孤独死したらどうなるの?深刻化する高齢者の現状を紹介

「孤独死したら後はどうなるの?」「高齢者の孤独死を予防するためにできることはある?」このような疑問はありませんか?

日本では、急激な高齢化が進み一人暮らしをする高齢者も増えています。社会的なつながりが減少するケースも多く、高齢者の孤独死も増加している傾向です。また、高齢者の孤独死は発見が遅れることで、遺体の腐敗や害虫の発生など、社会的な問題を引き起こすこともあります。

孤独死には多くの要因があり、社会的な孤立・経済的な困窮・健康問題・家族や友人とのコミュニケーション不足など様々です。

今回は、高齢者の孤独死について、現状の課題や対策について解説します。ぜひ参考にしてみてください。

#認知症#病気#制度#手続き関係#豆知識
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

一人暮らし高齢者の現状

令和3年時点の高齢化率は28.9%

日本の高齢者人口は増加の一途を辿っています。その中でも注目すべきは、一人暮らしの高齢者の数です。高齢化が進むにつれて、高齢者の就労問題や介護問題、また一人暮らしの増加に伴う孤独死などが深刻化しています。

高齢化の現状は以下の通りです。

令和3年10月1日調べ

男性(万人)

女性(万人)

全体(万人)

総人口

6,102

6,448

12,550

65歳以上の人口

1,572

2,049

3,621

>65~74歳の人口

839

915

1,754

>75歳以上の人口

733

1,134

1,867

表の通り、平均寿命が男性よりも長い女性の高齢者のほうが人口比率が高い傾向にあります。

男女別の平均寿命は以下の通りです。

年代

男性(歳)

女性(歳)

1960年

65.32

70.19

1980年

73.35

78.75

2000年

77.72

84.60

2010年

89.55

86.30

2020年

81.56

87.71

2030年

82.93

88.72

2040年

83.27

89.63

2050年

84.02

90.40

※2030年以降は推測のデータです。

一人暮らしの高齢者の中には、自宅での生活を希望する人も大勢います。しかし、健康問題や孤独感によって、日常生活の支援が必要な場合も多くなります。そのため、高齢者が安心して生活するためには、適切なサポートが必要です。例えば、訪問介護・訪問看護・デイサービス・食事の配達サービスなどの介護保険サービスがあります。しかし、これらを提供する担い手が年々減少していることも課題のひとつです。

一人暮らしの高齢者の増加は、今後も続くと予想されています。そのため、社会全体で高齢者を支援するための取り組みが求められています。地域で高齢者の生活を支え、孤独感を軽減し、健康を維持するための具体的な策を立て実施していくことが必要になります。

参照:内閣府「令和4年版高齢社会白書」

孤独死の現状

増加し続ける孤独死の人数

「孤独死」とは、一人暮らしの高齢者が自宅で亡くなり、その死が数日後、あるいはそれ以上経ってから発見されるケースを指します。これは高齢者が社会とのつながりを失い、孤立して生活していることが大きな要因となっています。

2019年に東京都区部で孤独死した人は5,554人でした。そのうち65歳以上の高齢者は3,913人と約7割を占めています。2003年のデータでは、65歳以上の高齢者の孤独死数は1,441人でしたが、2019年には3,913人となり、約2.6倍に増加しています。

このデータから見ても、65歳以上の高齢者の孤独死が深刻化していることがわかります。その理由としては、高齢化や核家族化の進行、地域との関係性の希薄などが考えられるでしょう。

