介護休業と介護休暇の違いとは?最新の法改正と選択のポイントを解説

「介護休業はどんな制度?」「介護休暇との違いはなに?」このような疑問はありませんか?

介護休業は、育児介護休業法によって定められた、労働者の権利です。家族に介護が必要になった場合に、仕事と介護の両立を目的に設けられました。

しかし、「上司や同僚に迷惑をかけたくない」「減給や降格になったらどうしよう」といった不安から、利用しにくいと感じる人もいるでしょう。

今回は、介護休業の内容や取得方法について紹介します。介護休暇との違いや選択のポイントも解説しているため、ぜひ参考にしてください。


介護休業と介護休暇の違いとは?最新の法改正と選択のポイントを解説
#在宅介護#生活#お金#制度#豆知識
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

介護休業とは

家族介護のために長期休暇が取得できる制度

介護休業とは、育児・介護休業法で定められた制度のひとつです。要介護状態にある家族の介護や環境を整えるために、長期の休みを取得できます。対象となる家族1人に対して通算93日まで取得することができ、最大3回まで分割して取得可能です。

この制度は、仕事と介護の両立を支援する目的で設けられましたが、「会社や同僚に迷惑をかけてしまうかもしれない」と取得しない方もいます。しかし、働きながら家族を介護するという大変な状況を少しでも軽減するために設けられたため、権利として適切に利用することが大切です。

介護休業を取得した後の復職は、制度によって保証されています。休業前の職位や賃金、勤務地などが変わることはありません。ただし、休業前の職務内容が変わることはあります。休業中に業務が変化したり、組織が再編されたりする場合もあるため、復職前に確認しましょう。


介護休暇と介護休業に関する法改正

2022年に法改正があり取得条件などが緩和

2022年に改正された「育児・介護休業法」では、企業に介護休業を申請しやすい雇用環境が義務付けられました。また「就業規則の改定」「研修・相談窓口」「制度の複雑さ・社会保険料免除の条件・給付の案内」など、対象となる従業員に対して個別に案内し、意思確認する環境が求められています。

具体的な介護休暇と介護休業に関する法改正のポイントは、以下の3点です。

時間単位での休暇取得が可能になった

これまで介護休暇は1日単位でしか取得できませんでしたが、法改正により時間単位での取得が可能になりました。これにより、病院の診察時間に合わせて数時間だけ休むといった柔軟な取得が可能となり、労働者の介護と仕事の両立がより容易になりました。

すべての労働者が対象になった

以前は一定の雇用形態や勤務時間により、取得に制限がありましたが、改正により、パートタイムや契約社員などを含むすべての労働者が対象となりました。

雇用期間に関する要件がなくなった

以前は、介護休業の取得に一定の雇用期間が必要でした。しかし、法改正によりこの要件がなくなり、雇用期間に関わらず介護休業を取得できるようになりました。そのため、新たに雇用された労働者も必要な時に介護休業を取得することが可能となりました。

これらの改正は、働きながら家族の介護を行う労働者の支援を目的としています。介護と仕事の両立は困難な場面も多いですが、法改正により、多くの労働者が介護休暇・休業を利用しやすくなりました。

企業が法令に違反した際の罰則

従業員から介護休業の申請があったら、企業は必ず受理しなければいけません。また、介護休業を理由に従業員が不利益を被るような処遇を行ってはならないと定められています。例えば、降格や解雇、減給などが該当します。

これらに違反した企業に対する罰則の一つとして、厚生労働省による企業名の公表が挙げられます。また、事業所がある都道府県の労働局は、必要に応じて報告を求めることが可能です。また、都道府県の労働局に対して報告しない場合や、虚偽の報告を行った際には、20万円以下の罰金が科される場合もあります。


介護休業の対象者・取得条件

すべての労働者が対象となるが一部例外もある

介護休業を取得するためには、以下の条件があります。

対象となる労働者

介護休業の対象者は、要介護状態の家族を介護している労働者です。これには、正社員だけでなく、パートタイムや契約社員も含まれます。また、法改正により雇用期間に関する取得要件がなくなったため、新たに雇用された労働者でも介護休業を取得することが可能になりました。

ただし、期間を定めて雇用されているパートタイム・アルバイト・契約社員などの労働者は、介護休業の取得が制限される場合があります。具体的には、介護休業を開始する予定日から93日を基準に、その日から6ヶ月以内に労働契約が終了し、かつ更新されないことが明らかな場合は介護休業の取得は認められません。また、労使協定が結ばれている場合、入社から1年未満の労働者や、1週間の定められた労働日数が2日以下の場合も介護休業の対象外となる可能性があります。さらに、日雇いの労働者は介護休業を取得できません。

対象となる家族

常時介護が必要な状態と判断するには2つの基準がある

対象となる家族は要介護状態にある、配偶者(事実婚を含む)・父母(養父母を含む)・子(養子を含む)・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫になります。また、同居していなくても、介護休業の取得が可能です。

