従来型特養からユニット型特養(新型特養)へ移行!それぞれの違いと選び方を解説

「ユニット型特養(新型特養)とはどんなところ?」「従来型特養とは何が違うの?」このような疑問はありませんか?

特養は、ユニット型特養(新型特養)と従来型特養の2つの種類があり、どちらの施設も介護サービスを受けながら、長期的に利用できる施設です。しかし、提供するケア方法や設備、人員の配置などが異なります。

ユニット型とは2001年に導入されたケア方法で、利用者を少人数のグループに分け、一人ひとりのニーズに合わせた個別ケアを提供するとして注目を集めました。2002年から補助金制度が始まったことから、新設する特養のほとんどがユニット型を導入しています。

今回は、ユニット型特養と従来型特養の違いについて解説します。それぞれのサービスや費用、選び方などを解説しているため、特養の入所を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

#老人ホーム#特養#施設サービス#費用#生活
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

特別養護老人ホームには2つの種類がある

ユニット型特養と従来型特養

特別養護老人ホーム(特養)には、大きく分けて2つの種類があります。

【従来型特養】

従来型特養は、建物内に複数の部屋があり、カーテンやパーテーションで居室が仕切られ、1部屋に2〜4名の利用者が入居する形態です。食堂やトイレ、浴室などの共用スペースは、多くの利用者が同時に利用可能です。また、従来型特養にも個室があり、「従来型個室」と呼ばれています。

【ユニット型特養】

ユニット型特養は、10名前後の少人数のグループ単位で介護を行っており、利用者には個室(または準個室)が割り当てられます。個室には窓があり、可動式ではない壁で区切られた居室で、天井と壁に一定の隙間がある場合は準個室と呼びます。

ユニット型特養の特徴

少人数制でアットホームな環境

ユニット型特養は、従来型特養と異なり、利用者一人ひとりに合わせた介護サービスを提供します。

【ユニット型特養が登場した背景】

従来型特養は、集団生活が中心のため個別のニーズに対応しきれないことが課題でした。ユニット型特養は、その課題を解消するために利用者の個性や生活リズムを尊重し、よりその人らしい生活を可能にするためのモデルです。

【個別ケアに特化したユニット型特養】

ユニット型特養の大きな特徴は、個別ケアに焦点を当てていることです。一人ひとりの生活習慣・趣味・体調・ADL(日常生活動作)などを考慮した介護計画が立てられ、それに基づいて各ユニットで生活を送ります。これにより、従来型特養よりも自由度が高く、利用者は自分らしい生活を送ることができます。

また、生活がユニットで完結するため、利用者や職員が顔なじみになりやすく、認知症の方でも不安なく過ごせるでしょう。

従来型特養の特徴

大人数でににぎやかな環境

従来型特養では、集団生活を基本とする特性があります。

【多床室メイン】

従来型特養の特徴は、1部屋に2~4名の利用者が入居する多床室がメインという点が挙げられます。そのため、共同生活の中で自然とコミュニケーションが促され、孤立感を軽減するというメリットがあります。一方で1人になる時間がとりにくく、自己決定の機会が少なくなるという点には注意が必要です。

【利用者の人数が多い】

従来型特養では、ひとつの施設で多くの高齢者が生活する大規模な設計の場合がほとんどです。この特徴は、効率的なケアや運用を可能にする一方で、それぞれの高齢者に対して細やかなケアが行き届かない可能性があります。

また、トイレやお風呂など共同で使用する場面も多いため、自由に生活したい・1人の時間がほしいと考える方には不向きと言えるでしょう。

利用者人数が多い分、職員も多く配置されており、共同生活を送ることで交流が生まれ、充実した時間を過ごすことができるでしょう。

【費用が安い】

従来型特養は、ユニット型特養に比べて費用が安いという特徴があります。多床室は個室に比べて大きく費用が下がるため、施設利用のコストを抑える効果があり、利用者の負担が軽減されます。