参照:内閣府「東京都区部における年齢階級別の孤独死数の推移」

孤独死の男女別死亡年齢や男女比を見ていきましょう。

令和4年11月

男性

女性

合計

人数

5,600人

1,127人

6,727人

割合

83.2%

16.8%

100%

平均年齢

62.1歳

61.2歳

61.9歳

60~69歳

1,706人

221人

1,927人

70~79歳

1,158人

245人

1,403人

80歳以上

491人

161人

652人

※年齢負傷者は除く

参照:日本少額短期保険協会「第7回孤独死現状レポート」

孤独死の割合は、男性が女性に比べて多いという結果が出ています。

また、高齢者の孤独死が多い理由には、若い頃から家族と離れて一人暮らしを始めるなどの要因が考えられます。次の表は世帯構成の推移です。

令和2年調べ

単独世帯

夫婦のみ世帯

夫婦と子ども世帯

ひとり親と子ども世帯

その他

2005年

29.5%

19.6%

29.8%

8.3%

12.8%

2010年

32.4%

19.8%

27.9%

8.7%

11.1%

2015年

34.6%

20.1%

26.9%

8.9%

9.4%

2020年

38.1%

20.1%

25.1%

9.0%

7.7%

参照:総務省「令和2年国税調査」

年々、単独世帯が増加し、地域との交流が減ることで年齢を重ねるにつれて徐々に孤立し、孤独死に至るケースが増えていると考えられます。

高齢者の孤独死の原因

SNSの普及や新型コロナウイルスの影響から孤独を感じやすくなった

核家族化の進行により、高齢者は家族と離れて一人暮らしをするケースが増えています。そのため、孤独感から自殺を選択する方も少なくありません。また、SNSやインターネットの普及に伴い、家族の交流も減っている現状があります。さらに、2019年には新型コロナウイルスによる行動制限の影響で、外出や交流の機会も減少し、より孤独感が増す状況となりました。

他にも高齢者の孤独死には、以下のような原因が考えられます。

地域住民とのつながりが希薄

都市部では特に、高齢者が地域住民と交流する機会が少ない傾向にあります。このような場合、高齢者が病気や事故などで急に体調を崩したとき、早急に対応できる人が周囲にいない可能性があります。また、日々の生活の中で見守りや支援を行う機会も少なくなります。地域住民とのつながりが希薄になると、孤立感が増し、一人で困難を抱え込みやすくなります。

未婚による孤独

未婚や配偶者を亡くした高齢者は、他の家族がいない場合、一人で生活の困難を乗り越えなければいけません。特に、病気や怪我など思うように動けない時は、援助を得ることが難しい可能性があります。また、普段から会話の機会がなく、孤独感が増すことで精神的なストレスが蓄積し、健康被害を引き起こすこともあります。

経済的困窮

高齢者が経済的に困窮すると、医療費や介護費用だけでなく生活費も捻出できなくなることがあります。金銭的な理由から外出を自粛し、地域と関わる機会も少なくなると、高齢者の孤立を進行させ、孤独死のリスクを増大させます。

親族がいない

親族がいない場合、緊急時の対応や日常生活の支援を受けることが難しくなります。また、定期的な健康チェックや生活状況の確認をしてくれる人がいないため、急な体調変化に気づくのが遅れたり、支援が入るときには生活がたち行かなくなっていることもあるでしょう。

友人や仲間がいない

友人や仲間とのつながりは、社会参加のきっかけとなり、孤立感を軽減することができます。一緒に活動したり話したりすることは、人間関係の維持だけでなく、精神的な支えにもなるでしょう。社会的な関係が薄れたり、失われたりすると、高齢者の社会的孤立は深まり、孤独死のリスクが高まる可能性があります。

家族とのコミュニケーション不足

家族とのコミュニケーションが不足していると、高齢者が体調を崩していても上手く伝わらないことがあります。また、自分が家族に負担をかけたくないという気持ちから、具体的な困難を話さない高齢者もいます。家族間のコミュニケーションがうまく図れていない場合、孤独死のリスクを高めるため注意が必要です。

近隣住民とのコミュニケーション不足

近隣住民との日常的な交流があると、いつもは元気な高齢者が一定期間姿を見せない・自宅から異様な音や臭いがするなど、何か異変があったときに気にかけてもらえます。近隣住民とのコミュニケーションが希薄だと、早期発見・早期対応が難しくなるため、孤独死へのリスクが高まります。

これらの原因が複雑に絡み合うことで、高齢者の孤独死が引き起こされています。そのため、高齢者の孤独感を解消し、孤独死を防ぐための対策が必要です。

孤独死したらどうなる?

孤独死が発見されるまでには2~3週間かかる

孤独死が発見された後の対応は非常に複雑です。例えば、遺体発見から葬儀、賃貸物件の清掃や修繕費用、さらには遺産の整理などが必要となり、これらの対応は、基本的に亡くなった方に最も近い親族が請け負うことになります。しかし、親族がいない、あるいは親族との関係が断絶している場合、それらの負担は地域社会や行政に及びます。

こうした高齢者の孤独死問題は、社会全体の問題です。多くの高齢者が心身とともに健康で、人とのつながりを保ちながら生活を送れるように、コミュニティの絆を強め、高齢者支援の体制を整えることが求められています。