要介護状態にあるかどうかの判断基準は、以下の2つで判断します。

  • 介護保険制度の要介護状態区分において、要介護2以上の認定を受けている
  • 要介護認定を受けていない場合でも、以下のチェック項目(常時介護を必要とする状態に関する判断基準)で条件を満たしている

厚生労働省が掲げる「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」は以下の通りです。

12項目
判断基準

①座位保持

10分間一人で座ることができるか。

②歩行

立ち止まったり、座り込んだりせずに5m程度歩くことができるか。

③移乗

ベッドと車いす、車いすと便座の間を移るなどの乗り移りの動作ができるか。

④水分・食事摂取

摂取する量の判断を支援する声かけを含む。

⑤排泄

排泄動作ができるか。

⑥衣類の着脱

更衣動作ができるか。

⑦意思の伝達

自分の意思を伝えられるか。

⑧外出すると戻れない

自宅に迷わずに帰ってこられるか。

⑨物を壊したり衣類を破くことがある

自分や他人を傷つける状態を含む。

⑩周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れ

物忘れによる支援の程度。

⑪薬の内服

内服の管理ができるか。

⑫日常の意思決定

毎日の暮らしにおける活動に関して意思決定ができる能力があるか。

上記項目に対して、「自分でできる」「見守りなどが必要」「できない/介助が必要」の3つに分類して評価します。

①〜⑫のうち、2が2つ以上又は3が1つ以上該当し、その状態が継続すると認められる場合は、常時介護を必要とする状態と認められます。


介護休業を申請する方法

介護休業の申請には事前に申請が必要

介護休業の申請するには、介護休業給付金支給申請書などの必要書類を事業主に提出します。通常、介護休業の開始日と終了日は、2週間前までに決定し提出します。

介護休業は、各企業の就業規則に基づいて取得します。そのため、まずは会社に取得の意向を相談すると良いでしょう。

申請期間

介護休業給付金の申請期間は、原則、介護休業終了日の翌日から2ヵ月後の月末までです。例えば、9月10日に介護休業が終了した場合、給付金の申請期間は9月11日から11月30日までです。申請期間が決まっているため、期間内に申請し忘れることのないよう注意しましょう。

もし、何らかの理由で申請期間内に申請できなかった場合は、救済措置が取られます。厚生労働省によれば、介護休業給付金の受給時効は、介護休業が終了した翌日から2年と定められています。

介護休業給付金を受け取る方法

介護休業給付金の受け取りには、ハローワークに「介護休業給付金支給申請書」と「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(賃金台帳・出勤簿などを含む)」の提出が必要です。

また、介護休業給付申請書の提出時には以下の書類も必要になります。

  • 事業主に提出する介護休業給付申請書
  • 介護を受ける家族の情報が確認できる書類(氏名・続柄・性別・生年月日など)
  • 介護休業の期間と実休業日数が確認できる書類
  • 介護休業期間中に支払われた賃金を確認できる書類

基本的には事業主がハローワークに必要書類を提出しますが、休業者自身が介護休業給付金を申請することも可能です。

給付金の支給決定と支給時期

支給決定された場合、介護休業給付金は約1週間後に介護者本人の金融機関口座に振り込まれます。給付金の振込に関するお問い合わせは、厚生労働省ではなく、ハローワークになるため注意が必要です。

給付金の計算方法

介護休業給付金の計算方法は、給料の67%が基本です。具体的には、「休業開始時賃金日数×支給日数×67%」となります。ただし、介護休業中の給与は月給の80%を目安に支給されるため、給料の67%に加えて、総額で80%になるよう調整されます。給付金の上限は80%のため、休業中に賃金が支払われると、介護休業給付金が減額となる可能性があります。

給付金制度の利用と申請

介護休業給付金の利用は、同じ被介護者について原則一度までとなります。しかし、93日分の介護休業を最大3回まで分割して利用できます。また、介護者が変われば、再度介護休業を取得することが可能です。

制度利用の際は、介護休業終了日の翌日から2ヵ月後の月末までにハローワークへ申請が必要です。

給付金の受け取りについて

介護休業給付金の受け取りは、介護休業終了後に受け取ります。

複数の家族で給付金を受け取る

同じ要介護者に対して介護する人が変わる場合、それぞれが介護休業を取得できます。また、同じ要介護者に対して、複数の介護者が同時期に介護休業を取得することも可能です。

休業期間

介護休業給付の条件のひとつに、「常時介護を必要とする家族を2週間以上介護するための休業であること」というものがあります。これはあくまで、要介護者の状態を表すもので、実際には5日間の介護をした後、施設に入所するケースもあります。このように、2週間に満たない介護休業の場合でも、日数分の給付金を受け取ることが可能です。

他の休業と併用はできない

介護休業は、他の給付金と併用できません。介護休業期間中に新たに産休・育休が開始された場合、開始日の前日をもって介護休業は終了します。以後、介護休業給付は受けられなくなります。ただし、これらの休暇期間終了後に新たに介護休暇を取得することは可能です。


