介護保険料の納付は国民の義務!納付方法や減免制度について解説

「介護保険料はいつから支払うの?」「支払いはどうすればいいの?」このような疑問はありませんか?

介護保険は、国民が介護保険料を納付することで、介護が必要な方を支援する仕組みです。しかし、支払い方法を知らない方も多いのではないでしょうか?介護保険料の納付は国民の義務です。急速な高齢化が進む日本において2000年から始まった介護保険は、急増する高齢者や障がい者が介護サービスを利用する際の保険料にあてられています。

今回は、国民の義務である介護保険料の支払い方法や未納時のペナルティについて解説します。介護保険料の支払いに不安がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

#お金#制度#手続き関係#豆知識
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

介護保険制度とは

2000年から始まった社会保障制度

介護保険制度は、高齢者が日常生活を自立して行えるように支援するための仕組みです。2000年にスタートしたこの制度は、65歳以上の高齢者と、40歳以上の特定疾病を持つ人に適用されます。

【特定疾病】

  1. 末期がん

  2. 関節リウマチ

  3. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)

  4. 後縦靱帯骨化症

  5. 骨折を伴う骨粗鬆症

  6. 初老期における認知症

  7. 進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)

  8. 脊髄小脳変性症

  9. 脊柱管狭窄症

  10. 早老症

  11. 多系統萎縮症(MSA)

  12. 糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症

  13. 脳血管疾患

  14. 閉塞性動脈硬化症(ASO)

  15. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)

  16. 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

介護保険制度は以下2つの部分から成り立っています。

【介護保険料】

介護保険料は40歳から支払いが始まります。ただし、40〜64歳までの方は、健康保険加入者のみです。これにより、介護保険利用者のサービス利用料をまかなっています。

【介護サービス】

要介護認定を受けた方は、介護保険を利用した様々なサービスを受けることができます。具体的には、訪問介護・デイサービス・ショートステイ(短期の入所)・居宅介護支援・特別養護老人ホームなどへの入居サービスが含まれます。

介護保険制度を利用した介護サービスを利用するためには、地域の市区町村から要介護認定を受ける必要があります。認定には「要介護1〜5」と「要支援1.2」の7段階で評価されます。評価は専門の審査員が行い、医師の意見を基に、日常生活で必要な援助や介護の程度から決まる仕組みです。

要介護の認定を受けた後は、サービス計画を立てて介護サービスを利用します。介護保険を利用すると、サービス費用の1〜3割の自己負担で利用可能です。残りの7~9割分の費用は、介護保険料や市区町村などの保険料から賄われています。自己負担額は介護度や所得によって異なります。

介護保険制度は、高齢化が進む日本社会において、介護が必要な方が少ない負担で介護サービスを受けられる環境を整える、重要な制度といえるでしょう。

介護保険料は満40歳から支払いが始まる

満40歳から手続きなしで支払いが始まる

日本の介護保険制度は、国民が一体となって支える社会保障制度として位置づけられています。

満40歳になると、市区町村から介護保険料の通知が届き、介護保険料の支払いが始まります。健康保険加入者は手続きなしで、健康保険の一部として徴収される仕組みです。

ただし誕生日が1日の人は、年齢計算に関する法律に基づき、誕生日の前日に年齢が一つ上がります。そのため、誕生日月の前月から介護保険料の支払い義務が始まります。

例:8/1生まれの方は、7/31が起算日となり、7月より介護保険料の徴収が始まる。

介護保険料を支払う方法

特別徴収と普通徴収の2通りがある

65歳以上の人(後期高齢者)の介護保険料は、年金の額や所得、住民税の額に応じて決まります。一部の高所得者を除き、ほとんどの方が年金からの特別徴収です。

64歳までの第2号被保険者は、会社勤めや自営業などの働き方によって異なります。

介護保険料の支払い方法は以下の通りです。

種別

対象者


支払い方法

第1号保険者

65歳以上

年18万円以上の年金受給者
特別徴収(2ヵ月ごとに年金から天引き)
年18万円以下の年金受給者また年金受給を繰り下げた方
普通徴収(口座振替もしくは役所、コンビニなどで支払い)

