出されるため、長引いた分、支払い総額が増えていきます。

【1年以上2年未満の滞納】

滞納が1年以上続くと、自治体が法的な手段をとることもあります。具体的には、給与や資産の差し押さえです。この場合、法的手続きや手数料も発生するため、さらに、経済的な負担が増大するでしょう。

また、給付の停止措置が行われると、介護サービスを受けた際、7~9割の介護保険給付が支払われず、全額自己負担となります。そのため、必要な介護や医療サービスが受けられなくなる可能性があるため、早急に対処が必要です。

【2年以上の滞納】

滞納期間が2年以上になると、時効となります。その後の支払いは受け付けられません。

また、介護保険サービスを利用すると、過去10年間の保険料の支払い状況がチェックされます。

このとき、滞納した期間があり時効になったことがわかると、本来1割や2割の自己負担で済む介護保険サービスが、3割の自己負担となります。また。既に自己負担が3割の場合は、4割の負担を求められるため注意が必要です。

保険制度が導入された背景と今後の見通し

少子高齢化への対策として2000年よりスタート

日本の介護保険制度は、2000年4月にスタートしました。介護保険制度の導入前には、各地域の自治体が中心となり、措置制度が実施されていました。少子高齢化の影響で社会保障費が増大し、税金だけで高齢者の生活を支えることが難しくなったことから「介護保険制度」が生まれました。

しかし、介護保険料が滞納されると、介護給付の財源が圧迫され、満足のいく介護保険サービスの提供ができなくなることが懸念されます。日本は長寿国として知られ、1994年に高齢化率が14%を超えました。そして2017年には、27.7%に達し、超高齢社会となっています。介護保険料の滞納が増加すると、介護保険制度が破綻し、高齢者の生活を支えられなくなる可能性があります。

現状でも、高齢者同士の介護”老老介護”や認知症の高齢者同士の介護”認認介護”は、社会問題となっています。子ども世代にとっても大きな影響があり、親の介護のために離職を余儀なくされる”介護離職”は、社会全体の課題と言えるでしょう。

誰もが満足のいく介護保険制度の発展や高齢社会問題の改善には、介護保険料の納付が必要不可欠です。

介護保険料の滞納は増加傾向

介護保険料が年々増加傾向

高齢者の介護保険料の負担は年々増加傾向にあり、滞納者が増加している要因のひとつと考えられます。2021〜2023年度の介護保険料の月平均は6,014円で、過去最高を更新しました。制度開始の2000〜2002年度の平均2,911円と比べると、約2倍の増加量です。

介護保険の財政は主に自治体が負担しており、毎年の予算の半分は税金から、残り半分は保険料から賄われています。保険の加入者は65歳以上と40〜64歳の2つに区分し、40歳~64歳の加入者が負担するのは全体の27%、残りは国が請け負う仕組みです。しかし、65歳以上の加入者が負担する残りの23%の保険料が増え続けています。

さらに、介護サービス利用者の自己負担率も将来的に上昇する可能性があります。現在、介護サービスの自己負担額は所得に応じて1~3割に分けられていますが、1割負担の利用者が92%を占めており、2割以上の負担をしている人は少ないのが現状です。

介護保険の負担割合増加が検討されていることからも、今後、高齢者の経済的負担やさらなる滞納者が増えることが懸念されます。

なかには、故意ではなくうっかり未納となっている方も少なくありません。うっかり未納になる要因は以下の通りです。

要因

詳細

通知の見落とし

介護保険料の請求書や通知書が届いても気づかず見落としてしまう。

住所変更の届け出忘れ

移転などで住所が変わった場合、新しい住所に請求書が届かない。

残高不足

口座振替で支払いしている場合、口座の残高が不足している。

生活状況の変化

病気や入院で日常生活のリズムが乱れ、支払いを忘れてしまう。

介護保険料は基本的に特別徴収のため、未納にはなりにくいシステムですが、普通徴収の方は上記の要因に注意が必要です。

普通徴収の対象者は以下の通りです。

  1. 年金額が年額18万円(月額1万5千円)未満の人

  2. 65歳になったとき

  3. 転入したとき

  4. 他の市町村へ転出したとき

  5. 年度の途中で、保険料が減額・増額)