介護休暇との違い

介護休業と介護休暇は状況に合わせて利用する

介護休暇と介護休業の違いについて以下の表にまとめました。


介護休業

介護休暇

取得できる休暇日数

対象家族1人につき通算93日まで

(3回まで分割可能)

対象家族1人につき年5日まで

(対象の家族が2人以上いる場合は年10日まで)

対象家族

・配偶者(事実婚を含む)

・父母(養父母を含む)

・子(養子を含む)

・配偶者の父母

・祖父母

・兄弟姉妹

・孫


主な取得条件

要介護状態にある家族を介護している

要介護状態にある家族を介護している

申請方法

休業開始予定日の2週間前までに書面で会社に申請する

口頭で会社へ申し出る

(社内規定により書面提出が必要な場合もある)

給付金

申請可能

なし

取得可能な休暇日数

介護休暇は、1年につき最大10日間取得できます。これは、要介護状態の家族が2人以上いる場合でも、1年間の取得上限は10日間となります。

対象・取得条件

介護休暇と介護休業の対象者や取得条件は、基本的に同じです。要介護状態の家族を介護している、全ての労働者が対象となります。

介護休暇中の給与・賃金について

介護休暇中の給与・賃金については、法的に定められていないことから企業の規定や労働契約により異なります。雇用保険上の介護休業給付金制度を利用することで、給与の代わりとすることができます。

介護休暇の申請方法

介護休暇の申請方法は企業によりますが、通常は事前に書面で申請することが求められます。また、法改正により時間単位での休暇取得が可能になったため、数時間だけ休むといった柔軟な取得も可能となりました。


介護休暇と介護休業のどっちをとる?

状況に応じて休暇・休業制度を使い分ける

家族が要介護状態になった場合、介護休暇と介護休業のどちらを選ぶべきかわからない方もいるでしょう。それぞれの違いは以下の通りです。

介護休業を選ぶべきケース

介護休業は、長期間の介護に対応するための制度です。家族が重度の介護を必要とする場合や、自分自身が介護の中心を担う場合に適しています。具体的な内容は以下の通りです。

  • 施設入所の準備
  • 同居の準備
  • 看取りなど終了する時期が推測できる時

また、介護休業は対象となる家族1人につき通算93日、最大3回まで分割して取得することが可能です。

介護休暇を選ぶべきケース

介護休暇は、短期間の介護に対応するための制度です。例えば、家族が一時的に体調を崩した場合や、定期的な医療機関への通院を伴う介護が必要な場合などに適しています。具体的な内容は以下の通りです。

  • 急な体調不良
  • 通院の付き添い
  • 買い物の付き添い
  • 行政手続きのサポート
  • ケアマネジャーなどとの面談や契約
  • 一時的な介護

また、法改正により時間単位での休暇取得が可能になったため、数時間だけ休むといった柔軟な取得も可能となりました。

介護休暇と介護休業は、それぞれが補完し合う形で利用することが可能です。例えば、初めは介護休暇を利用して短期間の介護に専念し、その後介護休業を取得して長期間の介護に対応するといった利用もできます。


参考:介護休暇の給与は無給でも問題ない?取得条件や介護休業との違いも解説ヨウケン

その他の制度も検討する

どうしても仕事を休業できない場合は介護休業・介護休暇以外の制度を活用する

介護休業や介護休暇の他にも、介護に関する支援制度は多くあります。例えば、以下のものがあります。

  • 介護保険制度による介護サービス
  • 地域包括支援センターによる相談支援
  • 介護予防・日常生活支援事業

これらの制度を活用することで、介護の負担を軽減し仕事との両立を図ることができる場合もあります。

ただし、利用にあたり事前面談や契約が必要になるため、介護休業・介護休暇制度を活用しながら必要な介護サービスに関する話合いを進めると効果的です。仕事を休んでいる間に、復帰も視野に入れた支援体制を構築しましょう。

参考:クラウドソーシングのクラウディア| 株式会社エムフロ

まとめ

まとめ

今回は、介護休業の内容や介護休暇との違いについて紹介しました。

介護が必要になると、仕事を休まざるを得ない状況になる場合がありますが、介護休暇や介護休業を上手く活用することで、仕事と介護の両立ができます。

一定の条件を満たすことで、介護休業給付金制度の利用も可能なため、一時的な収入の減少を抑えることもできます。

まだ介護が始まっていない場合でも、将来的に家族の介護が必要になる可能性もあります。介護休暇や介護休業の制度を理解し、上手に活用していきましょう。

今回の記事が、介護休業の理解に繋がれば幸いです。​

老人ホームを探してみる

この記事を読んだ方によく読まれています

お気に入り未登録
お気に入り未登録
お気に入り未登録
お気に入り未登録

カテゴリー

公式SNSアカウント更新中!

老人ホーム選びや介護に役立つ 情報をお届けします!