以下の表は、孤独死から発見にいたるまでの日数をまとめています。

令和2年調べ

男性(%)

女性(%)

総合(%)

3日以内

39.7

48.1

41.2

4~14日以内

28.3

25.7

27.9

15~29日以内

14.6

11.4

14.0

30~89日以内

14.7

11.6

14.1

90日以上

2.8

3.1

2.8

平均日数

18日

16日

18日

参照:日本少額短期保険協会「第7回孤独死現状レポート」

孤独死が発生した場合、発見までにかかった日数が長くなればなるほど、その後の処理に多大な時間や労力が必要となります。孤独死を予防するとともに、可能な範囲で発見を早められる対策が必要となります。。

参考:ゴミ屋敷片付け清掃|株式会社まごのて

孤独死を防ぐための対策

様々なサービスを活用し人との関わりを増やす

高齢者の孤独死を防ぐためには、以下のようなサービスや取り組みを活用すると良いでしょう。

見守りサービスを利用する

見守りサービスは、高齢者が自宅で安心して生活できるように、定期的に訪問したり、電話で様子を確認したりするサービスです。急な体調の変化や生活上の問題を早期に発見し、適切な支援を提供することが可能になります。

各自治体による高齢者支援サービスを利用する

各自治体は、高齢者の孤立を防ぐために様々な支援サービスを提供しています。例えば、健康診断・ボランティア・地域の交流会の開催・介護セミナー・家事支援・移送サービスなどがあります。これらのサービスは、高齢者が自宅で自立した生活を送りながら、必要な支援を受けることが目的です。

家族が頻繁に連絡をする

家族からの頻繁な連絡は、高齢者の孤独感を緩和し、気持ちの支えとなります。また、定期的なコミュニケーションを通じて、高齢者の健康状態や生活状況を把握し、早期に問題を察知することが可能になります。

介護保険サービスを利用する

介護保険を利用したサービスには、訪問介護・訪問看護・デイサービスなど、様々なサービスがあります。これらを利用することで、介護の専門職が定期的に高齢者の自宅に伺い、体調の変化や異常に気づくことができるでしょう。また、専門職との関わりができることで、孤独感の解消につながります。

介護施設へ入居する

自宅での生活が困難になった高齢者は、介護施設への入居を検討することも選択肢のひとつです。介護施設では、24時間体制での見守りや医療サポートを受けることができ、入居者同士が関わる機会も増えます。

民間の訪問サービスを利用する

民間企業やNPOが提供する訪問サービスや食事配達サービスも利用できます。これらのサービスは、定期的な見守り・家事支援・趣味活動など、高齢者のニーズに応じて提供されます。

見守りツールを活用する

近年、ITの進歩によって、見守り支援ツールも多様化しています。例えば、自動警報装置やセンサーが設置されたベッド、徘徊管理システムなどです。これらのツールは高齢者の安全を確保し、緊急事態が発生した場合には早急に対応ができます。また、AIを活用した会話ロボットなどもあり、高齢者の孤独感を和らげるためのコミュニケーションツールとしても利用されています。

参考:見守りシステム「みるモニ」 | NMS

参考:docomo回線で通信費削減ならHISモバイル

人とのつながりを作る

人とのつながりは、高齢者が社会的に孤立しないために最も必要な要素です。友人や近隣住民、地域コミュニティとの交流を通じて情報交換ができ、心の安定を図ることができます。また、高齢者に何か異常が起きたときでも、早期に気づいて対応する機会が増えるでしょう。定期的な交流があることで、社会の一員であることを感じられる環境を作ることが重要です。

高齢者の孤独死を予防するためには、これらのサービスやコミュニティを活用し、高齢者一人ひとりが安心して暮らせる社会を目指す必要があります。また、高齢者自身が健康状態や生活状況を家族や友人、近所の人々に伝えられるようなコミュニケーションの機会も持てると良いでしょう。

まとめ

まとめ

今回は、高齢者の現状と孤独死について解説しました。今後、さらに高齢者の人口や孤独死の増加が予測されています。高齢者の孤独死を予防するためには、地域サービスの活用やコミュニティ形成が重要なポイントです。そのためには、高齢者や家族だけでなく、地域の関わりや介護事業所など社会全体の協力が必要となります。高齢者が安心して生活でき、孤独死を防ぐためには、紹介した対策を継続的に実施することが重要です。

今回の記事が、高齢者の孤独死についての理解につながれば幸いです。

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