介護保険を使わない自費サービスでは何ができるの?メリットやデメリットも解説
「介護保険を使わないくても、介護を受けられるの?」「どんなサービスが利用できるの?」このような疑問はありませんか?
介護保険外の自費サービスは、介護保険を使用しないため、サービスの内容に制限なく利用できます。そのため、介護保険では提供できない特定のサービスを行えるため、目的に合わせて利用すると便利です。
今回は、介護保険外の自費サービスの種類や費用、利用の流れなどを解説します。自費サービスの利用を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
※なお、本記事では介護保険外の自費サービスについて解説しますが、具体的な内容や料金については一般的な情報を提供することに留めます。
とぐち まさき
渡口 将生
介護保険外の自費サービスとは
介護保険サービスでは提供されないサービスを利用できる
介護保険外の自費サービスとは、介護保険制度の範囲外で提供される介護サービスのことです。介護保険では提供できない特定のサービスを利用するために活用します。
介護保険制度で対応できないサービスには、医療機関への受診・趣味・ペットの世話・娯楽や趣味活動・庭の掃除などが該当します。介護保険外の自費サービスを利用することで、介護の範囲を拡大できたり、より個別に合わせたケアを受けることが可能です。
ただし、介護保険が適応されないため、費用が高額になる場合が多い傾向です。利用する際には希望する生活と経済状況から、慎重に判断すると良いでしょう。
介護保険外の自費サービスの種類と費用
介護保険外の自費サービスは様々な場所から提供される
介護保険外の自費サービスを提供する事業所には、以下のような場所があります。
介護サービス事業所が実施する介護保険外サービス
市区町村が実施する高齢者在宅
市区町村が実施する介護予防サービス(総合支援)
社会福祉協議会の高齢者支援・シルバー人材センター・福祉支援サービス
民間企業が実施するサービス
それぞれ見ていきましょう。
【介護サービス事業所が実施する介護保険外サービス】
介護サービス事業所が提供するサービスです。具体的には、訪問介護・通所介護・デイサービス・ショートステイなどがあります。これらのサービスは、利用者の個別ニーズに合わせて利用可能で、特に訪問介護では、通院の付き添いや大掃除など、自費サービスとして提供している場合も多くあります。
【市区町村が実施する高齢者在宅】
市区町村が提供する介護保険外の在宅サービスです。具体的なサービスには、訪問介護・家事援助・送迎サービスなどがあります。これらのサービスを利用することで、高齢者が自宅で暮らしながら必要な支援を提供することが可能です。
【市区町村が実施する介護予防サービス(総合支援)】
市区町村が提供する介護予防サービスの中には、介護保険制度の範囲外で提供されるサービスもあります。例えば、地域の健康づくり活動や認知症予防プログラムなどです。これらのサービスは、高齢者の健康維持や認知症予防を支援し、社会参加や交流の機会を持つことができます。
【社会福祉協議会の高齢者支援・シルバー人材センター・福祉支援サービス】
社会福祉協議会やシルバー人材センターをはじめとする民間団体が提供するサービスも、保険外の自費サービスです。具体的なサービスには、生活相談や介護相談、生活支援などがあり、定年退職後の方も活躍しています。これらのサービスは、高齢者の生活全般にわたるサポートを受けられることが特徴です。また、提供する側も運動や刺激となり、相乗効果が期待できます。利用料金は、無料(ボランティア)や低額(ワンコイン)などで利用可能です。
【民間企業が実施するサービス】
民間企業も介護保険外の自費サービスを提供しています。例えば、居宅介護支援事業や高齢者向けの住宅サービスなどがあります。サービス内容や利用状況によって費用が異なるため、注意が必要です。一般的には、サービス内容と利用時間に応じた料金体系が設定されています。
介護保険外サービスのメリット
介護保険外の自費サービスには多くのメリットがある
介護保険外サービスには以下のようなメリットがあります。
【サービスの幅広い選択肢】