  6. となったとき

  7. 年金を担保に借入れしているとき

  8. 年金の種類が変わったとき

  9. 住民票の住所と年金保険者に届出している住所が変わったとき

該当する普通徴収の方は特に注意しましょう。

介護保険の支払いができない場合の対処方法

罰則を受ける前に早めの対処が必要

介護保険料の支払いが難しくなる場合は早めの対応が大切です。長期にわたる介護保険料の未払いは、将来の介護保険サービスの利用に影響を及ぼします。経済的な困難を感じた場合、次の2つの方法を検討すると良いでしょう。

【介護保険料の軽減申請】

介護保険料の相談は市区町村の介護保険窓口で相談ができます。要件を満たせば、介護保険料の減免が受けられる場合があります。滞納を続けていると、介護保険サービスを利用する際に自己負担額が増大するなど、不利な状況になってしまうため、早めに相談すると良いでしょう。

【生活保護制度の利用】

経済的困難が一時的ではない場合、生活保護の申請を検討すると良いでしょう。生活保護の受給には条件があるため、必ず受けられる訳ではありませんが、申請が通ると必要に応じた給付を受けることができます。

生活保護に抵抗を感じる方も多いですが、経済的な困窮に気づいていない方は少なくありません。第三者を介入して経済状況を見直してみる良い機会にもなるでしょう。

介護保険料が免除される人

介護保険料の支払いをしなくても良いケース

介護保険料は特定の条件に当てはまる場合、支払いが免除されます。免除の対象は次の通りです。

【海外在住者】

海外での長期滞在者は介護保険料の対象外となります。海外転居時に、市区町村へ転出届の提出が必要となるため、手続きを忘れないようにしましょう。

【適用除外施設の利用者】

障がいや特定の病気を持つ方が入院・滞在する特定施設では、介護保険料が免除されるケースがあります。例えば、ハンセン病療養所や障害者総合支援法の指定施設などが挙げられます。

【短期訪問の外国人】

滞在期間が3ヶ月未満の外国人は、介護保険料の対象となりません。ただし、滞在期間が3ヶ月を超える可能性がある場合は、介護保険料が必要となるため注意が必要です。

【被扶養者】

40歳以上65歳未満の被扶養者は、介護保険料の支払いが不要です。例えば、専業で主婦(父)をしている方が該当します。但し、65歳を超えると、介護保険料が公的年金からの天引きとなる場合があるため注意が必要です。

【生活保護の受給者】

生活保護を受けている方は、介護保険料の支払いが不要となります。生活保護を受けると、通常の医療保険からの脱退となるため、介護保険料も免除される仕組みとなっています。65歳以上の生活保護受給者も同様に、自己負担なしで介護保険サービスが利用できます。

参照:厚生労働省「介護保険料に係る生活保護受給者の取扱いについて」

まとめ

まとめ

今回は、介護保険料が滞納になった場合の罰則や対処方法について紹介しました。滞納する理由や事情は人それぞれあります。支払えない状況は誰にでも発生する可能性があると言えるでしょう。

一時的な滞納なら、延滞金や手数料で済みますが、長期になると資産の差し押さえや介護保険サービスの自己負担額が高額になる場合があります。滞納による影響は非常に大きいため、早めに対処が必要です。支払いが困難な場合は、自治体の窓口で相談し、経済面の見直しや相談を申し出てみてください。

今回の記事が介護保険料滞納についての理解につながれば幸いです。

施設を探す

カテゴリー

公式SNSアカウント更新中!

老人ホーム選びや介護に役立つ 情報をお届けします!