特養(特別養護老人ホーム)と養護老人ホームの違いとは?入所前に知っておくべき6つのこと

「特養と養護老人ホームの違いってなに?」「サービスや入居条件に違いはあるの?」このような疑問はありませんか?

特養(特別養護老人ホーム)と養護老人ホームは、どちらも「養護老人ホーム」と名前が付いていることから区別がつかないと感じる方も少なくありません。しかし、それぞれの施設には異なるサービスや入居条件があります。これらの違いを理解しないで施設に入居してしまうと、思っていたサービスが受けられないこともあるでしょう。

そこで今回は、特養と養護老人ホームの違いについて紹介します。メリットやデメリットを理解して、自身にあった施設を選びましょう。

#老人ホーム#特養#施設サービス#条件#選び方
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

特養と養護老人ホームの役割

特養は長期利用を目的に生活する施設・養護老人ホームは生活困窮者を措置する施設

特養(特別養護老人ホーム)と養護老人ホームは、高齢者の生活を支えるサービスを提供する施設ですが、それぞれ役割が異なります。

【特養(特別養護老人ホーム)】

特別養護老人ホームは、介護保険法に基づく施設で、介護が必要な高齢者が自分らしく安心して生活できるよう、24時間体制で介護サービスを提供する施設です。主に要介護3以上の高齢者が利用し、介護・医療的ケア・生活支援・レクリエーションなどを提供します。また、従来型やユニット型など、生活スタイルや介護度に合わせて施設の形態を選択できるのが特徴です。

【養護老人ホーム】

介護度に関係なく、経済的困窮などにより日常生活に支障がある65歳以上の高齢者を対象に支援を行う施設です。基本的には自立して生活できる方が対象で、生活支援を中心にサービスを提供します。

社会復帰を目的としているため、レクリエーションや地域交流が活発に行われている施設です。しかし、特養などの施設とは異なり、介護サービスを提供する施設ではありません。

特養と養護老人ホームは入居条件が違う

それぞれ異なる入居条件がありすぐには入居できない

特養と養護老人ホームは、役割とサービス内容の違いから、入居条件が大きく異なります。それぞれの違いは以下の通りです。

【特養の入居条件】

特養は、介護保険の要介護認定で要介護3以上を受けていることが基本的な条件です。特別な条件に該当する場合に限り、要介護1、2でも入居できることがあります。

要介護3以上の認定を受けていても、施設によっては認知症の症状が重たい方や要介護4以上の受け入れを優先していることもあるため、希望する施設に確認すると良いでしょう。

特養の利用は、長期になる場合も多いため、入居申し込みから利用までに時間がかかることが多いです。すでに入居されている方が退去し、次の方を受け入れる準備ができるまで、数か月から数年待機することもあります。

待機期間を想定して申し込みをすると良いでしょう。また、複数の特養に申し込みを出し、早く空きが出たところに入居する方もいます。待機者がすでに複数いる施設も多いですが、すべての申込者が待機しているとは限りません。施設が、待機者に空きが出た連絡をしても、すでに他の施設に入居していたり亡くなっている場合があるため、待機者数は1つの目安とするのが良いでしょう。

【養護老人ホームの入居条件】

養護老人ホームの入居条件は、身体的な自立と経済的困窮の2つを基本としています。入居者は要介護状態ではなく、自立して生活ができる65歳以上の方で、在宅での生活が困難になった方や、生活保護受給者・低所得者など、経済的に不安定な状況に置かれている方が対象の施設です。

また、独居の高齢者・経済的に困窮した方・虐待を受けている高齢者・特別な理由によって施設に入居できない方・ホームレスの方・犯罪歴のある方・賃貸住宅から立ち退きを受けた方などが該当します。

入居には地方自治体の審査と措置判断が必要で、市区町村の判断と決定をもって入居となります。生活費は公費によってまかなわれるため、入居者の負担は少なくなります。しかし、社会保障費の増大に繋がるため、入居者は制限されることがあります。

養護老人ホームへの入居は、施設数や定員数が限られているため、入居の難易度が非常に高いといえるでしょう。審査結果により、緊急度の高い方から優先的に入居が進められることが多く、家族との折り合いが悪く虐待の恐れがあったり、住む場所がなかったりする方は、緊急性が高いと判断され、優先的に入居できることがあります。