介護保険外サービスは、介護保険制度の枠を超えて提供できるため、多様なサービスが選択可能です。介護保険では提供できないサービスでも、提供する事業所の了承があれば、利用できます。
【サービスの迅速な提供】
介護保険外のサービスは、利用者自身が直接契約や依頼が必要ですが、介護保険制度に比べて手続きが簡素化されている場合が多いです。そのため、誰でも簡単にサービスが受けられます。緊急なケアや対応が必要な場合でも安心です。
【質が高い個別の要望に対応】
介護保険外のサービスは、事業所や企業が独自に提供しているため、個別の要望や希望に対応できます。介護保険では提供できない、趣味や娯楽など特定のサービスの提供も可能です。そのため、利用者のQOL(生活の質)の向上も期待できます。
このように、多くのメリットがあるため、必要に応じて利用を検討すると良いでしょう。ただし、デメリットもあるため、次の章で見ていきましょう。
介護保険外サービスのデメリット
費用負担が大きくなるため予算に合わせた利用が必要
介護保険外サービスには以下のようなデメリットが考えられます:
【費用負担が大きい】
介護保険外のサービスは、介護保険制度の対象外のため全額自己負担です。そのため、介護費用が増加し、経済的な負担が大きくなる可能性もあります。介護保険外サービスを提供する事業所によって費用が異なるため、利用の際は料金体系を比較しましょう。
【サービスの質のばらつき】
介護保険外のサービスは、事業所や企業によって提供されるため、サービスの質にばらつきがある場合もあります。介護保険制度の基準や監査もないため、利用者自身が信頼できるサービス事業所を選ぶ必要があります。事業所を選ぶ際は、情報収集や比較・検討が大切です。
【サービスの補償がない】
介護保険外のサービスでは、介護保険制度による補償がない場合があります。サービス提供時の事故やトラブルに対する責任の範囲を確認しましょう。
【サービスの選択肢の制限】
介護保険外のサービスは、地域によってサービスの選択肢が限られる場合があります。特に地方や人口の少ない地域では、希望するサービスが提供されていないこともあるでしょう。
【介護保険制度の利用の制約】
介護保険外のサービスを利用する時に、介護保険制度の利用条件の確認や手続きが必要な場合があります。例えば、要介護認定やケアプランの作成が必要なこともあるため、利用する事業所やケアマネジャーに確認しましょう。また、介護保険サービスを契約することで、保険外サービスをオプションとして利用できる事業所もあります。
介護保険外の自費サービスは、介護保険制度に捉われずに利用できますが、上記のようなデメリットもあります。利用する際は、サービス内容や利用料金などを十分に確認して利用すると良いでしょう。
介護保険外サービスの運営者による違い
介護保険外サービスの運営者によってサービス内容や料金が異なる
介護保険外サービスの運営者には、自治体や民間企業などがあります。
自治体による介護保険外サービスは、市区町村によって異なる独自の高齢者向けサービスを提供しています。例えば、配食・家事援助・送迎・見守り機器の設置・理美容・リフォームの助成・紙おむつ購入費の助成・タクシーやバス運賃の助成などです。自治体ごとにサービスや提供方法が異なるため、詳細は各自治体に確認しておくと良いでしょう。
また、民間企業も介護保険外サービスの提供を行っています。民間企業が提供するサービスは種類が豊富で、利便性が高い特徴がありますが、自治体のサービスと比べて費用が高くなる傾向があるため注意が必要です。
介護保険外で受けられるサービス一覧
介護保険外では様々なサービスが提供される
介護保険外で受けられるサービスの主な内容は以下の通りです。
サービス内容 | 詳細 |
家事援助 | 生活支援・調理・宅食・配食・大掃除・買い物代行・庭掃除など |
身体介護・運動 | 介護予防・機能訓練・リハビリ・マッサージ・指圧・あん摩など |
労働 | 就労機会の提供など |
娯楽 | 旅行・趣味・楽しみ・外出支援・美容・理容・整容など |
その他 | 家電製品の取り換え・認知症ケアサービス・見守りサービス・地域コミュニティサービス・看取り・終末期など |
それぞれのサービスについて詳しく見ていきましょう。