ユニット型特養と従来型特養の共通点

サービス内容に大きな違いはない

ユニット型特養と従来型特養には、前章で解説した異なる特徴がありますが、共通する点も多くあります。

【サービス内容】

ユニット型特養・従来型特養どちらのタイプでも、介護の基本的なサービス内容は同じです。具体的には、日常生活のサポート(食事・入浴・排泄)を中心に、レクリエーションや相談援助などが含まれます。また、看護師による医療的ケアも提供され、利用者の健康管理も行われます。

【入居条件】

入居条件についても共通点があります。特養への入居には、要介護認定を受け、介護度3以上の認定が必要です。また、自宅で生活が困難であると判断された場合は入居が優遇される場合があります。

基本的にはこれらの共通点がありますが、施設ごとに入居要件などが異なる場合があるため、希望する施設に確認しておくと良いでしょう。

ユニット型特養と従来型特養の費用

居室にかかる費用に大きな違いがある

ユニット型特養と従来型特養の費用には以下の表のように費用が異なります。


ユニット型特養

従来型特養

居室タイプ

ユニット型個室

従来型個室

多床室

介護サービス費

776円

695円

食費

1,445円

おやつ費

施設によって異なる

居室費

2,006円

1,668円

377円

医療費

個人で異なる

消耗品費

施設によって異なる

※1単位=10円

 地域加算は含まない

ユニット型特養は従来型特養に比べて介護サービス費や居室費が割高になります。また、個室を利用した場合、別途「特別室料」としてプラス数千円(1日)ほど加算される施設もあるため注意が必要です。

生活保護受給者の受け入れ状況

生活保護受給者でも従来型特養(多床室)は利用できる場合が多い

生活保護受給者の場合、生活保護費の支給範囲内の施設を探す必要があります。生活保護費の支給を超える場合は、その分の支払いが必要となるため、家族などから経済面で支援してもらえる状況がない限り利用は困難です。

従来型特養(多床室)の場合、居室にかかる費用が安いため、生活保護費の支給範囲内に収まるように設定されています。しかし、個室を利用した場合、生活保護費の支給額を超えるため利用は難しくなるでしょう。特にユニット型特養の場合は基本設計が個室のため、敬遠されてしまいます。

しかし、社会福祉法人などが運営するユニット型特養で、市区町村に生活保護受給者の受け入れを申請している施設では、利用の対象になる場合があります。施設ごとに生活保護者の利用人数に制限を設けている場合がほとんどです。理由としては、生活保護費の支給額を超えた利用分を施設が負担しており、運営に影響を与えてしまうため、一定数の受け入れのみに留めています。

生活保護受給者で、ユニット型特養の利用を検討する場合は、利用人数の枠が限られていることを理解したうえで探すと良いでしょう。

ユニット型特養のメリット

ユニット型特養は新しい施設が多い

ユニット型特養には多くのメリットがあります。

【プライバシーが確保される個室】

ユニット型特養は、基本的に個室のためプライバシーが保たれます。施設によって異なりますが、個室内には洗面所やトイレが設置されているため、共同で使用することに抵抗がある方でも、プライバシーが守られた環境で過ごせるでしょう。

個室から出るとリビングなどの共同スペースがあり、利用者同士の交流やレクリエーション、食事ができます。イベントやレクリエーションの参加は自由なため、利用者のペースで生活することができます。

ユニット型特養では、プライバシーを重視しながらも自分らしい生活スタイルを維持しやすい環境を提供しています。

【個別ケアに特化】

ユニット型特養は、少人数制のユニットを採用しており、一人ひとりのニーズに対応したきめ細やかなケアが可能です。スタッフが利用者の生活習慣や好みを把握し、個々の利用者に合わせたケアを提供します。

職員配置は、利用者3人に対して職員1人と定められており、この基準は従来型特養と同様です。

【比較的新しい建物が多い】

ユニット型特養は比較的新しいモデルであるため、施設自体が新しく、最新の設備を導入された施設が多い傾向です。災害などへの耐久性や安全性、生活の快適さが向上しているため、安心して利用できるでしょう。