特養と養護老人ホームのサービス内容

養護老人ホームでは介護サービスの提供はない

特養と養護老人ホームは、共に高齢者を対象とした施設ですが、提供されるサービス内容には大きな違いがあります。

【特養のサービス】

要介護度3以上の高齢者を対象に、24時間体制で介護サービスが提供されます。食事・入浴・排泄を中心に、日常生活の支援全般をサポートします。医療的ケアやレクリエーション、機能訓練などのサービスも含まれており、生活全般をサポートする施設です。

また、ユニット型と呼ばれる特養では、少人数制(10名前後)のグループ(ユニット)ごとに日常のサービスを提供します。入居者の個別ニーズに対してサービス提供することを目的とており、現在多くの特養が導入しています。

【養護老人ホームのサービス】

介護度に関係なく生活に困難を抱える高齢者を対象とした施設で、主に生活面の支援を行います。具体的には、食事・洗濯・掃除などの日常生活の補助、そしてレクリエーションや行事の企画・実施など、生活の質を向上させるためのサービスが提供されています。

しかし、養護老人ホームでは医療や介護サービスの提供は基本的に行いません。そのため、入居条件に「自立した生活ができる方」と定められています。

2005年の介護保険法改正により、養護老人ホームを利用する高齢者の介護ニーズに対応するために、「外部サービス利用型特定施設入居者生活介護」が導入されました。この制度により、養護老人ホームに入居する高齢者は、施設と契約する介護事業者から介護サービスを受けることができるようになりました。

制度の導入により、入居者は施設内での生活だけでなく、外部の介護事業者からも必要な介護サービスを受けることができ、日常生活の支援や身体介護、医療的なケアなど、個々の介護ニーズに合わせた生活を送れるようになりました。

それぞれの施設が提供するサービス内容を理解し、自身や家族の状況に合わせて適切な施設を選ぶことが大切です。

特養と養護老人ホームの費用

それぞれ異なる費用設定がある

特養(特別養護老人ホーム)と養護老人ホームは、費用設定が大きく異なります。

【特養の費用】

特養は、介護保険の対象となる施設のため、利用者が自己負担する金額は介護保険料と一部の食費や居住費、医療費などです。

具体的な費用は、利用者の介護度や施設の設備、提供するサービスによって異なります。また、ユニット型と従来型の2種類があり、それぞれ費用設定も異なるため注意が必要です。


ユニット型特養

従来型特養

居室タイプ

ユニット型個室

従来型個室

多床室

介護サービス費

(要介護3)

793円

712円

712円
食費
1,445円
おやつ費
施設によって異なる
居室費
2,006円
1,668円
377円
医療費
個人で異なる
消耗品費
施設によって異なる

※1単位=10円 地域加算は含まない

ユニット型特養は、従来型特養に比べて介護サービス費や居室費が割高に設定されています。また、個室を利用した場合、別途「特別室料」としてプラス数千円(1日)ほど加算される施設もあるため注意が必要です。

【養護老人ホームの利用費用】

施設利用者の前年度所得によって39段階に分けられ、それぞれの段階で費用が定められています。具体的には、前年度の所得額や所得の種類、年齢などを基に計算される自己負担額と、それ以外の部分を国や地方自治体が負担します。収入に応じた負担額は以下の通りです。

段階

1年間の収入

月額利用料

1

0~27万円

0円

2

27万1~28万円

1,000円

3

28万1~30万円

1,800円

4

30万1~32万円

3,400円

5

32万1~34万円

4,700円

6

34万1~36万円

5,800円

7

36万1~38万円

7,500円

8

38万1~40万円

9,100円

9

40万1~42万円

1万800円

10

42万1~44万円

1万2,500円

11

44万1~46万円

1万4,100円

12

46万1~48万円

1万5,800円

13

48万1~50万円

1万7,500円

14

50万1~52万円

1万9,100円

15

52万1~54万円

2万800円

16

54万1~56万円

2万2,500円

17

56万1~58万円

2万4,100円

18

58万1~60万円

2万5,800円

19

60万1~64万円

2万7,500円

20

64万1~68万円

3万800円

21

68万1~72万円

3万4,100円

22

72万1~76万円

3万7,500円

23

76万1~80万円

3万9,800円

24

80万1~84万円

4万1,800円

25

84万1~88万円

4万3,800円

26

88万1~92万円

4万5,800円

27

92万1~96万円

4万7,800円

28

96万1~1,00万円

4万9,800円

29

100万1~104万円

5万1,800円

30

104万1~108万円

5万4,400円

31

108万1~112万円

5万7,100円

32

112万1~116万円

5万9,800円

33

116万1~120万円

6万2,400円

34

120万1~1,26万円

6万5,100円

35

126万1~132万円

6万9,100円

36

132万1~138万円

7万3,100円

37

138万1~144万円

7万7,100円

38

144万1~150万円

8万1,100円


39

150万1円以上

(150万超過額×0.9÷12月)