※料金については、変更されている場合もあるため、利用前に確認が必要です。
【ダスキンホームインステッド】
株式会社ダスキンが提供するサービスです。ダスキンでは、介護保険外の訪問サービスを提供しており、1回の利用時間は2時間からとなっています。1時間あたりの料金は2,500円から3,500円(首都圏や関西圏などの地域によって異なる場合があります)。このサービスは、定期利用だけでなくスポット利用も可能です。提供されるサービスは、研修を修了したケアスタッフによって行われます。
費用は。利用時間によって異なりますが、1回に2時間、週に2回程度利用する場合。1ヶ月あたり50,000円程度です。
【寝具衛生加工サービス】
アースサポート株式会社が提供するサービスで、布団乾燥・消毒加工/水洗い加工サービスを提供しています。自宅でお布団を干すことができない高齢者の自宅を訪問し、布団・毛布・マットレスなどを乾燥・消毒加工や水洗い加工が可能です。
また、配食サービスも提供しており、シニア向けに安否確認を兼ねて、栄養バランスのとれたお弁当を配達しています。専任の栄養士と調理師により献立・調理が行われ、刻み食やアレルギー対応など、個別の身体状況に合わせた対応も可能です。
その他にも、家事代行・訪問理美容・衣類クリーニング・寝具のレンタルや販売など、さまざまなサービスを提供しています。
価格については、衛生加工サービスや配食サービスは自治体からの委託事業として提供されることが多く、自治体によって異なります。各自治体の公式ウェブサイトや問い合わせ先で、具体的な価格やサービスの詳細を確認することが重要です。
【生活支援 (便利屋)サービス】
株式会社ベンリーコーポレーションでは、様々なお困りごとに応える便利屋のフランチャイズチェーンです。生活支援サービス・エアコンサービス・ハウスクリーニング・水廻りの掃除や修理を提供しています。
また、庭木の剪定・家具移動・害虫駆除・荷物の片付け・部屋の掃除・ゴミ出しの手伝いなどの住居内外問わず様々なサービスも対応可能です。他にも、買い物の付き添い・話し相手・お墓の掃除・電球交換といった日常的な困りごとも解決できます。
北海道から沖縄まで200店舗以上も展開している企業です。エアコンクリーニングなどは作業に必要な時間を元に標準単価を定めており、スタッフ一名1時間で3,000円+出張費3,000円の最低6,000円から利用できます。
【便利屋サービス 「ラクシーホームサービス」】
株式会社コミュニティタクシーが運営しており、日常の困ったことをお手伝いするサービスです。草取り・草刈り・庭木の剪定・お墓の掃除・網戸、障子、ふすまの張替え・犬の世話などにも対応できます。
他にも、自宅内外の清掃や整理(引越しの手伝い・家具などの移動・窓のガラス拭き・屋外の整理など)・家電の修理や設置(インター ホンの修理や交換・家電製品の設置・電気配線の補修など)・日曜大工(階段手すり設置・ペンキ塗装・ドアノブの修理など)・ 水まわりの修理(水漏れなどの修理・排水管のつまり除去など)・ 各種代行(相続や遺言の相談など)様々なサービスを利用できます。
費用例は、草取り(一人1時間1,300円)・庭木の剪定刈込み(一人1時間2,000円)・ お墓の掃除 (一人1時間2,000円)・ 網戸張替え(普通サイズ1本2,700円)と作業内容によって様々です。 ※出張料金は不要
【高齢者の生活支援事業「はちどりワーカー」】
一般社団法人夢ネットはちどりが提供するサービスです。生活支援サービスを中心に、買い物・通院・旅行・外食・趣味活動などの付き添いを提供しています。また、役所申請やペットの世話などの代行サービスも行っています。
利用料金は会員登録の有無により異なり、一時間2,000円前後必要です。派遣するスタッフに専門的な資格が必要な場合は、料金が割り増しになる場合もあります。
地域やサービス事業所によって、サービスや料金が異なるため、利用する際には詳細を確認しましょう。
参照:厚生労働省・農林水産省・経済産業省「地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例」
介護保険外サービスの費用
介護保険外サービスの費用は高額になる