第2号保険者


満40歳以上64歳

会社員の場合
会社で加入している健康保険と併せて徴収される



自営業の場合
普通徴収(口座振替もしくは役所、コンビニなどで支払い)

【40歳以上65歳未満の方(第2号被保険者)の保険料に支払いについて】

国民健康保険や職場の健康保険などに加入している方の介護保険料は、それぞれの医療保険の算定方法に従って計算されます。支払いは医療保険料と合わせて行われます。

【65歳以上の方(第1号被保険者)の保険料に支払いについて】

・特別徴収(年金から支払い)

特別徴収とは、年金支給を受ける方に対して行われる支払方法で、介護保険料が年金から直接引き落とされます。これは、年金受給額と介護保険料との差額が自動的に口座に振り込まれるため、保険料の支払いを忘れる心配がなく便利です。

ただし、年金の受給額が一定額以下の場合、介護保険料の徴収が免除される場合があります。免除の基準は市区町村ごとに異なるため、詳細はお住まいの市区町村窓口で確認しましょう。

・普通徴収(納付書等での支払い)

普通徴収は、年金を受け取っていない方や、自営業者などが主に利用する方法です。市区町村から送られてくる納付書により、指定された期間内に銀行や郵便局、コンビニエンスストアなどで直接支払います。

ただし、支払いの期限を過ぎると遅延金が発生するため、支払い日程の管理が必要です。

【年度途中で65歳になる方への手続き】

誕生日の月(誕生日が1日の場合は前月)から65歳以上となり、年金受給が始まります。年金受給額が年額18万円以上の方は、日本年金機構などの年金支払機関からの確認ができ次第、特別徴収の対象となります。

【保険料の減免制度】

災害やその他の特別な事情、または世帯全員が市町村民税非課税の場合、減免申請を行うことで介護保険料が軽減されることがあります。介護保険料の支払いに困難を感じた場合は、早めに市区町村の窓口に相談しましょう。

介護保険料の金額

第1号被保険者と第2号被保険者では算出方法が異なる

介護保険料は所得に応じて変動します。

【65歳以上の第1号被保険者の介護保険料】

介護保険料の金額は、地域により異なります。これは、介護サービスの利用者の比率、需要の高い介護サービスの種類、およびそれらサービスの総経費が地域によって異なるためです。

介護保険料の額は前年度の収入に基づき決定され、料金は3年毎に見直されます。さらに、地域ごとの条例により設定された基準金額を基に、介護保険料は個人または世帯の収入に応じて段階的に決定され、収入が高いほど保険料も増えるというシステムです。

収入の段階設定は、9段階が標準です。しかし、各市区町村が条例で柔軟に定めることが可能で、その段階は6から15までと多岐にわたります。

9段階で算出する計算式は以下の通りです。

所得段階

対象者

保険料の設定方法

第1

生活保護受給者等、世帯全員が市町村民税非課税の老齢福祉年金受給者、世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入+合計所得額80万円以下

基準額×0.3

第2

世帯全員が市町村税非課税かつ本人年金収入+合計所得金額80万円以上120万円以下

基準額×0.5

第3

世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入+合計所得金額120万円超

基準額×0.7

第4

本人が市町村民税非課税(世帯に課税者がいる)かつ、本人年金収入+合計所得金額80万円以下

基準額×0.9

第5

本人が市町村民税非課税(世帯に課税者がいる)かつ本人年金+合計所得金額80万円超

基準額×1

第6

市町村民税課税かつ合計所得金額120万円未満

基準額×1.2

第7

市町村民税課税かつ合計所得金額120万円以上190万円未満

基準額×1.3

第8

市町村民税課税かつ合計所得金額190万円以上290万円未満

基準額×1.5

第9

市町村民税課税かつ合計所得金額290万円以上

基準額×1.7

この表は、所得と税務状況に基づいて、介護保険料がどのように設定されるかを示しています。それぞれの段階に対応する保険料設定方法の値は、基準額に対応する係数(倍率)を示しています。