+8万1,100(100未満切捨て)円

養護老人ホームは、経済的に困難な高齢者が自立生活を送るための支援を提供する施設のため、入居時の初期費用は0円と定められています。消耗品や医療費などの費用負担が必要です。

施設選びでは年収や経済状況を判断し、適切な施設を選ぶことが重要です。利用を希望する施設の費用については、事前に確認しておくことをおすすめします。

特養と養護老人ホームのメリットデメリット

特徴が異なるため自身に合った施設を選択しましょう

特養と養護老人ホームには、それぞれメリットとデメリットがあります。まずは特養から見ていきましょう。

【特養のメリット】

介護保険の対象施設のため、自己負担は一部の食費や居住費、医療費などに限られています。そのため、全体的な費用負担は抑えられ安価で利用可能です。また、医療と介護が密接に連携しており、体調変化に対しても迅速に対応することができます。

24時間介護サービスを提供しているため、夜間帯のケアにも対応可能です。ユニット型特養では、個室の環境が整っているため、プライバシーも保たれます。施設によっては、看取りケアも行われているため、終身まで利用することも可能です。

【特養のデメリット】

多くの方が特養の利用を希望される傾向から、入居待機になりやすく、すぐに利用できないことが多い傾向です。

従来型特養では、複数人の共同生活の場となり、個別ケアが提供されにくい環境です。また、設備の老朽化なども課題となることがあります。一方、ユニット型特養では、少人数のユニットケアが実施されているため、他の利用者との関わりが少なくなる可能性があります。

次に、養護老人ホームのメリットとデメリットについて見てみましょう。

【養護老人ホームのメリット】

全部屋個室のため、プライバシーが確保されています。共有で利用する設備は居室から近い施設も多く、過ごしやすい環境です。生活支援が受けられるため、自分のペースで日常生活を送ることができます。

所得に応じた利用料のため、経済的な心配も少ないでしょう。

【養護老人ホームのデメリット】

基本的に施設利用の負担額は少ないですが、前年度の収入が高いほど費用負担が増えていきます。また、介護サービスの提供がないため、常時介護が必要な方には向いていないと言えるでしょう。介護が必要になった場合は、養護老人ホームを退去し、転居先を探す必要があります。

以上のように、特養と養護老人ホームはそれぞれ異なる特性があります。個々のニーズやライフスタイル、医療や介護の必要性を考慮して、最適な施設を選ぶことが大切です。

特養と養護老人ホームの入居しやすさ

どちらの施設も利用までには時間がかかる

特養と養護老人ホームは、どちらも入居審査があり、希望してもすぐに入居できることは少ない傾向です。

特養は、厚生労働省が定める基準として、要介護度3以上の方が対象となります。要介護度3以上の方でも、空き部屋がない場合や介助量の多さで、入居の可否や順番が決まります。その時の入居者の状態や職員人数とのバランスにも左右されるため、詳細は希望する施設に確認すると良いでしょう。

一方、養護老人ホームにも入居審査があります。審査では、前年度の収入や医療的なケアの必要性、一人暮らしの生活状況などを考慮して評価されます。審査は、行政が行っており「措置」の認定を受けると入居が可能です。

審査には時間を要することも多いため、入居を希望する際は早めに申し込みをすると良いでしょう。

まとめ

まとめ

今回は、特養と養護老人ホームの違いについて紹介しました。どちらの施設も「養護老人ホーム」と名付けられているため、同じような印象を受ける方もいますが、サービス内容や入居条件は大きく異なります。

特養の入居条件は、要介護3以上の介護が必要な高齢者が対象です。一方、養護老人ホームは介護度に関係なく、65歳以上で身体的な自立と経済的困窮が入居条件となります。また、生活保護受給者や低所得者など、経済的に不安定な状況に置かれている方も入居対象となる施設です。特養では、24時間の介護サービスの提供はありますが、養護老人ホームでは基本的に介護を受けることができません。それぞれのメリットとデメリットを理解して、自身にあった施設を検討すると良いでしょう。

今回の記事が施設選びの参考になれば幸いです。

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