介護保険外のサービスは、介護保険が利用できないため、利用者自身が費用を全額自己負担する必要があります。費用はサービスの種類や内容、提供事業所によって様々ですが、一般的に、地域・対応するスタッフの人数・自宅までの距離・利用時間によって決まります。
また、一部のサービスでは、利用にあたって必要な材料や消耗品に関する費用が別途かかる場合もあります。さらに、サービス提供者が利用者の自宅や施設を訪問する場合、交通費が発生することがあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
費用については、事前にケアマネジャーや市区町村の窓口、サービス提供事業所に確認をとることが大切です。
介護保険外サービスの利用の流れ
介護保険サービスに比べて簡易的な場合が多い
介護保険外のサービスを利用する場合、一般的な利用の流れは以下の通りです。
まずは、介護や生活の中で困っていることから、必要なサービスを明確にします。次に、利用したいサービスを提供している事業所を探します。探す際は、ケアマネジャーや市区町村の窓口で相談すると良いでしょう。
利用する事業所が決まったら、問い合わせをして利用申し込みを行います。問い合わせ方法には、電話・インターネット・直接の訪問など、各事業所によって異なります。また、依頼内容(介護サービスなど)によっては、利用者との面談や診療情報などの書類が必要な場合もあるため、確認が必要です。
申し込み後は、具体的な利用内容・費用・契約条件・利用に関する注意事項などの説明があり、契約書や同意書を取り交わします。契約や手続きが完了した後、サービスの利用が開始されます。
利用の流れは、サービスの種類や提供者によって異なる場合があるため、必ず事業所に確認しましょう。
介護保険外サービスの活用方法
介護保険外サービスのよくある活用方法
介護保険制度には、細かなルールが設けられているため、利用したいサービスが利用対象外の場合があります。ここでは、よくある活用方法を見ていきましょう。
【通院の付き添い】
在宅介護や施設入所中でも、病院内の付き添いは介護保険サービスの適応外となります。そのため、保険外サービスで契約して、通院中の付き添いを利用する方は多いです。この場合、通院の道中は介護保険対応、病院内の付き添いは保険外サービスとなります。
【食事の準備】
介護保険制度における食事の準備や提供は、利用者本人のみを対象とします。そのため、同居家族分の準備や食事提供はできません。しかし、介護保険外サービスでは、家族全員の食事準備も依頼できます。掃除などの家事援助も同様です。
【大掃除や荷物の整理】
介護保険制度の生活支援サービスには、大掃除や荷物の整理などのサービスは制限されています。細かいルールを挙げると、窓の掃除・玄関の掃除・荷物の片付け・模様替えなどがあり、介護保険サービスでは行えません。介護保険外サービスでは、制限が設けられていないため、希望と利用する事業所のサービス内容が一致すれば、サービスが受けられます。普段は一般的な生活援助を受け、必要時には介護保険外の自費サービスを利用すると良いでしょう。
このように、サービスに合わせて利用するサービスを使い分けることが大切です。
まとめ
まとめ
今回は、介護保険外の自費サービスについて紹介しました。介護保険外の自費サービスは、介護保険制度とは異なるサービスを指します。介護保険外のサービスは、介護保険制度のような利用制限が設けられていないため、利用者のニーズに合わせて自由な選択が可能です。
介護保険外サービスには、家事代行・付き添いサービス・大掃除など、介護保険サービスでは対応できないことも依頼できます。ただし、介護保険制度よりも費用が高額になるため、予算と相談しながら利用を検討すると良いでしょう。
また、家族やケアマネジャーや自治体などから情報を収集し、サービスや費用について比較検討することも大切です。介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせることで、生活の幅が広がることも期待できるため、ぜひ利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。