【40歳から64歳までの第2号被保険者の介護保険料】

第2号被保険者の介護保険料は、収入によって決まります。毎月の給与とボーナス(賞与)は個別に計算が必要です。

・介護保険料の計算式

  • 標準報酬月額×介護保険料率=月給からの介護保険料

  • 標準賞与額×介護保険料率=賞与からの介護保険料

それぞれの用語を解説します。

・標準報酬額

標準報酬月額とは、健康保険料や厚生年金保険料の算定の基礎となる金額です。「保険料額表」に照らし合わせて、社会保険適用となる給与額から算出します。給与額には、基本給はもちろん、時間外労働・家族手当・通勤手当・住居手当・役職手当などの各種手当も含まれます。

介護保険料を計算する際の基準となるのは、健康保険の標準報酬月額です。健康保険の標準報酬は平均支給額に基づいて50段階に等級分けされています。

参照:全国健康保険協会「令和5年度保険料額表」

・標準賞与額

標準賞与額とは、ボーナス(賞与)の総額(税抜き)から1,000円未満を切り捨てた金額のことを指します。標準賞与額は、ボーナスが支給される月によって決まります。賞与を元に標準賞与額を算出する際には、年に3回以下の支給が対象で、4回以上支給される場合は、標準報酬月額の対象となるため注意が必要です。

・介護保険料率

介護保険料率は変動があるため、保険料を算出する際は、必ず最新の保険料率を確認してください。

例えば、全国健康保険協会(協会けんぽ)の介護保険料率は1.64%です。東京都の企業に勤務し、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入しており、標準報酬月額が20万円の場合、介護保険料の算出式は下記のようになります。

介護保険料の算出例

20万円(標準報酬月額)×1.64%(介護保険料率)=3,280円(介護保険料)

つまり、1ヶ月あたりの介護保険料は3,280円となります。

介護保険料を支払わないとどうなる?

介護保険料を支払わない場合はペナルティがある

介護保険料は、保険の給付を受けるためにも納付が義務づけられています。何らかの事情で支払いが遅れた場合、以下のようなペナルティがあります。

【延滞金が発生する】

介護保険料の支払いが遅れた場合、その遅れた期間に対して延滞金がかかります。これは、原則として保険料の未納額に対して年率14.6%で計算され、未納期間に応じて増えていきます。

【介護保険サービスの利用に影響が出る】

また、介護保険料を納めないと、最終的には介護保険サービスの利用に影響します。具体的には、支払いが2年以上遅れた場合、「保険給付の制限」が発生し、介護サービスが受けられなくなる可能性もあります。

【財産が差し押さえられる】

介護保険料の未払いが長期化すると、財産が差し押さえられることもあります。このような強制執行は、未納額が一定以上である場合や、滞納が繰り返される場合などに行われます。差し押さえが行われると、預金の引き出しができなくなったり、不動産が売却される可能性もあります。

期間

滞納に対する措置

期限を過ぎて1年未満の場合

もし介護保険料を期限内に支払えなかった場合、初期の段階で滞納通知が送られることがあります。しかし、この段階ではまだ重大なペナルティは発生しません。ただし、通知を受け取ったらできるだけ早く支払いすることを推奨します。

期限から1年以上経過した場合

支払いが1年以上遅れると、強制執行の手続きが始まる可能性があります。つまり、市区町村が直接あなたの預金や不動産を差し押さえることが許される状況となります。この段階になると、自身の資産に直接影響が出てくるため、早急に支払いしましょう。