【家族が訪問しやすい】

ユニット型特養では家族が訪問しやすい環境が整っています。部屋が個室のため、家族とゆっくり面会時間を過ごすことができます。ただし、感染症などの流行によって、面会制限が設けられている場合があるため、利用する施設に確認が必要です。

【感染症対策ができる】

従来型特養では、多人数で一つの居室空間を共有するため、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症が発生した場合、集団感染する可能性が高まります。しかし、ユニット型特養では、ユニットごとや個別に居室隔離が可能なため、集団感染の予防がしやすい環境です。

ユニット型特養のデメリット

ユニット型特養は利用料金が高い傾向

ユニット型特養は多くのメリットを提供する一方で、いくつかのデメリットも存在します。

【費用が従来型特養より高い】

ユニット型特養では、個室利用が前提となるため、多床室がある従来型特養と比べ費用が高くなる傾向があります。また、従来型個室と比較しても、1日400円ほど費用が高くなります。また、介護サービス費も1日100円ほど高くなり、経済的な負担が大きくなるというデメリットがあります。

【利用人数が少ない】

ユニット型特養では、1ユニット10名前後の利用者で構成されています。従来型特養に比べて大幅に少ない人数のため、活気が少なく感じるかもしれません。利用者同士の人間関係がうまく築けなかった場合は、孤独感につながる可能性があります。

【職員数が少なく感じる】

ユニット型特養と従来型特養は、同様の人員基準(利用者3名に対して職員は1人以上)ですが、普段顔を合わせる職員が限られるため体感的に少なく感じることがあります。

例えば、ユニット型特養では、1ユニットに利用者10名の場合、4人の職員が配置されます。対して従来型特養では、1フロアに50名の利用者がいる場合、17人の職員が配置されます。

一見、従来型の職員数が多く感じられますが、ユニット型特養が5ユニット(50名)ある場合、各ユニットに4名の職員が配置されるため、計20人の職員配置となります。従来型特養に比べて3人多い計算となり、1名の利用者に対する職員配置はユニット型特養の方が多いということになります。

ユニット型特養と従来型特養、どちらを選ぶ?

それぞれに特徴があるため向き不向きがある

ユニット型特養と従来型特養、どちらを選ぶかは利用者や家族のライフスタイル、やりたいこと、経済的な状況など、多くの要素から検討する必要があります。

【ユニット型特養が向いている人】

ユニット型特養は、個別のケアが必要な高齢者に向いています。例えば、特定の疾病を抱えている場合や認知症による混乱を防ぐために一貫したケアが必要な人には適しています。また、自宅での生活感を重視し、より自由度の高い環境を求める人にはユニット型特養が向いていると言えるでしょう。

【従来型特養が向いている人】

従来型特養は、社交的な環境を好む高齢者や、個別ではなく一定のケアを提供する集団ケアに対して抵抗感がない人に向いています。また、ユニット型特養の費用が負担となる場合は従来型特養が向いていると言えるでしょう。

ユニット型特養と従来型特養のどちらを選ぶかは個々のニーズや事情によって異なります。施設選びに迷ったときは、施設の相談員やケアマネジャーと相談すると良いでしょう。

まとめ

まとめ

今回は、ユニット型特養と従来型特養の違いや選択するポイントを紹介しました。ユニット型特養は国が推奨するケアの方法で、新設される特養の多くがこの形態で運営しています。ユニット型特養では個別ケアに重点を置き、利用者に合わせたケアを提供しています。また、個室対応でプライバシーも守られている施設です。一方、従来型特養は大人数の人と交流がとれ、費用を抑えて利用できます。レクリエーションやイベント以外でも他者との交流が図りやすく、寂しいと感じにくい環境があります。

入居を検討する際は、それぞれの特徴を把握して、利用される方の性格や希望に沿って選択することが大切です。どちらの特養を選ぶ場合でも、一定の待機期間があると予想されるため、入居を急ぎたい場合は早めに申し込みを済ませておくと良いでしょう。

今回の記事が、特養選びの参考になれば幸いです。

施設を探す

カテゴリー

公式SNSアカウント更新中!

老人ホーム選びや介護に役立つ 情報をお届けします!