期限から1年半以上経過した場合

さらに支払いが遅れ1年半以上経過すると、「給与差し押さえ」が行われることがあります。これは、あなたの給与や年金から直接保険料を差し引く手続きを指すもので、更に経済的な影響が出てきます。

期限から2年以上経過した場合

支払いが2年以上遅れた場合はさらに深刻化します。この状況になると、介護保険サービスの負担割合が3〜4割に引き上げられてしまう可能性があるため注意が必要です。また「保険給付の制限」が発生します。つまり、介護保険を利用しての介護サービスが受けられなくなる可能性があるということです。ただし、生活を維持するための最低限のサービスについては制限されないという規定があります。

【自分で介護保険料を納付する人は滞納に注意】

特に、自分で介護保険料を納付する人は滞納に注意が必要です。年金受給者は、年金から自動的に引かれますが、自己納付者は自分で手続きをしなければならないため、うっかり忘れると滞納につながります。

これらのペナルティは非常に厳しく、あらゆる点で生活に影響を及ぼす可能性があるため、介護保険料の納付は確実に行うことが重要です。介護保険料の支払いが困難な場合は、市区町村の窓口へ相談することをお勧めします。

介護保険料の減免について

介護保険料の支払いが困難な場合は免除されるケースがある

介護保険料は、適切に納付されることが前提ですが、経済的な問題で支払いが困難になる場合もあります。そのような場合、介護保険料の減免制度を利用することが可能です。

介護保険料の減免は、低所得者を中心に特定の条件を満たす人が対象となります。具体的な減免の基準は、市区町村によって異なりますが、一般的には以下の通りです。

条件

内容

所得が一定以下

所得が特定の額以下の場合、介護保険料が全額または一部が免除される。免除される具体的な所得の額は、地域により異なる。

生活保護受給者

生活保護を受けている人は、受給が開始した月から介護保険料が全額免除される。

災害による被害

自然災害等により家屋が全壊または半壊した場合、または被災証明を受けた場合などは、一定期間介護保険料の支払いが免除されることがある。

減免を受けるためには、必要な書類を揃えて市区町村に申請する必要があるため、各市区町村の介護保険担当窓口に問い合わせましょう。減免を受けた場合でも、通常通り介護保険サービスを利用できます。

介護保険サービスの利用は原則65歳から

介護保険料を適切に納付して介護保険サービスを利用しよう

日本の介護保険制度は、主に高齢者向けの社会保障制度であり、介護保険サービスの利用は原則として65歳からとなっています。また、要介護状態または要支援状態と認定されると、様々な介護サービスを利用することが可能です。

具体的なサービス内容は大きく分けて、「在宅サービス」と「施設サービス」に分けられます。

サービスの種類

具体的なサービス

在宅サービス

訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護、通所リハビリテーション、ショートステイ(一時的な入所介護)

施設サービス

特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム

これらのサービスを利用するためには、市区町村に介護保険の要介護認定を申請し、認定審査を受ける必要があります。要介護認定では、日常生活の動作能力や認知状態などが評価され、7段階で判定されます。要介護度が決まると、介護度と状態に応じた介護保険サービスを利用できるようになります。

介護保険サービスは、原則65歳から利用できるサービスですが、16種類の特定疾病にかかった40歳以上65歳未満の方も利用の対象です。

まとめ

まとめ

今回は、介護保険料の納付方法や保険料について解説しました。

介護保険料の納付は、40歳以上の国民に課せられた義務のため、経済的に困窮している一部の方を除き、すべての方が対象です。ただし、保険料は収入や地域によって異なります。介護保険料の支払いができていない場合は、期間や対応によって様々な措置がとられます。未納が長期化した場合は、介護保険割合の増加や介護保険サービスの利用ができないなど重大な措置がとられるため、支払い忘れのないように注意しましょう。

今回の内容が、介護保険料の理解に繋がれば幸いです。

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